2021(03)
■趣味と暮らしの枠組み
++++
「千颯、お待たせー」
「ほんと、毎日お疲れさま。そしたら、さっそくだけど行こうか」
「うん」
ちとせと待ち合わせをして、今日の待ち合わせへ。昨日もくるちゃんや北星を含めた4人で会ってたけど、元々2人で会う約束の方が先に決まっていたからこんな感じになっている。青女は大学祭に向けた準備が佳境を迎えていて、学祭前最後の週末となった昨日今日で大きな仕事を片付けてしまう予定だったとか。
夏合宿で一緒になった1年4人はとても仲が良い。UHBCの他の子の話を聞いていても、ここまで頻繁に誰かと会ったりすることはないみたいで驚かれる。だけど先輩たちはそうやって仲のいい友達が出来て良かったねと言ってくれてるし、俺もインターフェイスでの活動が最初は不安だったから、結果としては良かったかなって。
今日は水族館に行く約束をしている。俺は家で飼っている観賞用の魚も好きだけど、水族館にいるような水の中の生き物も好きで水族館にはよく行っている。最低でも月に一度は行くから年パスを買っていて、気が向いた時にふらっと遊びに行くような感じ。でも、ちとせはあまり水族館に行ったことがないみたかったから、それじゃあ行ってみようかって。
「千颯って年パスを買うほど水族館が好きなんだね」
「そうだね。いつも来てるからショーを見たりするのはたまになんだけど、この空間だとか、水と光が好きなのかな」
「確かに、水に囲まれててきれいだもんね。年パスを買ったのはいつ?」
「高校の頃かな。最初は絵の資料にするために水族館に行き始めたんだけど、行ってるうちにハマっちゃって」
「絵を描いてるの? 聞いたことなかったけど」
「あれっ、言ってなかったっけ。水彩画が趣味で、中学校の頃から美術部だったんだよ」
「へー、そうなんだ。千颯の描いた絵、見たいなー」
「一応データ化してスマホにも入れてるんだけど、えーっと……こんな感じ」
「すっごく上手! 魚がキラキラ光を受けてきれいだし!」
「ありがとう。でも、水と光の表現はまだまだだから」
テレビとかで人の描いた絵を見ていると本当に勉強になるけど、たまにどうやってこんなの描いてるんだって人もいて、圧倒されたりもする。ただ魚を眺めるのも好きだし、絵を描くために真剣に見るのも好きだし。大学ではデジタルや、それ以外の新しい方法ででそれをどう表現するかっていうことも勉強している。
「向上心がすごいね」
「紙の上で絵を描くことは、デジタルでの表現の上達にも通じると思うし」
「大学での勉強だね」
「うん。ちとせも大学でいろいろ勉強してるでしょ。日常の何気ないことがそれと結びついたりしない?」
「う~ん……生活科学部だからちゃんと考えれば結び付くんだろうとは思うけど、日頃から勉強のことを考えてないもん。でもそう考えたらくるちゃんも北星も、大学の勉強と趣味が結び付いてるんだね」
くるちゃんはコンビニスイーツの商品開発やPRの仕事がしたいって言っていて、趣味がコンビニスイーツの断面動画の撮影。北星はこの先も映像作品を作って行きたいな~っていう風に言っていて、映像制作を中心とした生活をしている。俺も学部で少し映像のことを勉強してるから北星と仲良くなれた感がある。
ちとせは青女の生活科学部で、端的に言えば衣食住といった生活のことを勉強してるんだよっていう風に聞いている。それこそ衣食住だから、生活と勉強が結び付いているどころかってレベルだし、敢えて意識をしなくてもって感じなのかな。コースは2年に上がるときに決めるらしいし、夏の時点ではどこに進むか決まってないのも普通なのかもしれない。
「千颯、エマちゃんてわかる?」
「わかるよ。ウチの七海と一緒の班だった青女の子だよね」
「うん。エマちゃんてすっごいお嬢様なんだけど、あたしとか、お金持ちじゃない普通の家で育った子と同じことをしてみたいって言って本当にいろんなことをしてるんだよね」
「えっと、青女の1年生4人で趣味とかを紹介し合ってるんだっけ?」
「うん。でも、みんながみんな本当に違ってて。家柄だけじゃなくって、あの、まつりちゃん! まつりちゃんは野球やってた子で、バッティングセンターに連れてってもらったんだよね。で、その後に牛丼を食べに行って」
「女子で野球か。凄いな」
「うん。ABCじゃまつりちゃんみたいな体育会系出身の子も珍しいみたくって、先輩たちもまつりちゃんは独特だってよく言ってる」
「俺もUHBCのみんなで趣味のプレゼンをやってたんだけど、結構面白かった。建築とか工業地帯とか、描いてみたいなって」
「千颯は本当に絵が好きなんだね」
いい景色を見たときとかは、この構図で描きたいなって思うから、絵は好きなんだと思う。ちとせは今はまだ衣食住のどこに進むかを考えている段階だって言っているけど、ゆっくり考えるのもいいんじゃないかな。
「千颯は背が高いし、風景とかも遠くまで見えそうだよね。遮る物が少なさそうって言うか」
「ああ、確かにそうだね。自分より大きい人の方が少ないかも。北星は大きいけど」
「あたし背が低いから、人が多いところだと負けちゃって」
「でも、背が高いと近くで見たくても前の方に行くと邪魔になっちゃうこともあるから」
「あー、そっかあ。大きいのも大変なんだね」
「台所でも流しが低かったりするし、ドラム式洗濯機も大変で」
end.
++++
密かに計画が経っていたらしい千颯ちとせのデートです。くるちゃんと北星もよく2人で会ってるし、そんなノリ。
千颯のキャラクターにちょっとずつ肉が付いてきたし、ちとせも青女の中で生活科学部の先輩たちといろいろ話させたい。
北星>千颯>ササ>彩人……くらいな感じなのかな、パッと見た感じの1年生男子の身長は。
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「千颯、お待たせー」
「ほんと、毎日お疲れさま。そしたら、さっそくだけど行こうか」
「うん」
ちとせと待ち合わせをして、今日の待ち合わせへ。昨日もくるちゃんや北星を含めた4人で会ってたけど、元々2人で会う約束の方が先に決まっていたからこんな感じになっている。青女は大学祭に向けた準備が佳境を迎えていて、学祭前最後の週末となった昨日今日で大きな仕事を片付けてしまう予定だったとか。
夏合宿で一緒になった1年4人はとても仲が良い。UHBCの他の子の話を聞いていても、ここまで頻繁に誰かと会ったりすることはないみたいで驚かれる。だけど先輩たちはそうやって仲のいい友達が出来て良かったねと言ってくれてるし、俺もインターフェイスでの活動が最初は不安だったから、結果としては良かったかなって。
今日は水族館に行く約束をしている。俺は家で飼っている観賞用の魚も好きだけど、水族館にいるような水の中の生き物も好きで水族館にはよく行っている。最低でも月に一度は行くから年パスを買っていて、気が向いた時にふらっと遊びに行くような感じ。でも、ちとせはあまり水族館に行ったことがないみたかったから、それじゃあ行ってみようかって。
「千颯って年パスを買うほど水族館が好きなんだね」
「そうだね。いつも来てるからショーを見たりするのはたまになんだけど、この空間だとか、水と光が好きなのかな」
「確かに、水に囲まれててきれいだもんね。年パスを買ったのはいつ?」
「高校の頃かな。最初は絵の資料にするために水族館に行き始めたんだけど、行ってるうちにハマっちゃって」
「絵を描いてるの? 聞いたことなかったけど」
「あれっ、言ってなかったっけ。水彩画が趣味で、中学校の頃から美術部だったんだよ」
「へー、そうなんだ。千颯の描いた絵、見たいなー」
「一応データ化してスマホにも入れてるんだけど、えーっと……こんな感じ」
「すっごく上手! 魚がキラキラ光を受けてきれいだし!」
「ありがとう。でも、水と光の表現はまだまだだから」
テレビとかで人の描いた絵を見ていると本当に勉強になるけど、たまにどうやってこんなの描いてるんだって人もいて、圧倒されたりもする。ただ魚を眺めるのも好きだし、絵を描くために真剣に見るのも好きだし。大学ではデジタルや、それ以外の新しい方法ででそれをどう表現するかっていうことも勉強している。
「向上心がすごいね」
「紙の上で絵を描くことは、デジタルでの表現の上達にも通じると思うし」
「大学での勉強だね」
「うん。ちとせも大学でいろいろ勉強してるでしょ。日常の何気ないことがそれと結びついたりしない?」
「う~ん……生活科学部だからちゃんと考えれば結び付くんだろうとは思うけど、日頃から勉強のことを考えてないもん。でもそう考えたらくるちゃんも北星も、大学の勉強と趣味が結び付いてるんだね」
くるちゃんはコンビニスイーツの商品開発やPRの仕事がしたいって言っていて、趣味がコンビニスイーツの断面動画の撮影。北星はこの先も映像作品を作って行きたいな~っていう風に言っていて、映像制作を中心とした生活をしている。俺も学部で少し映像のことを勉強してるから北星と仲良くなれた感がある。
ちとせは青女の生活科学部で、端的に言えば衣食住といった生活のことを勉強してるんだよっていう風に聞いている。それこそ衣食住だから、生活と勉強が結び付いているどころかってレベルだし、敢えて意識をしなくてもって感じなのかな。コースは2年に上がるときに決めるらしいし、夏の時点ではどこに進むか決まってないのも普通なのかもしれない。
「千颯、エマちゃんてわかる?」
「わかるよ。ウチの七海と一緒の班だった青女の子だよね」
「うん。エマちゃんてすっごいお嬢様なんだけど、あたしとか、お金持ちじゃない普通の家で育った子と同じことをしてみたいって言って本当にいろんなことをしてるんだよね」
「えっと、青女の1年生4人で趣味とかを紹介し合ってるんだっけ?」
「うん。でも、みんながみんな本当に違ってて。家柄だけじゃなくって、あの、まつりちゃん! まつりちゃんは野球やってた子で、バッティングセンターに連れてってもらったんだよね。で、その後に牛丼を食べに行って」
「女子で野球か。凄いな」
「うん。ABCじゃまつりちゃんみたいな体育会系出身の子も珍しいみたくって、先輩たちもまつりちゃんは独特だってよく言ってる」
「俺もUHBCのみんなで趣味のプレゼンをやってたんだけど、結構面白かった。建築とか工業地帯とか、描いてみたいなって」
「千颯は本当に絵が好きなんだね」
いい景色を見たときとかは、この構図で描きたいなって思うから、絵は好きなんだと思う。ちとせは今はまだ衣食住のどこに進むかを考えている段階だって言っているけど、ゆっくり考えるのもいいんじゃないかな。
「千颯は背が高いし、風景とかも遠くまで見えそうだよね。遮る物が少なさそうって言うか」
「ああ、確かにそうだね。自分より大きい人の方が少ないかも。北星は大きいけど」
「あたし背が低いから、人が多いところだと負けちゃって」
「でも、背が高いと近くで見たくても前の方に行くと邪魔になっちゃうこともあるから」
「あー、そっかあ。大きいのも大変なんだね」
「台所でも流しが低かったりするし、ドラム式洗濯機も大変で」
end.
++++
密かに計画が経っていたらしい千颯ちとせのデートです。くるちゃんと北星もよく2人で会ってるし、そんなノリ。
千颯のキャラクターにちょっとずつ肉が付いてきたし、ちとせも青女の中で生活科学部の先輩たちといろいろ話させたい。
北星>千颯>ササ>彩人……くらいな感じなのかな、パッと見た感じの1年生男子の身長は。
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