2021(03)
■つながれクッキー!
++++
「朝霞クーン、お邪魔しまーす」
「ああ、山口。ちょうどお湯の準備が出来たところだし、上がって待っててくれ。今紅茶淹れるし」
「はーい」
こないだUSDXメンバーですき焼きを食べたときに、塩見さんがクッキーを焼くだけのゲームをやっているという話を聞いた。8月、盆明けからは全体の出荷数が増え、9月は決算、そして10月はダウンの出始めということでただただ働いて寝てたまにUSDXという生活になっている塩見さんが、無心でやるゲームとしてこれを挙げていたんだ。
件のすき焼き動画が公開されて、久々にそれを見ていると無性にクッキーが食べたくなった。さすがにゲームで焼いている何億何兆幾千万という量は食べられないけど、洋菓子屋で程よい枚数のクッキーを買って来たんだ。1人で食べるのも味気ないし、ここのところはご無沙汰だった山口を誘ってティータイムだ。
「これ、どこのお店の?」
「世音坂の、どっか細い道を入ったところに小さい表札がかかってるだけの店があって、そこで買った。結構雰囲気良かったし、この紅茶もここで買ったんだよ」
「へえ。やっぱ星港に住んでても知らない店はいっぱいあるね。朝霞クンが紅茶なんて珍しいと思ったけど」
「やっぱクッキーには紅茶かなと思って」
8センチくらいのクッキーを皿の上に盛り付ける。クッキーの種類はいろいろあるけど山口に好きな物を選んでもらったら、マカダミアナッツのヤツとプレーンを選んだ。何だかんだでシンプルなのが好きなんだよなコイツは。俺もプレーンと、定番のチョコチップクッキーを選んだ。とりあえず定番からかなと思って。
「ん。結構バター強めだね。鼻に抜ける」
「美味いか」
「うん、美味しい。結構いい値段するんじゃないの?」
「俺の知ってるクッキーよりは高いけど、奮発出来ない値段ではないから」
そんなことを話していると、インターホンが鳴った。誰かが来るという話はなかったと思うけど、結構急に人が来る家だから驚くことでもない。誰かなとドアの覗き穴から見てみると、大石だったからそのまま上がってもらった。沸かしたお湯はまだあったし、とりあえず大石にも紅茶を出す。
それから、カズから遊びに行っていいかと連絡があったので、いいよと返事をしてしばし待つ。案外この近くにいたようで、来るのも早かった。カズにも紅茶を出して、今日はこれ以上誰も来ないよなと、まっさらになりつつあるマグカップの棚に思う。大学に近いとマジで溜まり場になるんだよな――って、星ヶ丘の人間は山口しかいねーな。
「で、大石とカズの用事って何だった?」
「ちーちゃんからどうぞ」
「あのね、アンツ・フィオーレでクッキーの詰め放題やってたから詰めてきたんだけど、結構上手く行ったから朝霞にもお裾分けー。アニとカズも食べてー」
「マジか。ガチなクッキーの店じゃねーか」
「たまに行くんだよね。主に詰め放題の日にだけど」
「何か伏見か誰かから聞いたことがあるな。お前、詰め放題の鬼なんだってな。普通の人の何倍も詰めて来るとか」
「言うほど何倍もじゃないと思うけどなあ」
「確かあの詰め放題が1000円くらいで、普段の量り売りでは6枚とか7枚で500円くらいだろ。お前今回は何枚詰めて来たんだ」
「えっと、確か60枚くらいだったかな?」
「やったことないから相場はわかんないけど、60枚は大石クンでもさすがに美味しいうちに食べ切れないよね~」
「そうなんだよ。だからお裾分け」
俺が先に食べていた洋菓子屋のクッキーの横に、大石が持って来てくれたクッキー専門店のそれが加わる。と言うか、普通にやると20枚行くか行かないかっていう詰め放題で60枚くらいとさらりと言ってしまう大石は、自分がどれだけあり得ないことをやっているのか理解しているのだろうか。絶対してないな、この感じだと。
「カズは何だった?」
「うーん、この後には出しにくいなあ。ハロウィンシーズンだからお菓子を作ろうと思って、クッキーを焼いたんだよね。比較的日持ちするから。カオルの家って結構人集まるっぽいし、1人が無理でも何人かで分けてもらえたらなと思ったんだけど」
「えー! カズのクッキー!? 久し振りだな~。定例会振りー、俺は嬉しいなあ」
「ありがとねちーちゃん」
「俺も嬉しいぞ」
「あ~、俺は伊東クンのお菓子は食べたことないかも」
「比較的日持ちするけど、長くはもたないからなるべく早く食べてもらって」
「彩人にも持ってくかあ」
机の上にカズの手作りクッキーも加わって、意図せず本格的なクッキーパーティーの様相。クッキーがクッキーを呼ぶかのように、倍々ゲームになっている。でもここには俺を含めて4人いるし、食べられない量ではない。ただし、全部食べようと思えばもう少しお茶が必要になるかもしれない。
「カズのクッキーかわいいよね。これ、紫色とかオレンジ色とかって、自然の色を使ってるの?」
「紫は紫芋で、オレンジはカボチャだね。ハロウィンのカラーリングで。でも俺カボチャ好きじゃないから味見がなかなか出来なくて苦労した。レシピ通りにやれば失敗はまずないんだけど」
「うん、ふつ~においし~よね~」
「形も柄もいろいろあってかわいいよね。あずさも好きそうだなあ」
「アイツはこういうの好きだし、持ってってやったらいいと思う」
「そこは朝霞クンが差し入れるところジャなくて?」
「ほんとに。まあ、朝霞らしいと言えばらしいけど」
「仮にも学祭前だぞ。映研は制作で忙しいのに邪魔したら悪いだろ」
end.
++++
クッキーの話が続いています。いちえりちゃん発端のクッキーだしこういうのも全然ある。
クッキーがクッキーを呼ぶし、ちーちゃんの詰め放題とか久し振りだし、いっちークッキーの話題も久し振り。フェーズ2だもんね
単純に洋朝が欲しかったのと今はクッキーの話にしかならんのと、旧定例会のわちゃわちゃに需要があった
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「朝霞クーン、お邪魔しまーす」
「ああ、山口。ちょうどお湯の準備が出来たところだし、上がって待っててくれ。今紅茶淹れるし」
「はーい」
こないだUSDXメンバーですき焼きを食べたときに、塩見さんがクッキーを焼くだけのゲームをやっているという話を聞いた。8月、盆明けからは全体の出荷数が増え、9月は決算、そして10月はダウンの出始めということでただただ働いて寝てたまにUSDXという生活になっている塩見さんが、無心でやるゲームとしてこれを挙げていたんだ。
件のすき焼き動画が公開されて、久々にそれを見ていると無性にクッキーが食べたくなった。さすがにゲームで焼いている何億何兆幾千万という量は食べられないけど、洋菓子屋で程よい枚数のクッキーを買って来たんだ。1人で食べるのも味気ないし、ここのところはご無沙汰だった山口を誘ってティータイムだ。
「これ、どこのお店の?」
「世音坂の、どっか細い道を入ったところに小さい表札がかかってるだけの店があって、そこで買った。結構雰囲気良かったし、この紅茶もここで買ったんだよ」
「へえ。やっぱ星港に住んでても知らない店はいっぱいあるね。朝霞クンが紅茶なんて珍しいと思ったけど」
「やっぱクッキーには紅茶かなと思って」
8センチくらいのクッキーを皿の上に盛り付ける。クッキーの種類はいろいろあるけど山口に好きな物を選んでもらったら、マカダミアナッツのヤツとプレーンを選んだ。何だかんだでシンプルなのが好きなんだよなコイツは。俺もプレーンと、定番のチョコチップクッキーを選んだ。とりあえず定番からかなと思って。
「ん。結構バター強めだね。鼻に抜ける」
「美味いか」
「うん、美味しい。結構いい値段するんじゃないの?」
「俺の知ってるクッキーよりは高いけど、奮発出来ない値段ではないから」
そんなことを話していると、インターホンが鳴った。誰かが来るという話はなかったと思うけど、結構急に人が来る家だから驚くことでもない。誰かなとドアの覗き穴から見てみると、大石だったからそのまま上がってもらった。沸かしたお湯はまだあったし、とりあえず大石にも紅茶を出す。
それから、カズから遊びに行っていいかと連絡があったので、いいよと返事をしてしばし待つ。案外この近くにいたようで、来るのも早かった。カズにも紅茶を出して、今日はこれ以上誰も来ないよなと、まっさらになりつつあるマグカップの棚に思う。大学に近いとマジで溜まり場になるんだよな――って、星ヶ丘の人間は山口しかいねーな。
「で、大石とカズの用事って何だった?」
「ちーちゃんからどうぞ」
「あのね、アンツ・フィオーレでクッキーの詰め放題やってたから詰めてきたんだけど、結構上手く行ったから朝霞にもお裾分けー。アニとカズも食べてー」
「マジか。ガチなクッキーの店じゃねーか」
「たまに行くんだよね。主に詰め放題の日にだけど」
「何か伏見か誰かから聞いたことがあるな。お前、詰め放題の鬼なんだってな。普通の人の何倍も詰めて来るとか」
「言うほど何倍もじゃないと思うけどなあ」
「確かあの詰め放題が1000円くらいで、普段の量り売りでは6枚とか7枚で500円くらいだろ。お前今回は何枚詰めて来たんだ」
「えっと、確か60枚くらいだったかな?」
「やったことないから相場はわかんないけど、60枚は大石クンでもさすがに美味しいうちに食べ切れないよね~」
「そうなんだよ。だからお裾分け」
俺が先に食べていた洋菓子屋のクッキーの横に、大石が持って来てくれたクッキー専門店のそれが加わる。と言うか、普通にやると20枚行くか行かないかっていう詰め放題で60枚くらいとさらりと言ってしまう大石は、自分がどれだけあり得ないことをやっているのか理解しているのだろうか。絶対してないな、この感じだと。
「カズは何だった?」
「うーん、この後には出しにくいなあ。ハロウィンシーズンだからお菓子を作ろうと思って、クッキーを焼いたんだよね。比較的日持ちするから。カオルの家って結構人集まるっぽいし、1人が無理でも何人かで分けてもらえたらなと思ったんだけど」
「えー! カズのクッキー!? 久し振りだな~。定例会振りー、俺は嬉しいなあ」
「ありがとねちーちゃん」
「俺も嬉しいぞ」
「あ~、俺は伊東クンのお菓子は食べたことないかも」
「比較的日持ちするけど、長くはもたないからなるべく早く食べてもらって」
「彩人にも持ってくかあ」
机の上にカズの手作りクッキーも加わって、意図せず本格的なクッキーパーティーの様相。クッキーがクッキーを呼ぶかのように、倍々ゲームになっている。でもここには俺を含めて4人いるし、食べられない量ではない。ただし、全部食べようと思えばもう少しお茶が必要になるかもしれない。
「カズのクッキーかわいいよね。これ、紫色とかオレンジ色とかって、自然の色を使ってるの?」
「紫は紫芋で、オレンジはカボチャだね。ハロウィンのカラーリングで。でも俺カボチャ好きじゃないから味見がなかなか出来なくて苦労した。レシピ通りにやれば失敗はまずないんだけど」
「うん、ふつ~においし~よね~」
「形も柄もいろいろあってかわいいよね。あずさも好きそうだなあ」
「アイツはこういうの好きだし、持ってってやったらいいと思う」
「そこは朝霞クンが差し入れるところジャなくて?」
「ほんとに。まあ、朝霞らしいと言えばらしいけど」
「仮にも学祭前だぞ。映研は制作で忙しいのに邪魔したら悪いだろ」
end.
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クッキーの話が続いています。いちえりちゃん発端のクッキーだしこういうのも全然ある。
クッキーがクッキーを呼ぶし、ちーちゃんの詰め放題とか久し振りだし、いっちークッキーの話題も久し振り。フェーズ2だもんね
単純に洋朝が欲しかったのと今はクッキーの話にしかならんのと、旧定例会のわちゃわちゃに需要があった
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