2021(03)
■趣味のお仕事
++++
「すがやーん、サキー、おっはよー!」
「おーすくるみ」
「おはよう」
「ってかすがやんすっごい荷物! 何このおっきい袋」
「あー、これなー。サークル室で使ってもらおうと思って」
俺もすがやんの荷物については気になってたんだけど、敢えて触れることはしていなかったんだ。くるみがダイレクトに聞いてくれたけど、中身やその用途みたいなことはまだわからない。どんな袋なのかと言えば、例えば洋服とかを入れる収納ケースを買った時とかにもらえるような大きな袋。それなんだよね。
サークル室に入ると、大学祭前ということでそれぞれが番組やブースの準備をしていた。俺たち3人は食品ブースの係だからそっちの仕事をやりがちだけど、番組のこともやらないといけないし、なかなか忙しいような感じ。ちなみに、企画番組の方はハナ先輩と、リクエスト番組はすがやんとペアを組むことになっている。
「サキ、座んのちょっと待って」
「え、どうしたの」
「これ敷こうと思って」
「なにそれ、クッション?」
「クッションっつーか座布団っつーか、そんなような物かな。昨日作ってたんだよ」
「えーっ! すっごーい! すがやんが作ったの!? 見せて見せてー! すごーい、ふかふかー!」
すがやんお手製の座布団を椅子に乗せて、角から垂れる紐で脚に括りつける。座ってみると、硬すぎず軟らか過ぎずちょうどいい感じだし、この季節だと座った時にちょっとひやっとなるんだけど、それが軽減されている。椅子の数だけ座布団があるわけじゃないけど、収納式の長椅子は座面がちょっとクッションみたくなってるからいいかあ、とすがやんが吟味している。
「すがやん、このクッションどうしたの?」
「うちで結構大規模な片付けやってたんだけど、その時にぬいぐるみとか服とかがいろいろ出て来たんだよな」
「えっ、まさかそれでリメイク?」
「服はともかくぬいぐるみってそのまま捨てるにはちょっと抵抗あるじゃんか」
「あー……人形の類って人の念みたいな物が乗り移ってそうだもんね。そのまま捨てたら呪われそう」
「そうなんだよ。だから、そのまま捨てるよりは、再利用しようってことで中の綿を拝借して。あっ、もちろんちゃんと綿は1回洗ってるし。カバーは古い服の中からまあまあ丈夫そうな物を選んで縫い合わせたって感じ」
「いつも思うけどすがやんてホントすごいよね」
俺も一度すがやんにシャツのボタンを付け直してもらってるし、手芸とか裁縫が得意っていうのは素直に凄いなあと思う。俺にはあまりそういう特技めいたことはないから。すがやんの座布団はアナウンサー席とミキサー席にも括りつけられて、冬場はあるといいよねとみんなに歓迎されているような感じだ。
「すがやん、ちょっといいか?」
「あっはい。L先輩どーしたんすか?」
「裁縫が得意なすがやんにちょっと相談したいんだけど、ここの窓にカーテンを掛けたいんだよな。時間によっては直射日光がしんどくてさ。これからは冬になるからあったかいなーって程度だろうけど、季節が進んでいくとな」
「あー、そうっすよね。確かに」
「カーテンを作ることって出来そう? 作るのが安いか買った方が安いかっていうのを試算したいんだよ」
「作り方を調べたら出来ると思います」
そう言ってすがやんはカーテンの作り方を調べ始めて、どんな生地でやりますかーってL先輩と話し合っている。本当の遮光カーテンとかじゃなくて、日差しをちょっと和らげる程度のヤツでいいんだけどーって。すがやんは違う大学の友達に教わってテディベア作りもやってるみたいだし、多趣味な方だとは思うけど、手芸・裁縫の比重は大きそう。
「最初にすがやんがお裁縫やるって聞いた時はデニムの加工って言ってたのに、何かだんだん規模が大きくなってない? 気の所為?」
「多分気の所為じゃないと思う。新しいミシン買ったって言ってたし」
「でも、好きな物にお金をかける気持ちはわかるなー。あたしもスイーツ撮影のためにスマホ用の三脚とか包丁とかいいの新しく買ったもん」
「今ってスマホカメラの性能は凄いもんね」
「そうなの! さらにアプリとかを使っていい動画に出来るんだけど、それを青敬の北星に教えてもらいながら研究してるって感じ」
「青敬だったら確かに強そうだね」
「動画と言えば、こないだオリジナルのカバン屋さんの動画見たんだけど、布の色とか裏地の柄とか選んでカスタム出来るんだって! すがやんもカバンとか作ってみたらいいんじゃない!?」
「トートバッグとか?」
「トートバッグもあった! メインはハンドバッグくらいの大きさのカバンだったかな?」
これがこれこれこうでー、とくるみのお喋りは止まることを知らない。ただ聞いてる分には楽しいけど、一応学祭の準備を手伝ったり番組のことを考えたりしないといけないとは思っている。でも、ミキサーだとどうしてもアナウンサーさん待ちみたいな感じになるんだよね。ああ、でもリクエスト番組の練習はした方がいいのかもしれないけど。
「すがやん、食品ブースの仕事が一段落してるならリク番の練習する?」
「おっ、いいね! やるかー」
「それじゃああたし当日のシフト考えようかなー」
end.
++++
単純にすがやんに座布団を作って欲しかったというだけの話なのでそれ以上でも以下でもない。
掃除のL、洗濯のいち氏、そして裁縫のすがやんみたいな感じになってるのね。カーテン、つくるの?
テディベアと言えば、最近情報センターの話でもレンレン見てないな。真桜嬢に押されてるや
.
++++
「すがやーん、サキー、おっはよー!」
「おーすくるみ」
「おはよう」
「ってかすがやんすっごい荷物! 何このおっきい袋」
「あー、これなー。サークル室で使ってもらおうと思って」
俺もすがやんの荷物については気になってたんだけど、敢えて触れることはしていなかったんだ。くるみがダイレクトに聞いてくれたけど、中身やその用途みたいなことはまだわからない。どんな袋なのかと言えば、例えば洋服とかを入れる収納ケースを買った時とかにもらえるような大きな袋。それなんだよね。
サークル室に入ると、大学祭前ということでそれぞれが番組やブースの準備をしていた。俺たち3人は食品ブースの係だからそっちの仕事をやりがちだけど、番組のこともやらないといけないし、なかなか忙しいような感じ。ちなみに、企画番組の方はハナ先輩と、リクエスト番組はすがやんとペアを組むことになっている。
「サキ、座んのちょっと待って」
「え、どうしたの」
「これ敷こうと思って」
「なにそれ、クッション?」
「クッションっつーか座布団っつーか、そんなような物かな。昨日作ってたんだよ」
「えーっ! すっごーい! すがやんが作ったの!? 見せて見せてー! すごーい、ふかふかー!」
すがやんお手製の座布団を椅子に乗せて、角から垂れる紐で脚に括りつける。座ってみると、硬すぎず軟らか過ぎずちょうどいい感じだし、この季節だと座った時にちょっとひやっとなるんだけど、それが軽減されている。椅子の数だけ座布団があるわけじゃないけど、収納式の長椅子は座面がちょっとクッションみたくなってるからいいかあ、とすがやんが吟味している。
「すがやん、このクッションどうしたの?」
「うちで結構大規模な片付けやってたんだけど、その時にぬいぐるみとか服とかがいろいろ出て来たんだよな」
「えっ、まさかそれでリメイク?」
「服はともかくぬいぐるみってそのまま捨てるにはちょっと抵抗あるじゃんか」
「あー……人形の類って人の念みたいな物が乗り移ってそうだもんね。そのまま捨てたら呪われそう」
「そうなんだよ。だから、そのまま捨てるよりは、再利用しようってことで中の綿を拝借して。あっ、もちろんちゃんと綿は1回洗ってるし。カバーは古い服の中からまあまあ丈夫そうな物を選んで縫い合わせたって感じ」
「いつも思うけどすがやんてホントすごいよね」
俺も一度すがやんにシャツのボタンを付け直してもらってるし、手芸とか裁縫が得意っていうのは素直に凄いなあと思う。俺にはあまりそういう特技めいたことはないから。すがやんの座布団はアナウンサー席とミキサー席にも括りつけられて、冬場はあるといいよねとみんなに歓迎されているような感じだ。
「すがやん、ちょっといいか?」
「あっはい。L先輩どーしたんすか?」
「裁縫が得意なすがやんにちょっと相談したいんだけど、ここの窓にカーテンを掛けたいんだよな。時間によっては直射日光がしんどくてさ。これからは冬になるからあったかいなーって程度だろうけど、季節が進んでいくとな」
「あー、そうっすよね。確かに」
「カーテンを作ることって出来そう? 作るのが安いか買った方が安いかっていうのを試算したいんだよ」
「作り方を調べたら出来ると思います」
そう言ってすがやんはカーテンの作り方を調べ始めて、どんな生地でやりますかーってL先輩と話し合っている。本当の遮光カーテンとかじゃなくて、日差しをちょっと和らげる程度のヤツでいいんだけどーって。すがやんは違う大学の友達に教わってテディベア作りもやってるみたいだし、多趣味な方だとは思うけど、手芸・裁縫の比重は大きそう。
「最初にすがやんがお裁縫やるって聞いた時はデニムの加工って言ってたのに、何かだんだん規模が大きくなってない? 気の所為?」
「多分気の所為じゃないと思う。新しいミシン買ったって言ってたし」
「でも、好きな物にお金をかける気持ちはわかるなー。あたしもスイーツ撮影のためにスマホ用の三脚とか包丁とかいいの新しく買ったもん」
「今ってスマホカメラの性能は凄いもんね」
「そうなの! さらにアプリとかを使っていい動画に出来るんだけど、それを青敬の北星に教えてもらいながら研究してるって感じ」
「青敬だったら確かに強そうだね」
「動画と言えば、こないだオリジナルのカバン屋さんの動画見たんだけど、布の色とか裏地の柄とか選んでカスタム出来るんだって! すがやんもカバンとか作ってみたらいいんじゃない!?」
「トートバッグとか?」
「トートバッグもあった! メインはハンドバッグくらいの大きさのカバンだったかな?」
これがこれこれこうでー、とくるみのお喋りは止まることを知らない。ただ聞いてる分には楽しいけど、一応学祭の準備を手伝ったり番組のことを考えたりしないといけないとは思っている。でも、ミキサーだとどうしてもアナウンサーさん待ちみたいな感じになるんだよね。ああ、でもリクエスト番組の練習はした方がいいのかもしれないけど。
「すがやん、食品ブースの仕事が一段落してるならリク番の練習する?」
「おっ、いいね! やるかー」
「それじゃああたし当日のシフト考えようかなー」
end.
++++
単純にすがやんに座布団を作って欲しかったというだけの話なのでそれ以上でも以下でもない。
掃除のL、洗濯のいち氏、そして裁縫のすがやんみたいな感じになってるのね。カーテン、つくるの?
テディベアと言えば、最近情報センターの話でもレンレン見てないな。真桜嬢に押されてるや
.