2021(03)
■夕餉ついでの延長戦
++++
「うーん。どうしたらいいんだろうねえ」
「それな。お前メシどんだけ食う?」
「普通で」
「わかった」
対策委員の会議が終わって、高木の家に帰って来た。今日の晩飯は麻婆豆腐……とは名ばかりの麻婆丼。2人分の丼と酒を用意して、晩飯を食いながらの話題は会議の延長のような話だ。合宿が終わって、講習めいた活動はほとんど終わった対策委員だけど、細かい行事や引き継ぎの話で盛り上がっている。
飲み会の話はほっといてもいいくらいだけど、問題は来年度への引き継ぎの話だ。厳密に言うと引き継ぎは3月にある春の番組制作会が終わってからだけど、次期対策委員自体はサークルや定例会の代替わりと同時期に決まる。俺たちも同じ頃に次の対策委員だと指名されて、会議にも顔を出していた。で、次は誰にすると。
会議では何が問題になっていたのかと言えば、来期は車のある奴を1人は指名した方がいいということ。俺たちは誰も車を持っていなかったから、土地勘のあるアオがレンタカーを借りたり、アオの力で動かせるミドリをドライバーとして招集することで半ば無理矢理やっていた感がある。これはさすがにしんどかったから。
「いただきまーす」
「いただきます。あ、今日の麻婆豆腐はいい感じだ」
「ひき肉増やした?」
「追い肉はしてるべ。会議の時から追い肉のこと考えてたっていう」
「そんな風には見えなかったよ。でも、会議と言えば、当麻が対策委員に出てくれるのはなかなかいいと思うんだよね俺は」
「まあな。車もあるっていうんならな」
「車があるっていうのもそうだけど、当麻は落ち着いて物事を捉えられるからね。今年の1年生の中では冷静なタイプじゃない?」
「確かにな。合宿じゃウチの班の連中がうるせーから尚更落ち着いた知性派に見えたっていう。ササと肩並べんじゃね?」
「ササもいい子だし悪くはないけど、俺の主観では当麻の方が大人だと思うよ」
「へー、お前が言うんならそうなんだなっていう」
車云々の話だけじゃなくて、そいつがどういう奴かっていう意味合いでも良さそうなら一番いいんだよな。俺らもそれで今悩んでるとも言える。1年の車持ちは誰がいたかということを思い返した時に、一番先に出て来たのがすがやんだった。じゃあすがやんは無条件で選ばれるかなと思っていた。
今は青敬から対策委員は出てないけど、来期はどうすると声を掛けてみたところ、人を出してもらえることになった。それが車持ちの当麻だったということもあって俺たちが絶対にすがやんを出さなきゃいけないってことはなくなった。そしたら、逆に誰を選べばいいのかという話だ。
「じゃウチからは誰を出すっつー話で、定例会との兼ね合いもあるだろっていう」
「そうなんだよねえ。正直すがやんは定例会っぽいって思ってるからさあ俺は。競合しそうだよね」
「あー、すがやんの定例会っぽさはわからんでもないべ」
「対策委員ってどういう子が向いてるのかなあ」
「あー、どうなんだろうな」
「対策委員もそうだけど、機材管理担当が誰になるのかっていうのも俺的には気になるし」
「そういう役職ってやっぱ3年の先輩が決めるんだよな」
「一応果林先輩に聞いてみたんだけど、今の機材管理担当の意向も反映して決めるって言われたんだよね」
「お前も責任重大じゃねーか」
「そうなんだよねえ」
機材管理担当っていうのは、MDストックを作ったり……今年からはストックとか、これまでMDに記録していた番組なんかをパソコンの方に移す作業を担うようになっている。曲ならアーティストだとか、番組ならいつ、誰の番組かというのを検索出来るシステムをL先輩が主として作ってるんだけど、その管理が主な仕事だ。
「お前的には誰に機材管理を任せたいんだっていう」
「そうだねえ……パソコンを使ったデータ管理だとか、システムの保守っていう点で言えばサキかなとは」
「あー、わかるべ」
「でも、シノにも経験を積ませたいんだよね。その辺のやる気は人一倍あるし、練習も真面目だし」
「それもわかるっていう」
「難しいんだよね~……俺の意向だけで決められることでもないし」
「でも、機材管理担当だからこそ2年の意向も聞いて決めるんだろうしな」
「どっちなのかな~……難しいね」
俺は高木みたいにMBCC内で今の1年に引き継ぐ役職も持ってないから基本話を聞くだけだ。でも、次のMBCCがどうなっていくかっていうのを考えたときに、ここの引き継ぎ問題がかなり重要だとは十分理解している。しかも、機材関係は仕組みの変わり目で、まだまだ発展途上でもある。
「2年の意向ってのもあるだろうけど、機材管理担当は実質的に次の機材部長だっていう。お前も半分決まってるようなモンだからその辺のことを聞かれるんだろうし」
「まあねえ。壮平は役職に就けたりして一ヶ所に縛り付けるより自由にふら~っとしてた方が良さが出るタイプだしね」
「アイツはユノ先輩とムトーさんを足して2で割ったような奴だっていう。ムラっ気で気紛れなくらいが“らしい”っつーか」
「いや、でも学年が上がれば壮平にもある程度下の子たちの指導もしてもらわないと困るよ。ミキサーで言えば壮平の方が上手い分野だってあるんだし」
「既にお前の覚悟が滲んでるべ。まあ、もう1本飲め。明日は叩き起こしてやるっていう」
「ああうん、お願い。あと麻婆豆腐のおかわりが欲しいな」
end.
++++
ササ当麻論争に関しては、TKGだからこそのササの評価がありありなのでああなってる。
去年の話でも結構やってた次の対策委員&機材管理担当はどーする問題。飲みながらどうしようかなあって考えてたんだろうなあ
MBCC2年生はタカエイハナが中心だけど、たまにふらっとやって来る壮平のキャラもちゃんと詰めたいね
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「うーん。どうしたらいいんだろうねえ」
「それな。お前メシどんだけ食う?」
「普通で」
「わかった」
対策委員の会議が終わって、高木の家に帰って来た。今日の晩飯は麻婆豆腐……とは名ばかりの麻婆丼。2人分の丼と酒を用意して、晩飯を食いながらの話題は会議の延長のような話だ。合宿が終わって、講習めいた活動はほとんど終わった対策委員だけど、細かい行事や引き継ぎの話で盛り上がっている。
飲み会の話はほっといてもいいくらいだけど、問題は来年度への引き継ぎの話だ。厳密に言うと引き継ぎは3月にある春の番組制作会が終わってからだけど、次期対策委員自体はサークルや定例会の代替わりと同時期に決まる。俺たちも同じ頃に次の対策委員だと指名されて、会議にも顔を出していた。で、次は誰にすると。
会議では何が問題になっていたのかと言えば、来期は車のある奴を1人は指名した方がいいということ。俺たちは誰も車を持っていなかったから、土地勘のあるアオがレンタカーを借りたり、アオの力で動かせるミドリをドライバーとして招集することで半ば無理矢理やっていた感がある。これはさすがにしんどかったから。
「いただきまーす」
「いただきます。あ、今日の麻婆豆腐はいい感じだ」
「ひき肉増やした?」
「追い肉はしてるべ。会議の時から追い肉のこと考えてたっていう」
「そんな風には見えなかったよ。でも、会議と言えば、当麻が対策委員に出てくれるのはなかなかいいと思うんだよね俺は」
「まあな。車もあるっていうんならな」
「車があるっていうのもそうだけど、当麻は落ち着いて物事を捉えられるからね。今年の1年生の中では冷静なタイプじゃない?」
「確かにな。合宿じゃウチの班の連中がうるせーから尚更落ち着いた知性派に見えたっていう。ササと肩並べんじゃね?」
「ササもいい子だし悪くはないけど、俺の主観では当麻の方が大人だと思うよ」
「へー、お前が言うんならそうなんだなっていう」
車云々の話だけじゃなくて、そいつがどういう奴かっていう意味合いでも良さそうなら一番いいんだよな。俺らもそれで今悩んでるとも言える。1年の車持ちは誰がいたかということを思い返した時に、一番先に出て来たのがすがやんだった。じゃあすがやんは無条件で選ばれるかなと思っていた。
今は青敬から対策委員は出てないけど、来期はどうすると声を掛けてみたところ、人を出してもらえることになった。それが車持ちの当麻だったということもあって俺たちが絶対にすがやんを出さなきゃいけないってことはなくなった。そしたら、逆に誰を選べばいいのかという話だ。
「じゃウチからは誰を出すっつー話で、定例会との兼ね合いもあるだろっていう」
「そうなんだよねえ。正直すがやんは定例会っぽいって思ってるからさあ俺は。競合しそうだよね」
「あー、すがやんの定例会っぽさはわからんでもないべ」
「対策委員ってどういう子が向いてるのかなあ」
「あー、どうなんだろうな」
「対策委員もそうだけど、機材管理担当が誰になるのかっていうのも俺的には気になるし」
「そういう役職ってやっぱ3年の先輩が決めるんだよな」
「一応果林先輩に聞いてみたんだけど、今の機材管理担当の意向も反映して決めるって言われたんだよね」
「お前も責任重大じゃねーか」
「そうなんだよねえ」
機材管理担当っていうのは、MDストックを作ったり……今年からはストックとか、これまでMDに記録していた番組なんかをパソコンの方に移す作業を担うようになっている。曲ならアーティストだとか、番組ならいつ、誰の番組かというのを検索出来るシステムをL先輩が主として作ってるんだけど、その管理が主な仕事だ。
「お前的には誰に機材管理を任せたいんだっていう」
「そうだねえ……パソコンを使ったデータ管理だとか、システムの保守っていう点で言えばサキかなとは」
「あー、わかるべ」
「でも、シノにも経験を積ませたいんだよね。その辺のやる気は人一倍あるし、練習も真面目だし」
「それもわかるっていう」
「難しいんだよね~……俺の意向だけで決められることでもないし」
「でも、機材管理担当だからこそ2年の意向も聞いて決めるんだろうしな」
「どっちなのかな~……難しいね」
俺は高木みたいにMBCC内で今の1年に引き継ぐ役職も持ってないから基本話を聞くだけだ。でも、次のMBCCがどうなっていくかっていうのを考えたときに、ここの引き継ぎ問題がかなり重要だとは十分理解している。しかも、機材関係は仕組みの変わり目で、まだまだ発展途上でもある。
「2年の意向ってのもあるだろうけど、機材管理担当は実質的に次の機材部長だっていう。お前も半分決まってるようなモンだからその辺のことを聞かれるんだろうし」
「まあねえ。壮平は役職に就けたりして一ヶ所に縛り付けるより自由にふら~っとしてた方が良さが出るタイプだしね」
「アイツはユノ先輩とムトーさんを足して2で割ったような奴だっていう。ムラっ気で気紛れなくらいが“らしい”っつーか」
「いや、でも学年が上がれば壮平にもある程度下の子たちの指導もしてもらわないと困るよ。ミキサーで言えば壮平の方が上手い分野だってあるんだし」
「既にお前の覚悟が滲んでるべ。まあ、もう1本飲め。明日は叩き起こしてやるっていう」
「ああうん、お願い。あと麻婆豆腐のおかわりが欲しいな」
end.
++++
ササ当麻論争に関しては、TKGだからこそのササの評価がありありなのでああなってる。
去年の話でも結構やってた次の対策委員&機材管理担当はどーする問題。飲みながらどうしようかなあって考えてたんだろうなあ
MBCC2年生はタカエイハナが中心だけど、たまにふらっとやって来る壮平のキャラもちゃんと詰めたいね
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