2021(03)
■待つべき人数の境界線
++++
「皆さま、ごきげんよう」
「あっ、エマおはよー。てか今日寒いねー」
「本当ですわね。ですから、温かい物をと思って本日はこれを」
「わーお! この新聞紙で包まれた物はアレですな?」
「ええ。それから、これに合うお茶も取り寄せましたの」
「ぃやったあ!」
エマが抱えて持って来たアレというのが何かはわからないけど、お茶に合う美味しい物ならお菓子なのかな。それにしてもここ最近は本当に寒い。週末が一番寒かったけど、ピークを越えたって言ってもまだまだ寒いよね。お茶は2年生以上も貰えるなら嬉しいんだけど。
「美雪先輩、他の皆さまはまだお越しになられていないのでしょうか」
「あー、そうみたいだね。でもそのうち来るんじゃないかな?」
「でしたらお茶はいつでも淹れられるようにだけしておきましょう」
「えー! 早く食べようよ! せっかくのヤツが冷たくなっちゃうよー!」
「それが難点ですのよね。この部屋でも温め直しが出来るようオーブントースターなどを購入すべきかしら」
「エマ、サークル費のこともあるから!」
「ではわたくしが持ち込んで」
「大体、電気使い過ぎたら怒られるんだからさすがにそれはなし! 機材と暖房で電力的には手一杯だから」
エマは財力があるから本当に何でも実費で持ち込みかねないのが怖いところ。今の説明にも一応は納得してくれたけど、今度はまつりが不満気だ。大学祭が終わってからはもうすっかりアフタヌーンティーサークルなんだよね。これはこれでいいけど締まらないと言えば締まらない。
「ちなみにエマは何を持って来てくれたの?」
「たい焼きですのよ。これは星ヶ丘大学の戸田先輩から教えていただいた物ですの。一匹一匹が独立した型を用いて職人さんが手で焼いている、所謂天然ものと呼ばれる物で、今では珍しいたい焼きですの。もちろん味も最高ですのよ」
「へー、天然と養殖っていうのは聞いたことがあったけど、天然って本当にあったんだね」
「アタシたちは1回4人でそのお店に行ったんですけど、焼きたてのは皮がパリッパリで本っ当においしーんですよ!」
「だろうね~。あー、あたしも食べたいなあ。あんこも美味しいんだろうな~」
夏合宿の打ち上げでエマはつばめ先輩にかなり気に入られたらしく、今日も持って来てくれた美味しいたい焼きの店を教えてもらったり、大衆居酒屋のレクチャーと称して飲みに連れて行ってもらったりしてるらしい。他校の2コ上の先輩との絡みってよく考えたら全然ないよね普通って。
それでもお嬢様が崩れてないのがさすがなんだけど、1年生4人やABCにいるメンバーともまた違うつばめ先輩周辺の文化に触れるのはやっぱりエマには新鮮みたいで楽しんでいる様子。つばめ先輩のことはゲンゴローやマリンの話でしか知らないけど、バッサリあっさりした性格ではあるらしいんだよね?
「おはようございます」
「啓子先輩おはようございまーす」
「みんな何やってんの?」
「エマが差し入れでたい焼きを持って来てくれたんですけど、さすがに3人で先に食べちゃうのもなーと思って、早く誰か来ないかなーって待ってたところです」
「ああ本当。エマありがとうね。ちなみに、直はもうすぐ来るから。サドニナは課題がどうとかって言ってるのを聞いたから、あんまり期待しない方がいいと思う」
「そしたらお湯だけ沸かしちゃおうよ! それって緑のお茶だよね? 緑のお茶って確かアチアチのお湯じゃない方が美味しくなるんじゃなかったっけ!」
「ええ。ではそうしましょう」
「じゃアタシティファールに水入れて来るねー」
部室棟には一応飲用出来る水っていうのが出る蛇口もあるんだけど、それがまたちょっと遠いんだよね。だからこの季節には水を汲みに行くのも億劫になっちゃうんだけど、まつりは元気だなあって思う。体育会系の子ってそういうところでも強いのかもしれない。
「そう言えばエマってちとせと一緒の学科だったよね? 今日って一緒の授業とかじゃ無かったの?」
「ええ。わたくしは4限が休講になったのでたい焼きを買いに出たのですけれど、ちとせは通常通り授業があったかと」
「そうなんだ」
「今いるメンバーは何だかんだ早めでしたし、みんなそろそろですかねー。ABCは寒いから布団から出れないってタイプの人もいないですよね?」
「サドニナ以外多分大丈夫だと思うけど、みわは未知数としか」
「みわはお昼にお菓子をたくさん買い込んでいるのを見ましたわ。大学構内にはいるはずですのよ」
「みわは安定だなあ」
そう見るとABCってかなり優秀なのかもしれない。ミドリはバイトがないと曜日感覚も怪しいみたいなことを言ってたし、一応授業をサボってはいないけど寒くて朝が本当にギリギリみたいなことはよくあるから。寒いのには慣れてるんじゃないのって聞くと、長篠と星港は建物の耐寒性能やそもそも寒さの質が違うんだって。
「アタシとティファールと直先輩が来たよー!」
「おはよう」
「直クン先輩おはようございまーす」
「ティファールセットー!」
「ああ、まつりから聞いたよ。エマ、たい焼きを差し入れてくれたんだね。わあ、新聞紙に包まれてるのがレトロな雰囲気でいいね」
「エマ、3年生2人いるんだからそろそろ罪悪感も結構下降線に乗って来てると思う。そろそろオープンしよう」
「美雪先輩が仰るのであれば、開けましょうか」
end.
++++
青女とたい焼きと待てのお話。今の青女はまつりに結構機動力があって、口ではわーわー騒ぎながらもちゃんと動く子なんだと思う
サドニナは基本的に残念な感じで、授業も出てないことが多々。課題もなかなかに厳しめ。向島で言うところのヒロのポジション。
他校の2コ上の先輩との絡みはそうそうない事なので、MBCC×MMPの缶蹴り大会なんかは3コ上まで出て来て異常事態なのよ
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「皆さま、ごきげんよう」
「あっ、エマおはよー。てか今日寒いねー」
「本当ですわね。ですから、温かい物をと思って本日はこれを」
「わーお! この新聞紙で包まれた物はアレですな?」
「ええ。それから、これに合うお茶も取り寄せましたの」
「ぃやったあ!」
エマが抱えて持って来たアレというのが何かはわからないけど、お茶に合う美味しい物ならお菓子なのかな。それにしてもここ最近は本当に寒い。週末が一番寒かったけど、ピークを越えたって言ってもまだまだ寒いよね。お茶は2年生以上も貰えるなら嬉しいんだけど。
「美雪先輩、他の皆さまはまだお越しになられていないのでしょうか」
「あー、そうみたいだね。でもそのうち来るんじゃないかな?」
「でしたらお茶はいつでも淹れられるようにだけしておきましょう」
「えー! 早く食べようよ! せっかくのヤツが冷たくなっちゃうよー!」
「それが難点ですのよね。この部屋でも温め直しが出来るようオーブントースターなどを購入すべきかしら」
「エマ、サークル費のこともあるから!」
「ではわたくしが持ち込んで」
「大体、電気使い過ぎたら怒られるんだからさすがにそれはなし! 機材と暖房で電力的には手一杯だから」
エマは財力があるから本当に何でも実費で持ち込みかねないのが怖いところ。今の説明にも一応は納得してくれたけど、今度はまつりが不満気だ。大学祭が終わってからはもうすっかりアフタヌーンティーサークルなんだよね。これはこれでいいけど締まらないと言えば締まらない。
「ちなみにエマは何を持って来てくれたの?」
「たい焼きですのよ。これは星ヶ丘大学の戸田先輩から教えていただいた物ですの。一匹一匹が独立した型を用いて職人さんが手で焼いている、所謂天然ものと呼ばれる物で、今では珍しいたい焼きですの。もちろん味も最高ですのよ」
「へー、天然と養殖っていうのは聞いたことがあったけど、天然って本当にあったんだね」
「アタシたちは1回4人でそのお店に行ったんですけど、焼きたてのは皮がパリッパリで本っ当においしーんですよ!」
「だろうね~。あー、あたしも食べたいなあ。あんこも美味しいんだろうな~」
夏合宿の打ち上げでエマはつばめ先輩にかなり気に入られたらしく、今日も持って来てくれた美味しいたい焼きの店を教えてもらったり、大衆居酒屋のレクチャーと称して飲みに連れて行ってもらったりしてるらしい。他校の2コ上の先輩との絡みってよく考えたら全然ないよね普通って。
それでもお嬢様が崩れてないのがさすがなんだけど、1年生4人やABCにいるメンバーともまた違うつばめ先輩周辺の文化に触れるのはやっぱりエマには新鮮みたいで楽しんでいる様子。つばめ先輩のことはゲンゴローやマリンの話でしか知らないけど、バッサリあっさりした性格ではあるらしいんだよね?
「おはようございます」
「啓子先輩おはようございまーす」
「みんな何やってんの?」
「エマが差し入れでたい焼きを持って来てくれたんですけど、さすがに3人で先に食べちゃうのもなーと思って、早く誰か来ないかなーって待ってたところです」
「ああ本当。エマありがとうね。ちなみに、直はもうすぐ来るから。サドニナは課題がどうとかって言ってるのを聞いたから、あんまり期待しない方がいいと思う」
「そしたらお湯だけ沸かしちゃおうよ! それって緑のお茶だよね? 緑のお茶って確かアチアチのお湯じゃない方が美味しくなるんじゃなかったっけ!」
「ええ。ではそうしましょう」
「じゃアタシティファールに水入れて来るねー」
部室棟には一応飲用出来る水っていうのが出る蛇口もあるんだけど、それがまたちょっと遠いんだよね。だからこの季節には水を汲みに行くのも億劫になっちゃうんだけど、まつりは元気だなあって思う。体育会系の子ってそういうところでも強いのかもしれない。
「そう言えばエマってちとせと一緒の学科だったよね? 今日って一緒の授業とかじゃ無かったの?」
「ええ。わたくしは4限が休講になったのでたい焼きを買いに出たのですけれど、ちとせは通常通り授業があったかと」
「そうなんだ」
「今いるメンバーは何だかんだ早めでしたし、みんなそろそろですかねー。ABCは寒いから布団から出れないってタイプの人もいないですよね?」
「サドニナ以外多分大丈夫だと思うけど、みわは未知数としか」
「みわはお昼にお菓子をたくさん買い込んでいるのを見ましたわ。大学構内にはいるはずですのよ」
「みわは安定だなあ」
そう見るとABCってかなり優秀なのかもしれない。ミドリはバイトがないと曜日感覚も怪しいみたいなことを言ってたし、一応授業をサボってはいないけど寒くて朝が本当にギリギリみたいなことはよくあるから。寒いのには慣れてるんじゃないのって聞くと、長篠と星港は建物の耐寒性能やそもそも寒さの質が違うんだって。
「アタシとティファールと直先輩が来たよー!」
「おはよう」
「直クン先輩おはようございまーす」
「ティファールセットー!」
「ああ、まつりから聞いたよ。エマ、たい焼きを差し入れてくれたんだね。わあ、新聞紙に包まれてるのがレトロな雰囲気でいいね」
「エマ、3年生2人いるんだからそろそろ罪悪感も結構下降線に乗って来てると思う。そろそろオープンしよう」
「美雪先輩が仰るのであれば、開けましょうか」
end.
++++
青女とたい焼きと待てのお話。今の青女はまつりに結構機動力があって、口ではわーわー騒ぎながらもちゃんと動く子なんだと思う
サドニナは基本的に残念な感じで、授業も出てないことが多々。課題もなかなかに厳しめ。向島で言うところのヒロのポジション。
他校の2コ上の先輩との絡みはそうそうない事なので、MBCC×MMPの缶蹴り大会なんかは3コ上まで出て来て異常事態なのよ
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