2021(02)
■協力はするけども
++++
「そしたら、今年の学祭の会議を始めまーす」
「尚ちゃんいいぞー」
大学祭ではGREENsでも食品ブースを出すことになっていて、そのメニューは毎年恒例となった鶏の唐揚げ。去年は最優秀ブース賞こそ取れなかったけど小さな方のブース賞をもらうことが出来た。今年は最優秀を狙って行くぞという空気の中、改めて作戦を練って行くことになる。
GREENsの唐揚げの何がガチかと言うと、やはりレシピだろう。レシピは毎年改良を繰り返しているらしいんだけど、それを監修しているのが料理を作って飯を食っている慧梨夏サンのお袋さんなんだ。料理音痴の慧梨夏サン本人は調理に関わることはないけど、レシピを持って来るだけでも十分な仕事量だ。
「最近は唐揚げが流行ってるし、これはGREENsにも追い風じゃねーかと思うワケっす! 流行ってるからって乗じて来る連中には、緑大唐揚げの元祖として受けて立ってやろーじゃねーの! ……くらいの意気で返り討ちにしてぶっ潰してやるつもりっす」
「お~、いーっすね尚ちゃんパイセン!」
「だろ?」
「で、今の唐揚げのトレンドを葉山ハカセに調べてもらった上で、例によって慧梨夏サンのママさんのレシピももらってます! じゃあ葉山、調べた物を発表してくれ」
「はい。簡単に調べた程度ですが、ここ数年で唐揚げ専門店などで出されている味は醤油ベースからだしベースへと変わっています。それから、衣の厚さも薄付けへとシフトしています。衣の付け方なども変わっていますが、その辺りはレシピにもしっかり反映されているので問題ないでしょう」
ハカセの異名を取る葉山は、事あるごとにデータ収集だとか解析班として駆り出されるようになった。夏のかき氷のときも的確なデータやレシピを調べて来てはみんなの満足度を上げていたように思う。今回も唐揚げのトレンドなどを調べて戦略を立てる中心的な役割を担っているようだ。……本来は3年生の仕事じゃん? まあいいけど。
「衣が薄いことのメリットですが、水分や油の吸収がなくサクッとしたジューシーな食感を味わうことが出来ることです」
「油を吸収しない分カロリーも気持ち程度だろうけど抑えられそうだね」
「また、味変要素としてソースなどの後がけも支持されていたり、大鶏排(ダージーパイ)という、鶏むね肉をまるごと1枚揚げた唐揚げがこれから来ると予測されていますが、その辺りのことは先輩方にお任せしています」
「イベントマスター慧梨夏サン、どっすかね?」
「ソースの後がけは去年のネギソースの踏襲もアリかなとは。基本的な方針は3年生に任せてるからね」
「口出ししてくださいよ~!」
「普通は上にしゃしゃり出られるのを嫌がると思うんだけどね」
「いや~、今までフツーに慧梨夏サンが幹事やってくれるのに乗っかってたんで、自分が回すのに慣れてないんすよ」
「じゃあこれから慣れて行かないと」
「いろいろ決めてほしいんすけどね~」
「相談には乗るけど自分で決める」
「あっ、前哨基地はくげン家な! お前に拒否権ねーから!」
「それは自分で決めるんじゃん? まーいーすけど」
うちの冷凍庫は大して物が入ってない状態がキープされている。だから明日試作するから鶏肉入れとけと今すぐに言われても対応出来る。これは俺が全然自炊をしないから成り立つんであって、もし俺がバリバリに料理をする奴で、冷凍庫にいろいろ詰める人間だったらどうするつもりだったんだろうか。いや、空にするのか。
そんなこんなで、これから大学祭に向けて本格的に動いて行くことになる。必要な道具はそういう店に行って借りて来ればいいし、容器もいつもの業務用の店がある。そういう用具類の心配はあまりしなくていいようだけど、何がアレって試作会なんだよな。レシピに基づいてちゃんと調理できるかどうかをひたすら練習するワケだけど。
一応慧梨夏サンのお袋さんのレシピは料理慣れしていない方の学生でも簡単に美味く出来るよう配慮されている。去年もそうだったんだけど、それでもいきなり本番でやれるかと言えばやれるはずがないから練習をするんだよな。原価計算のこともある。その練習をするのにうちの台所でひたすら唐揚げを揚げ続ける。
「とりあえず、初回の練習は次の日曜でいいか? お前学食バイトだし日曜は休みだよな」
「と言うかGREENsの活動が日曜な以上、その活動日にバイト入れてる奴も少ないんじゃん?」
「うっせーわ! わかってんだよ! 一応確認してやった俺の気遣いだろ!」
「つか気遣いもクソも、俺が休みじゃないっつったところで有無を言わさずやるじゃんな」
「当たり前だろ」
「ふざけんなてめえ」
「あ!? 仮にも先輩で3年の学祭幹事だぞテメーこそふざけんな」
「学祭幹事はともかく歳だけならタメだってこと忘れんなよ」
如何せんGREENsは有無を言わさず勢いで物事を進める人が多いんだけど、慧梨夏サンとかだとしょうがないなと思いつつもわかりましたよと納得するし、三浦でも三浦だからしょうがないと思うんだけども、尚サンとかいうクソ先輩はどうにもこうにも腹が立つじゃんな。まあ、大学祭のことはそれなりに協力体制でやるけど。
end.
++++
よっちゃんがハカセとして調べものに大活躍ですね。尚ちゃん絶対自分で調べるのめんどくさかったヤツやん
鵠さんが尚ちゃんに対して敬語・丁寧語を使ってるのは実は結構頑張ってる。砕けてても実際お互いそこまで気にしてないんだけど
慧梨夏もそろそろ隠居じゃないけど、イベントマスターとしての総まとめということで後継を育てることを始めましたとさ
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「そしたら、今年の学祭の会議を始めまーす」
「尚ちゃんいいぞー」
大学祭ではGREENsでも食品ブースを出すことになっていて、そのメニューは毎年恒例となった鶏の唐揚げ。去年は最優秀ブース賞こそ取れなかったけど小さな方のブース賞をもらうことが出来た。今年は最優秀を狙って行くぞという空気の中、改めて作戦を練って行くことになる。
GREENsの唐揚げの何がガチかと言うと、やはりレシピだろう。レシピは毎年改良を繰り返しているらしいんだけど、それを監修しているのが料理を作って飯を食っている慧梨夏サンのお袋さんなんだ。料理音痴の慧梨夏サン本人は調理に関わることはないけど、レシピを持って来るだけでも十分な仕事量だ。
「最近は唐揚げが流行ってるし、これはGREENsにも追い風じゃねーかと思うワケっす! 流行ってるからって乗じて来る連中には、緑大唐揚げの元祖として受けて立ってやろーじゃねーの! ……くらいの意気で返り討ちにしてぶっ潰してやるつもりっす」
「お~、いーっすね尚ちゃんパイセン!」
「だろ?」
「で、今の唐揚げのトレンドを葉山ハカセに調べてもらった上で、例によって慧梨夏サンのママさんのレシピももらってます! じゃあ葉山、調べた物を発表してくれ」
「はい。簡単に調べた程度ですが、ここ数年で唐揚げ専門店などで出されている味は醤油ベースからだしベースへと変わっています。それから、衣の厚さも薄付けへとシフトしています。衣の付け方なども変わっていますが、その辺りはレシピにもしっかり反映されているので問題ないでしょう」
ハカセの異名を取る葉山は、事あるごとにデータ収集だとか解析班として駆り出されるようになった。夏のかき氷のときも的確なデータやレシピを調べて来てはみんなの満足度を上げていたように思う。今回も唐揚げのトレンドなどを調べて戦略を立てる中心的な役割を担っているようだ。……本来は3年生の仕事じゃん? まあいいけど。
「衣が薄いことのメリットですが、水分や油の吸収がなくサクッとしたジューシーな食感を味わうことが出来ることです」
「油を吸収しない分カロリーも気持ち程度だろうけど抑えられそうだね」
「また、味変要素としてソースなどの後がけも支持されていたり、大鶏排(ダージーパイ)という、鶏むね肉をまるごと1枚揚げた唐揚げがこれから来ると予測されていますが、その辺りのことは先輩方にお任せしています」
「イベントマスター慧梨夏サン、どっすかね?」
「ソースの後がけは去年のネギソースの踏襲もアリかなとは。基本的な方針は3年生に任せてるからね」
「口出ししてくださいよ~!」
「普通は上にしゃしゃり出られるのを嫌がると思うんだけどね」
「いや~、今までフツーに慧梨夏サンが幹事やってくれるのに乗っかってたんで、自分が回すのに慣れてないんすよ」
「じゃあこれから慣れて行かないと」
「いろいろ決めてほしいんすけどね~」
「相談には乗るけど自分で決める」
「あっ、前哨基地はくげン家な! お前に拒否権ねーから!」
「それは自分で決めるんじゃん? まーいーすけど」
うちの冷凍庫は大して物が入ってない状態がキープされている。だから明日試作するから鶏肉入れとけと今すぐに言われても対応出来る。これは俺が全然自炊をしないから成り立つんであって、もし俺がバリバリに料理をする奴で、冷凍庫にいろいろ詰める人間だったらどうするつもりだったんだろうか。いや、空にするのか。
そんなこんなで、これから大学祭に向けて本格的に動いて行くことになる。必要な道具はそういう店に行って借りて来ればいいし、容器もいつもの業務用の店がある。そういう用具類の心配はあまりしなくていいようだけど、何がアレって試作会なんだよな。レシピに基づいてちゃんと調理できるかどうかをひたすら練習するワケだけど。
一応慧梨夏サンのお袋さんのレシピは料理慣れしていない方の学生でも簡単に美味く出来るよう配慮されている。去年もそうだったんだけど、それでもいきなり本番でやれるかと言えばやれるはずがないから練習をするんだよな。原価計算のこともある。その練習をするのにうちの台所でひたすら唐揚げを揚げ続ける。
「とりあえず、初回の練習は次の日曜でいいか? お前学食バイトだし日曜は休みだよな」
「と言うかGREENsの活動が日曜な以上、その活動日にバイト入れてる奴も少ないんじゃん?」
「うっせーわ! わかってんだよ! 一応確認してやった俺の気遣いだろ!」
「つか気遣いもクソも、俺が休みじゃないっつったところで有無を言わさずやるじゃんな」
「当たり前だろ」
「ふざけんなてめえ」
「あ!? 仮にも先輩で3年の学祭幹事だぞテメーこそふざけんな」
「学祭幹事はともかく歳だけならタメだってこと忘れんなよ」
如何せんGREENsは有無を言わさず勢いで物事を進める人が多いんだけど、慧梨夏サンとかだとしょうがないなと思いつつもわかりましたよと納得するし、三浦でも三浦だからしょうがないと思うんだけども、尚サンとかいうクソ先輩はどうにもこうにも腹が立つじゃんな。まあ、大学祭のことはそれなりに協力体制でやるけど。
end.
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よっちゃんがハカセとして調べものに大活躍ですね。尚ちゃん絶対自分で調べるのめんどくさかったヤツやん
鵠さんが尚ちゃんに対して敬語・丁寧語を使ってるのは実は結構頑張ってる。砕けてても実際お互いそこまで気にしてないんだけど
慧梨夏もそろそろ隠居じゃないけど、イベントマスターとしての総まとめということで後継を育てることを始めましたとさ
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