2021(03)
■タイムテーブルの盲点
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「それじゃあただ今より、大学祭のペア指名プロポーズを解禁します」
いよいよこの時が来たなあという感じがする。MBCCでは毎年大学祭でDJブースと食品ブースを出していて、そのうちDJブースでは1人1時間の企画番組と、1時間のリクエスト番組の持ち時間がある。3日間でどこかで2時間以上入らなければならないんだけど、そのペアはアナウンサーからミキサーへの申し込みで決まるっていう。
これはMBCCのスタイルなんだろうけど、どういった番組をやりたいのかっていうのを主にアナウンサーさんが決めるからだろうね。ミキサーはこんな風にやりたいんだけどってアナさんが言ったのに対してわかりましたよって感じで構成を組んで練習してっていう。でも、ミキサーとしては指名されなかったらどうしようって、正直怖いんだよね。
「……よし。あ、あの、高木先輩。もし良ければ、俺とペアを組んでもらえませんか」
「ササ、ちょい待ち。俺も高木先輩と組みたいんだよな。あの、高木先輩、俺とお願いします!」
「すがやんか。まさかの伏兵だな」
声をかけてもらえるのは非常に嬉しいんだけど、こうなったときの対処も正直ちょっと困るんだよね。ペアを組むには大祭中の他の予定にもよるから、断らざるを得ないってこともあるんだけど。ちなみに、アナウンサーさんの方のタイムテーブルはもう決まってて、ミキサーはその時間に都合が良ければ組めるっていう感じになるんだけど。
ササとすがやんが俺に声を掛けてくれている間にも、いくつかペアが決まっている。レナとくるみの1年女子ペアだとか、果林先輩とシノのペアだとか。果林先輩とこないだ飲んだ時にシノについての話をしたけど、面白い素材だねっていう認識で一致した。学祭で組んで現状の力を見てみようかなと言っていたので、アナ部長としての仕事なのかもしれない。
「あ、えーと。とりあえずタイムテーブルを確認しようかな。俺もゼミの都合とかがあるし」
「そうですね。お願いします」
「シノー、全員分のタイムテーブルってあるー?」
「あっ、ここにあるっす! どーぞ」
「ありがとう。えーっと、俺は2日目がまるっとゼミの都合でラジオブースに軟禁される予定だから、っと」
「えっ、2日目ですか!? マジかー……」
「あれっ、ササ、もしかしてお前2日目なんじゃね?」
「……すがやん、あからさまに顔がニヤついてるな」
「まあ、俺の企画番組は1日目だし?」
タイムテーブルを見て自分の予定を擦り合わせていても、ササとすがやんがバチバチやり合ってるのが聞こえてるんだよね。自分がどういう番組をやりたくて俺に声をかけたかっていうのを話してるみたいだけど、それを聞く分にはどっちとも組んであげたいとは思うんだよね。でも分裂は出来ないから。
「ああ、ササの企画番組は2日目の昼だね。で、すがやんは1日目の3時か。ここなら大丈夫かな。ササ、ごめんね。企画番組で組むのは難しいかな」
「そうですかー……わかりました」
「うん。ゼミはゼミでも食品ブースだったら何とか調整出来たんだけど、ラジオブースは先生からの厳命だから」
「ですよね。はい」
「そういうことだからすがやん、よろしくね」
「お願いします!」
「はーっ……マジかー……。はーっ……ゼミのラジオかー……そうだよなー……」
「や、ササ、元気出せって。なっ?」
ササがあまりにもしょんぼりしているものだから、さっきまでは火花を散らしたり煽ったりしていたすがやんもさすがにササを励ましている。その様子に他の1年生たちもどうしたどうしたって寄って来るもんね。でも、こう見るとクールに思われがちなササの感情表現も結構表に出るようになった気がするね。
「陸、その様子だと高木先輩に振られた?」
「ゼミのラジオブースは盲点だった……」
「しゃーねーって、高木先輩クラスじゃねーとゼミのラジオは任せらんねーだろーし。来年は俺とお前が入るトコなんだぜ!」
「シノ、まだゼミに入れるって決まってないでしょ」
「き、決まってねーけど入るんだよ! ぶっちゃけMBCCのラジオ担当としては2日目に果林先輩と高木先輩を使えねーのはすっげーメーワクだけどもだ!」
「ササ、企画がダメでもリク番は大丈夫なんじゃない? リク番一緒にやってくださいってお願いしてみたら?」
「そうだ、それだくるみナイス! あのっ、高木先輩ちなみにですけどリク番は大丈夫ですか? 3日目の2時です」
「3日目なら大丈夫だよ。そしたら、リク番のペアを組もうか」
「ありがとうございます!」
俺と組むことをここまで喜んでもらえるのは嬉しいことだけど、その分番組をしっかりしないといけないんだよね。この子たちは俺に何かを期待して声を掛けてくれてるんだろうし。とりあえず、どんな番組をやりたいかっていうのをきっちりと聞いて希望を叶えてあげられるようにしないとね。
「ちなみにみんな、企画とリク番のペアってそれぞれ決まった?」
「どっちも決まってんのは今んトコレナだけじゃね?」
「えっ、玲那、企画はくるみとして、リク番は誰と」
「L先輩。音楽のセンスいいしリク番でも引っ張ってくれそうかなって」
「ああ、確かにL先輩の選曲って洋楽中心で独特だよね」
「つかリク番で選曲センスってあんま関係なくね? ウチのストックの中から選ばれるんだし」
「それをどう組み立てるかっていうセンスは問われるでしょ。曲順とか、構成とか。最もアドリブが問われるところでもあるはず」
「あーっ! そーゆーのもあるのかー! 高木先輩! 学祭までにリク番鍛え直してくださいっすー!」
end.
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大学祭DJブースのプロポーズ編。ササ対すがやんのTKG争奪戦の様子。ササはドンマイ。
昨年度の話では秋ごろにはTKG大好きっ子になってたササだけども、この辺でも既にそうなのね。
育ちゃん譲りの音源をきちんと活用しているLである。レナ的にはとてもセンスがいいと思うのね
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「それじゃあただ今より、大学祭のペア指名プロポーズを解禁します」
いよいよこの時が来たなあという感じがする。MBCCでは毎年大学祭でDJブースと食品ブースを出していて、そのうちDJブースでは1人1時間の企画番組と、1時間のリクエスト番組の持ち時間がある。3日間でどこかで2時間以上入らなければならないんだけど、そのペアはアナウンサーからミキサーへの申し込みで決まるっていう。
これはMBCCのスタイルなんだろうけど、どういった番組をやりたいのかっていうのを主にアナウンサーさんが決めるからだろうね。ミキサーはこんな風にやりたいんだけどってアナさんが言ったのに対してわかりましたよって感じで構成を組んで練習してっていう。でも、ミキサーとしては指名されなかったらどうしようって、正直怖いんだよね。
「……よし。あ、あの、高木先輩。もし良ければ、俺とペアを組んでもらえませんか」
「ササ、ちょい待ち。俺も高木先輩と組みたいんだよな。あの、高木先輩、俺とお願いします!」
「すがやんか。まさかの伏兵だな」
声をかけてもらえるのは非常に嬉しいんだけど、こうなったときの対処も正直ちょっと困るんだよね。ペアを組むには大祭中の他の予定にもよるから、断らざるを得ないってこともあるんだけど。ちなみに、アナウンサーさんの方のタイムテーブルはもう決まってて、ミキサーはその時間に都合が良ければ組めるっていう感じになるんだけど。
ササとすがやんが俺に声を掛けてくれている間にも、いくつかペアが決まっている。レナとくるみの1年女子ペアだとか、果林先輩とシノのペアだとか。果林先輩とこないだ飲んだ時にシノについての話をしたけど、面白い素材だねっていう認識で一致した。学祭で組んで現状の力を見てみようかなと言っていたので、アナ部長としての仕事なのかもしれない。
「あ、えーと。とりあえずタイムテーブルを確認しようかな。俺もゼミの都合とかがあるし」
「そうですね。お願いします」
「シノー、全員分のタイムテーブルってあるー?」
「あっ、ここにあるっす! どーぞ」
「ありがとう。えーっと、俺は2日目がまるっとゼミの都合でラジオブースに軟禁される予定だから、っと」
「えっ、2日目ですか!? マジかー……」
「あれっ、ササ、もしかしてお前2日目なんじゃね?」
「……すがやん、あからさまに顔がニヤついてるな」
「まあ、俺の企画番組は1日目だし?」
タイムテーブルを見て自分の予定を擦り合わせていても、ササとすがやんがバチバチやり合ってるのが聞こえてるんだよね。自分がどういう番組をやりたくて俺に声をかけたかっていうのを話してるみたいだけど、それを聞く分にはどっちとも組んであげたいとは思うんだよね。でも分裂は出来ないから。
「ああ、ササの企画番組は2日目の昼だね。で、すがやんは1日目の3時か。ここなら大丈夫かな。ササ、ごめんね。企画番組で組むのは難しいかな」
「そうですかー……わかりました」
「うん。ゼミはゼミでも食品ブースだったら何とか調整出来たんだけど、ラジオブースは先生からの厳命だから」
「ですよね。はい」
「そういうことだからすがやん、よろしくね」
「お願いします!」
「はーっ……マジかー……。はーっ……ゼミのラジオかー……そうだよなー……」
「や、ササ、元気出せって。なっ?」
ササがあまりにもしょんぼりしているものだから、さっきまでは火花を散らしたり煽ったりしていたすがやんもさすがにササを励ましている。その様子に他の1年生たちもどうしたどうしたって寄って来るもんね。でも、こう見るとクールに思われがちなササの感情表現も結構表に出るようになった気がするね。
「陸、その様子だと高木先輩に振られた?」
「ゼミのラジオブースは盲点だった……」
「しゃーねーって、高木先輩クラスじゃねーとゼミのラジオは任せらんねーだろーし。来年は俺とお前が入るトコなんだぜ!」
「シノ、まだゼミに入れるって決まってないでしょ」
「き、決まってねーけど入るんだよ! ぶっちゃけMBCCのラジオ担当としては2日目に果林先輩と高木先輩を使えねーのはすっげーメーワクだけどもだ!」
「ササ、企画がダメでもリク番は大丈夫なんじゃない? リク番一緒にやってくださいってお願いしてみたら?」
「そうだ、それだくるみナイス! あのっ、高木先輩ちなみにですけどリク番は大丈夫ですか? 3日目の2時です」
「3日目なら大丈夫だよ。そしたら、リク番のペアを組もうか」
「ありがとうございます!」
俺と組むことをここまで喜んでもらえるのは嬉しいことだけど、その分番組をしっかりしないといけないんだよね。この子たちは俺に何かを期待して声を掛けてくれてるんだろうし。とりあえず、どんな番組をやりたいかっていうのをきっちりと聞いて希望を叶えてあげられるようにしないとね。
「ちなみにみんな、企画とリク番のペアってそれぞれ決まった?」
「どっちも決まってんのは今んトコレナだけじゃね?」
「えっ、玲那、企画はくるみとして、リク番は誰と」
「L先輩。音楽のセンスいいしリク番でも引っ張ってくれそうかなって」
「ああ、確かにL先輩の選曲って洋楽中心で独特だよね」
「つかリク番で選曲センスってあんま関係なくね? ウチのストックの中から選ばれるんだし」
「それをどう組み立てるかっていうセンスは問われるでしょ。曲順とか、構成とか。最もアドリブが問われるところでもあるはず」
「あーっ! そーゆーのもあるのかー! 高木先輩! 学祭までにリク番鍛え直してくださいっすー!」
end.
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大学祭DJブースのプロポーズ編。ササ対すがやんのTKG争奪戦の様子。ササはドンマイ。
昨年度の話では秋ごろにはTKG大好きっ子になってたササだけども、この辺でも既にそうなのね。
育ちゃん譲りの音源をきちんと活用しているLである。レナ的にはとてもセンスがいいと思うのね
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