2021(03)
■平和的な場所はどこにある
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水曜日の4限の時間は特に授業を入れてなく、合同ゼミなどもないので自由な時間だ。サークルは一応4限の後から始まるという体なので、同じく時間のある果林先輩と第2学食でおやつにすることに。水曜日はあまり学部固有とかの授業が入って来ない印象がある。教授たちが忙しいからだとか、そんな風に聞いたことはあるけど。
「そう言えばさ、今日ぐらいにゼミの合格発表があるとかって話じゃなかったっけ」
「ああ、確かササとシノがそんな風に言ってたような気がしますね」
「アタシは学部からのお知らせで見たんだけど。って言うかアプリあるんだから合格発表もわざわざ紙に印刷して貼り出さなくてもそっちで更新すればいいんじゃないかって思うんだけど」
「前々から紙で貼り出してるしってことなんですかね」
社会学部では2年生からゼミに入ることになっていて、希望したゼミに入れているかどうかは社会学部棟という建物のロビーに掲示されることになっている。正直、社会学部棟という建物はゼミ希望届を出しに行く時とこの掲示を見に行くときにしか入らない場所だからどんな役割のある建物なのかはよく知らないんだけど。
ササとシノは前々から佐藤ゼミに入ってセンタービルのラジオブースで番組をやりたいんだという風に言っている。そしてゼミ志望届もエントリーシートもそのように出して、個人面談の段階で先生から採用だという風に言われていた。だけど、実際に受かったのかどうかはこの瞬間までとても不安になるんだよなあ。俺も去年そうだったし。
「結局、佐藤ゼミにエントリーしてきたのは70人くらいでしたっけ」
「確かそれくらいだったはず。例年よりちょっと多かったとは言ってたね」
「やっぱり根強い人気があるんですかね」
「あのラジオに騙されてみんな来るんだよね。よっぽど機材に強いかヒゲに気に入られなきゃあそこには入れないってのに」
「ま、確かに先生の鶴の一声で決まる感はありますもんね。他校からも引っ張ってきますし」
「そう言えばタカちゃん、サドニナの相手はどうだった?」
「どうもこうも。俺は普通に番組をやるだけなので別にっていう感じだったんですけど、番組外では他の子たちと少々いざこざも有りつつという感じで大変でした」
先生が授業をしているという青女から何人かいい子を連れて来たと言った中にサドニナがいたんだけど、それがまあ大変だったんだよね。大学祭のブースを一緒に回すという話になってたし、ラジオブースで1回番組をやったりっていう中で鵠さんと安曇野さんが物凄くイライラしてたし、樽中くんもブチ切れてたんだよね。で、俺は板挟みになって。
「サドニナはナチュラルに煽って来るからねえ。イライラするのもまあわかる。啓子さんもよくブチ切れてたし」
「神崎先輩に聞いたサドニナ対処法も俺には全く出来ない手法でしたし」
「それで、鵠さんとあずみんはまあわかるにしても、樽中クンてあの独特なファッションの子でしょ? あの子が何でブチ切れてたの?」
「あの子は趣味で小説を書いてて文芸部でもあるんですけど、サドニナが商業ラインに乗って来ない創作、特に小説に何の価値があるんだ的なことを言ったのに対してブチ切れたという感じですね」
「え、それでどうなったの」
「どうもしませんよ。樽中くんは怒りはしてましたけど別にサドニナに食って掛かるようなことはしませんでしたし。先生も青女の人を連れて来るのに飽きたのか、もう来ないとは言ってたんで一件落着です。なのでみんなの機嫌が良くて俺も安心してます」
「今年のタカちゃんは板挟みとかフォローポジションになりがちだからねえ」
そんなことを話していると、果林先輩のスマホに通知が入る。シノからのLINEのようで、ササもシノも2人とも佐藤ゼミに受かっていたという報告だ。4限が終わるまでにはまだもう少し時間があるので、ササとシノも呼んで話そうということになった。社会学部棟からなら5分もあれば合流すると思う。
「出来れば平和的なポジションでのんびりやれたらいいんですけどねえ」
「そう上手くはいかないモンだよ」
「例えば、ゼミの機材云々でオープンキャンパスも3日間フル出勤みたいなことになりがちですけど、そういうのをシノにもしれっと分担したりとか」
「それはしばらくないんじゃないかな」
「え、ないですか?」
「言ってシノはゼミに入った時点で2年でしょ? いくらやる気があったところで学業的にもタカちゃんと同じくらいなら、より使える方を使うのがヒゲだからね」
「使える方なんですかね」
「言ってシノの機材の扱いは新機材部長としてもちょっと心配してたトコでしょ」
「まあそうですけどね。パソコン周りの機能は最低限は使えてますけど人並みなんですよね」
「そうそう。現状シノはタカちゃんの下位互換だってヒゲに言っちゃったからさ。ま、その役割を回避したければタカちゃんが、シノをみっちり育てればいいんですよねー」
「俺がやるしかないんですね」
「そうですね。ミキサーのことだけならともかくゼミに関係する機材のことまではLの知ったことじゃないしね」
どっちにしてもその辺のことは機材部長として、新しい機材管理担当となったシノには教えておかないといけないところだし、MBCC的にもゼミ的にも俺の保身という意味でもやっておかなきゃいけないんだなあ。いや、シノが使えるようになったところで君は何をしてるのって言って来るのが先生なんだろうけど。
「あ、ササとシノが来たね」
「あっ、先輩たちおざーっす!」
「おはようございます」
「無事合格おめでとう」
「いやー、合格だってわかっててもやっぱ緊張しますね!」
end.
++++
ゼミ合格発表の裏でのタカりん。去年はササシノが合流してからの話だったけど、その前の時間。
サドニナが暴れ回ってた件なんかは来年度以降とかにやれたらやりたいんだけど、TKGが困るだけのヤツや
現状シノはタカちゃんの下位互換ではあるけれど、伸びしろや成長曲線に対するロマンはピカイチ。あとは育成側の手腕。
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水曜日の4限の時間は特に授業を入れてなく、合同ゼミなどもないので自由な時間だ。サークルは一応4限の後から始まるという体なので、同じく時間のある果林先輩と第2学食でおやつにすることに。水曜日はあまり学部固有とかの授業が入って来ない印象がある。教授たちが忙しいからだとか、そんな風に聞いたことはあるけど。
「そう言えばさ、今日ぐらいにゼミの合格発表があるとかって話じゃなかったっけ」
「ああ、確かササとシノがそんな風に言ってたような気がしますね」
「アタシは学部からのお知らせで見たんだけど。って言うかアプリあるんだから合格発表もわざわざ紙に印刷して貼り出さなくてもそっちで更新すればいいんじゃないかって思うんだけど」
「前々から紙で貼り出してるしってことなんですかね」
社会学部では2年生からゼミに入ることになっていて、希望したゼミに入れているかどうかは社会学部棟という建物のロビーに掲示されることになっている。正直、社会学部棟という建物はゼミ希望届を出しに行く時とこの掲示を見に行くときにしか入らない場所だからどんな役割のある建物なのかはよく知らないんだけど。
ササとシノは前々から佐藤ゼミに入ってセンタービルのラジオブースで番組をやりたいんだという風に言っている。そしてゼミ志望届もエントリーシートもそのように出して、個人面談の段階で先生から採用だという風に言われていた。だけど、実際に受かったのかどうかはこの瞬間までとても不安になるんだよなあ。俺も去年そうだったし。
「結局、佐藤ゼミにエントリーしてきたのは70人くらいでしたっけ」
「確かそれくらいだったはず。例年よりちょっと多かったとは言ってたね」
「やっぱり根強い人気があるんですかね」
「あのラジオに騙されてみんな来るんだよね。よっぽど機材に強いかヒゲに気に入られなきゃあそこには入れないってのに」
「ま、確かに先生の鶴の一声で決まる感はありますもんね。他校からも引っ張ってきますし」
「そう言えばタカちゃん、サドニナの相手はどうだった?」
「どうもこうも。俺は普通に番組をやるだけなので別にっていう感じだったんですけど、番組外では他の子たちと少々いざこざも有りつつという感じで大変でした」
先生が授業をしているという青女から何人かいい子を連れて来たと言った中にサドニナがいたんだけど、それがまあ大変だったんだよね。大学祭のブースを一緒に回すという話になってたし、ラジオブースで1回番組をやったりっていう中で鵠さんと安曇野さんが物凄くイライラしてたし、樽中くんもブチ切れてたんだよね。で、俺は板挟みになって。
「サドニナはナチュラルに煽って来るからねえ。イライラするのもまあわかる。啓子さんもよくブチ切れてたし」
「神崎先輩に聞いたサドニナ対処法も俺には全く出来ない手法でしたし」
「それで、鵠さんとあずみんはまあわかるにしても、樽中クンてあの独特なファッションの子でしょ? あの子が何でブチ切れてたの?」
「あの子は趣味で小説を書いてて文芸部でもあるんですけど、サドニナが商業ラインに乗って来ない創作、特に小説に何の価値があるんだ的なことを言ったのに対してブチ切れたという感じですね」
「え、それでどうなったの」
「どうもしませんよ。樽中くんは怒りはしてましたけど別にサドニナに食って掛かるようなことはしませんでしたし。先生も青女の人を連れて来るのに飽きたのか、もう来ないとは言ってたんで一件落着です。なのでみんなの機嫌が良くて俺も安心してます」
「今年のタカちゃんは板挟みとかフォローポジションになりがちだからねえ」
そんなことを話していると、果林先輩のスマホに通知が入る。シノからのLINEのようで、ササもシノも2人とも佐藤ゼミに受かっていたという報告だ。4限が終わるまでにはまだもう少し時間があるので、ササとシノも呼んで話そうということになった。社会学部棟からなら5分もあれば合流すると思う。
「出来れば平和的なポジションでのんびりやれたらいいんですけどねえ」
「そう上手くはいかないモンだよ」
「例えば、ゼミの機材云々でオープンキャンパスも3日間フル出勤みたいなことになりがちですけど、そういうのをシノにもしれっと分担したりとか」
「それはしばらくないんじゃないかな」
「え、ないですか?」
「言ってシノはゼミに入った時点で2年でしょ? いくらやる気があったところで学業的にもタカちゃんと同じくらいなら、より使える方を使うのがヒゲだからね」
「使える方なんですかね」
「言ってシノの機材の扱いは新機材部長としてもちょっと心配してたトコでしょ」
「まあそうですけどね。パソコン周りの機能は最低限は使えてますけど人並みなんですよね」
「そうそう。現状シノはタカちゃんの下位互換だってヒゲに言っちゃったからさ。ま、その役割を回避したければタカちゃんが、シノをみっちり育てればいいんですよねー」
「俺がやるしかないんですね」
「そうですね。ミキサーのことだけならともかくゼミに関係する機材のことまではLの知ったことじゃないしね」
どっちにしてもその辺のことは機材部長として、新しい機材管理担当となったシノには教えておかないといけないところだし、MBCC的にもゼミ的にも俺の保身という意味でもやっておかなきゃいけないんだなあ。いや、シノが使えるようになったところで君は何をしてるのって言って来るのが先生なんだろうけど。
「あ、ササとシノが来たね」
「あっ、先輩たちおざーっす!」
「おはようございます」
「無事合格おめでとう」
「いやー、合格だってわかっててもやっぱ緊張しますね!」
end.
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ゼミ合格発表の裏でのタカりん。去年はササシノが合流してからの話だったけど、その前の時間。
サドニナが暴れ回ってた件なんかは来年度以降とかにやれたらやりたいんだけど、TKGが困るだけのヤツや
現状シノはタカちゃんの下位互換ではあるけれど、伸びしろや成長曲線に対するロマンはピカイチ。あとは育成側の手腕。
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