2021(03)
■行事を支える屋台骨
++++
「おはよーございまーす」
「来たか五百崎」
「あれっ、今日ってユースケさんシフト入ってましたっけ」
「いや、非番だ。お前に用事があってな」
シフトに入っていようといまいとセンターのスタッフは割とこの事務所で時間を潰すことが多いのだが、土曜日ともなればさすがに大学に来る奴もそういない。今日この時間のシフトに入っているのは高山と五百崎だ。今の時期は土曜日の利用者など数えるほどしか来ないし、B番ですら利用者が来るまで事務所で待機するなどはザラだ。
長期休暇であればシフトに入っているのが1人ということもあるのだが、今は一応平常授業の期間なので利用者が来なくてもA番とB番で1人ずつはいることになっている。ただ、B番の高山は受付を横目で見ながら何をするでもなく好きな本を読んでいるし、休みの日のセンター事務所などはそんな感じだ。尤も、テスト期間や卒論シーズンになればこの限りではないのだが。
「さっそく本題に入りたいのだが、大晦日の夜は空いているか」
「大晦日ってーと12月31日っすよね。今のところ大丈夫っすよ。何かあるんすか?」
「このセンターに大量の芋を搬入してきた間抜け面の男のことは覚えているか」
「ドリミさんをタテに引き伸ばしたみたいな人っすよね、黒縁眼鏡の」
「ああ、その男だ。あれが主催で、内輪のライブパーティーのような物が開催されることになったのだ」
「へー」
「今年もやるんですね」
「そのようだな。味を占めたのだろう」
「ライブパーティーすか、面白そうっすね。そーいやあの人ドラマーだって言ってたっすね」
昨年はシャッフルバンド音楽祭と銘打っていたようだが、さすがに今年は参加者を丸々シャッフルするのは負担だろうということで、その場で組みたい相手がいれば好きに声を掛け合って何か好きにやったらいいんじゃない、という悪く言えばいい加減なスタンスになったようだ。要は、既存のバンドで曲を披露することが多くなるとのこと。
一応昨年の参加者には現段階で声をかけてあるが、既に辞退者もいくらか出ているということだ。青山さんによれば、共催の長谷川から連絡が回った高崎は、現場でドラムはやらないという風に断りを入れて来たそうだ。ただ、バーカウンターでドリンクくらい配れと招集はされているとのこと。
「去年からその傾向にあったのだが、ベーシストが慢性的に不足していてな」
「へー、そーなんすね」
「お前さえ良ければベーシストとして参加する方向で主催に伝えるが。お前個人だけでなく、バンドでの参加も歓迎だ」
「自分はやりますよー。バンドマンは基本面白人間っすからね」
「そのスタンスに変わりはないのだな」
「バンドでの参加についてはちょっとメンバーに話す時間を下さい。まあ、乗って来るとは思うんですけど」
「返事は今月中でいいそうだ」
「了解っすー。つか、ウチのバンドで出ればベーシスト2人確保できますからね。デカいっすよね」
「そう言えばツインベース編成のヴィジュアル系バンドだと言っていたな」
五百崎に関してはなかなか好感触なようだ。面白人間を探して歩く五百崎自身も十分面白人間だ。面白人間の集いそうな場には積極的に足を伸ばしていくスタンスらしい。そして、去年の参加者には今年の音楽祭への参加を求める声がかかっているということで、恐らくは声がかかっているであろう高山だ。
「高山、お前にも開催要項は来たのだろう」
「さすがに今年はやりませんよ」
「だろうな」
「えー! 高山さんもそのライブにやる側で出てたんすかー!? ちなみに何をやってたんすか?」
「あの間抜け面の男は、当時高山のもう一方のバイト先の同僚でな。配信スタッフとしての協力要請のはずがいつの間にか演者としてバンドに組み込まれていたという経緯がある。ヴィ・ラ・タントンという打楽器バンドなのだが」
「へー、打楽器すかー。ドラムとかすか?」
「いや、手持ちの打楽器だ」
「楽器はやらないと言ったら、配信は手伝えと言われたのでそっちの方で行くことにはなってます」
「お前も高崎コースなのだな」
「高崎先輩も現場には来るんですね」
「アイツはバーカウンターの中が指定席だからな」
今年はヴィ・ラ・タントンはないとは青山さんも言っていたし、高山や高崎のように去年の演者が裏方に回ることもあるし、新しいバンドを結成したり、解散したバンドのメンバーが個人として参加することもあるという。基本、あの人が主催する音楽イベントに関しては何でもありというスタンスでやるようだ。
実際、この話を聞いていたらしいカンノがUSDXのバンドマンを集めてこのメンバーで乗り込むのだと例によって鼻息を荒くしていた。一応、去年の音楽祭で知り合ったメンバーが集って新バンドを結成したという体で行くようだ。曲もUSDXで発表している既存の曲ではなくカンノが新曲を拵えるらしい。オレもブルースプリングの方では一応新曲を書いているのだが。
「去年は綾瀬さんも出てましたし、綾瀬さんにも今年のイベントの話は来てるんですかね」
「それは知らんが、去年の参加者には一律に要項を送ったと言っていたから、通知はされているのではないか」
「えー! 姫も出てたんすか!? 姫もバンドで!?」
「いや、綾瀬は歌と踊りだ。ミュージカルのような感じでやっていたな」
「あのイベントは何でもありだから。真桜、去年の映像見る?」
「見た過ぎます!」
end.
++++
今年度っぽいベーシストの心当たりといえばここ。まおみおの姉弟になるのかしら。
高崎は塩見さんの強火担というのがカンDからの評価だけど実際そうだから仕方ない。だからバーカウンターの中には入る。
そういや今年カナコの年末のスケジュールってどんな感じなんだろう。また分刻みとかになるのかな?
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「おはよーございまーす」
「来たか五百崎」
「あれっ、今日ってユースケさんシフト入ってましたっけ」
「いや、非番だ。お前に用事があってな」
シフトに入っていようといまいとセンターのスタッフは割とこの事務所で時間を潰すことが多いのだが、土曜日ともなればさすがに大学に来る奴もそういない。今日この時間のシフトに入っているのは高山と五百崎だ。今の時期は土曜日の利用者など数えるほどしか来ないし、B番ですら利用者が来るまで事務所で待機するなどはザラだ。
長期休暇であればシフトに入っているのが1人ということもあるのだが、今は一応平常授業の期間なので利用者が来なくてもA番とB番で1人ずつはいることになっている。ただ、B番の高山は受付を横目で見ながら何をするでもなく好きな本を読んでいるし、休みの日のセンター事務所などはそんな感じだ。尤も、テスト期間や卒論シーズンになればこの限りではないのだが。
「さっそく本題に入りたいのだが、大晦日の夜は空いているか」
「大晦日ってーと12月31日っすよね。今のところ大丈夫っすよ。何かあるんすか?」
「このセンターに大量の芋を搬入してきた間抜け面の男のことは覚えているか」
「ドリミさんをタテに引き伸ばしたみたいな人っすよね、黒縁眼鏡の」
「ああ、その男だ。あれが主催で、内輪のライブパーティーのような物が開催されることになったのだ」
「へー」
「今年もやるんですね」
「そのようだな。味を占めたのだろう」
「ライブパーティーすか、面白そうっすね。そーいやあの人ドラマーだって言ってたっすね」
昨年はシャッフルバンド音楽祭と銘打っていたようだが、さすがに今年は参加者を丸々シャッフルするのは負担だろうということで、その場で組みたい相手がいれば好きに声を掛け合って何か好きにやったらいいんじゃない、という悪く言えばいい加減なスタンスになったようだ。要は、既存のバンドで曲を披露することが多くなるとのこと。
一応昨年の参加者には現段階で声をかけてあるが、既に辞退者もいくらか出ているということだ。青山さんによれば、共催の長谷川から連絡が回った高崎は、現場でドラムはやらないという風に断りを入れて来たそうだ。ただ、バーカウンターでドリンクくらい配れと招集はされているとのこと。
「去年からその傾向にあったのだが、ベーシストが慢性的に不足していてな」
「へー、そーなんすね」
「お前さえ良ければベーシストとして参加する方向で主催に伝えるが。お前個人だけでなく、バンドでの参加も歓迎だ」
「自分はやりますよー。バンドマンは基本面白人間っすからね」
「そのスタンスに変わりはないのだな」
「バンドでの参加についてはちょっとメンバーに話す時間を下さい。まあ、乗って来るとは思うんですけど」
「返事は今月中でいいそうだ」
「了解っすー。つか、ウチのバンドで出ればベーシスト2人確保できますからね。デカいっすよね」
「そう言えばツインベース編成のヴィジュアル系バンドだと言っていたな」
五百崎に関してはなかなか好感触なようだ。面白人間を探して歩く五百崎自身も十分面白人間だ。面白人間の集いそうな場には積極的に足を伸ばしていくスタンスらしい。そして、去年の参加者には今年の音楽祭への参加を求める声がかかっているということで、恐らくは声がかかっているであろう高山だ。
「高山、お前にも開催要項は来たのだろう」
「さすがに今年はやりませんよ」
「だろうな」
「えー! 高山さんもそのライブにやる側で出てたんすかー!? ちなみに何をやってたんすか?」
「あの間抜け面の男は、当時高山のもう一方のバイト先の同僚でな。配信スタッフとしての協力要請のはずがいつの間にか演者としてバンドに組み込まれていたという経緯がある。ヴィ・ラ・タントンという打楽器バンドなのだが」
「へー、打楽器すかー。ドラムとかすか?」
「いや、手持ちの打楽器だ」
「楽器はやらないと言ったら、配信は手伝えと言われたのでそっちの方で行くことにはなってます」
「お前も高崎コースなのだな」
「高崎先輩も現場には来るんですね」
「アイツはバーカウンターの中が指定席だからな」
今年はヴィ・ラ・タントンはないとは青山さんも言っていたし、高山や高崎のように去年の演者が裏方に回ることもあるし、新しいバンドを結成したり、解散したバンドのメンバーが個人として参加することもあるという。基本、あの人が主催する音楽イベントに関しては何でもありというスタンスでやるようだ。
実際、この話を聞いていたらしいカンノがUSDXのバンドマンを集めてこのメンバーで乗り込むのだと例によって鼻息を荒くしていた。一応、去年の音楽祭で知り合ったメンバーが集って新バンドを結成したという体で行くようだ。曲もUSDXで発表している既存の曲ではなくカンノが新曲を拵えるらしい。オレもブルースプリングの方では一応新曲を書いているのだが。
「去年は綾瀬さんも出てましたし、綾瀬さんにも今年のイベントの話は来てるんですかね」
「それは知らんが、去年の参加者には一律に要項を送ったと言っていたから、通知はされているのではないか」
「えー! 姫も出てたんすか!? 姫もバンドで!?」
「いや、綾瀬は歌と踊りだ。ミュージカルのような感じでやっていたな」
「あのイベントは何でもありだから。真桜、去年の映像見る?」
「見た過ぎます!」
end.
++++
今年度っぽいベーシストの心当たりといえばここ。まおみおの姉弟になるのかしら。
高崎は塩見さんの強火担というのがカンDからの評価だけど実際そうだから仕方ない。だからバーカウンターの中には入る。
そういや今年カナコの年末のスケジュールってどんな感じなんだろう。また分刻みとかになるのかな?
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