2021(03)
■500円以内の最高効率
++++
「さあシノ、好きなのを頼んでくれ」
「マジかよ、予算500円とか何でも食えるじゃねーか」
「みんなとも予算500円で食べ歩きしてたんだろ」
「まあな。えー、どれにしよう。普段食わないのがいいのかな、やっぱ」
昨日がシノの誕生日だったということで、MBCCの1年メンバーは大学祭での食べ歩きでシノをお祝いしていた。すがやんに牛串をごちそうになったとか、くるみが焼き芋を買ってくれたとか、そんなようなお土産話を聞いていると、俺の回れてない範囲にもいろいろなブースがあったんだなと思う。
肝心の俺はと言えば、大学祭期間でなくても基本的にシノと一緒の行動になるので、明日の昼飯奢るよという話で落ち着いていた。予算はみんなと同じ500円。ただ、緑大の学食では500円もあればLサイズの丼を食べてもお釣りがくるのでシノにも満足してもらえると思う。普段はおにぎりを作って節制してるけど、今日はガッツリとLサイズを行ってほしい。
「ササ、例えばの話をするぞ」
「ああ」
「カツ丼Lサイズが450円」
「だな」
「そのカツ丼450円に、味噌汁30円券を付けても、480円だよな?」
「そうだな」
「うおー、マジか、味噌汁が付いて来るのか…! でも、カツ丼を別のにするとどうなる? あー、マグロの漬け丼とかになるとさすがに味噌汁は付けれないかー」
「悩め悩め」
ちなみに今来ているのは第2学食で、オシャレで美味しいけど他よりは少し高いというタイプの場所だ。シノは貯金を始めてから味はまあまあだけど他より少し安くて量が多い第1学食の方を主に使っていて、第2学食に来るのも久し振りだという感想が第一声だった。シノと昼を食べている俺も実はランチをしに来るのは久し振りだ。カフェとしてはちょこちょこ使ってるけど。
「高木先輩がよく食ってるっていう揚げ鶏丼も気になってるんだよなー」
「美味いらしいよな。高木先輩リスペクトで俺は揚げ鶏丼にしようかな」
「マジかよ! あー、俺はどうするかなー、味噌汁を付ける観点で言えば470円以下になるんだけど、そうすると丼の幅が狭まるんだよな。味噌汁じゃなくて玉子トッピングとかの線もあるけど、どうすっかなー。そもそも丼Lサイズの線で行ってるけどたまには麺類もアリだな。安めの麺類と、おやつにたい焼きとか。くあーっ、組み合わせが多すぎて悩むんだが!?」
「自分から選択肢を増やしに行ってるんだよな」
第2学食には丼の店と麺類の店、それからスナックコーナーがある。それとはまた別に店がいくつかあるんだけど、今日は第2学食に来てみたんだ。丼と麺は券売機で食券を買うシステムだけど、スナックコーナーは店頭に立って口でどれこれくださいと注文をする。必ずしも1つの店だけで完結しなくてもいいので、500円以内の組み合わせが地味に多い。
「や! 最初の印象通り、やっぱカツ丼に味噌汁~…!? 漬け丼、漬け丼? え~、あ~」
「そこまで悩むってことは、よっぽど普段は切り詰めてるんだな」
「1人暮らしがしたいんだよな。70万貯めるまではこの生活だな。大学近くに住むだろ? そしたら毎日通学にかかってる3時間ちょいが空くわけだ。家のことをしなきゃいけないにしても、それでも有意義に使えるんじゃねーかと思ってさ」
「3時間って聞くと、相当だな。ほら、俺通学時間が往復でも20分かかるかかからないかくらいだし」
「そう、近いってのは正義なんだよ」
俺たちの中だったらすがやんとサキが遠い方ではあるけど、それでもシノほどじゃないんだよな。だから日常の通学がしんどいというレベルではないらしいし、通学がめんどくて1人暮らしをしたいという発想にはなかなかならない。やっぱり片道1時間半を超えて来るとしんどいっていうのが出て来るのかな。
ただ、MBCCだとエリアを越えて片道2時間超かけて通学しているエージ先輩がいる。だからシノが1人暮らしをしたいって言っても「エリアの中に住んでるのに?」という話になるんだよな。いや、言ってもエージ先輩は高木先輩の部屋に入り浸ってることの方が多いまであるし、案外家に帰ってないんじゃないかという疑惑すらある。別邸じゃないけど。
「でも、確か4年生の先輩は比較的近いのに1人暮らししてたんだよな。伊東さんは家の教育方針で1人暮らしをしなさいって放り出されたとか、あと、高崎先輩も生粋の星港市民らしいけど、普通にそこに住んでるじゃんな」
「L先輩と一緒んトコだろ? 徒歩5分とかで大学に着くアパート。徒歩5分とかマジで夢だぜ」
「ホントだよな。大学にコンビニもあるし、最低限なら本当にどうとでもなるもんな。……で、この話の間に食べるものは決まったのか?」
「全然考えてなかったけど、高崎先輩って単語で思い出したソースカツ丼にしてみるかな。ソースカツ丼ならLサイズでも470円だからギリ味噌汁も付けれるし」
「お釣りなしの最高効率だな」
「よーし、ソースカツ丼にするぜ! ササ、ゴチになります!」
「食べろ食べろ。で、俺は揚げ鶏丼。俺もたまには味噌汁付けようかな」
一度贅沢を覚えると再び節約生活に戻った時が不安だけど、たまの贅沢はモチベーションを保つのに必要な場面もある。今はシノの誕生日だから必要な贅沢だし、シノが1人暮らしを始めたら俺も遊びに行ったりしたいんだ。だから節約には全力で応援。
end.
++++
去年は豊葦の街でランチをしていたササシノですが、今年は学内のランチです。シャレオツな第2学食で。
シノの節約生活はまだまだ中盤。おにぎり生活は続くけど、それで美味しい三角おにぎりを作るスキルが身に付く。
この頃になるとエイジはTKG宅に使い捨ての下着類も買い置きしてあるので、やっぱ普通に入り浸ってるわ
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「さあシノ、好きなのを頼んでくれ」
「マジかよ、予算500円とか何でも食えるじゃねーか」
「みんなとも予算500円で食べ歩きしてたんだろ」
「まあな。えー、どれにしよう。普段食わないのがいいのかな、やっぱ」
昨日がシノの誕生日だったということで、MBCCの1年メンバーは大学祭での食べ歩きでシノをお祝いしていた。すがやんに牛串をごちそうになったとか、くるみが焼き芋を買ってくれたとか、そんなようなお土産話を聞いていると、俺の回れてない範囲にもいろいろなブースがあったんだなと思う。
肝心の俺はと言えば、大学祭期間でなくても基本的にシノと一緒の行動になるので、明日の昼飯奢るよという話で落ち着いていた。予算はみんなと同じ500円。ただ、緑大の学食では500円もあればLサイズの丼を食べてもお釣りがくるのでシノにも満足してもらえると思う。普段はおにぎりを作って節制してるけど、今日はガッツリとLサイズを行ってほしい。
「ササ、例えばの話をするぞ」
「ああ」
「カツ丼Lサイズが450円」
「だな」
「そのカツ丼450円に、味噌汁30円券を付けても、480円だよな?」
「そうだな」
「うおー、マジか、味噌汁が付いて来るのか…! でも、カツ丼を別のにするとどうなる? あー、マグロの漬け丼とかになるとさすがに味噌汁は付けれないかー」
「悩め悩め」
ちなみに今来ているのは第2学食で、オシャレで美味しいけど他よりは少し高いというタイプの場所だ。シノは貯金を始めてから味はまあまあだけど他より少し安くて量が多い第1学食の方を主に使っていて、第2学食に来るのも久し振りだという感想が第一声だった。シノと昼を食べている俺も実はランチをしに来るのは久し振りだ。カフェとしてはちょこちょこ使ってるけど。
「高木先輩がよく食ってるっていう揚げ鶏丼も気になってるんだよなー」
「美味いらしいよな。高木先輩リスペクトで俺は揚げ鶏丼にしようかな」
「マジかよ! あー、俺はどうするかなー、味噌汁を付ける観点で言えば470円以下になるんだけど、そうすると丼の幅が狭まるんだよな。味噌汁じゃなくて玉子トッピングとかの線もあるけど、どうすっかなー。そもそも丼Lサイズの線で行ってるけどたまには麺類もアリだな。安めの麺類と、おやつにたい焼きとか。くあーっ、組み合わせが多すぎて悩むんだが!?」
「自分から選択肢を増やしに行ってるんだよな」
第2学食には丼の店と麺類の店、それからスナックコーナーがある。それとはまた別に店がいくつかあるんだけど、今日は第2学食に来てみたんだ。丼と麺は券売機で食券を買うシステムだけど、スナックコーナーは店頭に立って口でどれこれくださいと注文をする。必ずしも1つの店だけで完結しなくてもいいので、500円以内の組み合わせが地味に多い。
「や! 最初の印象通り、やっぱカツ丼に味噌汁~…!? 漬け丼、漬け丼? え~、あ~」
「そこまで悩むってことは、よっぽど普段は切り詰めてるんだな」
「1人暮らしがしたいんだよな。70万貯めるまではこの生活だな。大学近くに住むだろ? そしたら毎日通学にかかってる3時間ちょいが空くわけだ。家のことをしなきゃいけないにしても、それでも有意義に使えるんじゃねーかと思ってさ」
「3時間って聞くと、相当だな。ほら、俺通学時間が往復でも20分かかるかかからないかくらいだし」
「そう、近いってのは正義なんだよ」
俺たちの中だったらすがやんとサキが遠い方ではあるけど、それでもシノほどじゃないんだよな。だから日常の通学がしんどいというレベルではないらしいし、通学がめんどくて1人暮らしをしたいという発想にはなかなかならない。やっぱり片道1時間半を超えて来るとしんどいっていうのが出て来るのかな。
ただ、MBCCだとエリアを越えて片道2時間超かけて通学しているエージ先輩がいる。だからシノが1人暮らしをしたいって言っても「エリアの中に住んでるのに?」という話になるんだよな。いや、言ってもエージ先輩は高木先輩の部屋に入り浸ってることの方が多いまであるし、案外家に帰ってないんじゃないかという疑惑すらある。別邸じゃないけど。
「でも、確か4年生の先輩は比較的近いのに1人暮らししてたんだよな。伊東さんは家の教育方針で1人暮らしをしなさいって放り出されたとか、あと、高崎先輩も生粋の星港市民らしいけど、普通にそこに住んでるじゃんな」
「L先輩と一緒んトコだろ? 徒歩5分とかで大学に着くアパート。徒歩5分とかマジで夢だぜ」
「ホントだよな。大学にコンビニもあるし、最低限なら本当にどうとでもなるもんな。……で、この話の間に食べるものは決まったのか?」
「全然考えてなかったけど、高崎先輩って単語で思い出したソースカツ丼にしてみるかな。ソースカツ丼ならLサイズでも470円だからギリ味噌汁も付けれるし」
「お釣りなしの最高効率だな」
「よーし、ソースカツ丼にするぜ! ササ、ゴチになります!」
「食べろ食べろ。で、俺は揚げ鶏丼。俺もたまには味噌汁付けようかな」
一度贅沢を覚えると再び節約生活に戻った時が不安だけど、たまの贅沢はモチベーションを保つのに必要な場面もある。今はシノの誕生日だから必要な贅沢だし、シノが1人暮らしを始めたら俺も遊びに行ったりしたいんだ。だから節約には全力で応援。
end.
++++
去年は豊葦の街でランチをしていたササシノですが、今年は学内のランチです。シャレオツな第2学食で。
シノの節約生活はまだまだ中盤。おにぎり生活は続くけど、それで美味しい三角おにぎりを作るスキルが身に付く。
この頃になるとエイジはTKG宅に使い捨ての下着類も買い置きしてあるので、やっぱ普通に入り浸ってるわ
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