2021(03)
■あららら赤裸々
++++
「高木さーん、星ヶ丘部隊っすー」
「いらっしゃ……わっ、すごい荷物だね」
「お邪魔します」
「えっと、鍋の具材の野菜にしては多くない?」
「これでも一応俺らで分けた結果っす」
「とりあえず、この辺に置いといてもらえれば」
今日はどういった成り行きか、彩人とみちる、それから朝霞先輩という星ヶ丘の人たちを迎えてうちで鍋をすることになっていた。それっていうのも、みちるが農学部の人から定期的にもらっているっていう野菜なんだよね。
それが結構な量あるのでお裾分けをどうぞと少しずつ俺もおこぼれをもらうようになってたんだけど、まさか3人がかりで運ぶ量が来るとは思わないと言うか。今日の鍋でいくらか食べることを考えたとしても多すぎる。どうしようかな。後で誰かに相談しよう。
「高木さん、台所借りれます?」
「いいよー」
「じゃ、俺とみちるでちゃちゃっと準備するんで先輩らは待っといてください」
「そう? そしたら俺は部屋の方を準備するんで、朝霞先輩は待機してもらって」
「いやいや、俺も手伝うよ」
台所と部屋でそれぞれ準備をして、しばらくすれば鍋パーティーの会場がしっかりと出来上がる。今回は冬野菜が多いようで、大根や白菜、ニンジンにカボチャ、サツマイモにゴボウなどなど。これらをどうすればまとまるのかと考えたときに、味噌で煮込もうということになった。
「……豚汁だな」
「豚汁ですね」
「まあ、美味いだろうし食べるか。彩人、みちる、サンキュ」
「ビールの用意もオッケーです」
「それじゃあいただきますか」
豚汁……もとい、ごった煮の鍋をつつくんだけど、これが何と言うか間違いないと言うか安定の美味しさと言うか。まあ美味しいですよねー。一応は鍋なので、シメにうどんは用意してあるし追加用の豚肉も積んではあるんだ。鍋の何がいいって暖房をつけなくていいところだ。
この鍋は言ってしまえば味噌汁なので、みんなご飯が欲しくなる。でも、ご飯用のお茶椀は2人分しかないので朝霞先輩とみちるに使ってもらって、俺と彩人の分は適当な小皿にそれらしく盛る。食べれればいいんだから。味噌味の汁物はご飯が進むね。
「そういや、朝霞さん最近彼女さんとはどうなんです?」
「ちょっと前に振られた」
「え、マジすか!? それは話振っちゃってスイマセン!」
「まあ、いいんだよ。俺が悪いんだろうし」
「ちなみに、何で振られたんすか?」
「掻い摘むと、何やってても書き物に繋がるのと、俺に性欲がなさ過ぎたことが大きな原因だな」
「はー……それはドンマイっす」
「ところで高木君、そっちにリク君ているでしょ?」
「ああはい、ササですね」
「あの子の顔、大丈夫そう? 最近怪我してたでしょ」
「ああ……何か殴られたような傷になってましたね。一応ガーゼは取れましたし大丈夫なんじゃないですかね。朝霞先輩、ササのことを知ってるんですか?」
「いやー、ちょっと」
「今いる人全員俺とリクの関係知ってるんで経緯を説明させてもらうと、リクが俺の部屋に来てた時にちょっと事故ったと言うか。俺がリクに襲われてると思った朝霞さんが飛んで来てくれて」
「俺は彩人とリク君がそんな関係だと知らないモンだから、何してやがるこの野郎っつって思いっ切りぶん殴ったんだよな」
「あー……」
こないだガーゼを付けて来てた顔の傷については俺もササには「大丈夫?」って聞いてたんだけど、そんな経緯があったのかと。付き合ってる相手と甘いムードに持ち込みたかったササと、彩人のトラウマを知ってた朝霞先輩の守らないとって気持ちがぶつかった結果だったようだ。
「これは事故ですね」
「朝霞さんにぶん殴られてリクももうヤるどころじゃなくなって、パンツ穿いてやり始めたことが部屋の模様替えっていう」
「模様替え?」
「せめてもの防音対策な」
「ああ。でも、彩人の部屋って両隣に人が住んでるよね。どっちに対する防音を優先するとか」
「それは、303の方を優先させてもらって」
「いや、うちはいいのかよ」
「朝霞さんは朝霞さんの部屋からの防音が強いと信じてっす」
「まあ、お前に壁ドンされてた時に対策は取ったからな」
「そ~れは言わない約束じゃないすか~!」
「堪え性がないんだよなお前は。つか、俺だったからまだ良かったけど303の住人に文句言われてたら完全に負ける事案だぞ。あんなクソデカい声で泣き叫んでたら只事じゃないって思うだろ」
「それは確かにそうっすけど、それ、こないだ聞いたっす」
「でもあんなのが本来受け入れる用途にない器官に入って来んのかって思うとめちゃくちゃ怖くなる気持ちはわからないでもない」
「つか朝霞さん結構飲みました?」
「これくらいならまだ序の口だろ」
「いや、めちゃ飲んでるじゃんか……」
「うるせーな熱いモン食う時に冷たいモンは必須だろーがよ!」
「あーあーあーわかったわかったっす!」
「結局、その後ササとは出来た?」
「シたけどみちるお前それ人前で言うことではない」
「とは言いながらちゃんと答えてくれるところが律儀だね彩人。ヨかった?」
「ドロドロにされた……」
「あんだけ泣き叫んでたのに大丈夫だったか?」
「今回は覚悟決めてたんで大丈夫だったっす」
うっすら思ってたけど星ヶ丘の皆さんがいい具合に出来上がって来てるんだよね。なかなか生々しいリアルな恋愛事情の話に入って行くと俺は存在感が完全に消えるんだけど、朝霞先輩の持っている研究の脇道の話っていう話にはそんな世界があるのかと俺たちはほえーと聞くしか出来ないし。
「つか、脱童貞より先に処女じゃなくなるとは想像しなくないすか?」
「まあ、一般にはな。男に抱かれるとは思わない」
「平気だって彩人。私も男に抱かれるよりは女の子を抱く方が先だったし何でもアリアリ」
「さすみち」
「高木君、飲んでる?」
「あ、はい。飲んでます」
「静かだから大丈夫かなーと思ったけど、大丈夫ならよかった」
「話が俺には異次元過ぎて付いていけませんでした」
end.
++++
多分これをもっと下衆い感じにしたのが向島の極悪三人衆だと思うの。おじちゃんお姉さま圭斗さんの
果林に作ってもらった野菜たっぷりミネストローネの話が去年で、それに至る経緯としての鍋大会が今年の話。
みちるが完全に大人しい荒川さんじゃなくてすっぴんのモードで話してるんだよなあ。まあPさんとTKGだったら問題ないのか
.
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「高木さーん、星ヶ丘部隊っすー」
「いらっしゃ……わっ、すごい荷物だね」
「お邪魔します」
「えっと、鍋の具材の野菜にしては多くない?」
「これでも一応俺らで分けた結果っす」
「とりあえず、この辺に置いといてもらえれば」
今日はどういった成り行きか、彩人とみちる、それから朝霞先輩という星ヶ丘の人たちを迎えてうちで鍋をすることになっていた。それっていうのも、みちるが農学部の人から定期的にもらっているっていう野菜なんだよね。
それが結構な量あるのでお裾分けをどうぞと少しずつ俺もおこぼれをもらうようになってたんだけど、まさか3人がかりで運ぶ量が来るとは思わないと言うか。今日の鍋でいくらか食べることを考えたとしても多すぎる。どうしようかな。後で誰かに相談しよう。
「高木さん、台所借りれます?」
「いいよー」
「じゃ、俺とみちるでちゃちゃっと準備するんで先輩らは待っといてください」
「そう? そしたら俺は部屋の方を準備するんで、朝霞先輩は待機してもらって」
「いやいや、俺も手伝うよ」
台所と部屋でそれぞれ準備をして、しばらくすれば鍋パーティーの会場がしっかりと出来上がる。今回は冬野菜が多いようで、大根や白菜、ニンジンにカボチャ、サツマイモにゴボウなどなど。これらをどうすればまとまるのかと考えたときに、味噌で煮込もうということになった。
「……豚汁だな」
「豚汁ですね」
「まあ、美味いだろうし食べるか。彩人、みちる、サンキュ」
「ビールの用意もオッケーです」
「それじゃあいただきますか」
豚汁……もとい、ごった煮の鍋をつつくんだけど、これが何と言うか間違いないと言うか安定の美味しさと言うか。まあ美味しいですよねー。一応は鍋なので、シメにうどんは用意してあるし追加用の豚肉も積んではあるんだ。鍋の何がいいって暖房をつけなくていいところだ。
この鍋は言ってしまえば味噌汁なので、みんなご飯が欲しくなる。でも、ご飯用のお茶椀は2人分しかないので朝霞先輩とみちるに使ってもらって、俺と彩人の分は適当な小皿にそれらしく盛る。食べれればいいんだから。味噌味の汁物はご飯が進むね。
「そういや、朝霞さん最近彼女さんとはどうなんです?」
「ちょっと前に振られた」
「え、マジすか!? それは話振っちゃってスイマセン!」
「まあ、いいんだよ。俺が悪いんだろうし」
「ちなみに、何で振られたんすか?」
「掻い摘むと、何やってても書き物に繋がるのと、俺に性欲がなさ過ぎたことが大きな原因だな」
「はー……それはドンマイっす」
「ところで高木君、そっちにリク君ているでしょ?」
「ああはい、ササですね」
「あの子の顔、大丈夫そう? 最近怪我してたでしょ」
「ああ……何か殴られたような傷になってましたね。一応ガーゼは取れましたし大丈夫なんじゃないですかね。朝霞先輩、ササのことを知ってるんですか?」
「いやー、ちょっと」
「今いる人全員俺とリクの関係知ってるんで経緯を説明させてもらうと、リクが俺の部屋に来てた時にちょっと事故ったと言うか。俺がリクに襲われてると思った朝霞さんが飛んで来てくれて」
「俺は彩人とリク君がそんな関係だと知らないモンだから、何してやがるこの野郎っつって思いっ切りぶん殴ったんだよな」
「あー……」
こないだガーゼを付けて来てた顔の傷については俺もササには「大丈夫?」って聞いてたんだけど、そんな経緯があったのかと。付き合ってる相手と甘いムードに持ち込みたかったササと、彩人のトラウマを知ってた朝霞先輩の守らないとって気持ちがぶつかった結果だったようだ。
「これは事故ですね」
「朝霞さんにぶん殴られてリクももうヤるどころじゃなくなって、パンツ穿いてやり始めたことが部屋の模様替えっていう」
「模様替え?」
「せめてもの防音対策な」
「ああ。でも、彩人の部屋って両隣に人が住んでるよね。どっちに対する防音を優先するとか」
「それは、303の方を優先させてもらって」
「いや、うちはいいのかよ」
「朝霞さんは朝霞さんの部屋からの防音が強いと信じてっす」
「まあ、お前に壁ドンされてた時に対策は取ったからな」
「そ~れは言わない約束じゃないすか~!」
「堪え性がないんだよなお前は。つか、俺だったからまだ良かったけど303の住人に文句言われてたら完全に負ける事案だぞ。あんなクソデカい声で泣き叫んでたら只事じゃないって思うだろ」
「それは確かにそうっすけど、それ、こないだ聞いたっす」
「でもあんなのが本来受け入れる用途にない器官に入って来んのかって思うとめちゃくちゃ怖くなる気持ちはわからないでもない」
「つか朝霞さん結構飲みました?」
「これくらいならまだ序の口だろ」
「いや、めちゃ飲んでるじゃんか……」
「うるせーな熱いモン食う時に冷たいモンは必須だろーがよ!」
「あーあーあーわかったわかったっす!」
「結局、その後ササとは出来た?」
「シたけどみちるお前それ人前で言うことではない」
「とは言いながらちゃんと答えてくれるところが律儀だね彩人。ヨかった?」
「ドロドロにされた……」
「あんだけ泣き叫んでたのに大丈夫だったか?」
「今回は覚悟決めてたんで大丈夫だったっす」
うっすら思ってたけど星ヶ丘の皆さんがいい具合に出来上がって来てるんだよね。なかなか生々しいリアルな恋愛事情の話に入って行くと俺は存在感が完全に消えるんだけど、朝霞先輩の持っている研究の脇道の話っていう話にはそんな世界があるのかと俺たちはほえーと聞くしか出来ないし。
「つか、脱童貞より先に処女じゃなくなるとは想像しなくないすか?」
「まあ、一般にはな。男に抱かれるとは思わない」
「平気だって彩人。私も男に抱かれるよりは女の子を抱く方が先だったし何でもアリアリ」
「さすみち」
「高木君、飲んでる?」
「あ、はい。飲んでます」
「静かだから大丈夫かなーと思ったけど、大丈夫ならよかった」
「話が俺には異次元過ぎて付いていけませんでした」
end.
++++
多分これをもっと下衆い感じにしたのが向島の極悪三人衆だと思うの。おじちゃんお姉さま圭斗さんの
果林に作ってもらった野菜たっぷりミネストローネの話が去年で、それに至る経緯としての鍋大会が今年の話。
みちるが完全に大人しい荒川さんじゃなくてすっぴんのモードで話してるんだよなあ。まあPさんとTKGだったら問題ないのか
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