2021(03)
■繋がる冬の大三角
++++
「お邪魔しまーす」
「おっ、菜月に圭斗さんいらっしゃい」
「真希、これ鍋の具」
「どうもー」
「鍋の具は真希ちゃんに預ければいいのかな」
「もらいまーす。そしたら奥に上がってもらって」
今日はバドサーコンビの真希ちゃんと前原君が主催で鍋大会が開かれるというのでMMP代表として菜月さんと一緒にお呼ばれになった。前原君宅台所では真希ちゃんが鍋の準備をしていて、前原君本人は部屋のセッティングをしているみたいだ。鍋の具は適当に1人1つ持って来いという風に指示があったのだけど、本当に適当で良かったのかな。
「おーす真希ー」
「おっ、天文部チームも来たね」
「これ、俺の具どうする?」
「もらうよ」
「旭、お前具は?」
「大学で預けた」
玄関の方では真希ちゃんが他の参加者を迎えている。前原君が割り箸を並べ終えたところでみんな来たようだ。ちなみにどんな出汁をベースにした鍋かも聞かされてないし、誰がどんな具を持ってきているのかもわからない。真希のことだし最悪闇鍋になることまで想定してるだろうなあとは菜月さん談。
「お邪魔しまーす、どうもー」
「えっと、天文部の人らだよね」
「天文部で社学現社の矢作旭。真希とは学部の友達だよ」
「同じく天文部で社学メディアの設楽嵐士」
「で、そっちはラジオとかやってるMMPの人ら」
「サークルはもう引退してるけど、MMP元代表会計で環境4年の松岡圭斗です」
「同じくMMP、社学メディアの奥村菜月です」
「で、俺と真希がバドミントンチームっつー感じで」
「前原君は天文部の2人とは顔見知りなのかい?」
「磐田から名前は聞いてたけど実際に会うのは初めてだわ。バドサーで情報の前原智則っす」
「ああ、マエトモさんがいわっちのゼミの友達かー」
「2人はウチの1年の幼馴染みっていう、純粋に星が好きな子を囲ってくれてるガチ天文勢っすよね」
「そーね。先に忠告もらってて助かったよ。あの子はウチの部には勿体ないくらいの逸材だよ」
天文さんの話によれば、今年入った天文好きの1年生の女の子がいるそうなんだけど、前原君からの助言で彼女をガチ天文勢で囲ったそうなんだ。天文部が天文してないというのは普段から菜月さんも言っているから噂程度では知っているのだけど、天文さんたちもそんな風に言っているので話としては本当なのだろう。
かわいい女の子なんかがいると出会い系と勘違いしている連中に何をされるかわかったもんじゃない環境なんだとか。前原君つてに天文部の危ない話を聞いていたらしい彼女の幼馴染みという子がとても心配していたそうだ。純粋に星を見たりしたい人にはあまり向かない部活だからこそ菜月さんもあそこには入らなかったと言っていた。
「ちゃんと天文やってる人がいるのも知ってるけど、どうもチャラいと言うか、軽薄と言うか。そんな雰囲気がビシバシに出てる印象が強くて」
「あ、大体合ってますよ」
「去年と今年やってるプラネタリウムなんかは本当によく出来てたし、あのクオリティで200円は安すぎるとは思うんだけど」
「もしかして見に来てくれたんすか!?」
「え、ああ、まあ一応」
「彼女は少しばかり星が好きな人でね。僕たちが昼休みに学食でやっている番組でもたまに星空をテーマにした回を設けていたんだよ。冬だとか、流星群の時期だとかに」
「あっ、もしかしていわっちが言ってたオリナレの人!?」
「オリナレ?」
「学祭でやってるプラネタリウムは一応こっちでアナウンス原稿を用意してるんだけど、去年はこっちの原稿よりいい語りをしてた人がいたって言ってて。いわっちは「やっぱラジオとかやってる人は上手なんだねー」って感心してたけど、アタシらはそんな人が実在すんのってバカにしてたんだよ。ねえ嵐士」
「それな。星好きの人はそこそこいても、こっちの用意した原稿よりいい語りとかさ。語りとなると、特性とかってあるじゃん」
「彼女は僕たちの代のエースアナウンサーでね。語りはお手の物だよ」
特に、レインボークライマーの星空回に外れなしとは野坂談だ。尤も、野坂に言わせれば彼女の番組に外れなどあるはずがないんだけれども。より素晴らしいという意味なのだろう。天文部さん的に幻の存在に思われていたその人は恐らく菜月さんで間違いないだろう。何故なら野坂が去年天文部のプラネタリウムで菜月先輩が云々とお土産話をしてくれたのを覚えているからだ。
「さ、鍋の支度が出来たよ」
「おっ。どーなった?」
「割とみんな良識的な具を持って来てくれてたんだけど……鍋って言うかこれはおでんだね」
「ん、確かにこれはおでんだね。誰が何を持って来たのかな?」
「圭斗さんの大根でしょ、旭が卵」
「シメの雑炊を念頭に置いてたんだよ」
「で、嵐士が練り物セット」
「これ入れときゃ何味でも間違いないと思った」
「そんでさあ……」
「うわっ」
「マエトモと菜月がそれぞれ生芋こんにゃくと結びしらたきを持って来たんだよな」
「まさかのこんにゃく被りかー」
「いや、生芋こんにゃくは美味いんすよ」
「前原、意外に話の分かる奴だな」
「菜月さんに全部食い尽されるんだよなあ……」
鍋がまさかのおでんになったのはいいんだけど、こんにゃくがメインとか。まるで菜月さんのためにあるような鍋だね。ただ、前原君の持って来た生芋のこんにゃくがよくあるこんにゃくと味がどう変わって来るのかというのには興味がある。こんにゃくの健康効果は生芋で作られた物でないと効果が薄いという話は小耳に挟んだことがある。本当かな?
「何つーか、おでんってメインっつーより2軒目感が強い」
「酒も用意できるよ。飲みたい奴は挙手。……全員かい。それじゃあ持って来るよ」
end.
++++
何気に結び付いて来るこの3団体の4年生たちもわちゃわちゃ出来るようです。男女コンビが美味い
圭斗さんがお客さんしてる鍋だのおでんだのっていうのがかなり新鮮。基本ホストだからね
フェーズ1新歓シーズンの話で菜月さんが天文部の横で天文部をディスってる件とかもあったなと思い出す
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「お邪魔しまーす」
「おっ、菜月に圭斗さんいらっしゃい」
「真希、これ鍋の具」
「どうもー」
「鍋の具は真希ちゃんに預ければいいのかな」
「もらいまーす。そしたら奥に上がってもらって」
今日はバドサーコンビの真希ちゃんと前原君が主催で鍋大会が開かれるというのでMMP代表として菜月さんと一緒にお呼ばれになった。前原君宅台所では真希ちゃんが鍋の準備をしていて、前原君本人は部屋のセッティングをしているみたいだ。鍋の具は適当に1人1つ持って来いという風に指示があったのだけど、本当に適当で良かったのかな。
「おーす真希ー」
「おっ、天文部チームも来たね」
「これ、俺の具どうする?」
「もらうよ」
「旭、お前具は?」
「大学で預けた」
玄関の方では真希ちゃんが他の参加者を迎えている。前原君が割り箸を並べ終えたところでみんな来たようだ。ちなみにどんな出汁をベースにした鍋かも聞かされてないし、誰がどんな具を持ってきているのかもわからない。真希のことだし最悪闇鍋になることまで想定してるだろうなあとは菜月さん談。
「お邪魔しまーす、どうもー」
「えっと、天文部の人らだよね」
「天文部で社学現社の矢作旭。真希とは学部の友達だよ」
「同じく天文部で社学メディアの設楽嵐士」
「で、そっちはラジオとかやってるMMPの人ら」
「サークルはもう引退してるけど、MMP元代表会計で環境4年の松岡圭斗です」
「同じくMMP、社学メディアの奥村菜月です」
「で、俺と真希がバドミントンチームっつー感じで」
「前原君は天文部の2人とは顔見知りなのかい?」
「磐田から名前は聞いてたけど実際に会うのは初めてだわ。バドサーで情報の前原智則っす」
「ああ、マエトモさんがいわっちのゼミの友達かー」
「2人はウチの1年の幼馴染みっていう、純粋に星が好きな子を囲ってくれてるガチ天文勢っすよね」
「そーね。先に忠告もらってて助かったよ。あの子はウチの部には勿体ないくらいの逸材だよ」
天文さんの話によれば、今年入った天文好きの1年生の女の子がいるそうなんだけど、前原君からの助言で彼女をガチ天文勢で囲ったそうなんだ。天文部が天文してないというのは普段から菜月さんも言っているから噂程度では知っているのだけど、天文さんたちもそんな風に言っているので話としては本当なのだろう。
かわいい女の子なんかがいると出会い系と勘違いしている連中に何をされるかわかったもんじゃない環境なんだとか。前原君つてに天文部の危ない話を聞いていたらしい彼女の幼馴染みという子がとても心配していたそうだ。純粋に星を見たりしたい人にはあまり向かない部活だからこそ菜月さんもあそこには入らなかったと言っていた。
「ちゃんと天文やってる人がいるのも知ってるけど、どうもチャラいと言うか、軽薄と言うか。そんな雰囲気がビシバシに出てる印象が強くて」
「あ、大体合ってますよ」
「去年と今年やってるプラネタリウムなんかは本当によく出来てたし、あのクオリティで200円は安すぎるとは思うんだけど」
「もしかして見に来てくれたんすか!?」
「え、ああ、まあ一応」
「彼女は少しばかり星が好きな人でね。僕たちが昼休みに学食でやっている番組でもたまに星空をテーマにした回を設けていたんだよ。冬だとか、流星群の時期だとかに」
「あっ、もしかしていわっちが言ってたオリナレの人!?」
「オリナレ?」
「学祭でやってるプラネタリウムは一応こっちでアナウンス原稿を用意してるんだけど、去年はこっちの原稿よりいい語りをしてた人がいたって言ってて。いわっちは「やっぱラジオとかやってる人は上手なんだねー」って感心してたけど、アタシらはそんな人が実在すんのってバカにしてたんだよ。ねえ嵐士」
「それな。星好きの人はそこそこいても、こっちの用意した原稿よりいい語りとかさ。語りとなると、特性とかってあるじゃん」
「彼女は僕たちの代のエースアナウンサーでね。語りはお手の物だよ」
特に、レインボークライマーの星空回に外れなしとは野坂談だ。尤も、野坂に言わせれば彼女の番組に外れなどあるはずがないんだけれども。より素晴らしいという意味なのだろう。天文部さん的に幻の存在に思われていたその人は恐らく菜月さんで間違いないだろう。何故なら野坂が去年天文部のプラネタリウムで菜月先輩が云々とお土産話をしてくれたのを覚えているからだ。
「さ、鍋の支度が出来たよ」
「おっ。どーなった?」
「割とみんな良識的な具を持って来てくれてたんだけど……鍋って言うかこれはおでんだね」
「ん、確かにこれはおでんだね。誰が何を持って来たのかな?」
「圭斗さんの大根でしょ、旭が卵」
「シメの雑炊を念頭に置いてたんだよ」
「で、嵐士が練り物セット」
「これ入れときゃ何味でも間違いないと思った」
「そんでさあ……」
「うわっ」
「マエトモと菜月がそれぞれ生芋こんにゃくと結びしらたきを持って来たんだよな」
「まさかのこんにゃく被りかー」
「いや、生芋こんにゃくは美味いんすよ」
「前原、意外に話の分かる奴だな」
「菜月さんに全部食い尽されるんだよなあ……」
鍋がまさかのおでんになったのはいいんだけど、こんにゃくがメインとか。まるで菜月さんのためにあるような鍋だね。ただ、前原君の持って来た生芋のこんにゃくがよくあるこんにゃくと味がどう変わって来るのかというのには興味がある。こんにゃくの健康効果は生芋で作られた物でないと効果が薄いという話は小耳に挟んだことがある。本当かな?
「何つーか、おでんってメインっつーより2軒目感が強い」
「酒も用意できるよ。飲みたい奴は挙手。……全員かい。それじゃあ持って来るよ」
end.
++++
何気に結び付いて来るこの3団体の4年生たちもわちゃわちゃ出来るようです。男女コンビが美味い
圭斗さんがお客さんしてる鍋だのおでんだのっていうのがかなり新鮮。基本ホストだからね
フェーズ1新歓シーズンの話で菜月さんが天文部の横で天文部をディスってる件とかもあったなと思い出す
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