2021(03)
■冬はあの子も駆け回る
++++
「おっはよーございまーす!」
「おはよう」
「あれっ、レナ今日は早いねー」
「4限が休講になったから」
「補講いつになるのか気になるねー」
「そうだね。個人的には5限の方がいいかな。土曜にわざわざ1コマのために来るのも面倒だし」
4限が休講になったから、少し早めにサークル室に来て機材を立ち上げさせてもらっていた。一昨日高木先輩から、今度の金曜日にやる番組についての打ち合わせを兼ねてパソコン上での音声ファイルの扱いなんかを少し教えてもらっていたからというのもある。
くるみは今日もとても元気だなと思う。普段使いのカバンの他には体育だったのかなっていう感じのナイロンバッグ、それからコンビニの袋を提げている。くるみは何事にも一生懸命で、持ち前の明るさで1年6人のムードメーカーになっている。
「くるみ今日体育だった?」
「ううん、これはジムセットだよ!」
「本当に頑張ってるね」
「秋冬のスイーツは本当に美味しいからね! でも、最近はジムで体を動かすのも習慣付いて来たかなって、体でわかるようになってきたよ」
「でもその分食べるんだよね」
「食べるために動いてるの」
緑ヶ丘大学の学内施設は本当に充実していて、くるみはこの頃ジムに通うようになっていた。趣味で撮っているスイーツ断面動画のために用意したお菓子は全部自分で美味しくいただいてるから、その分しっかり体がぷにぷにになってきたーって。
果林先輩に教わって簡単な筋トレもやってるみたいだし、習慣付いてきたなら現状維持は出来るのかな。でも、やらないよりはやった方が断然いいし、私も普段は運動なんか全然しないから、エレベーターを少し階段に変えるくらいのところから始めないと。
「そうそうレナ、これ見て!」
「クリスマスケーキの冊子だね。とっくにそういう時期か」
「あたし、コンビニ各社のこういう冊子を見ていくつかもう予約してあるんだけど、このカタログがさ~、親切なようであたしの楽しみをちょっと削いでるんだよ!」
「あ、断面図だね」
ケーキの冊子をぱらぱらとめくると、ホールの全体写真の他に断面の写真が既に掲載されている。そこにこれは何のスポンジだとか、何のソースとかムースとか、事細かに説明書きがしてあって味の想像がしやすくなっている。
「こういうのの必要性はすごくわかるんだよ。何の原材料で作られた何が入ってるのかが絵とか図で示されてないと怖くて買えないって人がいることも知ってるし」
「確かに表面だけじゃ中身はわかんないからね。それで苦手な物が入ってて食べられなかったらちょっとショックかも」
「でしょ? 断面動画ブロガー的にこれをどう見るかっていうところで。どれを割って開いたら「お~」っていう盛り上がりがありそうかっていう見込みは立てやすいんだけど、その分驚きが無くなっちゃってるし。ううん! 動画には動画ならではの強みがあるんだよ! ナイフの動きひとつとっても演出だもん! パカッと割ったときの感動は動画ならでは!」
「自分で解決しちゃったねえ」
「聞いてくれてありがとね!」
普段はこういう話を仲のいいすがやんやサキとしている印象があるんだけど、今日は水曜日ですがやんは向島に行ってるし、サキは5限に補講があるんだと言っていた。私もその話を聞くには聞いているけど、ちゃんと聞く機会は案外少なかったかもしれない。
「今それはカタログだけをもらってきた感じ?」
「ううん、いい時期だなーと思ってシュトレンを買ったんだよ」
「クリスマスまで数えながら切り分けて食べるヤツだよね」
「そうそう。レナ、食べたことある?」
「知ってはいるけど食べたことはまだないかな」
「そしたら食べてみなよ! レナは好きな味だと思うよ!」
「え、今開けるの?」
「はいどうぞ!」
「ありがとう。わざわざ開けなくてもよかったのに」
「あたしもちょっとつまみたかったしね」
「せっかく運動したのに」
「全部は食べないから!」
「あ、美味しい。ホントだね、私が好きな味だ」
「でしょ? コーヒーとかワインと一緒に食べてもいいんだって! あとは誰にお裾分けしたらいいかなー。果林先輩かな、シノかな」
「多分こういう味ってL先輩も好きなはず」
「へー、そうなんだ! でもL先輩あんまりいっぱい食べないから端の方の小さいのをあげようっと」
自分で切っていくのも楽しいけど、最初から切り分けられてるのも便利だよねえとくるみは真ん中の方の大きい切れ端を咀嚼しながら話す。ちゃんとしたのは確か日を追うごとに味が熟成されていくんだったっけ。日持ちしたはず。
「って言うかくるみ、コンビニのクリスマスケーキいくつか予約したって言ってたでしょ」
「うん。割り応えがありそうなのをいくつかね」
「それ、全部1人で食べるの…?」
「さすがのあたしでもそれはちょっと厳しいから、みちるちゃんの家でクリスマスパーティーやることになってて、そこに持って行って食べるよ。動画撮影に使う物だから北星にも食べるの手伝ってもらって」
「そっか、くるみでもさすがに全部は1人じゃ食べれないよね」
「えっ、あたし全部食べると思われてた!?」
「スイーツだから食べれちゃうかなとは思った」
「全部食べてみたいけど、さすがに胃袋がパンパンになっちゃうよ。果林先輩並の胃袋だったら食べれるんだろうけどね。でも果林先輩ってあれだけ食べるのに全っ然太らないのスゴくない!?」
「体質が常人離れしてるんだろうけど、元々代謝もいいんだろうね」
「やっぱり代謝なんだなー。あたしも代謝上げたーい」
end.
++++
レナくるがきゃっきゃしてる話。1年女子だけで話してる話は何気に初めてかもしれない。仲はいいけどやってないだけ
学祭でペアを組んでたって話もあるくらいだしその頃には打ち合わせとかもガンガンやってたのかな。それも見てみたい
今年のみちる宅ケーキ食べる大会はどうなるのかな。例によって彩人が地獄を見るんだろうけど。
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「おっはよーございまーす!」
「おはよう」
「あれっ、レナ今日は早いねー」
「4限が休講になったから」
「補講いつになるのか気になるねー」
「そうだね。個人的には5限の方がいいかな。土曜にわざわざ1コマのために来るのも面倒だし」
4限が休講になったから、少し早めにサークル室に来て機材を立ち上げさせてもらっていた。一昨日高木先輩から、今度の金曜日にやる番組についての打ち合わせを兼ねてパソコン上での音声ファイルの扱いなんかを少し教えてもらっていたからというのもある。
くるみは今日もとても元気だなと思う。普段使いのカバンの他には体育だったのかなっていう感じのナイロンバッグ、それからコンビニの袋を提げている。くるみは何事にも一生懸命で、持ち前の明るさで1年6人のムードメーカーになっている。
「くるみ今日体育だった?」
「ううん、これはジムセットだよ!」
「本当に頑張ってるね」
「秋冬のスイーツは本当に美味しいからね! でも、最近はジムで体を動かすのも習慣付いて来たかなって、体でわかるようになってきたよ」
「でもその分食べるんだよね」
「食べるために動いてるの」
緑ヶ丘大学の学内施設は本当に充実していて、くるみはこの頃ジムに通うようになっていた。趣味で撮っているスイーツ断面動画のために用意したお菓子は全部自分で美味しくいただいてるから、その分しっかり体がぷにぷにになってきたーって。
果林先輩に教わって簡単な筋トレもやってるみたいだし、習慣付いてきたなら現状維持は出来るのかな。でも、やらないよりはやった方が断然いいし、私も普段は運動なんか全然しないから、エレベーターを少し階段に変えるくらいのところから始めないと。
「そうそうレナ、これ見て!」
「クリスマスケーキの冊子だね。とっくにそういう時期か」
「あたし、コンビニ各社のこういう冊子を見ていくつかもう予約してあるんだけど、このカタログがさ~、親切なようであたしの楽しみをちょっと削いでるんだよ!」
「あ、断面図だね」
ケーキの冊子をぱらぱらとめくると、ホールの全体写真の他に断面の写真が既に掲載されている。そこにこれは何のスポンジだとか、何のソースとかムースとか、事細かに説明書きがしてあって味の想像がしやすくなっている。
「こういうのの必要性はすごくわかるんだよ。何の原材料で作られた何が入ってるのかが絵とか図で示されてないと怖くて買えないって人がいることも知ってるし」
「確かに表面だけじゃ中身はわかんないからね。それで苦手な物が入ってて食べられなかったらちょっとショックかも」
「でしょ? 断面動画ブロガー的にこれをどう見るかっていうところで。どれを割って開いたら「お~」っていう盛り上がりがありそうかっていう見込みは立てやすいんだけど、その分驚きが無くなっちゃってるし。ううん! 動画には動画ならではの強みがあるんだよ! ナイフの動きひとつとっても演出だもん! パカッと割ったときの感動は動画ならでは!」
「自分で解決しちゃったねえ」
「聞いてくれてありがとね!」
普段はこういう話を仲のいいすがやんやサキとしている印象があるんだけど、今日は水曜日ですがやんは向島に行ってるし、サキは5限に補講があるんだと言っていた。私もその話を聞くには聞いているけど、ちゃんと聞く機会は案外少なかったかもしれない。
「今それはカタログだけをもらってきた感じ?」
「ううん、いい時期だなーと思ってシュトレンを買ったんだよ」
「クリスマスまで数えながら切り分けて食べるヤツだよね」
「そうそう。レナ、食べたことある?」
「知ってはいるけど食べたことはまだないかな」
「そしたら食べてみなよ! レナは好きな味だと思うよ!」
「え、今開けるの?」
「はいどうぞ!」
「ありがとう。わざわざ開けなくてもよかったのに」
「あたしもちょっとつまみたかったしね」
「せっかく運動したのに」
「全部は食べないから!」
「あ、美味しい。ホントだね、私が好きな味だ」
「でしょ? コーヒーとかワインと一緒に食べてもいいんだって! あとは誰にお裾分けしたらいいかなー。果林先輩かな、シノかな」
「多分こういう味ってL先輩も好きなはず」
「へー、そうなんだ! でもL先輩あんまりいっぱい食べないから端の方の小さいのをあげようっと」
自分で切っていくのも楽しいけど、最初から切り分けられてるのも便利だよねえとくるみは真ん中の方の大きい切れ端を咀嚼しながら話す。ちゃんとしたのは確か日を追うごとに味が熟成されていくんだったっけ。日持ちしたはず。
「って言うかくるみ、コンビニのクリスマスケーキいくつか予約したって言ってたでしょ」
「うん。割り応えがありそうなのをいくつかね」
「それ、全部1人で食べるの…?」
「さすがのあたしでもそれはちょっと厳しいから、みちるちゃんの家でクリスマスパーティーやることになってて、そこに持って行って食べるよ。動画撮影に使う物だから北星にも食べるの手伝ってもらって」
「そっか、くるみでもさすがに全部は1人じゃ食べれないよね」
「えっ、あたし全部食べると思われてた!?」
「スイーツだから食べれちゃうかなとは思った」
「全部食べてみたいけど、さすがに胃袋がパンパンになっちゃうよ。果林先輩並の胃袋だったら食べれるんだろうけどね。でも果林先輩ってあれだけ食べるのに全っ然太らないのスゴくない!?」
「体質が常人離れしてるんだろうけど、元々代謝もいいんだろうね」
「やっぱり代謝なんだなー。あたしも代謝上げたーい」
end.
++++
レナくるがきゃっきゃしてる話。1年女子だけで話してる話は何気に初めてかもしれない。仲はいいけどやってないだけ
学祭でペアを組んでたって話もあるくらいだしその頃には打ち合わせとかもガンガンやってたのかな。それも見てみたい
今年のみちる宅ケーキ食べる大会はどうなるのかな。例によって彩人が地獄を見るんだろうけど。
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