2021(03)
■Winning the first prize
++++
「さて、手元には8枚の抽選券があるワケだけれども」
「やりますか」
「やりましょう」
「シたら、1人2枚ッつーコトで」
水曜日ですがやんの番組収録だと思っていたときに、空MDを誰も持っていないことに気付いてしまった愚民集団MMPであった。ただ、いつもと違うところは車のあるすがやんがいるということで、無ければ買いに行けばいいじゃないと徒歩15分の道のりを躊躇なく下れることだ。
純粋に買い物をする律とドライバーのすがやん、それから腹が減ったという理由でついて来た賑やかしの俺とカノンは購買へ。購買の前で鐘がカランカランと鳴っていると冬だなあと感じるくらいには恒例イベントになっているガラポン抽選会も開かれている。
MDと俺たちの間食くらいでは精々抽選券は1枚にしかならなかったのだけど、そこにたまたま大量に買ったCDを引き取りに菜月先輩がいらっしゃったんだよな。菜月先輩から抽選券を7枚譲り受け、俺たちは戦場の前にいるのである。ちなみに抽選券は2000円で1枚もらえる計算だ。菜月先輩なら序の口だな!
「自分が狙うとすりャ学食のお食事券スかねェー」
「りっちゃん先輩頑張って下さい!」
景品は上から夢の国ペア旅行券、大人気ゲーム機、緑風産の新米5キロ、購買で使える文房具券2000円分、学食で使えるお食事券1000円分、そして参加賞の駄菓子詰め合わせだ。去年はここで律が米5キロを当ててカレーパーティーの開催に漕ぎ付けたのだけど、今年は誰かが何かを当てられるのか。
「やァー、テキトーに回せばこンなモンすわ」
「見事に駄菓子だな。さすがに2年連続は当たらなかったか」
「次、野坂が回せばいーンでないスか?」
「よーし、俺は……うーん、堅実に4等以下を狙って行こう」
「えー! 野坂先輩夢の国は狙わないんすか!?」
「カノンが陰キャ集団MMPに何を求めているというのか、意味がわからない」
「カノン、ゆーて野坂もこんなモンすよ」
俺は夢の国にきゃいきゃいとはしゃぐ性質ではないし一緒に行く相手もない。もしこれが夢の国ではなくもう一方の西の方のヤツであればまだ一緒に行きたい相手もいたのだけど、東の夢の国は~ダメだ。ゲーム機は持っているし、米を当てても持ち帰るのが重労働。それなら4等以下の券が欲しい。
「おー。野坂、見事狙い通り文房具券スね」
「これは派手に嬉しいぞ。学生たるもの、文房具の需要はいつだってあるからな」
「MMPの中だったら当たるべき人に当たったって感じっすね」
「次、どっち先やるカノン」
「そしたら俺やろうかな! 待ってろすがやん、俺が夢の国行きのチケットを当てるぜ!」
「頑張れカノン」
カノンは1等の夢の国ペア旅行券を狙っているようだった。一緒に行きたい特定の相手がいるとかではなく単純にそういうテーマパークが好きで、当てたら一緒に行こうぜと今ここですがやんと約束をしている辺りが真っ直ぐだなあと感心する愚民の3年であった。
「よーし、回すぜー! 2枚でお願いします!」
「はい、それじゃあゆっくり回してくださいね」
「うおー!」
「どうだ?」
「あー、これは6等っすね」
「マジか! 駄菓子か! 美味いけどそれじゃない!」
「ラス1すよカノン」
「わーってます! うらぁあああ!」
――と、激しく回したところでぽとりと落ちて来るのは6等の白い玉でしたとさ。夢の国ペア旅行券が当たらなくてカノンは意気消沈といった様子だし、すがやんごめんなーと謝っているのだけど、多分すがやんは最初から当たると思ってないから金を貯めていつか行こうなーと流している。
そして最後の2枚はすがやんに託された。とは言えすがやんは向島大学の食堂などにはあまり用事がないしここで買って帰れる文房具券なんかを狙って行くのが堅実な道になるのだろうか。カノンのリベンジと言って夢の国を狙うのはあまりに非現実的だ。
「よーし、そしたら、回させてもらいます。あ、2枚お願いします」
「すがや~ん、俺の敵を討ってくれ~!」
「がんばれース」
「そーれ」
「おお~っ」
カランカランカランと鐘が高らかに鳴り響き、この緑色の玉は何等だと表を見る。さっき俺が4等の文房具券を当てた時より鐘の鳴らし方がめでたいような感じだから、3等以上か。でも、緑ってことは1等ではないだろう。それにしたって当たりは当たりだ。
「3等の緑風産の新米5キロ、大当たり~」
「おー、米っすか」
「言ってすがやんは車なンで持ち帰るのもさほど苦ではナイと思いヤすよ」
「米かー。去年だったらカレパの流れだったな」
「それスね。ま、今年は誰がカレーを作るンだっつー話になりヤすし、米を当てたのがすがやんで良かったスね。シたら、サークル室に戻って番組録りヤしょーか」
「はーい」
「やー、夢の国旅行券当てたかったなぁ~」
「まあ、どうせなら当てたかったけど、抽選会自体始まったばっかりで上の方もあんまり出てなさそうだったもんな。俺のこの米ってどうするのが正解なんすかね?」
「すがやんが当てた物スし、好きにしてもらえばいースよ」
手元に山積みになった駄菓子はサークル室に戻ってからみんなにも分配しつつ、番組をやるメンバーは収録をするということで改めてすがやんの車に乗り込む。向島大学冬の風物詩だけど、米以上の物が当たっているのを見たことがないのだが? 本当に入ってるんですかね?
end.
++++
毎度お馴染み向島の抽選会です。去年は菜月さんが抽選券をくれたところなどをやってましたが今年は抽選編。
カノンがガラガラを回す勢いなんかがめっちゃギュルギュル回してそうだなと。すがやんはまあまあ落ち着いてる。
米の銘柄なんかは家によってこだわりがあったりなかったりするし、結局開けるタイミングがなかったのかしら
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「さて、手元には8枚の抽選券があるワケだけれども」
「やりますか」
「やりましょう」
「シたら、1人2枚ッつーコトで」
水曜日ですがやんの番組収録だと思っていたときに、空MDを誰も持っていないことに気付いてしまった愚民集団MMPであった。ただ、いつもと違うところは車のあるすがやんがいるということで、無ければ買いに行けばいいじゃないと徒歩15分の道のりを躊躇なく下れることだ。
純粋に買い物をする律とドライバーのすがやん、それから腹が減ったという理由でついて来た賑やかしの俺とカノンは購買へ。購買の前で鐘がカランカランと鳴っていると冬だなあと感じるくらいには恒例イベントになっているガラポン抽選会も開かれている。
MDと俺たちの間食くらいでは精々抽選券は1枚にしかならなかったのだけど、そこにたまたま大量に買ったCDを引き取りに菜月先輩がいらっしゃったんだよな。菜月先輩から抽選券を7枚譲り受け、俺たちは戦場の前にいるのである。ちなみに抽選券は2000円で1枚もらえる計算だ。菜月先輩なら序の口だな!
「自分が狙うとすりャ学食のお食事券スかねェー」
「りっちゃん先輩頑張って下さい!」
景品は上から夢の国ペア旅行券、大人気ゲーム機、緑風産の新米5キロ、購買で使える文房具券2000円分、学食で使えるお食事券1000円分、そして参加賞の駄菓子詰め合わせだ。去年はここで律が米5キロを当ててカレーパーティーの開催に漕ぎ付けたのだけど、今年は誰かが何かを当てられるのか。
「やァー、テキトーに回せばこンなモンすわ」
「見事に駄菓子だな。さすがに2年連続は当たらなかったか」
「次、野坂が回せばいーンでないスか?」
「よーし、俺は……うーん、堅実に4等以下を狙って行こう」
「えー! 野坂先輩夢の国は狙わないんすか!?」
「カノンが陰キャ集団MMPに何を求めているというのか、意味がわからない」
「カノン、ゆーて野坂もこんなモンすよ」
俺は夢の国にきゃいきゃいとはしゃぐ性質ではないし一緒に行く相手もない。もしこれが夢の国ではなくもう一方の西の方のヤツであればまだ一緒に行きたい相手もいたのだけど、東の夢の国は~ダメだ。ゲーム機は持っているし、米を当てても持ち帰るのが重労働。それなら4等以下の券が欲しい。
「おー。野坂、見事狙い通り文房具券スね」
「これは派手に嬉しいぞ。学生たるもの、文房具の需要はいつだってあるからな」
「MMPの中だったら当たるべき人に当たったって感じっすね」
「次、どっち先やるカノン」
「そしたら俺やろうかな! 待ってろすがやん、俺が夢の国行きのチケットを当てるぜ!」
「頑張れカノン」
カノンは1等の夢の国ペア旅行券を狙っているようだった。一緒に行きたい特定の相手がいるとかではなく単純にそういうテーマパークが好きで、当てたら一緒に行こうぜと今ここですがやんと約束をしている辺りが真っ直ぐだなあと感心する愚民の3年であった。
「よーし、回すぜー! 2枚でお願いします!」
「はい、それじゃあゆっくり回してくださいね」
「うおー!」
「どうだ?」
「あー、これは6等っすね」
「マジか! 駄菓子か! 美味いけどそれじゃない!」
「ラス1すよカノン」
「わーってます! うらぁあああ!」
――と、激しく回したところでぽとりと落ちて来るのは6等の白い玉でしたとさ。夢の国ペア旅行券が当たらなくてカノンは意気消沈といった様子だし、すがやんごめんなーと謝っているのだけど、多分すがやんは最初から当たると思ってないから金を貯めていつか行こうなーと流している。
そして最後の2枚はすがやんに託された。とは言えすがやんは向島大学の食堂などにはあまり用事がないしここで買って帰れる文房具券なんかを狙って行くのが堅実な道になるのだろうか。カノンのリベンジと言って夢の国を狙うのはあまりに非現実的だ。
「よーし、そしたら、回させてもらいます。あ、2枚お願いします」
「すがや~ん、俺の敵を討ってくれ~!」
「がんばれース」
「そーれ」
「おお~っ」
カランカランカランと鐘が高らかに鳴り響き、この緑色の玉は何等だと表を見る。さっき俺が4等の文房具券を当てた時より鐘の鳴らし方がめでたいような感じだから、3等以上か。でも、緑ってことは1等ではないだろう。それにしたって当たりは当たりだ。
「3等の緑風産の新米5キロ、大当たり~」
「おー、米っすか」
「言ってすがやんは車なンで持ち帰るのもさほど苦ではナイと思いヤすよ」
「米かー。去年だったらカレパの流れだったな」
「それスね。ま、今年は誰がカレーを作るンだっつー話になりヤすし、米を当てたのがすがやんで良かったスね。シたら、サークル室に戻って番組録りヤしょーか」
「はーい」
「やー、夢の国旅行券当てたかったなぁ~」
「まあ、どうせなら当てたかったけど、抽選会自体始まったばっかりで上の方もあんまり出てなさそうだったもんな。俺のこの米ってどうするのが正解なんすかね?」
「すがやんが当てた物スし、好きにしてもらえばいースよ」
手元に山積みになった駄菓子はサークル室に戻ってからみんなにも分配しつつ、番組をやるメンバーは収録をするということで改めてすがやんの車に乗り込む。向島大学冬の風物詩だけど、米以上の物が当たっているのを見たことがないのだが? 本当に入ってるんですかね?
end.
++++
毎度お馴染み向島の抽選会です。去年は菜月さんが抽選券をくれたところなどをやってましたが今年は抽選編。
カノンがガラガラを回す勢いなんかがめっちゃギュルギュル回してそうだなと。すがやんはまあまあ落ち着いてる。
米の銘柄なんかは家によってこだわりがあったりなかったりするし、結局開けるタイミングがなかったのかしら
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