2021(02)
■That's beside the point
++++
「シたら、MMP昼放送の簡単な説明をしヤす」
「お願いしまーす」
今期は緑ヶ丘さんからすがやんというアナウンサーの1年生を派遣してもらって昼放送を回すことになりました。文化交流という体で毎週水曜日に来ることになったすがやんは、本人の希望もあって土田さんと私が面倒を見ることになり、これから土田代表よりMMP昼放送についての簡単な説明が行われようとしていました。
機材王国と呼ばれて久しいらしい向島大学MMPですが、ひとつ上の代では3人の先輩が全員アナウンサーだったこともあり、私たち現3年生のミキサー3人は3人で試行錯誤しながらそれぞれのミキサーとしてのスタイルを確立させたように思います。基本に忠実で正確無比な番組運びの野坂さんに、緩くありつつも何でも出来る土田さん。そして音とリズムの観点から番組を組み立てる私と。
すがやんが今回土田さんと私をペアを組むミキサーとしてリクエストした背景には、他校から見る向島らしさということが関係しているようでした。悪ふざけをベースにした自由な発想の番組であったり、他校では思いついても実現には至らないようなことを実際にやってみるノリであったり。どうせ外に出るなら向島っぽいミキサーと組むべきと考えた時に、私の名前が出たのは意外でしたね。
「必ず入れるのが、番組前のインフォメーションすね。これが原稿なンすけど、本日は食堂のご利用あざーす的な挨拶やら、食堂の簡単な使い方と、混雑時のお願いみたいなモンを読みヤす。それから、食堂のフェア情報のお知らせスね。これが来月からのフェア情報になりヤす」
「へー、こういうのがあるんすねー」
「ちなみに、番組前のインフォメーションが1分。番組中のインフォメーションが1分半。番組のトータルタイムが30分なンすけど、インフォの時間もこれに含まれるンで、実際番組に使える時間は正味27分30秒になりヤす。まァその辺はミキサーがどうこうするところなンで、すがやんは気にせず好き勝手にやってもらえりャいースね」
ふむふむ、とネタ帳にメモを取るすがやんが真面目か、と向島勢はみんな感心しています。土田さんから説明されたMMP式昼放送の注意事項を書き記したページの隣には緑ヶ丘の昼放送の特徴が書かれていて、見開きで2校の昼放送の特徴が比較出来るようにしてあるようです。向島も緑ヶ丘も昼放送解禁は基本的に1年の秋学期なので、すがやんは自分の大学の昼放送をやったことはないんですね。
「ちなみに、夏合宿は誰と組んでいました?」
「星大のわかちゃんっすね」
「ああ、1年生ペアだったんですね」
「確か緑ヶ丘の1年は全員1年ペアだったはずだぞ。全部の班が2年2人に1年4人の構成だったから、必ず1年ペアが1コ出来るんだよ。今年の緑ヶ丘はその時点で全員レベルが高かったから、じゃあよろしくって感じでそうなってたとは聞く」
「そうだったんですね。ところで野坂さん、今年の夏合宿では変わった構成の番組をやっていた班などはあったんですかね」
「タカティの班がいつもの感じで基本の構成をぶっ壊してたけど、それ以外は割と普通だったかな。ああ、エージの班も少し崩してた気がするけど、想定の範囲内だった」
「まあ、タカティに関してはあれがスタンダードですからねえ。最早何も驚きませんよ」
「タカティの場合は本人もああいう感じスけど、好奇心の強い人間が他に1人いるとタカティ式で番組をやりたがる傾向にあるンすよね。去年の番組がああなったのも菜月先輩発ッしたからね」
私たちがあまりにタカティの話をするものですから、自分の先輩の話がすがやんも気になったんでしょうね。高木先輩は前々からそんな感じだったんですかと聞いて来るのです。あの子は最初からああいう感じでしたよと私たちは口を揃え、正統派揃いの緑ヶ丘の中において、緑ヶ丘っぽくないミキサーだなとまた話が盛り上がります。
「ま、タカティの話は措いといて、自分らがどーゆー感じで番組をやっていくかスね」
「りっちゃん先輩は何でも出来るっていう風に聞いてるんですけど」
「土田さんは何でも出来ますよ~、一般的な番組は当然として、タカティスタイルにも対応出来ますし、番組の内容を考えることも出来ますからね~。ラジドラや企画番組の季節には土田Pとも呼ばれていまして」
「確かに、去年のブラケイトの総監督にして圭斗先輩のマネージャーだったからな……何でも出来るという表現は大袈裟じゃない」
「ブラケイト?」
「私たちは毎年年末番組というお遊びの特番を収録しているのですが、去年はお散歩番組を制作したんですね」
「お散歩すか。それは散歩してる体のドラマっすか?」
「いえ、リアルお散歩ですよ。焼き芋実況というのが正しいかもしれませんが」
「やべー、向島のレベルが高すぎてやっぱ何も思いつかねー! カノン、俺、こんなに頭固くて3ヶ月やっていけるかな?」
「最初はそんなモンだって」
「うーん、緑ヶ丘式の常識を取っ払うか、向島式のノリを学ぶか。どっちが早いかなー」
「緑ヶ丘式の常識がなくなると真面目に向こうから苦情が来るンで、常識は保ちつつウチのノリを学ぶ方向で頼みヤすわ」
end.
++++
すがやんの初回留学回。自己紹介などが済んで、真面目に昼放送の話を始めました。向島的にはどちゃくそ真面目である。
MMPはすがやんが来るから放送サークルらしい活動をたまにやれる、とかいうふざけたノリなので、発声練習とかの回もやりたい。
そして懐かしのブラケイト。りっちゃんがどんだけ圭斗さんに苦労させられたかという話をぼとぼとしていてもらいたい。
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「シたら、MMP昼放送の簡単な説明をしヤす」
「お願いしまーす」
今期は緑ヶ丘さんからすがやんというアナウンサーの1年生を派遣してもらって昼放送を回すことになりました。文化交流という体で毎週水曜日に来ることになったすがやんは、本人の希望もあって土田さんと私が面倒を見ることになり、これから土田代表よりMMP昼放送についての簡単な説明が行われようとしていました。
機材王国と呼ばれて久しいらしい向島大学MMPですが、ひとつ上の代では3人の先輩が全員アナウンサーだったこともあり、私たち現3年生のミキサー3人は3人で試行錯誤しながらそれぞれのミキサーとしてのスタイルを確立させたように思います。基本に忠実で正確無比な番組運びの野坂さんに、緩くありつつも何でも出来る土田さん。そして音とリズムの観点から番組を組み立てる私と。
すがやんが今回土田さんと私をペアを組むミキサーとしてリクエストした背景には、他校から見る向島らしさということが関係しているようでした。悪ふざけをベースにした自由な発想の番組であったり、他校では思いついても実現には至らないようなことを実際にやってみるノリであったり。どうせ外に出るなら向島っぽいミキサーと組むべきと考えた時に、私の名前が出たのは意外でしたね。
「必ず入れるのが、番組前のインフォメーションすね。これが原稿なンすけど、本日は食堂のご利用あざーす的な挨拶やら、食堂の簡単な使い方と、混雑時のお願いみたいなモンを読みヤす。それから、食堂のフェア情報のお知らせスね。これが来月からのフェア情報になりヤす」
「へー、こういうのがあるんすねー」
「ちなみに、番組前のインフォメーションが1分。番組中のインフォメーションが1分半。番組のトータルタイムが30分なンすけど、インフォの時間もこれに含まれるンで、実際番組に使える時間は正味27分30秒になりヤす。まァその辺はミキサーがどうこうするところなンで、すがやんは気にせず好き勝手にやってもらえりャいースね」
ふむふむ、とネタ帳にメモを取るすがやんが真面目か、と向島勢はみんな感心しています。土田さんから説明されたMMP式昼放送の注意事項を書き記したページの隣には緑ヶ丘の昼放送の特徴が書かれていて、見開きで2校の昼放送の特徴が比較出来るようにしてあるようです。向島も緑ヶ丘も昼放送解禁は基本的に1年の秋学期なので、すがやんは自分の大学の昼放送をやったことはないんですね。
「ちなみに、夏合宿は誰と組んでいました?」
「星大のわかちゃんっすね」
「ああ、1年生ペアだったんですね」
「確か緑ヶ丘の1年は全員1年ペアだったはずだぞ。全部の班が2年2人に1年4人の構成だったから、必ず1年ペアが1コ出来るんだよ。今年の緑ヶ丘はその時点で全員レベルが高かったから、じゃあよろしくって感じでそうなってたとは聞く」
「そうだったんですね。ところで野坂さん、今年の夏合宿では変わった構成の番組をやっていた班などはあったんですかね」
「タカティの班がいつもの感じで基本の構成をぶっ壊してたけど、それ以外は割と普通だったかな。ああ、エージの班も少し崩してた気がするけど、想定の範囲内だった」
「まあ、タカティに関してはあれがスタンダードですからねえ。最早何も驚きませんよ」
「タカティの場合は本人もああいう感じスけど、好奇心の強い人間が他に1人いるとタカティ式で番組をやりたがる傾向にあるンすよね。去年の番組がああなったのも菜月先輩発ッしたからね」
私たちがあまりにタカティの話をするものですから、自分の先輩の話がすがやんも気になったんでしょうね。高木先輩は前々からそんな感じだったんですかと聞いて来るのです。あの子は最初からああいう感じでしたよと私たちは口を揃え、正統派揃いの緑ヶ丘の中において、緑ヶ丘っぽくないミキサーだなとまた話が盛り上がります。
「ま、タカティの話は措いといて、自分らがどーゆー感じで番組をやっていくかスね」
「りっちゃん先輩は何でも出来るっていう風に聞いてるんですけど」
「土田さんは何でも出来ますよ~、一般的な番組は当然として、タカティスタイルにも対応出来ますし、番組の内容を考えることも出来ますからね~。ラジドラや企画番組の季節には土田Pとも呼ばれていまして」
「確かに、去年のブラケイトの総監督にして圭斗先輩のマネージャーだったからな……何でも出来るという表現は大袈裟じゃない」
「ブラケイト?」
「私たちは毎年年末番組というお遊びの特番を収録しているのですが、去年はお散歩番組を制作したんですね」
「お散歩すか。それは散歩してる体のドラマっすか?」
「いえ、リアルお散歩ですよ。焼き芋実況というのが正しいかもしれませんが」
「やべー、向島のレベルが高すぎてやっぱ何も思いつかねー! カノン、俺、こんなに頭固くて3ヶ月やっていけるかな?」
「最初はそんなモンだって」
「うーん、緑ヶ丘式の常識を取っ払うか、向島式のノリを学ぶか。どっちが早いかなー」
「緑ヶ丘式の常識がなくなると真面目に向こうから苦情が来るンで、常識は保ちつつウチのノリを学ぶ方向で頼みヤすわ」
end.
++++
すがやんの初回留学回。自己紹介などが済んで、真面目に昼放送の話を始めました。向島的にはどちゃくそ真面目である。
MMPはすがやんが来るから放送サークルらしい活動をたまにやれる、とかいうふざけたノリなので、発声練習とかの回もやりたい。
そして懐かしのブラケイト。りっちゃんがどんだけ圭斗さんに苦労させられたかという話をぼとぼとしていてもらいたい。
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