2021(03)
■憧れのチャーシューメン
++++
「サキー! おーす!」
「ああ。シノ、ササ。おはよう」
「おはよう。サキ、1人?」
「1人だね。体育の後だし」
「良かったら俺らとどう?」
「いいよ」
俺とシノは結構履修が被ってるから学内で一緒にいることが多いんだけど、サキは割と1人で歩くことが多いみたいだ。学科に友達もいるし、状況によってはすがやんとかくるみと一緒にいることもあるみたいだけど、昼は絶対コイツとっていう相手がいるとかではなく、その辺も気分次第だとか。そういうのもいいかもしれない。
第2学食と比べると味が……と言われがちな第1学食だけど決してマズいワケではないしむしろ普通に美味しい部類だと思う。第2学食が特別美味しいだけで。だから、量を求めたいシノが第1学食でって言っても俺は別に嫌じゃないし、むしろ俺も量は食べたい方だから二つ返事で付いて行く。第1学食は季節によってメニューが結構入れ替わるのがいい。
「でも、サキが第1学食なんてどーした?」
「俺は結構第1学食派だったりするんだよね」
「えっ、そーなのか!? お前そこまで食わねーじゃん!」
「量の融通が利くのは第1学食だよ。シノやササみたくたくさん食べたい人は大きいサイズを選べばいいし、俺みたく少しで十分な人はSSサイズのご飯と味噌汁におかずを一品付ければちょうどだよ。第2学食はそういう細かな調節が難しくてさ。同じ理由でこの上の量り売りとかもよく使うかな」
「なるほど。食べる量を細かく刻んでいけるのか」
「そういうこと」
すがやんやくるみともこの上の量り売りはよく使うようで、好きな物を好きなだけ盛れるという性質上どうしても調子に乗りがちだけど、そこをグッと抑えるのが攻略のカギだとか。そもそも盛るのに使うタッパーもサイズごとに分類されていて、サキは一番小さいサイズの物に少しのおかずと小サイズのご飯がちょうどだとか。
「そーいや俺、量り売りとか使ったことねーな。使ってみたいなー」
「シノはまだ使わない方がいいよ」
「マジで」
「1グラム1円が原則だけど、肉系のおかずはたまに1グラム2円とかのがあるから。シノは食べる量が多いし、節約してるなら向かないと思う。1人暮らしが出来るようになれば、惣菜屋感覚で使うのはアリだと思うよ」
「惣菜が大学で買えるって冷静に考えたら強いな」
「結構美味しいんだよ」
「ご飯もパックで売ってるんだな」
「そうだね。それもサイズ別。だから、ご飯だけ家から持って来ておかずは量り売りで、とかも全然出来る」
そんなことを話している間に列は進み、券売機で買った券に対応したカウンターにそれを出す。俺は丼でシノは定食、サキは麺類だ。今は11月下旬だから、先輩たちの話によればもうそろそろ学内の人口密度も高くなってくる頃合いだとか。サボってた人たちが帰って来るとか来ないとか。ねえタカちゃん、と果林先輩が釘を刺しているところは何度か見た。
「何とか席あったなー」
「そろそろ座るにも一苦労になるぞ」
「そうなったら、テイクアウトになってくるんだよね」
「えっ、外で食うの?」
「情報棟に籠ったりとか」
「そっか。好きな所に持って行けばいいのか」
「それじゃーいただきまーす!」
「いただきます」
「サキ、それって醤油ラーメン?」
「厳密には中華そばだね」
「へー、そんなのあるんだ」
サキが頼んだのは昔ながらの中華そば。ボリュームがあんまりって感じに見えるから第1学食に限らず俺はあまり自分では頼まないけど、人が頼んでいるのを見るとこれはこれで美味しそうだ。簡素な分値段も安くてちょっと食べる分には結構良さそうだ。俺も小腹が空いたってレベルの時に食べてみようかな。
「サキってラーメン好きなんだな」
「嫌いじゃないね。今日は体育の後だから、刷り込まれてたって言うか」
「体育の後は麺類っていうルーティンが?」
「そういうんじゃないよ。俺、体育はゴルフなんだけど、こう、スイングするときの掛け声みたいなのがあって、それを叫んでる人がいるんだよね。チャーシューメーン、みたいな感じで」
「ああ、確かにゴルフってそういうイメージがあるかも。あれって何でチャーシューメンなんだろうな」
「あ~! チャーシューメンの話聞いてたらチャーシューメン食いたくなってきたなー! でも肉が数枚増えるだけで値段爆上がりするからなかなか手が出ねー!」
「そう、チャーシューメーンって聞いてたらお昼はチャーシューメンもいいかなって思ったんだけど、肉が数枚増えるとお腹いっぱいになり過ぎて午後の授業が危ぶまれたから中華そばにしようって」
「つか、ラーメンと中華そばって何が違うの? 一緒じゃね?」
「うん、一緒だよ。呼び方の違いだけ。ああ、でも緑大の学食の場合は麺や上に乗ってるトッピングがちょっと違うね。中華そばの方があっさりと、シンプルな感じで俺は好き」
食べることに執着しなくて、あっさりしているサキが「俺は好き」と言う中華そばがどれだけ美味しいのかが気になって仕方なくなっている俺とシノであった。多分俺たちが昼食としてそれなりに満足するには中華そばに何かおかずとか、おにぎりとか、そういうものを付ける必要があるのかなとは。
「そういや、俺学食であんまラーメン食わないから知らないんだけど、ラーメンにもサイズってあんの?」
「あるよ。S、M、Lかな。ちなみにこれはSサイズだけど」
「あ、これでSなのか」
「第2学食のMが第1学食のSで、第2学食のLが第1学食のMくらいの違いがあるみたいだね」
「え、それでいくら?」
「Sだから250円かな」
「安っ」
「醤油ラーメンより中華そばの方がちょっと安いんだよね」
「それはいいことを聞いたぜ」
end.
++++
本当はすがサキでやる予定の話だけど、第1学食に湧いてきたのがササシノだったのでササキトリオで。
シノは食べるからなあって感じで言ってるササだけど、ちょいちょいおかしいことを素で言うのがデフォ。お前も食うんよ
そういやお金がないイメージのTKGが第1学食を使ってるイメージが……ってそもそも大学にあんま来てねーわアイツ
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「サキー! おーす!」
「ああ。シノ、ササ。おはよう」
「おはよう。サキ、1人?」
「1人だね。体育の後だし」
「良かったら俺らとどう?」
「いいよ」
俺とシノは結構履修が被ってるから学内で一緒にいることが多いんだけど、サキは割と1人で歩くことが多いみたいだ。学科に友達もいるし、状況によってはすがやんとかくるみと一緒にいることもあるみたいだけど、昼は絶対コイツとっていう相手がいるとかではなく、その辺も気分次第だとか。そういうのもいいかもしれない。
第2学食と比べると味が……と言われがちな第1学食だけど決してマズいワケではないしむしろ普通に美味しい部類だと思う。第2学食が特別美味しいだけで。だから、量を求めたいシノが第1学食でって言っても俺は別に嫌じゃないし、むしろ俺も量は食べたい方だから二つ返事で付いて行く。第1学食は季節によってメニューが結構入れ替わるのがいい。
「でも、サキが第1学食なんてどーした?」
「俺は結構第1学食派だったりするんだよね」
「えっ、そーなのか!? お前そこまで食わねーじゃん!」
「量の融通が利くのは第1学食だよ。シノやササみたくたくさん食べたい人は大きいサイズを選べばいいし、俺みたく少しで十分な人はSSサイズのご飯と味噌汁におかずを一品付ければちょうどだよ。第2学食はそういう細かな調節が難しくてさ。同じ理由でこの上の量り売りとかもよく使うかな」
「なるほど。食べる量を細かく刻んでいけるのか」
「そういうこと」
すがやんやくるみともこの上の量り売りはよく使うようで、好きな物を好きなだけ盛れるという性質上どうしても調子に乗りがちだけど、そこをグッと抑えるのが攻略のカギだとか。そもそも盛るのに使うタッパーもサイズごとに分類されていて、サキは一番小さいサイズの物に少しのおかずと小サイズのご飯がちょうどだとか。
「そーいや俺、量り売りとか使ったことねーな。使ってみたいなー」
「シノはまだ使わない方がいいよ」
「マジで」
「1グラム1円が原則だけど、肉系のおかずはたまに1グラム2円とかのがあるから。シノは食べる量が多いし、節約してるなら向かないと思う。1人暮らしが出来るようになれば、惣菜屋感覚で使うのはアリだと思うよ」
「惣菜が大学で買えるって冷静に考えたら強いな」
「結構美味しいんだよ」
「ご飯もパックで売ってるんだな」
「そうだね。それもサイズ別。だから、ご飯だけ家から持って来ておかずは量り売りで、とかも全然出来る」
そんなことを話している間に列は進み、券売機で買った券に対応したカウンターにそれを出す。俺は丼でシノは定食、サキは麺類だ。今は11月下旬だから、先輩たちの話によればもうそろそろ学内の人口密度も高くなってくる頃合いだとか。サボってた人たちが帰って来るとか来ないとか。ねえタカちゃん、と果林先輩が釘を刺しているところは何度か見た。
「何とか席あったなー」
「そろそろ座るにも一苦労になるぞ」
「そうなったら、テイクアウトになってくるんだよね」
「えっ、外で食うの?」
「情報棟に籠ったりとか」
「そっか。好きな所に持って行けばいいのか」
「それじゃーいただきまーす!」
「いただきます」
「サキ、それって醤油ラーメン?」
「厳密には中華そばだね」
「へー、そんなのあるんだ」
サキが頼んだのは昔ながらの中華そば。ボリュームがあんまりって感じに見えるから第1学食に限らず俺はあまり自分では頼まないけど、人が頼んでいるのを見るとこれはこれで美味しそうだ。簡素な分値段も安くてちょっと食べる分には結構良さそうだ。俺も小腹が空いたってレベルの時に食べてみようかな。
「サキってラーメン好きなんだな」
「嫌いじゃないね。今日は体育の後だから、刷り込まれてたって言うか」
「体育の後は麺類っていうルーティンが?」
「そういうんじゃないよ。俺、体育はゴルフなんだけど、こう、スイングするときの掛け声みたいなのがあって、それを叫んでる人がいるんだよね。チャーシューメーン、みたいな感じで」
「ああ、確かにゴルフってそういうイメージがあるかも。あれって何でチャーシューメンなんだろうな」
「あ~! チャーシューメンの話聞いてたらチャーシューメン食いたくなってきたなー! でも肉が数枚増えるだけで値段爆上がりするからなかなか手が出ねー!」
「そう、チャーシューメーンって聞いてたらお昼はチャーシューメンもいいかなって思ったんだけど、肉が数枚増えるとお腹いっぱいになり過ぎて午後の授業が危ぶまれたから中華そばにしようって」
「つか、ラーメンと中華そばって何が違うの? 一緒じゃね?」
「うん、一緒だよ。呼び方の違いだけ。ああ、でも緑大の学食の場合は麺や上に乗ってるトッピングがちょっと違うね。中華そばの方があっさりと、シンプルな感じで俺は好き」
食べることに執着しなくて、あっさりしているサキが「俺は好き」と言う中華そばがどれだけ美味しいのかが気になって仕方なくなっている俺とシノであった。多分俺たちが昼食としてそれなりに満足するには中華そばに何かおかずとか、おにぎりとか、そういうものを付ける必要があるのかなとは。
「そういや、俺学食であんまラーメン食わないから知らないんだけど、ラーメンにもサイズってあんの?」
「あるよ。S、M、Lかな。ちなみにこれはSサイズだけど」
「あ、これでSなのか」
「第2学食のMが第1学食のSで、第2学食のLが第1学食のMくらいの違いがあるみたいだね」
「え、それでいくら?」
「Sだから250円かな」
「安っ」
「醤油ラーメンより中華そばの方がちょっと安いんだよね」
「それはいいことを聞いたぜ」
end.
++++
本当はすがサキでやる予定の話だけど、第1学食に湧いてきたのがササシノだったのでササキトリオで。
シノは食べるからなあって感じで言ってるササだけど、ちょいちょいおかしいことを素で言うのがデフォ。お前も食うんよ
そういやお金がないイメージのTKGが第1学食を使ってるイメージが……ってそもそも大学にあんま来てねーわアイツ
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