2021(02)
■プロデューサーの立ち回り
++++
「うん、まあまとめるとするならこんな感じなんじゃない? そしたら、これを軸にしてやっていこうか」
「やぁ~っと通ったぁ~!」
「頑張りますです!」
ひと月先に迫った大学祭ステージに向けて、俺はプロデューサーとして日々台本と睨み合う生活を送ってきた。書いた物を逐一戸田さんに見てもらう過程の中で、俺のやることが劣化版の朝霞さんになってきているという評価を食らっていた。
同じく書いた物を戸田さんに見てもらっていたマリンさんも、自分がどう動くべきかもっと考えろという課題を突きつけられていたらしい。夏の丸の池ステージだとか定例会の人らが出ていた向舞祭の頃から少しずつ見えてきていた、戸田班の層についての話でもある。
戸田班はアナウンサーが現状1年の海月しかいない。他の班では大体上級生にもアナウンサーがいて、2人以上体制でステージを回すのが一般的なようだ。海月も頑張ってはいるけど、さすがに1人ではキツいモンはキツい。じゃあアシスタントをつけるなら誰か。
マリンさんは一応AP、アナウンサー兼プロデューサーという役職を自称している。ならそのAの部分はどうするつもりかと。宇部さんのようにPとして後ろで全体を見るのに専念するならさっさとAの部分を取っ払えとなかなか厳しいことを言われていたらしい。
お互い師事を受けた先輩の影がどこかに残ってしまっている中で、どうすれば各々の課題を潰した上で戸田班としてのステージをよくしていけるかと話し合った結果、先輩たちがやってこなかった“2人で”プロデューサーとしてちゃんとやっていくしかないという結論に達した。
「まあ、台本はこれでやってくけど、準備期間は1ヶ月って考えたら時間は全然ないからね。特にウチはほとんど1、2年で構成された班だし授業もあるからね」
「授業か~、テストだけのヤツだったら大祭前はサボるって手段もまあ無きにしも非ずって感じすかね」
「彩人、1年なんですから授業にはちゃんと出るですよ。必修を落としでもしたらめんどくさいし」
「それに関してはマリンが正しいわ。こっしーの教えだけど、3年のステージで勝負をかけたいなら1、2年のうちに単位を取り尽くすくらいのつもりでやった方がいいってよ」
「どーゆーコトすか?」
「アンタ文系っしょ? 文系だったら1、2年でちゃんとやっとけば3年になる頃には履修なんか大体なくなるから。合法的に作った時間でステージに勝負かけんのが正しいやり方な」
「なるほど。そしたら今年と来年は我慢の時っすね」
「そーゆーコト。その3年前期も丸の池前にテストで時間とられるのがもったいないとか言ってレポートの授業しか履修しなかったステージバカもいたけど、そこまで極端なことはしなくても普通にやってりゃそれなりの時間は取れるから」
「トンだバカ野郎がいたモンですよ」
3年になってステージ前に授業がどうしたとバタバタするのも嫌なので、戸田さんの教えはきちんと守ることにした。授業中にステージのことを考えられるのもプロデューサーの強みということにしておこう。アナウンサーとかだとなかなか授業中に作業はしにくいだろうから。
朝霞さんからはステージや大学生活のことに関していろいろ教わってはいたし、それを俺もなるほどーと思って聞いていた。だけど、戸田さんから当時の朝霞さんのことが語られると、一度は感心して納得したそれが奇行のように聞こえるので、やっぱあの人はステージバカなんだと。
「ま、バカ野郎の話はいいとして。まずは上がった台本をみんなに配んなきゃな」
「そしたらファイルをクラウドにぶち込みます?」
「ぶち込んだ上で紙も用意した方がいい」
「じゃぶち込むだけぶち込んどきますね」
「あんがと。確定してた部分の音源とか小道具はゲンゴローに準備してもらってるし、アタシはどうしたモンかな」
「それこそ班長なんすから全体を見てるモンなんじゃないんすか?」
「こう言っちゃ難だけどさ、無茶振り出されてバタバタ走り回ってる方が性に合うんだわ。Pはギリギリまで台本と状況を見ながら本を変えてくモンだと思ってるし」
「台本は決定稿です」
「そうある方が楽なんだとは思うよ。だけど結局のところ台本なんてのはステージをどう進めるかの方針でしかないワケで、現場の状況に応じて各々がその場の判断で変えることだって往々にしてあるワケだ。てかインターフェイスでよく言われるヤツじゃんね。星ヶ丘はステージのやり方で台本をガチガチに決めるから臨機応変さが問われるラジオへの対応がヘタだって」
「本当に言われてたとしてもムカつくですよ」
「違いないっすね」
「いいか、本来そういうのが抜きん出てなきゃいけないのはステージやってるアタシらなんだよ。時と場所、状況、空気を読みながら、必要があれば都度自分らの判断でやっていく。誰が何をどう変えたかを見て二手三手先を考えるのがアンタら、プロデューサーの役割なんだ」
ガチガチに決めたコトだけやってんなら事前収録したモンを流しときゃいいんだからな、と戸田さんはライブであることを強調した。映像も残っていない朝霞班のステージがどんな風に回っていたかが戸田さんの言葉で何となく見えてきた。
「マリン、アンタはプロデューサーが直接ステージに上がるなんて荒技を使えるんだ。その特権をどう生かすかはアンタ次第だかんね」
「頑張るです」
end.
++++
久々に星ヶ丘のお話。今年度はほとんど触れてなかったけど、それでもやることはやってたしシメることはシメてた。
台本云々のことをIFで言われがちだけど、つばちゃんは先代のコンビを見てるからそれが星ヶ丘だからじゃないことを知ってる。
某ステージバカに関してはこの程度の奇行なら奇行のうちにも入らないレベルなんだよなあ。だからステージバカで鬼と呼ばれるんだけども
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「うん、まあまとめるとするならこんな感じなんじゃない? そしたら、これを軸にしてやっていこうか」
「やぁ~っと通ったぁ~!」
「頑張りますです!」
ひと月先に迫った大学祭ステージに向けて、俺はプロデューサーとして日々台本と睨み合う生活を送ってきた。書いた物を逐一戸田さんに見てもらう過程の中で、俺のやることが劣化版の朝霞さんになってきているという評価を食らっていた。
同じく書いた物を戸田さんに見てもらっていたマリンさんも、自分がどう動くべきかもっと考えろという課題を突きつけられていたらしい。夏の丸の池ステージだとか定例会の人らが出ていた向舞祭の頃から少しずつ見えてきていた、戸田班の層についての話でもある。
戸田班はアナウンサーが現状1年の海月しかいない。他の班では大体上級生にもアナウンサーがいて、2人以上体制でステージを回すのが一般的なようだ。海月も頑張ってはいるけど、さすがに1人ではキツいモンはキツい。じゃあアシスタントをつけるなら誰か。
マリンさんは一応AP、アナウンサー兼プロデューサーという役職を自称している。ならそのAの部分はどうするつもりかと。宇部さんのようにPとして後ろで全体を見るのに専念するならさっさとAの部分を取っ払えとなかなか厳しいことを言われていたらしい。
お互い師事を受けた先輩の影がどこかに残ってしまっている中で、どうすれば各々の課題を潰した上で戸田班としてのステージをよくしていけるかと話し合った結果、先輩たちがやってこなかった“2人で”プロデューサーとしてちゃんとやっていくしかないという結論に達した。
「まあ、台本はこれでやってくけど、準備期間は1ヶ月って考えたら時間は全然ないからね。特にウチはほとんど1、2年で構成された班だし授業もあるからね」
「授業か~、テストだけのヤツだったら大祭前はサボるって手段もまあ無きにしも非ずって感じすかね」
「彩人、1年なんですから授業にはちゃんと出るですよ。必修を落としでもしたらめんどくさいし」
「それに関してはマリンが正しいわ。こっしーの教えだけど、3年のステージで勝負をかけたいなら1、2年のうちに単位を取り尽くすくらいのつもりでやった方がいいってよ」
「どーゆーコトすか?」
「アンタ文系っしょ? 文系だったら1、2年でちゃんとやっとけば3年になる頃には履修なんか大体なくなるから。合法的に作った時間でステージに勝負かけんのが正しいやり方な」
「なるほど。そしたら今年と来年は我慢の時っすね」
「そーゆーコト。その3年前期も丸の池前にテストで時間とられるのがもったいないとか言ってレポートの授業しか履修しなかったステージバカもいたけど、そこまで極端なことはしなくても普通にやってりゃそれなりの時間は取れるから」
「トンだバカ野郎がいたモンですよ」
3年になってステージ前に授業がどうしたとバタバタするのも嫌なので、戸田さんの教えはきちんと守ることにした。授業中にステージのことを考えられるのもプロデューサーの強みということにしておこう。アナウンサーとかだとなかなか授業中に作業はしにくいだろうから。
朝霞さんからはステージや大学生活のことに関していろいろ教わってはいたし、それを俺もなるほどーと思って聞いていた。だけど、戸田さんから当時の朝霞さんのことが語られると、一度は感心して納得したそれが奇行のように聞こえるので、やっぱあの人はステージバカなんだと。
「ま、バカ野郎の話はいいとして。まずは上がった台本をみんなに配んなきゃな」
「そしたらファイルをクラウドにぶち込みます?」
「ぶち込んだ上で紙も用意した方がいい」
「じゃぶち込むだけぶち込んどきますね」
「あんがと。確定してた部分の音源とか小道具はゲンゴローに準備してもらってるし、アタシはどうしたモンかな」
「それこそ班長なんすから全体を見てるモンなんじゃないんすか?」
「こう言っちゃ難だけどさ、無茶振り出されてバタバタ走り回ってる方が性に合うんだわ。Pはギリギリまで台本と状況を見ながら本を変えてくモンだと思ってるし」
「台本は決定稿です」
「そうある方が楽なんだとは思うよ。だけど結局のところ台本なんてのはステージをどう進めるかの方針でしかないワケで、現場の状況に応じて各々がその場の判断で変えることだって往々にしてあるワケだ。てかインターフェイスでよく言われるヤツじゃんね。星ヶ丘はステージのやり方で台本をガチガチに決めるから臨機応変さが問われるラジオへの対応がヘタだって」
「本当に言われてたとしてもムカつくですよ」
「違いないっすね」
「いいか、本来そういうのが抜きん出てなきゃいけないのはステージやってるアタシらなんだよ。時と場所、状況、空気を読みながら、必要があれば都度自分らの判断でやっていく。誰が何をどう変えたかを見て二手三手先を考えるのがアンタら、プロデューサーの役割なんだ」
ガチガチに決めたコトだけやってんなら事前収録したモンを流しときゃいいんだからな、と戸田さんはライブであることを強調した。映像も残っていない朝霞班のステージがどんな風に回っていたかが戸田さんの言葉で何となく見えてきた。
「マリン、アンタはプロデューサーが直接ステージに上がるなんて荒技を使えるんだ。その特権をどう生かすかはアンタ次第だかんね」
「頑張るです」
end.
++++
久々に星ヶ丘のお話。今年度はほとんど触れてなかったけど、それでもやることはやってたしシメることはシメてた。
台本云々のことをIFで言われがちだけど、つばちゃんは先代のコンビを見てるからそれが星ヶ丘だからじゃないことを知ってる。
某ステージバカに関してはこの程度の奇行なら奇行のうちにも入らないレベルなんだよなあ。だからステージバカで鬼と呼ばれるんだけども
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