2021(03)
■内緒の心配り
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「やっぱり車があると、物件選びでも駅近とかスーパーまでの距離とかあんまり気にしないもの?」
「無い時よりは気にしないね。一応駅とスーパーの両方が徒歩15分以内になるつもりで選んではいたけど」
今日は久々に俺たちの代の対策委員メンバーが集結してお鍋をやることになった。朝霞クンから定例会のみんなは結構お鍋とかやってたんだよ~って話を聞いて羨ましくなっちゃったんだよね。だけど、定例会と比較すると対策委員メンバーって良くも悪くも個人主義と言うか。俺が集まろうって言わない限り集まらないもんね。
ただ、集まろうって声を掛ければいいよって言って集まってくれる辺りがまだ学生なんだなって感じ。会場として長野っちの部屋を提供してもらうことになって、みんなが来る前に準備とかしとかなきゃねってことで前乗りさせてもらっている。で、買い物に行こうとして言われたんだよね。徒歩で6人分の買い物はしんどいと思うよって。
「ああ、そうだ長野っち。食事制限のことだけど」
「前よりは全然食べられる物も増えたし、特別気を遣ってもらわなくても大丈夫。煮え滾って熱々な物は避けた方がいいけど、そういうのは俺が自分で冷ませばいいだけだから」
「冷ます必要がある人への対処は任せて。朝霞クンが泣く子も黙る猫舌だからも~うバッチリだよ」
「朝霞って猫舌なんだ。結構何でもガツガツ行ってそうなイメージだったけど」
「最終的には結構食べてるからね。ペースを変えずに最初から最後まで淡々と食べてるんだよ。多分朝霞クンも地味に満腹って単語を知らない人だと思う。高崎クンとか程あからさまじゃないけど」
長野っちは去年の初夏の頃に消化器をやって長めの入院をしてたんだよね。その影響で、しばらくは結構大変な食事制限をしてたみたい。だけど今は本人の言うように制限も大分外れて、食べられる物が増えたんだって。食べたい物を食べたいように食べられるのって、当たり前なようで実はすごく幸せなことなんだって、長野っちの話を聞いて思ったよね。
「本当はもっと早く聞いとくべきだったんだけどね、制限のことは。もしNG食材とかあったら言ってね~」
「キツすぎる香辛料とか、油の塊とか、そういうのじゃなきゃ大丈夫だよ。キノコ類とかカマボコとかも食べれるようになったし」
「香辛料か~。ま、ガッツリ使いそうなのは議長サンくらいか。個人で何とかしてもらおう」
「あ、だから俺の部屋って黒コショウとか唐辛子みたいな物はないよ。さとちゃんも使わないでくれてるし」
「じゃあ議長サンに個別にメールしとこっか~。刺激の強い調味料が欲しかったら自分で持って来てね~、っと」
長野っちの車の助手席から、注意事項についてのメールやLINEを送る。ちなみに今回お世話をするのは鍋だけで、お酒を飲みたい人は自分で持って来て自分で片付けてねっていうことになっている。ちなみにその項目は主に高崎クンに対するお知らせだけど、どうするつもりなのかな~。
「山口、今日ってどんな鍋にするの?」
「ん~、長野っちの食事制限があっても美味しくいただける前提で、具だくさんの味噌鍋とかにしようと思ってたよ。で、すいとんを入れようかなって。鍋のレシピの参考にするのに郷土料理とかのサイト見てたんだけど、長篠のページにあったよ」
「すいとんって、小麦粉をこねたあれ?」
「そう。アレ。それに長野っちああいうの好きでしょ? 大体長野っちに寄せてるような感じだから」
「好きだね。でも、俺の好みに寄せて大丈夫なの。他のメンバーの好みとか。特に議長とか偏食じゃなかったっけ」
「議長サンは食べるスープとかの野菜は好きだし、高崎クンに寄せて豚肉も用意するし、石川クンと紗希ちゃんはそういった偏りはなかったはずだから大丈夫。言わなきゃ長野っちの好みに寄せてあるってわかんないよ」
「そう言えば、先に俺ん家の冷蔵庫に入れてたの、あれって何だったの。スーパーで手に入りにくい特殊食材って言ってたでしょ」
「まあ、言うほど特殊じゃないんだけど、馬肉をね。例のサイト見てたら長篠の馬食文化に辿り着いてさ。美味しそうだな~と思って、俺が食べたくて買って来たんだけど、高崎クンとか石川クンに吸われそうな気がするよね~」
「馬肉はすき焼きに入れたりもするし、馬のモツを食べたりもするけどあれは好き嫌いが分かれるね」
多分事情を話せばみんな長野っちに寄せてても理解はしてくれるだろうけど、そう言わないでもみんなに満足してもらえるかどうかが俺の腕の見せ所じゃないかなって思うんだよね。10人以上とか、あんまり大人数過ぎたら1人の好みに寄せるのは難しいだろうけど、6人くらいだったらやり方次第でどうにでもなるし。
「ああ、そう言えばさ山口」
「ど~かした?」
「今日の鍋のレシピとかも出来たらもらっといてってさとちゃんから頼まれてるんだよ。さとちゃんの中で、料理のことなら信頼と実績の山口みたいな扱いになってるから」
「う~ん、料理は得意ではあるけど、信頼と実績か~。インターフェイス的にそう言われるほどの実績ってあったっけ?」
「俺の中にはあるからいいんじゃない。今日の鍋も期待してるし」
「長篠風の普通のお鍋になる予定なんだけどな~」
「いや、普通が一番だと思うよ。普通の物を普通に食べられるのってありがたいよ」
「長野っちに言われちゃ、ちゃんと作らざるを得ないでしょでしょ~」
よし。スーパーに着きました~。買い物するぞ~。
end.
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対策委員鍋、幹事は安定のやまよ。対策委員時代は基本ニコイチみたいな感じでいたやまよと長野っちのキワモノコンビです。
長さとの件とか多分フェーズ2になってからほとんどやってないけど、敢えて触れなくてもほのぼのやってるんだと思います。
現4年の対策委員だと料理スキルはやまよがぶっちぎってるんだけど、他のメンバーはどうなの? 特に下宿組は。
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「やっぱり車があると、物件選びでも駅近とかスーパーまでの距離とかあんまり気にしないもの?」
「無い時よりは気にしないね。一応駅とスーパーの両方が徒歩15分以内になるつもりで選んではいたけど」
今日は久々に俺たちの代の対策委員メンバーが集結してお鍋をやることになった。朝霞クンから定例会のみんなは結構お鍋とかやってたんだよ~って話を聞いて羨ましくなっちゃったんだよね。だけど、定例会と比較すると対策委員メンバーって良くも悪くも個人主義と言うか。俺が集まろうって言わない限り集まらないもんね。
ただ、集まろうって声を掛ければいいよって言って集まってくれる辺りがまだ学生なんだなって感じ。会場として長野っちの部屋を提供してもらうことになって、みんなが来る前に準備とかしとかなきゃねってことで前乗りさせてもらっている。で、買い物に行こうとして言われたんだよね。徒歩で6人分の買い物はしんどいと思うよって。
「ああ、そうだ長野っち。食事制限のことだけど」
「前よりは全然食べられる物も増えたし、特別気を遣ってもらわなくても大丈夫。煮え滾って熱々な物は避けた方がいいけど、そういうのは俺が自分で冷ませばいいだけだから」
「冷ます必要がある人への対処は任せて。朝霞クンが泣く子も黙る猫舌だからも~うバッチリだよ」
「朝霞って猫舌なんだ。結構何でもガツガツ行ってそうなイメージだったけど」
「最終的には結構食べてるからね。ペースを変えずに最初から最後まで淡々と食べてるんだよ。多分朝霞クンも地味に満腹って単語を知らない人だと思う。高崎クンとか程あからさまじゃないけど」
長野っちは去年の初夏の頃に消化器をやって長めの入院をしてたんだよね。その影響で、しばらくは結構大変な食事制限をしてたみたい。だけど今は本人の言うように制限も大分外れて、食べられる物が増えたんだって。食べたい物を食べたいように食べられるのって、当たり前なようで実はすごく幸せなことなんだって、長野っちの話を聞いて思ったよね。
「本当はもっと早く聞いとくべきだったんだけどね、制限のことは。もしNG食材とかあったら言ってね~」
「キツすぎる香辛料とか、油の塊とか、そういうのじゃなきゃ大丈夫だよ。キノコ類とかカマボコとかも食べれるようになったし」
「香辛料か~。ま、ガッツリ使いそうなのは議長サンくらいか。個人で何とかしてもらおう」
「あ、だから俺の部屋って黒コショウとか唐辛子みたいな物はないよ。さとちゃんも使わないでくれてるし」
「じゃあ議長サンに個別にメールしとこっか~。刺激の強い調味料が欲しかったら自分で持って来てね~、っと」
長野っちの車の助手席から、注意事項についてのメールやLINEを送る。ちなみに今回お世話をするのは鍋だけで、お酒を飲みたい人は自分で持って来て自分で片付けてねっていうことになっている。ちなみにその項目は主に高崎クンに対するお知らせだけど、どうするつもりなのかな~。
「山口、今日ってどんな鍋にするの?」
「ん~、長野っちの食事制限があっても美味しくいただける前提で、具だくさんの味噌鍋とかにしようと思ってたよ。で、すいとんを入れようかなって。鍋のレシピの参考にするのに郷土料理とかのサイト見てたんだけど、長篠のページにあったよ」
「すいとんって、小麦粉をこねたあれ?」
「そう。アレ。それに長野っちああいうの好きでしょ? 大体長野っちに寄せてるような感じだから」
「好きだね。でも、俺の好みに寄せて大丈夫なの。他のメンバーの好みとか。特に議長とか偏食じゃなかったっけ」
「議長サンは食べるスープとかの野菜は好きだし、高崎クンに寄せて豚肉も用意するし、石川クンと紗希ちゃんはそういった偏りはなかったはずだから大丈夫。言わなきゃ長野っちの好みに寄せてあるってわかんないよ」
「そう言えば、先に俺ん家の冷蔵庫に入れてたの、あれって何だったの。スーパーで手に入りにくい特殊食材って言ってたでしょ」
「まあ、言うほど特殊じゃないんだけど、馬肉をね。例のサイト見てたら長篠の馬食文化に辿り着いてさ。美味しそうだな~と思って、俺が食べたくて買って来たんだけど、高崎クンとか石川クンに吸われそうな気がするよね~」
「馬肉はすき焼きに入れたりもするし、馬のモツを食べたりもするけどあれは好き嫌いが分かれるね」
多分事情を話せばみんな長野っちに寄せてても理解はしてくれるだろうけど、そう言わないでもみんなに満足してもらえるかどうかが俺の腕の見せ所じゃないかなって思うんだよね。10人以上とか、あんまり大人数過ぎたら1人の好みに寄せるのは難しいだろうけど、6人くらいだったらやり方次第でどうにでもなるし。
「ああ、そう言えばさ山口」
「ど~かした?」
「今日の鍋のレシピとかも出来たらもらっといてってさとちゃんから頼まれてるんだよ。さとちゃんの中で、料理のことなら信頼と実績の山口みたいな扱いになってるから」
「う~ん、料理は得意ではあるけど、信頼と実績か~。インターフェイス的にそう言われるほどの実績ってあったっけ?」
「俺の中にはあるからいいんじゃない。今日の鍋も期待してるし」
「長篠風の普通のお鍋になる予定なんだけどな~」
「いや、普通が一番だと思うよ。普通の物を普通に食べられるのってありがたいよ」
「長野っちに言われちゃ、ちゃんと作らざるを得ないでしょでしょ~」
よし。スーパーに着きました~。買い物するぞ~。
end.
++++
対策委員鍋、幹事は安定のやまよ。対策委員時代は基本ニコイチみたいな感じでいたやまよと長野っちのキワモノコンビです。
長さとの件とか多分フェーズ2になってからほとんどやってないけど、敢えて触れなくてもほのぼのやってるんだと思います。
現4年の対策委員だと料理スキルはやまよがぶっちぎってるんだけど、他のメンバーはどうなの? 特に下宿組は。
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