2021(03)
■ハードワーカーと天才
++++
「あ~俺って天才、マジ天才、すげーわ~」
「カンノが何か言っているぞ」
「まあ、いつものことだから」
年末、大晦日の夜に青山さん主催で行われる音楽祭に向け、USDXで元々バンドなどをやっている面々で新たにmish-mashというバンドを結成することになった。USDXは一応ネット上で顔などを出さずにやっている活動だし、その名前だとあとの2人はどうなるという問題もあったからだ。
バンド形態としては鍵盤が2人いることを生かした曲調にするとはカンノ談。ピアノロックだとかジャズロック風のインストバンドになるということで、いくらか曲はもらっている。しかしカンノは自身のバンドであるCONTINUEの他、USDXにmish-mashと、どれだけの曲を書いているのかと。
「ちなみにリン君は作曲の調子など」
「オレはさほど多量の曲を書くワケではないからここまでカツカツにはやっとらんし、まあほどほどにという感じであろうか」
「あー、ブルースプリングなー? 解散してないだけありがてーけど、いつになったらちゃんとベースが揃うんだよー」
「知らん。文句があるなら社畜に言え」
「ソルに言ってどーなる」
「塩見さんではない。難ならブルースプリングのベースは塩見さん以上の社畜でそろそろ15連勤を超えた頃ではないか」
「15!?」
「この先も正月明けまで休みは1日しかないらしい」
「ヤッベ。それを聞いたらソルって実は社畜じゃないんじゃないかって気がしてきた」
「塩見さんも塩見さんで繁忙期はそれなりに会社に缶詰めらしいが、有給の使い方に関してはむしろホワイトではないかと」
年末の音楽祭に関する知らせは一応春山さんにも通知されていたらしいが(青山さんは春山さんに何も言わないことで更なる恨みを買うことを大きなリスクだと捉えたらしい)、こちとら正月明けまで休みは1日だふざけんなぶっ殺すぞという返信が何故かオレに来た。
一応今年もブルースプリングでは路上ライブをやった後で音楽祭に出るという感じになっている。そこでやる新曲をオレが2曲ほど書くことにはなっているが、路上でも音楽祭でも基本的には既存の曲やカバーを主とするセットリストになる予定だ。
春山さんは現在長篠の観光地にあるホテルで清掃員をしているそうなのだが、多少の連勤や重労働は覚悟していたとは言えさすがにここまでの連勤になるとは思っていなかったようだし、職場の人間関係もなかなかな高さでそびえ立つクソだと言っていた。
「カンは将来就職したら、会社での仕事の他に趣味での作曲も続けるのか?」
「え、それをスガに聞かれるのは結構ショックなんだけど」
「いや、お前が就職したくらいで曲を書くのをやめたら解釈違いではあるんだけど、それをやり始めると本当に休みがなくなるんじゃないかっていう」
「息抜きに曲を書くまであるじゃんな、俺の場合。朝霞が書き物の間に書き物を挟むとかあーゆー感じな」
「朝霞も朝霞で大概だし言っとくけどお前ら2人とも普通じゃないからな」
「まあ俺は天才だし普通ではねーよ」
オレとスガノは大学院への進学が決まっているが、カンノ、そして朝霞は一般企業への就職が決まっている。カンノは星港にあるゲーム制作会社には就職するそうだ。現在大学4年のメンバーはそれぞれ環境が大きく変わる。その中でどうUSDXとしての活動を続けるかという部分だ。
「つか朝霞は就職してからどうするとか聞いた?」
「どうするとは」
「USDXとしての活動だよ」
「大学卒業と同時に星港市内で今より防音がいい部屋を探して引っ越すとは聞いた。実況とギターをやるならその条件が何より大事だと言っていたな」
「朝霞ン家は学生街のよくある安アパートだもんなー。ちょっとゲームやってるときに叫ぶだけで隣に声も筒抜けだろ」
「ガチめな壁ドンもされてたって言うし、防音は大事だろ」
「隣に住んでいるのが部活の後輩だと言っていたが」
「あー、彩人なー。アイツもアイツで短気なんだよ」
「カン、その子に曲を書いたって言ってなかったっけ」
「あーな。青敬の連中がMVを作るからとか何とか言って朝霞が勝手に俺のことを紹介したっていうな」
「バンドや個人サークル以外でも曲を書いているのだなお前は」
「あーな。最近はでじかもさんと一緒に遊んでたリスナーにあげる曲書いてたわ」
「は?」
カンノはでじかも氏のコラボ相手として配信に呼ばれて参加することがある。そこで一緒になった一般視聴者枠のリスナーとの話が盛り上がってそのリスナーが使うための曲というのを書くことになったとか。ゲーム内でチャンピオンになって気分が良かったそうだ。
如何せんハードワーカーという連中は仕事の他にも自分から作業を抱え込まなければ刺激が足りんと言い始める。オレの周りだけでもカンノに朝霞、後は宮ちゃんという例もある。オレもオレで天才ではあるが、天才のベクトルが異なる。
「何かそのリスナー、大学でラジオやってるとかで、そこで使えるBGMは常にいいのを探してるっつー話だったから、じゃー俺が書いてやるよっつって」
「ええ……あげた曲を使ってもらってるってどこでわかるんだそれ」
「まーわかんねーよな」
「最早慈善事業ではないか。オレには甚だ理解出来んな」
「チータ推しを増やす草の根活動でもある」
「よくやる」
end.
++++
最近自称させてないから忘れがちだけど、リン様は自称今世紀最後の天才なのでUSDXには自称天才が2人いる。
Pさんも短気だしつばちゃんも短気だし、彩人も短気だしでまあまあ気の短いのが集まりがちな班である。
実況をやる上では叫んだり音を出したりっていうことは避けられないと思うので、物件探しにおける防音の優先度も上がってくるね
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「あ~俺って天才、マジ天才、すげーわ~」
「カンノが何か言っているぞ」
「まあ、いつものことだから」
年末、大晦日の夜に青山さん主催で行われる音楽祭に向け、USDXで元々バンドなどをやっている面々で新たにmish-mashというバンドを結成することになった。USDXは一応ネット上で顔などを出さずにやっている活動だし、その名前だとあとの2人はどうなるという問題もあったからだ。
バンド形態としては鍵盤が2人いることを生かした曲調にするとはカンノ談。ピアノロックだとかジャズロック風のインストバンドになるということで、いくらか曲はもらっている。しかしカンノは自身のバンドであるCONTINUEの他、USDXにmish-mashと、どれだけの曲を書いているのかと。
「ちなみにリン君は作曲の調子など」
「オレはさほど多量の曲を書くワケではないからここまでカツカツにはやっとらんし、まあほどほどにという感じであろうか」
「あー、ブルースプリングなー? 解散してないだけありがてーけど、いつになったらちゃんとベースが揃うんだよー」
「知らん。文句があるなら社畜に言え」
「ソルに言ってどーなる」
「塩見さんではない。難ならブルースプリングのベースは塩見さん以上の社畜でそろそろ15連勤を超えた頃ではないか」
「15!?」
「この先も正月明けまで休みは1日しかないらしい」
「ヤッベ。それを聞いたらソルって実は社畜じゃないんじゃないかって気がしてきた」
「塩見さんも塩見さんで繁忙期はそれなりに会社に缶詰めらしいが、有給の使い方に関してはむしろホワイトではないかと」
年末の音楽祭に関する知らせは一応春山さんにも通知されていたらしいが(青山さんは春山さんに何も言わないことで更なる恨みを買うことを大きなリスクだと捉えたらしい)、こちとら正月明けまで休みは1日だふざけんなぶっ殺すぞという返信が何故かオレに来た。
一応今年もブルースプリングでは路上ライブをやった後で音楽祭に出るという感じになっている。そこでやる新曲をオレが2曲ほど書くことにはなっているが、路上でも音楽祭でも基本的には既存の曲やカバーを主とするセットリストになる予定だ。
春山さんは現在長篠の観光地にあるホテルで清掃員をしているそうなのだが、多少の連勤や重労働は覚悟していたとは言えさすがにここまでの連勤になるとは思っていなかったようだし、職場の人間関係もなかなかな高さでそびえ立つクソだと言っていた。
「カンは将来就職したら、会社での仕事の他に趣味での作曲も続けるのか?」
「え、それをスガに聞かれるのは結構ショックなんだけど」
「いや、お前が就職したくらいで曲を書くのをやめたら解釈違いではあるんだけど、それをやり始めると本当に休みがなくなるんじゃないかっていう」
「息抜きに曲を書くまであるじゃんな、俺の場合。朝霞が書き物の間に書き物を挟むとかあーゆー感じな」
「朝霞も朝霞で大概だし言っとくけどお前ら2人とも普通じゃないからな」
「まあ俺は天才だし普通ではねーよ」
オレとスガノは大学院への進学が決まっているが、カンノ、そして朝霞は一般企業への就職が決まっている。カンノは星港にあるゲーム制作会社には就職するそうだ。現在大学4年のメンバーはそれぞれ環境が大きく変わる。その中でどうUSDXとしての活動を続けるかという部分だ。
「つか朝霞は就職してからどうするとか聞いた?」
「どうするとは」
「USDXとしての活動だよ」
「大学卒業と同時に星港市内で今より防音がいい部屋を探して引っ越すとは聞いた。実況とギターをやるならその条件が何より大事だと言っていたな」
「朝霞ン家は学生街のよくある安アパートだもんなー。ちょっとゲームやってるときに叫ぶだけで隣に声も筒抜けだろ」
「ガチめな壁ドンもされてたって言うし、防音は大事だろ」
「隣に住んでいるのが部活の後輩だと言っていたが」
「あー、彩人なー。アイツもアイツで短気なんだよ」
「カン、その子に曲を書いたって言ってなかったっけ」
「あーな。青敬の連中がMVを作るからとか何とか言って朝霞が勝手に俺のことを紹介したっていうな」
「バンドや個人サークル以外でも曲を書いているのだなお前は」
「あーな。最近はでじかもさんと一緒に遊んでたリスナーにあげる曲書いてたわ」
「は?」
カンノはでじかも氏のコラボ相手として配信に呼ばれて参加することがある。そこで一緒になった一般視聴者枠のリスナーとの話が盛り上がってそのリスナーが使うための曲というのを書くことになったとか。ゲーム内でチャンピオンになって気分が良かったそうだ。
如何せんハードワーカーという連中は仕事の他にも自分から作業を抱え込まなければ刺激が足りんと言い始める。オレの周りだけでもカンノに朝霞、後は宮ちゃんという例もある。オレもオレで天才ではあるが、天才のベクトルが異なる。
「何かそのリスナー、大学でラジオやってるとかで、そこで使えるBGMは常にいいのを探してるっつー話だったから、じゃー俺が書いてやるよっつって」
「ええ……あげた曲を使ってもらってるってどこでわかるんだそれ」
「まーわかんねーよな」
「最早慈善事業ではないか。オレには甚だ理解出来んな」
「チータ推しを増やす草の根活動でもある」
「よくやる」
end.
++++
最近自称させてないから忘れがちだけど、リン様は自称今世紀最後の天才なのでUSDXには自称天才が2人いる。
Pさんも短気だしつばちゃんも短気だし、彩人も短気だしでまあまあ気の短いのが集まりがちな班である。
実況をやる上では叫んだり音を出したりっていうことは避けられないと思うので、物件探しにおける防音の優先度も上がってくるね
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