2021(02)
■いろいろな色がある
++++
「それじゃあ改めて、くるみ、誕生日おめでとうございました」
「ありがとー!」
本当は昨日がくるみの誕生日で、1年みんなで集まって祝おうという風に計画していた。だけど、程なくして取り寄せていたケーキが27日じゃないと来ませんとメールが届いたんだ。それで、Bプランとして用意していたサークルの場で祝おうということになった。
「ササ、大丈夫か? 息整えた方がよくね?」
「大丈夫。そのうち落ち着くから。そしたらくるみ、ケーキ入刀ということで」
「誕生日の人に切らすの。あ、いや、くるみだから切ってもらった方がいいのか」
「そういうこと。ケーキ切るのを一番楽しんでくれそうだし」
「くるみにいつも動画撮ってる時用のマイ包丁でも持って来てもらおうと思ったんだけど、さすがに電車通学の子に凶器になり得るものを運ばせるのもなと思ってうちにあった包丁なんだけど、大丈夫かな」
「大丈夫! しっかりやらせていただきます」
ケーキの配達時間を昼休み頃に指定して、もし1時を過ぎたらどうしようとそわそわしながら待っていた。宅配便は12時50分頃届いたので、それを冷蔵庫に入れて急いで大学へと戻って、4限が終わったらまた家にケーキを取りに戻って、サークル室へという。なかなかに忙しくしていた。
サークル室で簡単なパーティーめいたことをやらせてもらうということで、もちろん俺たちだけじゃなくて先輩たちも来るんだけど、先輩たちは1年が何かやってるぞと覗きはするけど深くは突っ込んでこない。温かく見守ってもらっているという状況だ。
「それでは、僭越ながらわたくし依田くるみ、切らせていただきます」
「お願いします」
「このケーキ、真っ白だから中心がわかりにくくて難しいね」
「バランス崩してもらって極端にデカくなっても俺が食うし」
「シノ! 一応あたしにっていうケーキ! ……で、いいんだよね?」
「そうだよ」
断面のインパクトを狙って用意したケーキは、表面がクリームで真っ白。これは確かに模様やデコレーションである程度の目印になる物と違って切るときに当たりが付けにくくてどう行こうかなと慎重になるな。だけど、さすがに場数を踏んでいるだけあってここというポイントを決めてからは早い。
「わー、すっごーい! 切り口が七色になってる!」
「すげー! この層どうやって作ってんだろ」
「つかこれ何味なんだ?」
「着色料は何由来なんだろう」
みんなそれぞれの疑問を抱いたようだけど、注文した時のサイトを見せて答えていく。味はごくごく普通のケーキであることや、七色の着色料は食品由来の物であること、そして層は1枚1枚重ねて作ってますよという、制作の工程なんかはそこに全部書いてあるから。
肝心のくるみだけど、半分に割ったケーキを前に、次のことを考えている……のかと思いきや、スマホを取り出している。やっぱり撮影が始まるみたいだけど、これはブログ用の撮影じゃなくて記念撮影らしい。レストランとかカフェに行ったときに食べた物をとりあえず撮る、みたいな感覚のライトなヤツ。
「とりあえず、6等分出来ました! ササ、紙皿貸してー」
「切るのはともかく、盛るのまでやってもらって悪い」
「いいのいいの。うーん、6等分って言うけどやっぱりちょっと大小の差はあるなあ」
「くるみ、俺のは小さいのにして」
「わかったよ。それじゃあ、サキはこれかな」
「ありがとう」
「それじゃ俺がデカいヤツだな!」
「ブーッ。シノ、残念でした~。一番大きいのはあたしが食べまーす」
「じゃ2番目にデカいのでいいよ」
「しょうがないなあ。みんなそれでいい?」
「いいよ。俺と玲那はそうなるだろうと注文の段階から思ってたし」
「私たちは特に選ばないから適当に盛っちゃって」
「じゃすがやんには断面が綺麗に切れたヤツにしてあげる。すがやんも記念撮影したらいいよ」
「おっ、サンキュー」
くるみによって全員にケーキが行き渡り、プラスチックのフォークも配って行く。改めて見ると結構な柄のケーキだなと思う。……ちゃんと解凍されて食べ頃にはなってると思うけど、どうかな。
「それじゃあ、いっただっきまーす! ……ん! 美味しい! 見た目よりシンプルな味~!」
「うん。甘いけどあっさりしてて美味しい。これは俺たちの中だとすがやん好みの味かも」
「マジか。それじゃあ俺も食おうかな」
「あー、これはすぐ無くなるな」
「てかシノ早っ」
「上がシンプルなのは、お好みでデコレーションしてもいいですよーっていうのもあるんだと思う。今回は時間の都合上そのまま出したんだけど」
「くるみに切ってもらうことを基準に選んでたし、デコレーションのことは全然考えてなかったからね」
「ううん、こんなにかわいいケーキを用意してもらってありがとうしかないよ! 味も美味しいし、見た目もかわいいし!」
くるみに喜んでもらえたようで何より。ただ、今までにわかっているくるみの性格からすると、ケーキはもちろん好きだけど、みんなで何かをやるっていうことが第一なようだから、こういう会を開いたことが良かったのかもしれない。
「ササ、このケーキ買ったサイト教えてー」
「いいよ。LINEで送る」
「今度自分で買ってちゃんとした撮影をしたいからね!」
「あ、それはそれでやるのか」
「そしたら陸さん、私たちが目星を付けてたケーキのページ、全部送ってあげたら?」
「そうするかあ」
「えーっ! それ教えてもらえるの!? ありがたーい!」
「くるみだったらもう知ってるとは思うけど、そしたら一応送ります」
end.
++++
くるちゃんの誕生日が日曜日だということをすっかり忘れてカノやんらの話を先にいれてしまったので、取り寄せの都合が生じました
七色のケーキを前にしてそれぞれの個性が出るという状況が好き。みんな気にしてるところが違ったりするのが良し
見守ってる先輩たちの方もちょっと気になるので、来年度以降覚えてたらそっち目線でもこの回をやりたいし走る佐々木陸も見たいっすね
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「それじゃあ改めて、くるみ、誕生日おめでとうございました」
「ありがとー!」
本当は昨日がくるみの誕生日で、1年みんなで集まって祝おうという風に計画していた。だけど、程なくして取り寄せていたケーキが27日じゃないと来ませんとメールが届いたんだ。それで、Bプランとして用意していたサークルの場で祝おうということになった。
「ササ、大丈夫か? 息整えた方がよくね?」
「大丈夫。そのうち落ち着くから。そしたらくるみ、ケーキ入刀ということで」
「誕生日の人に切らすの。あ、いや、くるみだから切ってもらった方がいいのか」
「そういうこと。ケーキ切るのを一番楽しんでくれそうだし」
「くるみにいつも動画撮ってる時用のマイ包丁でも持って来てもらおうと思ったんだけど、さすがに電車通学の子に凶器になり得るものを運ばせるのもなと思ってうちにあった包丁なんだけど、大丈夫かな」
「大丈夫! しっかりやらせていただきます」
ケーキの配達時間を昼休み頃に指定して、もし1時を過ぎたらどうしようとそわそわしながら待っていた。宅配便は12時50分頃届いたので、それを冷蔵庫に入れて急いで大学へと戻って、4限が終わったらまた家にケーキを取りに戻って、サークル室へという。なかなかに忙しくしていた。
サークル室で簡単なパーティーめいたことをやらせてもらうということで、もちろん俺たちだけじゃなくて先輩たちも来るんだけど、先輩たちは1年が何かやってるぞと覗きはするけど深くは突っ込んでこない。温かく見守ってもらっているという状況だ。
「それでは、僭越ながらわたくし依田くるみ、切らせていただきます」
「お願いします」
「このケーキ、真っ白だから中心がわかりにくくて難しいね」
「バランス崩してもらって極端にデカくなっても俺が食うし」
「シノ! 一応あたしにっていうケーキ! ……で、いいんだよね?」
「そうだよ」
断面のインパクトを狙って用意したケーキは、表面がクリームで真っ白。これは確かに模様やデコレーションである程度の目印になる物と違って切るときに当たりが付けにくくてどう行こうかなと慎重になるな。だけど、さすがに場数を踏んでいるだけあってここというポイントを決めてからは早い。
「わー、すっごーい! 切り口が七色になってる!」
「すげー! この層どうやって作ってんだろ」
「つかこれ何味なんだ?」
「着色料は何由来なんだろう」
みんなそれぞれの疑問を抱いたようだけど、注文した時のサイトを見せて答えていく。味はごくごく普通のケーキであることや、七色の着色料は食品由来の物であること、そして層は1枚1枚重ねて作ってますよという、制作の工程なんかはそこに全部書いてあるから。
肝心のくるみだけど、半分に割ったケーキを前に、次のことを考えている……のかと思いきや、スマホを取り出している。やっぱり撮影が始まるみたいだけど、これはブログ用の撮影じゃなくて記念撮影らしい。レストランとかカフェに行ったときに食べた物をとりあえず撮る、みたいな感覚のライトなヤツ。
「とりあえず、6等分出来ました! ササ、紙皿貸してー」
「切るのはともかく、盛るのまでやってもらって悪い」
「いいのいいの。うーん、6等分って言うけどやっぱりちょっと大小の差はあるなあ」
「くるみ、俺のは小さいのにして」
「わかったよ。それじゃあ、サキはこれかな」
「ありがとう」
「それじゃ俺がデカいヤツだな!」
「ブーッ。シノ、残念でした~。一番大きいのはあたしが食べまーす」
「じゃ2番目にデカいのでいいよ」
「しょうがないなあ。みんなそれでいい?」
「いいよ。俺と玲那はそうなるだろうと注文の段階から思ってたし」
「私たちは特に選ばないから適当に盛っちゃって」
「じゃすがやんには断面が綺麗に切れたヤツにしてあげる。すがやんも記念撮影したらいいよ」
「おっ、サンキュー」
くるみによって全員にケーキが行き渡り、プラスチックのフォークも配って行く。改めて見ると結構な柄のケーキだなと思う。……ちゃんと解凍されて食べ頃にはなってると思うけど、どうかな。
「それじゃあ、いっただっきまーす! ……ん! 美味しい! 見た目よりシンプルな味~!」
「うん。甘いけどあっさりしてて美味しい。これは俺たちの中だとすがやん好みの味かも」
「マジか。それじゃあ俺も食おうかな」
「あー、これはすぐ無くなるな」
「てかシノ早っ」
「上がシンプルなのは、お好みでデコレーションしてもいいですよーっていうのもあるんだと思う。今回は時間の都合上そのまま出したんだけど」
「くるみに切ってもらうことを基準に選んでたし、デコレーションのことは全然考えてなかったからね」
「ううん、こんなにかわいいケーキを用意してもらってありがとうしかないよ! 味も美味しいし、見た目もかわいいし!」
くるみに喜んでもらえたようで何より。ただ、今までにわかっているくるみの性格からすると、ケーキはもちろん好きだけど、みんなで何かをやるっていうことが第一なようだから、こういう会を開いたことが良かったのかもしれない。
「ササ、このケーキ買ったサイト教えてー」
「いいよ。LINEで送る」
「今度自分で買ってちゃんとした撮影をしたいからね!」
「あ、それはそれでやるのか」
「そしたら陸さん、私たちが目星を付けてたケーキのページ、全部送ってあげたら?」
「そうするかあ」
「えーっ! それ教えてもらえるの!? ありがたーい!」
「くるみだったらもう知ってるとは思うけど、そしたら一応送ります」
end.
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くるちゃんの誕生日が日曜日だということをすっかり忘れてカノやんらの話を先にいれてしまったので、取り寄せの都合が生じました
七色のケーキを前にしてそれぞれの個性が出るという状況が好き。みんな気にしてるところが違ったりするのが良し
見守ってる先輩たちの方もちょっと気になるので、来年度以降覚えてたらそっち目線でもこの回をやりたいし走る佐々木陸も見たいっすね
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