2021(03)
■お祭りムードが調味料
++++
「シノー! 今番組やってないでしょ? 食べ歩き行こー!」
「おっ、いいな!」
「すがやんも一緒に行こう!」
「オッケー」
大学祭3日目。来場者のピークはやっぱり土曜日なんだけど、今日は今日でそれなりの人出があるようだ。MBCCではDJブースを回しながら焼きそばを焼いては売りの繰り返し。食品ブースの売り上げは、さすがにいろいろなブーストのあった去年ほどではないけれど、今年は今年でまあまあやれているとは3年生の先輩の見立てだ。
今日は大学祭3日目でもあるけど、シノの誕生日でもある。1年6人は誰かしらの誕生日を迎えると何となくお祝いをするという空気になっているので、今日も例に漏れずお祝いムード。特別何かをするわけではないけど気持ち程度のプレゼントをして、というような感じ。ササの時は読書グッズを贈ったり、くるみの時には断面の綺麗なホールケーキを贈ったりした。
「今日は模擬店の中からシノが食べたい物をあたしたちがごちそうするって企画だからね!」
「マジでこれを楽しみにしてたんだよな。ほら、美味そうだなって思っても結構高いのも少なくないし。節約中の身としてはマジで地獄だったからな」
「そこでお祭りムードに流されない辺り、シノの財布の紐の硬さが凄いよな」
「ホントに。あたしだったら絶対大学祭だからって割高なスイーツでも食べちゃうもん!」
「いや、俺もホントは食いたいんだけどさ、これも1人暮らし貯金のためなんだよ!」
シノは向島エリアの南方に位置する西形市に住んでいる。そこから電車通学をしてるんだけど、通学に1時間半とかだったかな? それっくらいの結構な時間がかかるそうだ。通学の往復3時間がしんどくなってきたので、大学近くで1人暮らしをするため親に交渉したところ、貯金70万を貯めたら家を出てもいいと言われたらしい。で、倹約中なんだ。
学科が一緒で基本的に一緒に行動しているササによれば、シノの倹約はガチで、学食でLサイズを頼むにも金がかかるということで、普段からおにぎりを作って家から持ってきているそうだ。自分で持って来たおにぎりとMサイズの食事で差額の何十円かを大切にしていると。俺はあんまりそういうことを意識したことはなかったけど、貯金をするにはそういうところからだよな。
「シノ、食べたいのがあったら言ってね!」
「マジで悩む。こうやって見たら、MBCCの焼きそばって100円でそこそこ食えて、味も最高ってコスパ良過ぎだよな」
「ホントに! サキと3人で試作した時から思ってたけど、本当にそうだよね!」
「このレシピを開発した2年生の先輩が凄いんだよな。三者三様のこだわりをぶつけてんのに味が喧嘩せずにまとまってるし」
「って言うか何だかんだであんまり回れてないんだよな。友達もいろんなトコでブースやってるらしいんだけど顔出せてなくて」
「すがやんは顔が広いから、友達に挨拶するだけでも1日かかりそう」
「すがやんのダチってどんなブースやってんだ?」
「民俗学研究会の子は串団子を売ってるって言ってた。地方によって上に乗せたり塗ったりするものも違うとかで。あと、NSCの子はフィッシュアンドチップスって言ってたかな。それから、紅茶研究会の子はアフタヌーンティーやるって言ってたし、それから――」
どこにどんな友達がいてどんなブースをやってる、という話だけでも真面目に時間を食ってしまう。多いのはわかったからもういいと2人からストップがかかり、歩きながら紹介をしてくれということに落ち着いた。ただ、外の通り以外の校舎の中とかでやってるブースもあったりして、残り1日で全部は多分回り切れないんだよな。
「シノが好きそうなことをやってんのはフェンシング同好会かな。あそこが牛肉の串焼きをやってるって聞いた」
「マジか! えっ、いや、デカさが問題だ!」
「結構なヤツだよ。だからその分値段もするんだけど、見に行くだけ見に行く?」
「行く行く!」
「シノ、フェンシング研究会のブースはあそこっぽい」
「うおー! めっちゃいい匂いー! しかも結構デカい串だな! これで500円かー、肉かー、いいなー、どうしよっかなー」
焼き鳥とか、ああいったタイプのブースの前を通ると匂いがすっごい誘惑なんだよな。MBCCの焼きそばもソースの匂いがたまんないんだけど。しかしながら、思った以上の牛串焼きだ。どうやってこれで500円を実現させてるんだろうか。
「すがやん、俺これ食いたい」
「わかったよ。おーい、つかっちゃーん」
「おー! てっちゃん! 来てくれたんだ!」
「やっと時間出来たよー。肉めっちゃ美味そうじゃん。あ、串2本で」
「1000円でーす。お連れさんはてっちゃんの何の友達?」
「サークルの友達。この、シノってのが今日誕生日でさ、牛串でお祝いしようと思って」
「お~、めでたいじゃん。そしたら一切れサービスしとくよ」
「マジで! あざっす!」
「はーい、そしたら牛串2本でーす」
また今度遊ぼうなーとブースを後にして、サービスしてもらった方の串をシノに渡す。いつも思うけど、俺の友達は気のいい人が多い。次はどこを回ろうか。
「肉うめー! すがやんマジでサンキュー、何かサービスしてもらっちゃったし」
「シノ、次食べたいのあったらあたしに言ってね!」
「くるみにはやっぱデザートの分野になんのかなー、もうちょっと歩いてみようぜ!」
「そうだね!」
end.
++++
MBCCの1年生6人は仲良しなので、誕生日イベントも律儀にやっています。そして安定のすがやんの顔の広さ。
この時間軸で果林が高崎とお米同好会のブースを荒らしに行ったんだなあ……出禁すれすれのレベルで
規模も大きいしいろいろある緑大の学祭だけど、MBCCの焼きそばは安くてまあまあ食べれて味も良いので売れるのよ
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「シノー! 今番組やってないでしょ? 食べ歩き行こー!」
「おっ、いいな!」
「すがやんも一緒に行こう!」
「オッケー」
大学祭3日目。来場者のピークはやっぱり土曜日なんだけど、今日は今日でそれなりの人出があるようだ。MBCCではDJブースを回しながら焼きそばを焼いては売りの繰り返し。食品ブースの売り上げは、さすがにいろいろなブーストのあった去年ほどではないけれど、今年は今年でまあまあやれているとは3年生の先輩の見立てだ。
今日は大学祭3日目でもあるけど、シノの誕生日でもある。1年6人は誰かしらの誕生日を迎えると何となくお祝いをするという空気になっているので、今日も例に漏れずお祝いムード。特別何かをするわけではないけど気持ち程度のプレゼントをして、というような感じ。ササの時は読書グッズを贈ったり、くるみの時には断面の綺麗なホールケーキを贈ったりした。
「今日は模擬店の中からシノが食べたい物をあたしたちがごちそうするって企画だからね!」
「マジでこれを楽しみにしてたんだよな。ほら、美味そうだなって思っても結構高いのも少なくないし。節約中の身としてはマジで地獄だったからな」
「そこでお祭りムードに流されない辺り、シノの財布の紐の硬さが凄いよな」
「ホントに。あたしだったら絶対大学祭だからって割高なスイーツでも食べちゃうもん!」
「いや、俺もホントは食いたいんだけどさ、これも1人暮らし貯金のためなんだよ!」
シノは向島エリアの南方に位置する西形市に住んでいる。そこから電車通学をしてるんだけど、通学に1時間半とかだったかな? それっくらいの結構な時間がかかるそうだ。通学の往復3時間がしんどくなってきたので、大学近くで1人暮らしをするため親に交渉したところ、貯金70万を貯めたら家を出てもいいと言われたらしい。で、倹約中なんだ。
学科が一緒で基本的に一緒に行動しているササによれば、シノの倹約はガチで、学食でLサイズを頼むにも金がかかるということで、普段からおにぎりを作って家から持ってきているそうだ。自分で持って来たおにぎりとMサイズの食事で差額の何十円かを大切にしていると。俺はあんまりそういうことを意識したことはなかったけど、貯金をするにはそういうところからだよな。
「シノ、食べたいのがあったら言ってね!」
「マジで悩む。こうやって見たら、MBCCの焼きそばって100円でそこそこ食えて、味も最高ってコスパ良過ぎだよな」
「ホントに! サキと3人で試作した時から思ってたけど、本当にそうだよね!」
「このレシピを開発した2年生の先輩が凄いんだよな。三者三様のこだわりをぶつけてんのに味が喧嘩せずにまとまってるし」
「って言うか何だかんだであんまり回れてないんだよな。友達もいろんなトコでブースやってるらしいんだけど顔出せてなくて」
「すがやんは顔が広いから、友達に挨拶するだけでも1日かかりそう」
「すがやんのダチってどんなブースやってんだ?」
「民俗学研究会の子は串団子を売ってるって言ってた。地方によって上に乗せたり塗ったりするものも違うとかで。あと、NSCの子はフィッシュアンドチップスって言ってたかな。それから、紅茶研究会の子はアフタヌーンティーやるって言ってたし、それから――」
どこにどんな友達がいてどんなブースをやってる、という話だけでも真面目に時間を食ってしまう。多いのはわかったからもういいと2人からストップがかかり、歩きながら紹介をしてくれということに落ち着いた。ただ、外の通り以外の校舎の中とかでやってるブースもあったりして、残り1日で全部は多分回り切れないんだよな。
「シノが好きそうなことをやってんのはフェンシング同好会かな。あそこが牛肉の串焼きをやってるって聞いた」
「マジか! えっ、いや、デカさが問題だ!」
「結構なヤツだよ。だからその分値段もするんだけど、見に行くだけ見に行く?」
「行く行く!」
「シノ、フェンシング研究会のブースはあそこっぽい」
「うおー! めっちゃいい匂いー! しかも結構デカい串だな! これで500円かー、肉かー、いいなー、どうしよっかなー」
焼き鳥とか、ああいったタイプのブースの前を通ると匂いがすっごい誘惑なんだよな。MBCCの焼きそばもソースの匂いがたまんないんだけど。しかしながら、思った以上の牛串焼きだ。どうやってこれで500円を実現させてるんだろうか。
「すがやん、俺これ食いたい」
「わかったよ。おーい、つかっちゃーん」
「おー! てっちゃん! 来てくれたんだ!」
「やっと時間出来たよー。肉めっちゃ美味そうじゃん。あ、串2本で」
「1000円でーす。お連れさんはてっちゃんの何の友達?」
「サークルの友達。この、シノってのが今日誕生日でさ、牛串でお祝いしようと思って」
「お~、めでたいじゃん。そしたら一切れサービスしとくよ」
「マジで! あざっす!」
「はーい、そしたら牛串2本でーす」
また今度遊ぼうなーとブースを後にして、サービスしてもらった方の串をシノに渡す。いつも思うけど、俺の友達は気のいい人が多い。次はどこを回ろうか。
「肉うめー! すがやんマジでサンキュー、何かサービスしてもらっちゃったし」
「シノ、次食べたいのあったらあたしに言ってね!」
「くるみにはやっぱデザートの分野になんのかなー、もうちょっと歩いてみようぜ!」
「そうだね!」
end.
++++
MBCCの1年生6人は仲良しなので、誕生日イベントも律儀にやっています。そして安定のすがやんの顔の広さ。
この時間軸で果林が高崎とお米同好会のブースを荒らしに行ったんだなあ……出禁すれすれのレベルで
規模も大きいしいろいろある緑大の学祭だけど、MBCCの焼きそばは安くてまあまあ食べれて味も良いので売れるのよ
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