2021(03)
■振り落とされないように
＋＋＋＋
「またいない！ 浦和、源がどこに行ったか知りませんか？」
「ゲンゴローです？ 部室か談話室じゃないです？ 私も今来たばかりだからまだ見てないけど」
「わかりました。ありがとうございます」
「用件があるなら預かるけど」
「助かります。では……「昨日の部長会でもらった提出資料に部長の署名と押印をお願いします」と伝えてください」
「わかったですよ」
「では失礼します」
放送部が代替わりして、部活の様子は結構変わったなって思う。今まで自分が見てきた代や聞いた話では部長１強に監査もいます、他有象無象っていう感じで圧倒的なヒエラルキーみたいなものが出来上がってたけど、今は良くも悪くも同じ目線の部長と言うか。
ゲンゴローが部長になってから、部長が幹部だけじゃなくて部員みんなとよく喋るようになったなーって思う。元々ゲンゴロー自体がみんな友達っていうタイプの人だから会う人会う人に挨拶をする延長で全く苦にはなってないんだろうけど。
今までは何か困ったことがあってもそういうものだからって諦めるか、前の代なら監査に伝えて上に上げてもらえればラッキーって感じだった。それが、部長直々に部の様子を見て歩いて問題点が見つかればすぐ対処するっていう、スピード感が出てきたように見える。
ただ、そのゲンゴローの動きを常に追ってなければいけないのが監査のレオです。ゲンゴローが事務作業を嫌がるので書類関係の仕事は大体レオがやってるっていう話です。今も文化会関係の資料の話をしてましたけど、部長会に出てたのはゲンゴローのはずです。
「所沢さん大変そうっすね」
「レオはゲンゴローが部長じゃないと自分は幹部にならないって柳井を脅した手前、ゲンゴローの仕事をサポートする必要性を感じてるっぽいですよ。言ってレオは班長ではないのでまだやれるんだと思いますよ」
「あー、班長って大宮さんでしたっけ。つか正直所沢さんて結構不気味じゃないすか」
「表情も変わらないし、淡々としてるのは１年の頃からですよ」
「でも、何となく喜怒哀楽は見えるようになってきたっすよね」
「ゲンゴローが部長になってからです。ゲンゴローがここまで暴れ回るとは思ってなかったんじゃないです？」
源部長が就任後、最初に取りかかったのは部室の掃除でした。過去の大道具やら何やらで埋め尽くされて窓も開けられない、埃で鬱蒼とした空間の大改革。要らない物をバッサリと捨てて、監査が管理してた過去の台本をそこで誰もが見られるようにしたです。
部室は書庫という形に変貌して、ステージのヒントになりそうな本を揃えたり、部でこれまでに撮影したステージの映像やインターフェイスの作品出展でもらってきた作品を見たり聞いたり出来るようにモニターなどの設備も整えたそうです。
部長席に無駄に置いてあった豪華なソファーとかの応接用の家具なんかは部室に移動されて、ちょっとした会議も出来るようになりました。機材も組んだ状態で常設されていて、部屋の壁にうっすら施された防音対策で簡単な収録なんかも出来ます。
「部長席だとか監査席の規模が小さくなった分、班ごとの敷地もちょっとデカくなってよかったっすね」
「監査席はともかく、部長席は明らかに無駄だったですよ」
「ういーす彩人、おはよー」
「おーす深青。おはよー」
「彩人、大晦日ってヒマ？」
「大晦日？ 普通に実家だわ」
「そっか、地元遠いんだっけ」
「山羽だからそこまで大袈裟な遠さではないけどどうした？」
「あのさー、大晦日に内輪でわちゃわちゃやる音楽イベント？ っていうのがあって、知り合いで楽器やれる奴テキトーに集めてくれーみたいなことになってんだって。内輪の音楽イベントっつっても結構レベル高いらしいし、ウチのカンさんとかも出るんだって！ コバさんも出るっつってたし、俺もバンドで出るよ」
「マジか！ 菅野さんが出るならマジでレベル高いイベントなんじゃん！ 興味しかないけど帰省中なんだよな～…！」
「そう言えば、太一がいつにも増してゴリゴリ作曲してると思ったですよ。そんなイベントがあったですか」
見た目が完全に巨大な女の子の深青が源班のブースを覗いて切り出す話が音楽の話ですよ。他のブースを気軽に覗いて立ち話なんてことも今まではあまりなかった文化です。あと年末にかけて太一が忙しいっていうのはこれが理由だったですね。
「それって夜？」
「夜」
「そうかー……ワンチャン何とかならないか考えてみるかー」
「あっ、一応配信はするらしいし現地にいられなくてもライブ自体は見れるから。夏合宿ン時ちょっと話してたんだけど、ウチのアオさん配信とかめちゃくちゃつえーんだぜ」
「マジか。助かる」
「アオってあのアオです？ 星大の」
「あのアオさんすよ。アオさん、俺の姉のバイト先の先輩でもあるんすよ。すげーロックな人っすよね。ま、そーゆーコトだからまたちょっと考えといて。返事は今月中だって」
「――って案外日がないな!? わかったよ、考えとく」
代替わりの直後は特にステージイベントがないので個別に練習をしたりするのが基本になるです。来期に向けた班の土台を作っていく期間ですね。うーん、班長は部全体のことで忙しいみたいだし、ここはやっぱりプロデューサーの私が頑張るんですよ！
end.
＋＋＋＋
ゲンゴローは相変わらずバタバタ動いているし、それをレオが追いかけ回すのもいつものことになりつつあります
今回は部のブースで落ち着いてる人たちのお話。マリン目線とかフェーズ１含めたナノスパの中でもなかなか珍しい。
深青が内輪の人のことを話す時に「ウチの○○さん」って言うのがちょっと好き。そういう感じの子なのかな？
.
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「またいない！ 浦和、源がどこに行ったか知りませんか？」
「ゲンゴローです？ 部室か談話室じゃないです？ 私も今来たばかりだからまだ見てないけど」
「わかりました。ありがとうございます」
「用件があるなら預かるけど」
「助かります。では……「昨日の部長会でもらった提出資料に部長の署名と押印をお願いします」と伝えてください」
「わかったですよ」
「では失礼します」
放送部が代替わりして、部活の様子は結構変わったなって思う。今まで自分が見てきた代や聞いた話では部長１強に監査もいます、他有象無象っていう感じで圧倒的なヒエラルキーみたいなものが出来上がってたけど、今は良くも悪くも同じ目線の部長と言うか。
ゲンゴローが部長になってから、部長が幹部だけじゃなくて部員みんなとよく喋るようになったなーって思う。元々ゲンゴロー自体がみんな友達っていうタイプの人だから会う人会う人に挨拶をする延長で全く苦にはなってないんだろうけど。
今までは何か困ったことがあってもそういうものだからって諦めるか、前の代なら監査に伝えて上に上げてもらえればラッキーって感じだった。それが、部長直々に部の様子を見て歩いて問題点が見つかればすぐ対処するっていう、スピード感が出てきたように見える。
ただ、そのゲンゴローの動きを常に追ってなければいけないのが監査のレオです。ゲンゴローが事務作業を嫌がるので書類関係の仕事は大体レオがやってるっていう話です。今も文化会関係の資料の話をしてましたけど、部長会に出てたのはゲンゴローのはずです。
「所沢さん大変そうっすね」
「レオはゲンゴローが部長じゃないと自分は幹部にならないって柳井を脅した手前、ゲンゴローの仕事をサポートする必要性を感じてるっぽいですよ。言ってレオは班長ではないのでまだやれるんだと思いますよ」
「あー、班長って大宮さんでしたっけ。つか正直所沢さんて結構不気味じゃないすか」
「表情も変わらないし、淡々としてるのは１年の頃からですよ」
「でも、何となく喜怒哀楽は見えるようになってきたっすよね」
「ゲンゴローが部長になってからです。ゲンゴローがここまで暴れ回るとは思ってなかったんじゃないです？」
源部長が就任後、最初に取りかかったのは部室の掃除でした。過去の大道具やら何やらで埋め尽くされて窓も開けられない、埃で鬱蒼とした空間の大改革。要らない物をバッサリと捨てて、監査が管理してた過去の台本をそこで誰もが見られるようにしたです。
部室は書庫という形に変貌して、ステージのヒントになりそうな本を揃えたり、部でこれまでに撮影したステージの映像やインターフェイスの作品出展でもらってきた作品を見たり聞いたり出来るようにモニターなどの設備も整えたそうです。
部長席に無駄に置いてあった豪華なソファーとかの応接用の家具なんかは部室に移動されて、ちょっとした会議も出来るようになりました。機材も組んだ状態で常設されていて、部屋の壁にうっすら施された防音対策で簡単な収録なんかも出来ます。
「部長席だとか監査席の規模が小さくなった分、班ごとの敷地もちょっとデカくなってよかったっすね」
「監査席はともかく、部長席は明らかに無駄だったですよ」
「ういーす彩人、おはよー」
「おーす深青。おはよー」
「彩人、大晦日ってヒマ？」
「大晦日？ 普通に実家だわ」
「そっか、地元遠いんだっけ」
「山羽だからそこまで大袈裟な遠さではないけどどうした？」
「あのさー、大晦日に内輪でわちゃわちゃやる音楽イベント？ っていうのがあって、知り合いで楽器やれる奴テキトーに集めてくれーみたいなことになってんだって。内輪の音楽イベントっつっても結構レベル高いらしいし、ウチのカンさんとかも出るんだって！ コバさんも出るっつってたし、俺もバンドで出るよ」
「マジか！ 菅野さんが出るならマジでレベル高いイベントなんじゃん！ 興味しかないけど帰省中なんだよな～…！」
「そう言えば、太一がいつにも増してゴリゴリ作曲してると思ったですよ。そんなイベントがあったですか」
見た目が完全に巨大な女の子の深青が源班のブースを覗いて切り出す話が音楽の話ですよ。他のブースを気軽に覗いて立ち話なんてことも今まではあまりなかった文化です。あと年末にかけて太一が忙しいっていうのはこれが理由だったですね。
「それって夜？」
「夜」
「そうかー……ワンチャン何とかならないか考えてみるかー」
「あっ、一応配信はするらしいし現地にいられなくてもライブ自体は見れるから。夏合宿ン時ちょっと話してたんだけど、ウチのアオさん配信とかめちゃくちゃつえーんだぜ」
「マジか。助かる」
「アオってあのアオです？ 星大の」
「あのアオさんすよ。アオさん、俺の姉のバイト先の先輩でもあるんすよ。すげーロックな人っすよね。ま、そーゆーコトだからまたちょっと考えといて。返事は今月中だって」
「――って案外日がないな!? わかったよ、考えとく」
代替わりの直後は特にステージイベントがないので個別に練習をしたりするのが基本になるです。来期に向けた班の土台を作っていく期間ですね。うーん、班長は部全体のことで忙しいみたいだし、ここはやっぱりプロデューサーの私が頑張るんですよ！
end.
＋＋＋＋
ゲンゴローは相変わらずバタバタ動いているし、それをレオが追いかけ回すのもいつものことになりつつあります
今回は部のブースで落ち着いてる人たちのお話。マリン目線とかフェーズ１含めたナノスパの中でもなかなか珍しい。
深青が内輪の人のことを話す時に「ウチの○○さん」って言うのがちょっと好き。そういう感じの子なのかな？
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