2021(03)
■はさんでひらいて
++++
「おハナー! 誕生日おめでとー!」
「ユキちゃんありがとー」
「はいおみや。好きに食べてー」
「ハナちゃんおめでとう。これ、西海の洋食屋さんで売ってる食パンなんだよ。ふわふわ~っとして美味しいから、これも良かったら食べてー」
「ミドリもありがと。へー、確かにもういい匂い~。はいエージ、預かっといて」
「へーへー」
今日はハナちゃんの誕生日ということで、俺の部屋で誕生会という名目の飲み会が開かれる。ハナちゃんの部屋は豊葦の中でも立地が微妙ということでみんなで集まるには物凄く不向きなんだよね。俺も何回かしか行ったことがないし。
俺の部屋でやるパーティーということで、台所ではエイジが忙しそうに働いている。俺も何か手伝おうかと思っても、お前は邪魔だから部屋でも片付けとけと言われて現在に至る。確かに水回りのことは俺が出るよりエイジの方が土地勘もあるし、パーティーをやるにはちゃんとなるかも。
お客さんも少しずつ到着し始めている。お酒やソフトドリンクだったり、ちょっとした食べ物の差し入れだったり。そんな物が集まって、どんどんパーティー会場が彩られる。ハナちゃんの好きそうなお酒を用意してくれてたりね。イメージってヤツだね。
「タカティお邪魔しまーす」
「どうぞ」
「あっアオ。もう来てたんだね」
「予定より買い物が早く済んだから」
「アオは何を買ってきたの?」
「そこにある泡盛の瓶」
「……さすがだねえ」
「おハナに買ってくるんだったらこれが一番外さないと思って」
「あたしもお酒買おうかと思ったけど、誰かがやるだろうと思って外してよかったー」
「ユキちゃんは何を買ってきたの?」
「おハナにサンドイッチ作ってもらおうと思ってローストビーフだとか生ハムだとか。そのまま食べても美味しいし。で、ミドリが食パンね」
俺は焼酎を買ってきたのでアオが泡盛を買ってきたときにはカブらなくて良かったって思ったし、ハナちゃんに対するイメージはやっぱりそうなるよねえって思ったよね。でも、パンとかサンドイッチっていうのもイメージとしてはあるから、大体そんな感じで収束するのかな。
「お邪魔しまーすッ!」
「お邪魔します」
「おー、奈々、あやめ、来たべ」
「私たちもいるですよ」
「マリンにゲンゴローもいらっしゃーい」
「これ、丸の池公園のトコに新しく出来たパン屋さんの食パンッ! 食べて食べてーッ」
「ありがとー。今日は食パンの食べ比べが捗りそうだわー」
「えっ、もしかして食パンでカブったッ!?」
「店は違うから全然大丈夫だしサンドイッチの材料になるからありがたいよー」
「私はパンと合わせても良し、お酒に合わせても良しのお肉とソース」
「さすが肉食のあやめ」
「私とゲンゴローのおみやはこれですよ」
「つばめ先輩から教えてもらった、肉々しいサンドイッチと相性抜群のビールだね」
「そう! ハナはビールも好きなの! 星ヶ丘勢はわかってるなー」
「ハナのサンドイッチとビールは間違いないっていう」
みんなの差し入れが大体パンかお酒か肉っていうね。でも、星ヶ丘勢のビールは戸田先輩のおすすめっていう時点で普通に楽しみだし俺もその恩恵を受けたいんだけど、受けられるかな、どうかな?
「エイジ、そっちどんな感じ?」
「もうちょいしたらサンドイッチ出来るし、10分くらい待っといてもらって」
「って言うかハナの誕生会なのにハナが働くのってどーなの? しょぼんなんですけどー」
「お前のサンドイッチがなきゃ始まらねーべ。みんなそれを期待してんだし黙って働けっていう」
「しょぼーん」
「って言うか俺ちょっと気になったんだけど、エイジって人が握ったおにぎりとかダメじゃん」
「そうだな」
「おにぎりとサンドイッチって製造方法的に似たカテゴリの物だと思うんだけど、サンドイッチは大丈夫なの?」
「大丈夫ではないけど、誰がどんな風に作ってるかの方が重要だべ。ハナが作ってんのは食い慣れてるし全然大丈夫だっていう」
「へえ、そうなんだ」
「コイツは手洗いとかもちゃんとしてるべ」
まあ、俺の茹でたそうめんとかを普通に食べてるし、人の作った物が全部アウトってワケではないとは知ってたんだけど。ハナちゃんもオッケーのゾーンにはいたんだね。まあそうか。エイジとハナちゃんはサークル後とかに結構ご飯行ったりもしてるし仲はいいんだよね。
「お邪魔します」
「あっれ、壮平! って言うかオートロックは?」
「前に人がいたから一緒に潜り抜けた」
「つかお前が来るとは思わなかったっていう」
「まあ、たまにはね」
ハナちゃんの誕生会があるから良かったら来てねと一応壮平にも声はかけてたんだけど、本当に来てくれるとは思わなかった。壮平は俺たち4人の中では一番マイペースだし、インターフェイス関係の行事にも出たり出なかったりだから。みんなとは結構久し振りなんじゃないかな。
「えっと、お土産持参制度なんだよね」
「絶対じゃないけどあると嬉しいっていう感じで」
「壮平は何を持って来てくれたのー?」
「ハナの好みじゃないことは承知の上で」
「えっと、これは~……見た目に茶色いけど」
「ウィスキーだね。家主の好みで買ってきたよ」
「一応確認するけどハナちゃんの誕生会だよ?」
「わかってるよ。何だかんだ最後まで飲んでるのって家主だし。家を開放することに対するリターンがあってもいいじゃん」
「その理屈だと、仮に高木の誕生会が開かれたら何をどうするんだっていう」
「そうなったら、世話役のエージを労うビールとかになるだろうね」
じゃあそういうことで、と壮平は台所を抜けて部屋へと入っていった。祝われる主役じゃなくて、その会を支える人に対する労いの手土産か。なかなかそういう発想にはならないけど、確かにあってもいいなあって思ったよね。あと、高そうなお酒で普通に嬉しいっていうね。
「高木、とりあえず冷蔵庫ン中のビールとかチューハイとか適当に持ってっといてくれ」
「そうだね。うーん、冷蔵庫が見事に酒の缶だらけだ」
「明日の朝にはちゃんと空き缶も片付けるべ」
end.
++++
MBCC2年生の4人がちゃんと揃う話とかも一度はやってみたい。育ちゃんとユノ先輩を足して2で割ったような感じらしい壮平のキャラとは。
ハナちゃんへのイメージはみんな大体お酒かパンで統一されてるし、食パンの食べ比べは普通に楽しいのでダブりも歓迎。
星ヶ丘勢は自分たちはあまり飲まないけど先輩が酒に強いので情報戦が得意そうだね。つばちゃんは強いのよ
.
++++
「おハナー! 誕生日おめでとー!」
「ユキちゃんありがとー」
「はいおみや。好きに食べてー」
「ハナちゃんおめでとう。これ、西海の洋食屋さんで売ってる食パンなんだよ。ふわふわ~っとして美味しいから、これも良かったら食べてー」
「ミドリもありがと。へー、確かにもういい匂い~。はいエージ、預かっといて」
「へーへー」
今日はハナちゃんの誕生日ということで、俺の部屋で誕生会という名目の飲み会が開かれる。ハナちゃんの部屋は豊葦の中でも立地が微妙ということでみんなで集まるには物凄く不向きなんだよね。俺も何回かしか行ったことがないし。
俺の部屋でやるパーティーということで、台所ではエイジが忙しそうに働いている。俺も何か手伝おうかと思っても、お前は邪魔だから部屋でも片付けとけと言われて現在に至る。確かに水回りのことは俺が出るよりエイジの方が土地勘もあるし、パーティーをやるにはちゃんとなるかも。
お客さんも少しずつ到着し始めている。お酒やソフトドリンクだったり、ちょっとした食べ物の差し入れだったり。そんな物が集まって、どんどんパーティー会場が彩られる。ハナちゃんの好きそうなお酒を用意してくれてたりね。イメージってヤツだね。
「タカティお邪魔しまーす」
「どうぞ」
「あっアオ。もう来てたんだね」
「予定より買い物が早く済んだから」
「アオは何を買ってきたの?」
「そこにある泡盛の瓶」
「……さすがだねえ」
「おハナに買ってくるんだったらこれが一番外さないと思って」
「あたしもお酒買おうかと思ったけど、誰かがやるだろうと思って外してよかったー」
「ユキちゃんは何を買ってきたの?」
「おハナにサンドイッチ作ってもらおうと思ってローストビーフだとか生ハムだとか。そのまま食べても美味しいし。で、ミドリが食パンね」
俺は焼酎を買ってきたのでアオが泡盛を買ってきたときにはカブらなくて良かったって思ったし、ハナちゃんに対するイメージはやっぱりそうなるよねえって思ったよね。でも、パンとかサンドイッチっていうのもイメージとしてはあるから、大体そんな感じで収束するのかな。
「お邪魔しまーすッ!」
「お邪魔します」
「おー、奈々、あやめ、来たべ」
「私たちもいるですよ」
「マリンにゲンゴローもいらっしゃーい」
「これ、丸の池公園のトコに新しく出来たパン屋さんの食パンッ! 食べて食べてーッ」
「ありがとー。今日は食パンの食べ比べが捗りそうだわー」
「えっ、もしかして食パンでカブったッ!?」
「店は違うから全然大丈夫だしサンドイッチの材料になるからありがたいよー」
「私はパンと合わせても良し、お酒に合わせても良しのお肉とソース」
「さすが肉食のあやめ」
「私とゲンゴローのおみやはこれですよ」
「つばめ先輩から教えてもらった、肉々しいサンドイッチと相性抜群のビールだね」
「そう! ハナはビールも好きなの! 星ヶ丘勢はわかってるなー」
「ハナのサンドイッチとビールは間違いないっていう」
みんなの差し入れが大体パンかお酒か肉っていうね。でも、星ヶ丘勢のビールは戸田先輩のおすすめっていう時点で普通に楽しみだし俺もその恩恵を受けたいんだけど、受けられるかな、どうかな?
「エイジ、そっちどんな感じ?」
「もうちょいしたらサンドイッチ出来るし、10分くらい待っといてもらって」
「って言うかハナの誕生会なのにハナが働くのってどーなの? しょぼんなんですけどー」
「お前のサンドイッチがなきゃ始まらねーべ。みんなそれを期待してんだし黙って働けっていう」
「しょぼーん」
「って言うか俺ちょっと気になったんだけど、エイジって人が握ったおにぎりとかダメじゃん」
「そうだな」
「おにぎりとサンドイッチって製造方法的に似たカテゴリの物だと思うんだけど、サンドイッチは大丈夫なの?」
「大丈夫ではないけど、誰がどんな風に作ってるかの方が重要だべ。ハナが作ってんのは食い慣れてるし全然大丈夫だっていう」
「へえ、そうなんだ」
「コイツは手洗いとかもちゃんとしてるべ」
まあ、俺の茹でたそうめんとかを普通に食べてるし、人の作った物が全部アウトってワケではないとは知ってたんだけど。ハナちゃんもオッケーのゾーンにはいたんだね。まあそうか。エイジとハナちゃんはサークル後とかに結構ご飯行ったりもしてるし仲はいいんだよね。
「お邪魔します」
「あっれ、壮平! って言うかオートロックは?」
「前に人がいたから一緒に潜り抜けた」
「つかお前が来るとは思わなかったっていう」
「まあ、たまにはね」
ハナちゃんの誕生会があるから良かったら来てねと一応壮平にも声はかけてたんだけど、本当に来てくれるとは思わなかった。壮平は俺たち4人の中では一番マイペースだし、インターフェイス関係の行事にも出たり出なかったりだから。みんなとは結構久し振りなんじゃないかな。
「えっと、お土産持参制度なんだよね」
「絶対じゃないけどあると嬉しいっていう感じで」
「壮平は何を持って来てくれたのー?」
「ハナの好みじゃないことは承知の上で」
「えっと、これは~……見た目に茶色いけど」
「ウィスキーだね。家主の好みで買ってきたよ」
「一応確認するけどハナちゃんの誕生会だよ?」
「わかってるよ。何だかんだ最後まで飲んでるのって家主だし。家を開放することに対するリターンがあってもいいじゃん」
「その理屈だと、仮に高木の誕生会が開かれたら何をどうするんだっていう」
「そうなったら、世話役のエージを労うビールとかになるだろうね」
じゃあそういうことで、と壮平は台所を抜けて部屋へと入っていった。祝われる主役じゃなくて、その会を支える人に対する労いの手土産か。なかなかそういう発想にはならないけど、確かにあってもいいなあって思ったよね。あと、高そうなお酒で普通に嬉しいっていうね。
「高木、とりあえず冷蔵庫ン中のビールとかチューハイとか適当に持ってっといてくれ」
「そうだね。うーん、冷蔵庫が見事に酒の缶だらけだ」
「明日の朝にはちゃんと空き缶も片付けるべ」
end.
++++
MBCC2年生の4人がちゃんと揃う話とかも一度はやってみたい。育ちゃんとユノ先輩を足して2で割ったような感じらしい壮平のキャラとは。
ハナちゃんへのイメージはみんな大体お酒かパンで統一されてるし、食パンの食べ比べは普通に楽しいのでダブりも歓迎。
星ヶ丘勢は自分たちはあまり飲まないけど先輩が酒に強いので情報戦が得意そうだね。つばちゃんは強いのよ
.