2021(03)
■Building the speed of light
++++
「そろそろ年末特番の季節スわ」
「今年は何をしましょうかねえ」
「年末特番? って何すか?」
「その名の通り、年末の特番ですよ。1時間くらいの企画番組を作るんですが、作品出展などとは違って外には出さないことを前提に好き勝手にやるのが慣わしなんですよ。緑ヶ丘ではやっていないのですか?」
「聞いたことはないっすねー」
今年もいよいよこの季節が来た。年末特番というのはこーたが説明したように、年末に作る1時間の特番だ。3年生にとっては集大成……のはずが、実際やっていることは内輪ノリをベースにした悪ふざけの番組だ。過去の番組もいくらか残っているのだけど、それらもとんでもなくふざけているなあと思う。MMPらしさが全開と言うか。
今年はすがやんもいるということで、どんな番組を作ろうかという会議が始まる。収録は再来週の水曜日かその翌週、今期の最終週になる水曜にやる予定で計画を進めていく。企画番組の場合はある程度内容を詰めるのにも時間が要る。過去の年度の場合は、ラジドラの脚本が上がって来るのを待つ時間だったりもしたけど、今年はどうなる。
「まあ、ヒロさんに企画は期待できないので主にカノンとすがやんで考えてもらった方が早いかと思います」
「ところで、すがやんも留学の集大成として何かやれそうなコトは思い付きヤしたか?」
「こないだ野坂先輩から教えてもらったゲーム実況の動画を見てて思ったんですけどー」
「あっ、見たんだ。それで、何を閃いた?」
「ああいう動画とか上げてる人って、通話アプリみたいなのを使って収録とかしてるっぽいじゃないすか」
「そうだな。スカイプとかDiscordを使ってオンラインで通話しながらゲームをやるのが割と一般的だと思う」
「そしたら、今さっき俺とりっちゃん先輩で番組をやったばっかですけど、スマホかパソコンをミキサーに繋いだら、ワンチャン遠隔での番組も出来るのかなーって」
「本当の中継ですか?」
「そうなるんすかねー?」
一般に、インターフェイスでやる番組では通信端末を使って番組をやるというのはご法度とされている。スマホの中に入れた曲を使うとか。そういった時に、着信でもあろうものなら盛大に事故るからだ。携帯音楽プレイヤーなら着信はないけれど、音質の問題もある。かならずしも最高音質で保存しているとは限らないからCD音源が理想とされている。
「遠隔で番組をやるに当たって向こうの声がどう聞こえるかというのは何に左右されるんですかねえ。スマホのスペックになるんですか? 実況の場合はマイクなどの機材になるワケじゃないですか」
「相手側の環境にも寄るだろうけど、向こうにこっちと同等の機材があればミキサーでちょっとくらいはどうにかならないか?」
「問題はこっちをベースとした場合のネット環境スけど。このサークル棟にャWi-Fiなんかありャしやせンぜ」
「俺らの中にポケットWi-Fiなんか持ってる奴もいないだろうし、ノーパソでスマホのテザリングを使うのが一番やりやすいかなとは」
「テザリングですか。安定するものなんです?」
「USB接続でやればまあまあイケるはず」
「で、ノーパソはどーしヤす?」
「俺の古いのを使うか、学部のヤツでやるか。まあ、俺の古いヤツの方がいいかな」
「ねーねーノサカ、スマホで電話しながら番組やるんやったらどこからでも、何人でも参加出来るみたいなコト?」
「理論上はな。それこそこないだみたいな焼き芋をしてる場所からの中継も出来るはずだ」
「えー! やりたいんやけど! やろ!」
遠隔で番組をやれるのかと言い出したすがやんや、奈々とカノンを置き去りに俺たち3年4人が悪乗りをベースに話をどんどん進めていく。こういうのは勢いだけの雑談でも話を前に前に進めることでどんどん計画が具体性を持って来るのだと、俺たちは過去のMMPの活動の中で何度も見てきた。
ホワイトボードはどんどん話の中で出た案で埋まっていく。それが使える使えないに関わらず、とりあえず拾って行くのだ。遠隔番組をやるんならすがやんがこっちに来る日じゃなくて向こうにいる日の方がいいだろとか、テザリングをやるのに適したスマホの契約をしているのは誰だとか。いっそ緑ヶ丘も巻き込んでやれというスタンスだ。
「ちなみにだけどすがやん、緑ヶ丘は自前のパソコンあるし、やろうと思えば出来るだろ?」
「あとはそのパソコンに通信環境があればですが、どうですかね?」
「ああ、ウチはサークル棟に有線もWi-Fiもあるんで出来ると思います」
「は!? あのサークル棟Wi-Fi飛んでたのかよ!」
「はい、飛んでるっすね」
「マジかー……もっと早く聞きたかった。まあ、何にせよ環境的には出来るんだな」
「誰かしら強い人はいるんじゃないかなーとは。サキなら何とかしてくれると思うんすけど」
「サキもいるし、多分タカティとかも普通に強いはずだから」
「問題は番組の中身ですけどねえ」
「まあ、緑ヶ丘も巻き込むと言ってもベースはMMPのスタンスなンでね、いつものように年間10大ニュースとかでいーンじゃないスかね?」
とりあえず、言うだけはタダなので次回辺り環境を整えてテストをしてみたらいいのかもしれない。アナウンサーと言うよりはミキサーの方がしっかり準備をして臨まなければならないのだろう。いや、俺たちの学年の集大成としては、ミキサーが頑張るくらいがちょうどいい。
end.
++++
ミキサーが頑張るくらいがちょうどいいのは実は去年もだったりする。現4年生はムライズムの申し子だから……
3年4人がぎゃあぎゃあやってる話はテンポが速くなりがちなので、実際聞くと勢いが凄いんだろうなあ。ボケとツッコミと暴言の応酬。
やっぱり年度が進むごとに緑大の学内施設はパワーアップして行くんだろうなあ。お金はどこかにある。
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「そろそろ年末特番の季節スわ」
「今年は何をしましょうかねえ」
「年末特番? って何すか?」
「その名の通り、年末の特番ですよ。1時間くらいの企画番組を作るんですが、作品出展などとは違って外には出さないことを前提に好き勝手にやるのが慣わしなんですよ。緑ヶ丘ではやっていないのですか?」
「聞いたことはないっすねー」
今年もいよいよこの季節が来た。年末特番というのはこーたが説明したように、年末に作る1時間の特番だ。3年生にとっては集大成……のはずが、実際やっていることは内輪ノリをベースにした悪ふざけの番組だ。過去の番組もいくらか残っているのだけど、それらもとんでもなくふざけているなあと思う。MMPらしさが全開と言うか。
今年はすがやんもいるということで、どんな番組を作ろうかという会議が始まる。収録は再来週の水曜日かその翌週、今期の最終週になる水曜にやる予定で計画を進めていく。企画番組の場合はある程度内容を詰めるのにも時間が要る。過去の年度の場合は、ラジドラの脚本が上がって来るのを待つ時間だったりもしたけど、今年はどうなる。
「まあ、ヒロさんに企画は期待できないので主にカノンとすがやんで考えてもらった方が早いかと思います」
「ところで、すがやんも留学の集大成として何かやれそうなコトは思い付きヤしたか?」
「こないだ野坂先輩から教えてもらったゲーム実況の動画を見てて思ったんですけどー」
「あっ、見たんだ。それで、何を閃いた?」
「ああいう動画とか上げてる人って、通話アプリみたいなのを使って収録とかしてるっぽいじゃないすか」
「そうだな。スカイプとかDiscordを使ってオンラインで通話しながらゲームをやるのが割と一般的だと思う」
「そしたら、今さっき俺とりっちゃん先輩で番組をやったばっかですけど、スマホかパソコンをミキサーに繋いだら、ワンチャン遠隔での番組も出来るのかなーって」
「本当の中継ですか?」
「そうなるんすかねー?」
一般に、インターフェイスでやる番組では通信端末を使って番組をやるというのはご法度とされている。スマホの中に入れた曲を使うとか。そういった時に、着信でもあろうものなら盛大に事故るからだ。携帯音楽プレイヤーなら着信はないけれど、音質の問題もある。かならずしも最高音質で保存しているとは限らないからCD音源が理想とされている。
「遠隔で番組をやるに当たって向こうの声がどう聞こえるかというのは何に左右されるんですかねえ。スマホのスペックになるんですか? 実況の場合はマイクなどの機材になるワケじゃないですか」
「相手側の環境にも寄るだろうけど、向こうにこっちと同等の機材があればミキサーでちょっとくらいはどうにかならないか?」
「問題はこっちをベースとした場合のネット環境スけど。このサークル棟にャWi-Fiなんかありャしやせンぜ」
「俺らの中にポケットWi-Fiなんか持ってる奴もいないだろうし、ノーパソでスマホのテザリングを使うのが一番やりやすいかなとは」
「テザリングですか。安定するものなんです?」
「USB接続でやればまあまあイケるはず」
「で、ノーパソはどーしヤす?」
「俺の古いのを使うか、学部のヤツでやるか。まあ、俺の古いヤツの方がいいかな」
「ねーねーノサカ、スマホで電話しながら番組やるんやったらどこからでも、何人でも参加出来るみたいなコト?」
「理論上はな。それこそこないだみたいな焼き芋をしてる場所からの中継も出来るはずだ」
「えー! やりたいんやけど! やろ!」
遠隔で番組をやれるのかと言い出したすがやんや、奈々とカノンを置き去りに俺たち3年4人が悪乗りをベースに話をどんどん進めていく。こういうのは勢いだけの雑談でも話を前に前に進めることでどんどん計画が具体性を持って来るのだと、俺たちは過去のMMPの活動の中で何度も見てきた。
ホワイトボードはどんどん話の中で出た案で埋まっていく。それが使える使えないに関わらず、とりあえず拾って行くのだ。遠隔番組をやるんならすがやんがこっちに来る日じゃなくて向こうにいる日の方がいいだろとか、テザリングをやるのに適したスマホの契約をしているのは誰だとか。いっそ緑ヶ丘も巻き込んでやれというスタンスだ。
「ちなみにだけどすがやん、緑ヶ丘は自前のパソコンあるし、やろうと思えば出来るだろ?」
「あとはそのパソコンに通信環境があればですが、どうですかね?」
「ああ、ウチはサークル棟に有線もWi-Fiもあるんで出来ると思います」
「は!? あのサークル棟Wi-Fi飛んでたのかよ!」
「はい、飛んでるっすね」
「マジかー……もっと早く聞きたかった。まあ、何にせよ環境的には出来るんだな」
「誰かしら強い人はいるんじゃないかなーとは。サキなら何とかしてくれると思うんすけど」
「サキもいるし、多分タカティとかも普通に強いはずだから」
「問題は番組の中身ですけどねえ」
「まあ、緑ヶ丘も巻き込むと言ってもベースはMMPのスタンスなンでね、いつものように年間10大ニュースとかでいーンじゃないスかね?」
とりあえず、言うだけはタダなので次回辺り環境を整えてテストをしてみたらいいのかもしれない。アナウンサーと言うよりはミキサーの方がしっかり準備をして臨まなければならないのだろう。いや、俺たちの学年の集大成としては、ミキサーが頑張るくらいがちょうどいい。
end.
++++
ミキサーが頑張るくらいがちょうどいいのは実は去年もだったりする。現4年生はムライズムの申し子だから……
3年4人がぎゃあぎゃあやってる話はテンポが速くなりがちなので、実際聞くと勢いが凄いんだろうなあ。ボケとツッコミと暴言の応酬。
やっぱり年度が進むごとに緑大の学内施設はパワーアップして行くんだろうなあ。お金はどこかにある。
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