2021(02)
■Pennant race reaches climax
＋＋＋＋
「よう律。昨日の試合は見たか？」
「一応見てヤしたよ。野坂はどースか」
「昨日はあの後菜月先輩から連絡があって、たこ焼きを丸めるからと招集されてたんだよな。その流れで見てたんだけど、あれは凄かった」
「ああ、それで羽織りのシャツが同じなンすね。ごくろーサン」
俺と律の共通の話題と言えば、サークルのことの他には野球のことがある。俺と律は生まれ育った土地柄か、向島は星港に本拠地を置くポケッツというチームを贔屓にしている。印象に残る試合の後にはあれの何がどうだったなどと話すこともまあある。
そしてこのMMPというサークルには野球を好きで見ている人が他にも何人かいる。まずは前述の通り菜月先輩。菜月先輩は東都に本拠地を置くチェアーズというチームを贔屓にしている。そして三井先輩だ。三井先輩は国内だけではなく海外の野球にも興味があるような感じだ。そしてそして。
「おはようございますッ！ あ～、りっちゃん先輩野坂先輩、チェアーズがなかなか負けてくれないんですッ！」
「サンダースも勝ッてるンすからいーじャないスか」
「全くだ。贅沢な悩みだぞ」
「うっすうっす」
奈々は西に本拠地のあるサンダースというチームを贔屓にしている。これが結構な過激派で、負けたときの荒れ具合がなかなかに激しい。サンダースは現在マ・リーグの優勝争いをしているところで、少し前まで３位だったチェアーズが猛追してきて首位と２位を行ったり来たりしているという状況だ。
ポケッツは今年はもうＢクラスかなと薄々どころではなく大分濃厚に察することが出来ているので、来年こそどうにかしてもらいたいなと思っているところだ。と言うか、ここ最近ではもうチェアーズとサンダースの動向を見ている方が面白いまである。俺はプロ野球全般を楽しく見られる性質だし。
「昨日ポケッツヤバくなかったっすか？ てかチェアーズがヤバいんすかね？」
「多分どっちもだと思うけど、こうまで０が並ぶとたこ焼きだなんだと笑うことも出来ない」
「チェアーズの本拠地は自分らにとっちゃァ魔境とか魔窟とか、そんなよーなモンすよ」
「昨日某チェアーズファンの方が仰っていたのだが、「今シーズンはホームでポケッツには負ける気がしない上に何か面白いことが起きそうな気がする」とのことでだな」
「違いないスわ。今シーズンはビジターで勝つイメージが正直あんまシ」
「某チェアーズファンの方……や！ それが仮に菜月先輩であっても今年はストライプ・サンダースが優勝するんですッ！」
奈々は割と激しめのサンダースファンではあるのだけど、マ・リーグの中では２番目にチェアーズが好きという風に公言している。なので普段はチェアーズが勝つ分にはまあいいかというスタンスなのだけど、現在の状況ではいつものように呑気に喜んでもいられないのだ。
俺も元々マ・リーグの中では２番目にチェアーズが好きだし、最近では菜月先輩の影響でいろいろ学んでもいるのでそれなりに知識も増えてきたように思う。ポケッツがボコボコにされるのは虚しさを覚えるのだけど、菜月先輩が楽しいならいいかなという逃げ道もある。……逃げ道か。
「おはよーございまーす」
「おはようカノン」
「先輩たち盛り上がってますねー。何の話っすか？」
「野球の話だな」
「野球すか。俺あんま詳しくないんすよねー。嫌いでもないんすけど」
「それでも向島に生まれ育っているからにはポケッツだろ？」
「まあ。強いて言えばってレベルっすけど。あ、昨日何かすげーボコボコにされたのはニュースで見たっす。あそこまで大量に差を付けられたら相手が調整とかしてきて２、３点くらい返すモンだと思ってたンすけど、完封負けっしたね」
「そうなんだよな。見事なまでの完封だった」
「ちなみに野坂、昨日の菜月先輩はどんな様子で？」
「最初は点が入る度にきゃっきゃと喜んでいらしたんだけど、途中からドン引きし始めて逆に淡々とたこ焼きを丸めながら酒を煽っていらっしゃった」
これには話を聞いていた全員が「あー……」と納得したので、そういう物としてアリなんだろう。ただ、菜月先輩はドン引きしていたとは言え何だかんだ各局のスポーツニュースはハシゴしていらしたので大勝が嬉しくはあったんだろうとは推測できる。
「そう言えば奈々、菜月先輩もサンダースがなかなか負けなくてしんどいと仰っていたぞ」
「こればっかりはいくら菜月先輩の頼みでも引けないんすよ。でもちょっと前まではチェアーズは３位でそれなりにゲーム差があったはずなのに、気付いたら抜かれてるってヤバくないすかヤバいっすよねッ」
「直接対決はまだ残ってるンすから、殴り合ってどっちがテッペン取るか決めたらいーンすよ」
「それしかないんすよ実際ッ！」
「野球の話はいいけど学祭の準備に私情は挟むなよ」
「それはそうとして割り切りますけど各種シリーズに出るとなるとテンションがバリ高になることは避けられないっす、うっすうっす」
「もう優勝した気でいるぞ」
「やァー、ファンの鑑スわ」
菜月先輩もまだまだ野球観戦が忙しいなあと仰っていたので、たこ焼きの頻度が高くなるんだろうなとは。お酒の量も比例して増えそうなのでそれだけは気を付けてもらってだな。菜月先輩にお誘いいただけるのは嬉しいのだけど、宅飲みでは100％無事に帰してもらえないからなあ。
end.
＋＋＋＋
そう言えばMMPってのはこういうサークルでもあったなと思いました。ノサ律は日常的に野球の話してるといいなって
多分ノサカは菜月さんからちょこちょこ野球観戦という名の宅飲みに誘われてるんだけども、100％無事に帰してもらえてない
カノンはそこまでガチガチに野球は見てないけど、見る分には全然オッケーだし結果くらいは気になるくらいのライトさ。TKGに通じる。
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「よう律。昨日の試合は見たか？」
「一応見てヤしたよ。野坂はどースか」
「昨日はあの後菜月先輩から連絡があって、たこ焼きを丸めるからと招集されてたんだよな。その流れで見てたんだけど、あれは凄かった」
「ああ、それで羽織りのシャツが同じなンすね。ごくろーサン」
俺と律の共通の話題と言えば、サークルのことの他には野球のことがある。俺と律は生まれ育った土地柄か、向島は星港に本拠地を置くポケッツというチームを贔屓にしている。印象に残る試合の後にはあれの何がどうだったなどと話すこともまあある。
そしてこのMMPというサークルには野球を好きで見ている人が他にも何人かいる。まずは前述の通り菜月先輩。菜月先輩は東都に本拠地を置くチェアーズというチームを贔屓にしている。そして三井先輩だ。三井先輩は国内だけではなく海外の野球にも興味があるような感じだ。そしてそして。
「おはようございますッ！ あ～、りっちゃん先輩野坂先輩、チェアーズがなかなか負けてくれないんですッ！」
「サンダースも勝ッてるンすからいーじャないスか」
「全くだ。贅沢な悩みだぞ」
「うっすうっす」
奈々は西に本拠地のあるサンダースというチームを贔屓にしている。これが結構な過激派で、負けたときの荒れ具合がなかなかに激しい。サンダースは現在マ・リーグの優勝争いをしているところで、少し前まで３位だったチェアーズが猛追してきて首位と２位を行ったり来たりしているという状況だ。
ポケッツは今年はもうＢクラスかなと薄々どころではなく大分濃厚に察することが出来ているので、来年こそどうにかしてもらいたいなと思っているところだ。と言うか、ここ最近ではもうチェアーズとサンダースの動向を見ている方が面白いまである。俺はプロ野球全般を楽しく見られる性質だし。
「昨日ポケッツヤバくなかったっすか？ てかチェアーズがヤバいんすかね？」
「多分どっちもだと思うけど、こうまで０が並ぶとたこ焼きだなんだと笑うことも出来ない」
「チェアーズの本拠地は自分らにとっちゃァ魔境とか魔窟とか、そんなよーなモンすよ」
「昨日某チェアーズファンの方が仰っていたのだが、「今シーズンはホームでポケッツには負ける気がしない上に何か面白いことが起きそうな気がする」とのことでだな」
「違いないスわ。今シーズンはビジターで勝つイメージが正直あんまシ」
「某チェアーズファンの方……や！ それが仮に菜月先輩であっても今年はストライプ・サンダースが優勝するんですッ！」
奈々は割と激しめのサンダースファンではあるのだけど、マ・リーグの中では２番目にチェアーズが好きという風に公言している。なので普段はチェアーズが勝つ分にはまあいいかというスタンスなのだけど、現在の状況ではいつものように呑気に喜んでもいられないのだ。
俺も元々マ・リーグの中では２番目にチェアーズが好きだし、最近では菜月先輩の影響でいろいろ学んでもいるのでそれなりに知識も増えてきたように思う。ポケッツがボコボコにされるのは虚しさを覚えるのだけど、菜月先輩が楽しいならいいかなという逃げ道もある。……逃げ道か。
「おはよーございまーす」
「おはようカノン」
「先輩たち盛り上がってますねー。何の話っすか？」
「野球の話だな」
「野球すか。俺あんま詳しくないんすよねー。嫌いでもないんすけど」
「それでも向島に生まれ育っているからにはポケッツだろ？」
「まあ。強いて言えばってレベルっすけど。あ、昨日何かすげーボコボコにされたのはニュースで見たっす。あそこまで大量に差を付けられたら相手が調整とかしてきて２、３点くらい返すモンだと思ってたンすけど、完封負けっしたね」
「そうなんだよな。見事なまでの完封だった」
「ちなみに野坂、昨日の菜月先輩はどんな様子で？」
「最初は点が入る度にきゃっきゃと喜んでいらしたんだけど、途中からドン引きし始めて逆に淡々とたこ焼きを丸めながら酒を煽っていらっしゃった」
これには話を聞いていた全員が「あー……」と納得したので、そういう物としてアリなんだろう。ただ、菜月先輩はドン引きしていたとは言え何だかんだ各局のスポーツニュースはハシゴしていらしたので大勝が嬉しくはあったんだろうとは推測できる。
「そう言えば奈々、菜月先輩もサンダースがなかなか負けなくてしんどいと仰っていたぞ」
「こればっかりはいくら菜月先輩の頼みでも引けないんすよ。でもちょっと前まではチェアーズは３位でそれなりにゲーム差があったはずなのに、気付いたら抜かれてるってヤバくないすかヤバいっすよねッ」
「直接対決はまだ残ってるンすから、殴り合ってどっちがテッペン取るか決めたらいーンすよ」
「それしかないんすよ実際ッ！」
「野球の話はいいけど学祭の準備に私情は挟むなよ」
「それはそうとして割り切りますけど各種シリーズに出るとなるとテンションがバリ高になることは避けられないっす、うっすうっす」
「もう優勝した気でいるぞ」
「やァー、ファンの鑑スわ」
菜月先輩もまだまだ野球観戦が忙しいなあと仰っていたので、たこ焼きの頻度が高くなるんだろうなとは。お酒の量も比例して増えそうなのでそれだけは気を付けてもらってだな。菜月先輩にお誘いいただけるのは嬉しいのだけど、宅飲みでは100％無事に帰してもらえないからなあ。
end.
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そう言えばMMPってのはこういうサークルでもあったなと思いました。ノサ律は日常的に野球の話してるといいなって
多分ノサカは菜月さんからちょこちょこ野球観戦という名の宅飲みに誘われてるんだけども、100％無事に帰してもらえてない
カノンはそこまでガチガチに野球は見てないけど、見る分には全然オッケーだし結果くらいは気になるくらいのライトさ。TKGに通じる。
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