2021(03)
■いろいろ寒い秋
＋＋＋＋
「いやー、やっぱ朝晩冷え込んでくると、鍋がうめーなー！ なあ野坂君！ おーい、磐田ー、ビール持ってきてー」
「はーい」
「まもちゃーん、俺にもー」
「はーい」
俺はひょんなことから前原先輩宅での鍋パーティーというものに巻き込まれてしまった。まず確認するのは賭けの有無。麻雀をする可能性はあるけど今回は賭けのない現場だということで、恐る恐る来てみたものの。京川さんがいるだなんて聞いてないのだが!?
「前原君京川さん、ビールでーす。野坂君は良かった？」
「あ、俺は先のをまだいただいてます」
「そう。欲しくなったら言ってねー」
そして磐田先輩は鍋の支度もするんだもんなあ。誰の家なんだよって気もするけど、このメンツだとそうやって働くのが磐田先輩しかいないんだよなあ。前原先輩と京川さんが協力的でも明日槍が降るんじゃないかと怖すぎるから、これくらいでいい。
「はー、でも本当に寒いねー。俺こたつ出したよー。前原君はこたつまだなの？」
「これだから山羽人は。さみーにはさみーけどそこまで大騒ぎするレベルかよ」
「前原君は雪国出身だから耐性があるんでしょ」
「マエトモが雪国マウント取ってくるのすげームカつくわ。まもちゃんコイツ潰して身ぐるみ剥がそう。あっ、剥ぐだけのモンがなかったわ」
「はー!? うっぜー！ 京川さんアンタやっぱ安定のめんどくささっすよね！」
確か前原先輩も緑風の出身だったっけか。でも、雪国マウントじゃないけど、寒さ耐性というのは本当にあるということを俺は知っているので、サークルでもよく見た光景だなあと懐かしさすら覚える。なんなら山羽の人が寒さに弱いというのもそうだ。
クズ同士がなんか言い合ってら、とは思うのだけど、前原先輩の言う京川さんのめんどくささに関しては同意しかない。あくまで俺はこの現場に巻き込まれた人畜無害な３年生でしかないので、磐田先輩の陰に隠れて存在感を消すのが安全な過ごし方だろう。
「そーいや野坂君、学祭の準備とかやってる？ MMPで何かすんの？」
「今年はフライドポテトのブースを出展することになっています。あとは備品などを揃えればいいという段階でしょうか」
「今年はスープじゃないんだねー」
「そうですね。毎年出すものは変えていますので。今年はジャガイモが大量に手に入ったので、来期以降の活動資金を稼ぐためにも４年生の先輩方のご協力もいただきガチ商売モードで行く所存です」
「あー、４年生いるんだ。じゃ俺は近付かない方がいいな」
「それは何故」
「奥村さんに見つかったら財布の中身全部スられる気がする」
「あー……前原先輩も財布属性なんですね」
「財布属性？」
「あ」
ついうっかりMMPのノリで菜月先輩の財布を意味する用語を使ってしまったのだけど、カノンをMMPのサークル室まで連れてってやって欲しいと頼んだ際のエピソードなんかを聞いてしまえば納得しかないワケで。貢ぎ物にプリンというのは正しい選択である。
「MMPには菜月先輩の財布として利用されていると言っても過言ではない４年生の先輩がいまして……先日も就活の履歴書の添削の対価として焼き肉のプレミアムコース飲み放題付きをポンと奢っていたとかナントカ」
「金ってあるところにはあるんだな、羨ましい」
「いえ、その先輩も決してめちゃくちゃ稼いでいるというワケでもないのですが、菜月先輩に対しては事あるごとにお金を出しているので俺たちの間では財布と呼ばれているのです」
「あー、菜月ちゃんの貢がれ体質についてはダイちゃんから聞いたことあるかもしんないね。それにしてもひっどい名前をつけたモンだねえ。Ｓ君さあ、散々俺のことをクズだの何だのって言ってるけど、自分も結構なロクデナシじゃん」
「ええ。それを踏まえた上で京川さんがさらなるクズであるという事実を述べているだけですが」
「登場人物全員ドクズ、いいねいいね。人間ってそうじゃなくちゃ」
俺もクズ認定されたことで、晴れて次の酒を開ける。熱い鍋には冷たいビールが最高だぜ。もう少し季節が深まれば、こたつにアイスも良い。寒いのは嫌だけどそれを楽しみに生きるしかないな。
「そしたらＳ君、今度焼き肉行く？ 俺、炭火虎徹って店が気になっててさ」
「ええと……もちろん、サシではないですよね？」
「俺とサシの何が不満なの。せっかく先輩が焼き肉奢ってあげるって言ってるのに～」
「ちょっ、京川さん虎徹ってめっちゃ高い店じゃないすか！」
「そうだよ」
「俺にも奢るべきっしょ！ 野坂君ばっかり贔屓だな～」
「マエトモうるさいよ。俺はマエトモと語らう必要性を感じてないから。Ｓ君とはお喋りしたいから焼き肉に行くんだよ」
「野坂君、しこたま食って京川さんをビビらせたれ」
「お生憎様。俺、金はあるし基本カードで払うから。１回10万、１日50万とかザラに稼ぐからね～」
「ちくしょー、アンタが言ってる焼き肉って何かの隠語だろ！ 野坂君気をつけろ、この人は女食って飯食ってる人種だ」
「何の回数かは聞きませんが、学生としては桁違いの財布であることには違いなさそうですね」
「え～、そしたらさ、ダイちゃん誘うよ～。それでどう？」
「検討はします」
「しないヤツ！」
end.
＋＋＋＋
毎度おなじみクズ集団が鍋パーティーをしているようです。善人扱いのバンデンもクズの仲間だから仕方ないね。
相変わらず三井サンの話で盛り上がっていますが、前原さん的には気の毒にも思うのかしら。菜月さん被害者の会。
プロ氏はナノスパ屈指の金持ちのキャラであるので、ノサカが高い店でしこたま食おうがノーダメージなのである。
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「いやー、やっぱ朝晩冷え込んでくると、鍋がうめーなー！ なあ野坂君！ おーい、磐田ー、ビール持ってきてー」
「はーい」
「まもちゃーん、俺にもー」
「はーい」
俺はひょんなことから前原先輩宅での鍋パーティーというものに巻き込まれてしまった。まず確認するのは賭けの有無。麻雀をする可能性はあるけど今回は賭けのない現場だということで、恐る恐る来てみたものの。京川さんがいるだなんて聞いてないのだが!?
「前原君京川さん、ビールでーす。野坂君は良かった？」
「あ、俺は先のをまだいただいてます」
「そう。欲しくなったら言ってねー」
そして磐田先輩は鍋の支度もするんだもんなあ。誰の家なんだよって気もするけど、このメンツだとそうやって働くのが磐田先輩しかいないんだよなあ。前原先輩と京川さんが協力的でも明日槍が降るんじゃないかと怖すぎるから、これくらいでいい。
「はー、でも本当に寒いねー。俺こたつ出したよー。前原君はこたつまだなの？」
「これだから山羽人は。さみーにはさみーけどそこまで大騒ぎするレベルかよ」
「前原君は雪国出身だから耐性があるんでしょ」
「マエトモが雪国マウント取ってくるのすげームカつくわ。まもちゃんコイツ潰して身ぐるみ剥がそう。あっ、剥ぐだけのモンがなかったわ」
「はー!? うっぜー！ 京川さんアンタやっぱ安定のめんどくささっすよね！」
確か前原先輩も緑風の出身だったっけか。でも、雪国マウントじゃないけど、寒さ耐性というのは本当にあるということを俺は知っているので、サークルでもよく見た光景だなあと懐かしさすら覚える。なんなら山羽の人が寒さに弱いというのもそうだ。
クズ同士がなんか言い合ってら、とは思うのだけど、前原先輩の言う京川さんのめんどくささに関しては同意しかない。あくまで俺はこの現場に巻き込まれた人畜無害な３年生でしかないので、磐田先輩の陰に隠れて存在感を消すのが安全な過ごし方だろう。
「そーいや野坂君、学祭の準備とかやってる？ MMPで何かすんの？」
「今年はフライドポテトのブースを出展することになっています。あとは備品などを揃えればいいという段階でしょうか」
「今年はスープじゃないんだねー」
「そうですね。毎年出すものは変えていますので。今年はジャガイモが大量に手に入ったので、来期以降の活動資金を稼ぐためにも４年生の先輩方のご協力もいただきガチ商売モードで行く所存です」
「あー、４年生いるんだ。じゃ俺は近付かない方がいいな」
「それは何故」
「奥村さんに見つかったら財布の中身全部スられる気がする」
「あー……前原先輩も財布属性なんですね」
「財布属性？」
「あ」
ついうっかりMMPのノリで菜月先輩の財布を意味する用語を使ってしまったのだけど、カノンをMMPのサークル室まで連れてってやって欲しいと頼んだ際のエピソードなんかを聞いてしまえば納得しかないワケで。貢ぎ物にプリンというのは正しい選択である。
「MMPには菜月先輩の財布として利用されていると言っても過言ではない４年生の先輩がいまして……先日も就活の履歴書の添削の対価として焼き肉のプレミアムコース飲み放題付きをポンと奢っていたとかナントカ」
「金ってあるところにはあるんだな、羨ましい」
「いえ、その先輩も決してめちゃくちゃ稼いでいるというワケでもないのですが、菜月先輩に対しては事あるごとにお金を出しているので俺たちの間では財布と呼ばれているのです」
「あー、菜月ちゃんの貢がれ体質についてはダイちゃんから聞いたことあるかもしんないね。それにしてもひっどい名前をつけたモンだねえ。Ｓ君さあ、散々俺のことをクズだの何だのって言ってるけど、自分も結構なロクデナシじゃん」
「ええ。それを踏まえた上で京川さんがさらなるクズであるという事実を述べているだけですが」
「登場人物全員ドクズ、いいねいいね。人間ってそうじゃなくちゃ」
俺もクズ認定されたことで、晴れて次の酒を開ける。熱い鍋には冷たいビールが最高だぜ。もう少し季節が深まれば、こたつにアイスも良い。寒いのは嫌だけどそれを楽しみに生きるしかないな。
「そしたらＳ君、今度焼き肉行く？ 俺、炭火虎徹って店が気になっててさ」
「ええと……もちろん、サシではないですよね？」
「俺とサシの何が不満なの。せっかく先輩が焼き肉奢ってあげるって言ってるのに～」
「ちょっ、京川さん虎徹ってめっちゃ高い店じゃないすか！」
「そうだよ」
「俺にも奢るべきっしょ！ 野坂君ばっかり贔屓だな～」
「マエトモうるさいよ。俺はマエトモと語らう必要性を感じてないから。Ｓ君とはお喋りしたいから焼き肉に行くんだよ」
「野坂君、しこたま食って京川さんをビビらせたれ」
「お生憎様。俺、金はあるし基本カードで払うから。１回10万、１日50万とかザラに稼ぐからね～」
「ちくしょー、アンタが言ってる焼き肉って何かの隠語だろ！ 野坂君気をつけろ、この人は女食って飯食ってる人種だ」
「何の回数かは聞きませんが、学生としては桁違いの財布であることには違いなさそうですね」
「え～、そしたらさ、ダイちゃん誘うよ～。それでどう？」
「検討はします」
「しないヤツ！」
end.
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毎度おなじみクズ集団が鍋パーティーをしているようです。善人扱いのバンデンもクズの仲間だから仕方ないね。
相変わらず三井サンの話で盛り上がっていますが、前原さん的には気の毒にも思うのかしら。菜月さん被害者の会。
プロ氏はナノスパ屈指の金持ちのキャラであるので、ノサカが高い店でしこたま食おうがノーダメージなのである。
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