2021(03)
■フラットな戦場で
＋＋＋＋
「それじゃあもうひと煮立ちさせてっと」
「果林先輩、ビール足しますか？」
「足しまーす」
冬になると、やっぱり鍋が恋しくなるよなあと思う。今年は部屋に机も卓上コンロも土鍋もあるから鍋をやろうと思えば出来ちゃうところがいい。鍋の何がいいって、確かにカセットガスのお金はかかるんだけど、部屋全体があったかくなるし熱い物を食べるから自分もあったかくなって暖房要らずなところだと思う。別に具を豪勢にしなきゃいけない決まりはないし。
ここ最近、１年生たちとご飯を食べる機会が多くなってたんだけど、自分も先輩とごはんが食べたいなあと思って果林先輩に声をかけてみた。ごはんを食べませんかって言って気軽に誘える先輩なんて果林先輩くらいだし、そうじゃなくても最適解だとは思うんだよね。実際果林先輩との食事はとても楽しいし、ビールの練習もまだまだ途中だから。
「どっちにします？ 新発売のと限定のと」
「新発売のにしようかな」
「じゃ俺は限定ので」
「しかしまあ、タカちゃんも成長しましたよねー。お姉さんは嬉しいですよ」
「成長ですか？」
「タカちゃん家の冷蔵庫にあったビールって基本的にエージ用みたいな感じだったのが、今じゃ自分でも美味しくいただけちゃってるんだから」
「それはコーチが良かったのもありますね。おかげさまで美味しくいただけるようになってきました」
「そうかそうか。そういやこないだの打ち上げでもビール飲んでたよね？」
「同じ卓に戸田先輩ですからね。そこはビールになりますよ」
「あっ、つばめがいるならる～び～だわ、間違いない。ビールだけなら星ヶ丘もウチと同じレベルで飲むからね」
この間の夏合宿打ち上げの焼肉では、結局戸田先輩に付き合う形でガンガンビールを飲んでいた。今まで通りウィスキーとかも飲むには飲むんだけど、焼肉の時はビールの方が合うのかな、と思うようにもなってきた。ハイボールを飲む文化は俺にはまだないからね。これも今度やってみたいとは思っているんだけどなかなか勇気がない。
彩人やみちるとたまに飲んでても思うんだけど、星ヶ丘さんも強さはともかく結構ガンガン飲む人が多いよなあっていう印象。２年生はそうでもないんだけど。１年生が行くね。で、ウチの子は言わずもがな、シノ以外は当たり前のようにみんなザルだし。でも、個人的に凄いなって思ったのは青女のエマだ。
「でも、戸田先輩は青女のエマが相当気に入ったようで、今度プライベートで飲みに行く約束なんかを取り付けてましたよ」
「エマってあのガチなお嬢様の子だよね？」
「そうですね。本物の子ですね」
「それをつばめが気に入ったの？ 気になる気になる。どんな経緯で？」
「サキの話になって、その流れで向島の萌香の話になったんですね」
「ああ、乱闘起こした子ね」
「要約すると、友達……この場合は班で一緒になったサキや他の子たちですね。その子たちを侮辱されて怒らない人がいるのかと。自分も本当は頬くらい引っ叩いてやりたかったと言って手元に来た最初の杏露酒ロックを一気飲みですよ。で、何事もなかったかのように「同じものをお願いいたしますわ」って再注文です」
「なかなか激しいねえ。でも、つばめの好きそうな感じの子だね。でも、一気の影響とかは大丈夫だったの？ ロックじゃん」
「それが結構なザルのようで、打ち上げの中で戸田先輩直々にビールの練習なんかをして、もう卒業していきました。最後の方は戸田先輩と俺とエマの３人でピッチャーを結構空けた覚えがありますけど何回頼みましたっけ、って感じです」
俺は慣れるのに結構時間がかかったけど、エマは１時間かそこらでビール講習を卒業したし、スーパーエリートなんだろうなとは。元々がお金持ちの家の子だし値が張る輸入ビールなんかもポンと買えちゃいそうでちょっと羨ましいですね。でも普段はワインとかを飲んでるのかな。最初に「フルーツワインはないしどれにしよう」って悩んでたし。
「久々に凄いのが出て来たって感じだわ。相当強いじゃん」
「多分ウチの子たちも何人かは負けますね。でも話してみると結構個性的で面白い子ですよ。最近はルマンドとかホワイトロリータとか、スーパーで安く買えるブルボンのお菓子にハマってるそうです」
「ユーハイムとかヨックモックではなく」
「多分家で出て来るのはもっと高級なヤツだと思います。家政婦さんの作ってくれるお菓子が一番好きだとも言ってましたけどね」
「ヤバッ」
「市販の物だと他にはおにぎりせんべいも好きだと」
「めっちゃ庶民的じゃん！ 誰かクッピーラムネは与えた!?」
今度戸田先輩主催で行われる気のいい連中の集まるプライベート飲みっていうのには俺も声がかかってるんだけど、それもなかなか激しくなりそうな予感。他には誰が呼ばれるんだろう。何となくだけど、エイジは招集されそうな気がするよね。それに、エイジも戸田先輩のことは他校の先輩の中では慕ってる方だから誘われたら喜んで出てきそうだ。
「何か、いろいろぶっ飛んでるけどこういうのが面白いんだわインターフェイスって」
「そうですね。その感覚を久々にフラットに感じたような気がします。対策委員でやってるとなかなかそういう余裕がないですからね」
「ホントに。対策委員とかも結果楽しかったけど、ヒラが一番気楽よ。で、もうそろそろ食べれるようになったかなー。うん、良さそうだね」
end.
＋＋＋＋
エマがヤベえってだけの話になりつつあるけど、気のいい連中を集めた恐らくは玄でやるだろう飲みも見たい
つかピッチャーどれだけ空けたっけ？ってレベルで飲んでたんかい。カノンは絶対引いてるやんそんなん
タカりんがただただ可愛いので理由もなく鍋をつつかせるし、無駄にきゃっきゃしてて欲しいだけのヤツ
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「それじゃあもうひと煮立ちさせてっと」
「果林先輩、ビール足しますか？」
「足しまーす」
冬になると、やっぱり鍋が恋しくなるよなあと思う。今年は部屋に机も卓上コンロも土鍋もあるから鍋をやろうと思えば出来ちゃうところがいい。鍋の何がいいって、確かにカセットガスのお金はかかるんだけど、部屋全体があったかくなるし熱い物を食べるから自分もあったかくなって暖房要らずなところだと思う。別に具を豪勢にしなきゃいけない決まりはないし。
ここ最近、１年生たちとご飯を食べる機会が多くなってたんだけど、自分も先輩とごはんが食べたいなあと思って果林先輩に声をかけてみた。ごはんを食べませんかって言って気軽に誘える先輩なんて果林先輩くらいだし、そうじゃなくても最適解だとは思うんだよね。実際果林先輩との食事はとても楽しいし、ビールの練習もまだまだ途中だから。
「どっちにします？ 新発売のと限定のと」
「新発売のにしようかな」
「じゃ俺は限定ので」
「しかしまあ、タカちゃんも成長しましたよねー。お姉さんは嬉しいですよ」
「成長ですか？」
「タカちゃん家の冷蔵庫にあったビールって基本的にエージ用みたいな感じだったのが、今じゃ自分でも美味しくいただけちゃってるんだから」
「それはコーチが良かったのもありますね。おかげさまで美味しくいただけるようになってきました」
「そうかそうか。そういやこないだの打ち上げでもビール飲んでたよね？」
「同じ卓に戸田先輩ですからね。そこはビールになりますよ」
「あっ、つばめがいるならる～び～だわ、間違いない。ビールだけなら星ヶ丘もウチと同じレベルで飲むからね」
この間の夏合宿打ち上げの焼肉では、結局戸田先輩に付き合う形でガンガンビールを飲んでいた。今まで通りウィスキーとかも飲むには飲むんだけど、焼肉の時はビールの方が合うのかな、と思うようにもなってきた。ハイボールを飲む文化は俺にはまだないからね。これも今度やってみたいとは思っているんだけどなかなか勇気がない。
彩人やみちるとたまに飲んでても思うんだけど、星ヶ丘さんも強さはともかく結構ガンガン飲む人が多いよなあっていう印象。２年生はそうでもないんだけど。１年生が行くね。で、ウチの子は言わずもがな、シノ以外は当たり前のようにみんなザルだし。でも、個人的に凄いなって思ったのは青女のエマだ。
「でも、戸田先輩は青女のエマが相当気に入ったようで、今度プライベートで飲みに行く約束なんかを取り付けてましたよ」
「エマってあのガチなお嬢様の子だよね？」
「そうですね。本物の子ですね」
「それをつばめが気に入ったの？ 気になる気になる。どんな経緯で？」
「サキの話になって、その流れで向島の萌香の話になったんですね」
「ああ、乱闘起こした子ね」
「要約すると、友達……この場合は班で一緒になったサキや他の子たちですね。その子たちを侮辱されて怒らない人がいるのかと。自分も本当は頬くらい引っ叩いてやりたかったと言って手元に来た最初の杏露酒ロックを一気飲みですよ。で、何事もなかったかのように「同じものをお願いいたしますわ」って再注文です」
「なかなか激しいねえ。でも、つばめの好きそうな感じの子だね。でも、一気の影響とかは大丈夫だったの？ ロックじゃん」
「それが結構なザルのようで、打ち上げの中で戸田先輩直々にビールの練習なんかをして、もう卒業していきました。最後の方は戸田先輩と俺とエマの３人でピッチャーを結構空けた覚えがありますけど何回頼みましたっけ、って感じです」
俺は慣れるのに結構時間がかかったけど、エマは１時間かそこらでビール講習を卒業したし、スーパーエリートなんだろうなとは。元々がお金持ちの家の子だし値が張る輸入ビールなんかもポンと買えちゃいそうでちょっと羨ましいですね。でも普段はワインとかを飲んでるのかな。最初に「フルーツワインはないしどれにしよう」って悩んでたし。
「久々に凄いのが出て来たって感じだわ。相当強いじゃん」
「多分ウチの子たちも何人かは負けますね。でも話してみると結構個性的で面白い子ですよ。最近はルマンドとかホワイトロリータとか、スーパーで安く買えるブルボンのお菓子にハマってるそうです」
「ユーハイムとかヨックモックではなく」
「多分家で出て来るのはもっと高級なヤツだと思います。家政婦さんの作ってくれるお菓子が一番好きだとも言ってましたけどね」
「ヤバッ」
「市販の物だと他にはおにぎりせんべいも好きだと」
「めっちゃ庶民的じゃん！ 誰かクッピーラムネは与えた!?」
今度戸田先輩主催で行われる気のいい連中の集まるプライベート飲みっていうのには俺も声がかかってるんだけど、それもなかなか激しくなりそうな予感。他には誰が呼ばれるんだろう。何となくだけど、エイジは招集されそうな気がするよね。それに、エイジも戸田先輩のことは他校の先輩の中では慕ってる方だから誘われたら喜んで出てきそうだ。
「何か、いろいろぶっ飛んでるけどこういうのが面白いんだわインターフェイスって」
「そうですね。その感覚を久々にフラットに感じたような気がします。対策委員でやってるとなかなかそういう余裕がないですからね」
「ホントに。対策委員とかも結果楽しかったけど、ヒラが一番気楽よ。で、もうそろそろ食べれるようになったかなー。うん、良さそうだね」
end.
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エマがヤベえってだけの話になりつつあるけど、気のいい連中を集めた恐らくは玄でやるだろう飲みも見たい
つかピッチャーどれだけ空けたっけ？ってレベルで飲んでたんかい。カノンは絶対引いてるやんそんなん
タカりんがただただ可愛いので理由もなく鍋をつつかせるし、無駄にきゃっきゃしてて欲しいだけのヤツ
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