2021(03)
■頂上決戦と旦那さま
++++
「お邪魔しまーす」
「頑張って掃除しました。どうぞ」
今日これから行われるのは、パズルゲームのエキシビションマッチだ。先日成り行きで行われたUSDXメンバーとナユこと菜月の対戦が厭に盛り上がったという話をキョージュが宮ちゃんにしていたのだが、それなら強いことが分かっている宮ちゃんと菜月が対戦したらどれだけ面白いことになるだろうということで現在に至っている。
これは動画化などはしない非公式な戦いだ。その割にこの間よりもきちんと決闘らしい雰囲気でオレたちも場を整えている。今回はオンライン対戦で、宮ちゃんは朝霞宅から参戦することになっている。そして、元々宮ちゃんと友人としての付き合いのあるオレと朝霞が宮ちゃんのセコンドとして待機している。
一方、菜月は須賀邸からの参戦ということで、セコンドには塩見さんが付いている。それから、一応USDX代表としてスガノも参戦することになっていて、そちらのセコンドにはカンノが付いているのだが、味方なのか敵なのかわからないレベルで煽られるとスガノは既にげんなりしていたように思う。
「時間ってまだあったよね?」
「そうだね。一応向こうと合流するのが13時予定だから、3時間前だね」
「リンちゃん、ちょっと練習付き合って」
「構わんが、今更練習など必要なのか」
「ここ最近リアルが超絶忙しくてぷよテトに触れてないんだよ。それに、スポーツでも試合前にはアップするでしょ」
「確かに。これはれっきとしたeスポーツだし、アップは必要だな」
こちらは対戦予定時刻よりも幾分早く集合することになっていたのだが、宮ちゃんの事情というのもあったようだ。そもそも宮ちゃんも現在はまだ豊葦に住んでいるにも関わらず、わざわざ星港市内にある朝霞の家に来るのも結構な手間だろう。朝霞の家よりかは明らかに須賀邸の方が近いのだが、その辺りはナユの中の人を明らかにしないためでもあるとかないとか。
「リアルが超絶忙しかったのって、こないだ俺に送って来たあのLINEに関係してるヤツ?」
「それ。書類上の手続きとかいろいろあるんですよ。役所に行ったりとかさ。それと並行して原稿やったりイベント出たり、サークルも普通にやってるし」
「相変わらずのハードワーカーだな」
「あ、そうそうリンちゃん、ついでだから今報告しとくけど先週の土曜日に籍入れたんでよろしく。後日式の招待状送るしそのつもりでいてもらえれば」
「ほう。とうとう籍を……籍を入れただと!?」
「わ、珍しいリアクションだねえリン様」
「いや、お前たちの場合は遅かれ早かれだとは思っていたが、まさか在学中にとは思っていなかった」
「在学中の方が各種手続きがラクだと思って。学生の方が時間はあるだろうし」
「一理ある。では、同居を始めたのか」
「それは秋学期のテストが終わってからかな。そのあれやこれやで最近は忙しかったんですよー」
本来はもっと改まった報告の場を設けるであろう話題のはずが、本当についでの話題としてさらりと流す辺りが宮ちゃんだなと安心感は覚えるが。曰く、事前に籍を入れると話していたのも家族以外では浅浦だけだというし、オレの他に唯一報告したという高崎相手にも、各種手続きのために出向いた学生課でたまたま会ったから立ち話ついでの報告だったという。
一方で、双方のことを知らない朝霞に対しては席を入れた翌日時点で「名字が変わりました」というLINEを送っていたようだ。実際のやり取りを見せてもらったのだが、ノリが完全にネット上のそれだ。同人名義のSNSでも結婚報告はしたとのことで(かの性悪狸も入籍自体は知っているのだろう)、朝霞はどういう扱いの友人なのかが何となく透けて見えたところだ。
「それで、今日はこのような用事で外に出ていると奴は知っているのか」
「旦那さん?」
「ああ」
「ゲーマーとしての威信をかけた戦いだとは伝えてあるし、趣味のことには基本ノータッチなんで」
「趣味には相互不干渉のルールがあるのだったな」
「そうそう」
「伊東さんの旦那さんてゲームとかやる人なの?」
「本当にちょっとだけね。サッカー好きな人だからサッカーゲームはたまにやってるけど。でもこないだはオン友のレイヤーさんと一緒にマリパやってた」
「かのコスプレイヤーは宮ちゃんの家によく行っているのか」
「そうね。オン友でありオフ友である貴重な存在ですよ。オンの話題をオフで出来るっていう意味じゃ、バネ様とレイ君も同じだけ素晴らしい友人だと思っておりますので、オンでもオフでも今後ともよろしくお願いします」
ちなみに、旧姓から取っている愛称の“宮ちゃん”に関してはそのままでいいとのことで、その言葉に甘えてそのままで行かせてもらうことにした。一方で、宮林さんと呼んでいた朝霞は新しい名字である伊東さんという風に呼び方を改めている。来春からは同じ会社への就職が決まっているということだし、朝霞はその方が良いだろう。
「そう言えば、かのレイヤーさんはバイト先のリーダーさんに日頃からどれだけ虐げられているかっていうのを興奮気味によく報告してくるんですよぉ」
「下らない事を言っている暇があるならアップをしたらどうだ」
「は~い、対戦よろしくお願いしま~す」
end.
++++
慧梨夏vs菜月さんの対決の舞台をお膳立てしているというだけのUSDX。非公式の割に本格的なんだよなあ
コンちゃんが完全におまけ扱いされているような感じなので、2人とも捲ったったらいいんじゃないかなと思う。
Pさん、伊東さんの旦那さんと普通に友達なんだけど旦那の素性を知らんからのほほんとしてるんだわ
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「お邪魔しまーす」
「頑張って掃除しました。どうぞ」
今日これから行われるのは、パズルゲームのエキシビションマッチだ。先日成り行きで行われたUSDXメンバーとナユこと菜月の対戦が厭に盛り上がったという話をキョージュが宮ちゃんにしていたのだが、それなら強いことが分かっている宮ちゃんと菜月が対戦したらどれだけ面白いことになるだろうということで現在に至っている。
これは動画化などはしない非公式な戦いだ。その割にこの間よりもきちんと決闘らしい雰囲気でオレたちも場を整えている。今回はオンライン対戦で、宮ちゃんは朝霞宅から参戦することになっている。そして、元々宮ちゃんと友人としての付き合いのあるオレと朝霞が宮ちゃんのセコンドとして待機している。
一方、菜月は須賀邸からの参戦ということで、セコンドには塩見さんが付いている。それから、一応USDX代表としてスガノも参戦することになっていて、そちらのセコンドにはカンノが付いているのだが、味方なのか敵なのかわからないレベルで煽られるとスガノは既にげんなりしていたように思う。
「時間ってまだあったよね?」
「そうだね。一応向こうと合流するのが13時予定だから、3時間前だね」
「リンちゃん、ちょっと練習付き合って」
「構わんが、今更練習など必要なのか」
「ここ最近リアルが超絶忙しくてぷよテトに触れてないんだよ。それに、スポーツでも試合前にはアップするでしょ」
「確かに。これはれっきとしたeスポーツだし、アップは必要だな」
こちらは対戦予定時刻よりも幾分早く集合することになっていたのだが、宮ちゃんの事情というのもあったようだ。そもそも宮ちゃんも現在はまだ豊葦に住んでいるにも関わらず、わざわざ星港市内にある朝霞の家に来るのも結構な手間だろう。朝霞の家よりかは明らかに須賀邸の方が近いのだが、その辺りはナユの中の人を明らかにしないためでもあるとかないとか。
「リアルが超絶忙しかったのって、こないだ俺に送って来たあのLINEに関係してるヤツ?」
「それ。書類上の手続きとかいろいろあるんですよ。役所に行ったりとかさ。それと並行して原稿やったりイベント出たり、サークルも普通にやってるし」
「相変わらずのハードワーカーだな」
「あ、そうそうリンちゃん、ついでだから今報告しとくけど先週の土曜日に籍入れたんでよろしく。後日式の招待状送るしそのつもりでいてもらえれば」
「ほう。とうとう籍を……籍を入れただと!?」
「わ、珍しいリアクションだねえリン様」
「いや、お前たちの場合は遅かれ早かれだとは思っていたが、まさか在学中にとは思っていなかった」
「在学中の方が各種手続きがラクだと思って。学生の方が時間はあるだろうし」
「一理ある。では、同居を始めたのか」
「それは秋学期のテストが終わってからかな。そのあれやこれやで最近は忙しかったんですよー」
本来はもっと改まった報告の場を設けるであろう話題のはずが、本当についでの話題としてさらりと流す辺りが宮ちゃんだなと安心感は覚えるが。曰く、事前に籍を入れると話していたのも家族以外では浅浦だけだというし、オレの他に唯一報告したという高崎相手にも、各種手続きのために出向いた学生課でたまたま会ったから立ち話ついでの報告だったという。
一方で、双方のことを知らない朝霞に対しては席を入れた翌日時点で「名字が変わりました」というLINEを送っていたようだ。実際のやり取りを見せてもらったのだが、ノリが完全にネット上のそれだ。同人名義のSNSでも結婚報告はしたとのことで(かの性悪狸も入籍自体は知っているのだろう)、朝霞はどういう扱いの友人なのかが何となく透けて見えたところだ。
「それで、今日はこのような用事で外に出ていると奴は知っているのか」
「旦那さん?」
「ああ」
「ゲーマーとしての威信をかけた戦いだとは伝えてあるし、趣味のことには基本ノータッチなんで」
「趣味には相互不干渉のルールがあるのだったな」
「そうそう」
「伊東さんの旦那さんてゲームとかやる人なの?」
「本当にちょっとだけね。サッカー好きな人だからサッカーゲームはたまにやってるけど。でもこないだはオン友のレイヤーさんと一緒にマリパやってた」
「かのコスプレイヤーは宮ちゃんの家によく行っているのか」
「そうね。オン友でありオフ友である貴重な存在ですよ。オンの話題をオフで出来るっていう意味じゃ、バネ様とレイ君も同じだけ素晴らしい友人だと思っておりますので、オンでもオフでも今後ともよろしくお願いします」
ちなみに、旧姓から取っている愛称の“宮ちゃん”に関してはそのままでいいとのことで、その言葉に甘えてそのままで行かせてもらうことにした。一方で、宮林さんと呼んでいた朝霞は新しい名字である伊東さんという風に呼び方を改めている。来春からは同じ会社への就職が決まっているということだし、朝霞はその方が良いだろう。
「そう言えば、かのレイヤーさんはバイト先のリーダーさんに日頃からどれだけ虐げられているかっていうのを興奮気味によく報告してくるんですよぉ」
「下らない事を言っている暇があるならアップをしたらどうだ」
「は~い、対戦よろしくお願いしま~す」
end.
++++
慧梨夏vs菜月さんの対決の舞台をお膳立てしているというだけのUSDX。非公式の割に本格的なんだよなあ
コンちゃんが完全におまけ扱いされているような感じなので、2人とも捲ったったらいいんじゃないかなと思う。
Pさん、伊東さんの旦那さんと普通に友達なんだけど旦那の素性を知らんからのほほんとしてるんだわ
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