2021(03)
■レジェンド級を攻め立てる
++++
「シたら、参加費と引き換えに席順のクジをオナシャース」
「はーい、シノでーす。えーっと、緑ヶ丘の2番っすね」
「じャ、奥の方にドーゾ」
「あざーっす」
今日は緑ヶ丘と向島の交流会ということで、飲み会と缶蹴り大会が開かれることになっている。元々はラジオの技術を交わし合うっていう交流会だったらしいけど、久々にやるし両校の友好を深めようということでこの形になったのが去年のこと。去年の缶蹴り大会が引き分けっつーもやっとした感じで終わったから、4年生もちょっと参加してくるらしい。
向島の先輩から指定された場所に行くと、周りにはまだ誰も座って来ない。1人で鍋を前に待てを食らうのも地獄だぜ。何鍋なんだろ。俺はあんま酒が飲めないし、缶蹴りの方にガチりたいから飲んでも1杯だけのつもりだ。ササは入り口側の机にいるみたいだ。隣には高木先輩で、向かいには野坂先輩。あの辺に人が固まってんな。
「高崎先輩おはようございます! この度は伊東先輩共々、愚民上等向島の売った喧嘩を買っていただきありがとうございます!」
「まあ、去年のラストはお互い消化不良だろ。今年こそはぶっ潰してやるから覚悟しとけ」
「ん、ぶっ潰してやるというのはこちらのセリフだよ、高崎」
「ヤッター! 交流会だけど、戦争だー! 4年生の先輩の血の気が多くて今日も飯が美味いぜ!」
「ヤ、野坂、お前の性癖はいーンでさッさと高崎先輩を解放しやがれ」
「はっ…! 申し訳ございません! クジを引いてください!」
「まあ、何つーか、お前は良くも悪くも何も変わってねえな。えーと、緑ヶ丘の1番」
「シたら、奥の卓へドーゾ」
「サンキュ」
何だって!? 1人で待てをしていた俺の斜め前に座ったのは何と何と高崎先輩だ! いや、現在進行形で武勇伝を積み重ねてる伝説の先輩にビビってるとかではないんだけど、まさかこんな場で同じ鍋をつつくことになるなんて思わねーじゃねーか! きっとこれも何かの縁だな! いろいろ伝説の真相を聞いてみたいぜ!
「高崎先輩おざっす!」
「あ? 智也か。お前がいるなら本腰入れて食ってかねえと食いっぱぐれるな」
「こういう店って飲み放題はあっても食い放題にはならないっすよね」
「下手に食い放題にすると、あっちみたいな地獄の席順になったときに店が潰れる」
そう言って高崎先輩が指したのは、ササがいる入り口側の鍋だ。あそこは誕生日席を含めた5人席なんだけど、その誕生日席には果林先輩。果林先輩がこっちにいないってことは俺は平和に飯を食えるなとホッとしたのも一瞬のこと。高崎先輩から、食糧戦争とかいう物騒な単語が出るんだ。
「食糧戦争? っすか?」
「果林と野坂は見境なく食う連中だ。その戦争に巻き込まれて食いっぱぐれる奴が他の卓に避難してくる。一人当たりの食える量は減ると思え」
「マジすか…!」
「圭斗はあんま食わねえ奴だからともかく、陸は絶対満足出来ねえし、どっか移動するだろうな。Lか大樹のところが無難だが、さてどうなるかな」
「えーと、向島1番ってのはここになるのか?」
「菜月か。よかったな、食糧戦争に巻き込まれずに済んで」
「ホントに。あの卓は戦争不可避だからな」
「えっと、4年生の先輩っすか? 自分は篠木智也、シノって言います」
「向島4年の奥村菜月。DJネームはなっちだ」
「なっち先輩っすね!」
向島の4年生の先輩はレジェンド級の人らだって話は聞いてるし、ヤベー人と一緒になったんなら武勇伝とかいろいろ聞いてみてーんだけどどーかなー! そうこうしてる間に鍋の具材とか最初につまむようなモンが運ばれてきてるし、席も順調に埋まってる。でも俺の隣、向島の2番ってトコに人が来ないから、クジを配ってた先輩が来るのかな。
「とりあえず、飲み放メニューから適当に選んで向こうに回してこうぜ」
「そうだな。高崎はビールでうちは何にするかな。レモンサワーにしよう。シノは?」
「俺はウーロン茶でお願いします」
「飲めないのか? それとも缶蹴りガチ勢か?」
「飲めない缶蹴りガチ勢っす」
「緑ヶ丘なのに飲めないのか、珍しいな」
「ウチにも何年かに1人は飲めない奴も出る」
「ウチに何年かに1人メチャクチャ飲める人が出るようなモンだな。ヒロ、これ飲むものだからそっちの卓も決めて向こうに回してくれ」
「ええですよ」
少しずつ分かって来たんだけど、インターフェイスの中では緑ヶ丘というだけで飲める奴認定されるみたいな風潮があるっぽい。俺は全然飲めないから、同期の連中がメチャクチャザルなのにもビビってたんだけど、みんな俺が飲めないことにビビってたもんな。つか厳密にはまだ飲んじゃダメなんだぜ?
「失礼しヤーす、向島2番でース」
「りっちゃんか。席順があんまり去年と代わり映えしないな」
「もしかして、番組の企画からラジドラの脚本執筆に高木先輩ばりの遊んだミキシングまで何でも出来るヤベー先輩って噂のりっちゃん先輩すか!?」
「……どんな話になってるのかはともかく、自分がそのりっちゃん先輩スよ。すがやんが何を話してるンすかねェー」
「自分は篠木智也、シノっていいます! ヤベーミキサーのりっちゃん先輩に、いろいろ武勇伝を聞きたいっす!」
「高崎先輩、こーゆー感じの子なんスかね」
「諦めろ。一度智也に捕まったら面白い話をするまで解放されねえぞ」
「マジすか。言って自分はそんな面白くないンすけどね」
「でもすげーミキサーなんすよね?」
「ヤ、武勇伝とかなら野坂とかあーゆーのに聞いたらいーンじゃないスかね」
「野坂先輩は緑ヶ丘のミキサーより緑ヶ丘っぽいって聞いてます。向島のヤバさを表すにはりっちゃん先輩クラスじゃねーと、みたいな風には」
「さ、最初の一杯も来たンで乾杯しヤすかァー」
end.
++++
入り口側の5人席が食糧戦争だーとみんなビビっている間に、奥の方のレジェンド席ではこんなことになってました
やっぱ高崎と圭斗さんはバチバチにやり合ってて欲しいしそれを見てノサカがメシウマしてて欲しい
りっちゃんがヤベーミキサー扱いされてるのが楽しいし、MBCC的にノサカは普通の奴扱いになってるのも面白い。
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「シたら、参加費と引き換えに席順のクジをオナシャース」
「はーい、シノでーす。えーっと、緑ヶ丘の2番っすね」
「じャ、奥の方にドーゾ」
「あざーっす」
今日は緑ヶ丘と向島の交流会ということで、飲み会と缶蹴り大会が開かれることになっている。元々はラジオの技術を交わし合うっていう交流会だったらしいけど、久々にやるし両校の友好を深めようということでこの形になったのが去年のこと。去年の缶蹴り大会が引き分けっつーもやっとした感じで終わったから、4年生もちょっと参加してくるらしい。
向島の先輩から指定された場所に行くと、周りにはまだ誰も座って来ない。1人で鍋を前に待てを食らうのも地獄だぜ。何鍋なんだろ。俺はあんま酒が飲めないし、缶蹴りの方にガチりたいから飲んでも1杯だけのつもりだ。ササは入り口側の机にいるみたいだ。隣には高木先輩で、向かいには野坂先輩。あの辺に人が固まってんな。
「高崎先輩おはようございます! この度は伊東先輩共々、愚民上等向島の売った喧嘩を買っていただきありがとうございます!」
「まあ、去年のラストはお互い消化不良だろ。今年こそはぶっ潰してやるから覚悟しとけ」
「ん、ぶっ潰してやるというのはこちらのセリフだよ、高崎」
「ヤッター! 交流会だけど、戦争だー! 4年生の先輩の血の気が多くて今日も飯が美味いぜ!」
「ヤ、野坂、お前の性癖はいーンでさッさと高崎先輩を解放しやがれ」
「はっ…! 申し訳ございません! クジを引いてください!」
「まあ、何つーか、お前は良くも悪くも何も変わってねえな。えーと、緑ヶ丘の1番」
「シたら、奥の卓へドーゾ」
「サンキュ」
何だって!? 1人で待てをしていた俺の斜め前に座ったのは何と何と高崎先輩だ! いや、現在進行形で武勇伝を積み重ねてる伝説の先輩にビビってるとかではないんだけど、まさかこんな場で同じ鍋をつつくことになるなんて思わねーじゃねーか! きっとこれも何かの縁だな! いろいろ伝説の真相を聞いてみたいぜ!
「高崎先輩おざっす!」
「あ? 智也か。お前がいるなら本腰入れて食ってかねえと食いっぱぐれるな」
「こういう店って飲み放題はあっても食い放題にはならないっすよね」
「下手に食い放題にすると、あっちみたいな地獄の席順になったときに店が潰れる」
そう言って高崎先輩が指したのは、ササがいる入り口側の鍋だ。あそこは誕生日席を含めた5人席なんだけど、その誕生日席には果林先輩。果林先輩がこっちにいないってことは俺は平和に飯を食えるなとホッとしたのも一瞬のこと。高崎先輩から、食糧戦争とかいう物騒な単語が出るんだ。
「食糧戦争? っすか?」
「果林と野坂は見境なく食う連中だ。その戦争に巻き込まれて食いっぱぐれる奴が他の卓に避難してくる。一人当たりの食える量は減ると思え」
「マジすか…!」
「圭斗はあんま食わねえ奴だからともかく、陸は絶対満足出来ねえし、どっか移動するだろうな。Lか大樹のところが無難だが、さてどうなるかな」
「えーと、向島1番ってのはここになるのか?」
「菜月か。よかったな、食糧戦争に巻き込まれずに済んで」
「ホントに。あの卓は戦争不可避だからな」
「えっと、4年生の先輩っすか? 自分は篠木智也、シノって言います」
「向島4年の奥村菜月。DJネームはなっちだ」
「なっち先輩っすね!」
向島の4年生の先輩はレジェンド級の人らだって話は聞いてるし、ヤベー人と一緒になったんなら武勇伝とかいろいろ聞いてみてーんだけどどーかなー! そうこうしてる間に鍋の具材とか最初につまむようなモンが運ばれてきてるし、席も順調に埋まってる。でも俺の隣、向島の2番ってトコに人が来ないから、クジを配ってた先輩が来るのかな。
「とりあえず、飲み放メニューから適当に選んで向こうに回してこうぜ」
「そうだな。高崎はビールでうちは何にするかな。レモンサワーにしよう。シノは?」
「俺はウーロン茶でお願いします」
「飲めないのか? それとも缶蹴りガチ勢か?」
「飲めない缶蹴りガチ勢っす」
「緑ヶ丘なのに飲めないのか、珍しいな」
「ウチにも何年かに1人は飲めない奴も出る」
「ウチに何年かに1人メチャクチャ飲める人が出るようなモンだな。ヒロ、これ飲むものだからそっちの卓も決めて向こうに回してくれ」
「ええですよ」
少しずつ分かって来たんだけど、インターフェイスの中では緑ヶ丘というだけで飲める奴認定されるみたいな風潮があるっぽい。俺は全然飲めないから、同期の連中がメチャクチャザルなのにもビビってたんだけど、みんな俺が飲めないことにビビってたもんな。つか厳密にはまだ飲んじゃダメなんだぜ?
「失礼しヤーす、向島2番でース」
「りっちゃんか。席順があんまり去年と代わり映えしないな」
「もしかして、番組の企画からラジドラの脚本執筆に高木先輩ばりの遊んだミキシングまで何でも出来るヤベー先輩って噂のりっちゃん先輩すか!?」
「……どんな話になってるのかはともかく、自分がそのりっちゃん先輩スよ。すがやんが何を話してるンすかねェー」
「自分は篠木智也、シノっていいます! ヤベーミキサーのりっちゃん先輩に、いろいろ武勇伝を聞きたいっす!」
「高崎先輩、こーゆー感じの子なんスかね」
「諦めろ。一度智也に捕まったら面白い話をするまで解放されねえぞ」
「マジすか。言って自分はそんな面白くないンすけどね」
「でもすげーミキサーなんすよね?」
「ヤ、武勇伝とかなら野坂とかあーゆーのに聞いたらいーンじゃないスかね」
「野坂先輩は緑ヶ丘のミキサーより緑ヶ丘っぽいって聞いてます。向島のヤバさを表すにはりっちゃん先輩クラスじゃねーと、みたいな風には」
「さ、最初の一杯も来たンで乾杯しヤすかァー」
end.
++++
入り口側の5人席が食糧戦争だーとみんなビビっている間に、奥の方のレジェンド席ではこんなことになってました
やっぱ高崎と圭斗さんはバチバチにやり合ってて欲しいしそれを見てノサカがメシウマしてて欲しい
りっちゃんがヤベーミキサー扱いされてるのが楽しいし、MBCC的にノサカは普通の奴扱いになってるのも面白い。
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