2021(02)
■Up and Down and Up and Down
++++
世間では3連休、この土曜日に向島大学ではオープンキャンパスが行われる。まあ、所詮は小さな公立大学なので、オープンキャンパスの規模もそこまでではないのだ。オープンキャンパスでは体験講義やゼミの研究内容の展示があったし、部活によっては活動の様子を見せてたりするようだ。
放送サークルMMPも非公式ではあるものの、学食の一角を借りての公開生放送ということを毎年やらせてもらっている。今年はアナウンサーの人数的にどうなるかと冷や冷やしたものの、ヒロとカノンの2人がそれぞれ1時間の番組をやることになり、どうにか回すことが出来ているという状況だ。
学食での公開生放送をやるに当たって必要なのが、機材だ。昼放送は事務所の機材にポータブルプレイヤーを接続してやっているのだけど、さすがに生放送となるとそれでは対応できない。徒歩20分の距離にあるサークル室から機材一式を運搬してからブース設営をやるという、これが何気に重労働なのだ。
「皆さん、トランクと後部座席で全て載るとは思いますが、助手席は空けておいてくださいね」
「ボク乗せてくれるん? この距離歩くんだるいわ。どーせ下りるんに何で上らなアカンかったの」
「何を言っているんです。乗せるのはヒロさんではなく土田さんですよ」
「何でりっちゃんばっかり! 贔屓やー」
「自分は先に行ってタケテンへの挨拶やら何やらをするンすよ。ヤ、そースか。ヒロが挨拶やら諸々の手続きを代わってくれるンすか! いやァーどーもどーも」
「挨拶はもっとやーやわ。りっちゃん乗ってってえーよ」
「どーもス。そーゆーコトなンで野坂、徒歩組は任せヤした」
「機材運搬でハブられる機材管理担当であった」
サークル室から下ろしてきた機材をこーたの車に詰め込み、先行して学食の店長に挨拶をするという律を乗せて車は走り去っていった。確かに徒歩20分の道のりを歩くのは面倒極まりないのだけども、先行隊には先行隊なりの苦労はあるはずだ。と言うか、このメンツだと徒歩組の統率を取るのは俺か。まあ俺だな。
車は学食から徒歩2分くらいのところにある30分駐車場(通称30P)に止めて、そこから機材を運搬するらしい。だけど、徒歩でサークル室から下って来る俺たちが20分ほどかかる計算なので、学食までの運搬はほぼほぼ律とこーたの2人でやらなければならないのだ。
機材の接続自体はヒロ以外の全員が出来るというのが何気にMMPの強いところだなと思う。いや、単純に2年生以上の8割がミキサーだというだけの事だ。だけどカノンがアナとミキの二刀流ということでやっているのは来年度以降のことを考えたときにはデカイ。今回の接続もぜひやらせようという話でまとまっている。
「さて、俺たちも行くか」
「そうっすね!」
「あー、ホンマ何で上らなアカンかったのー」
「ヒロ先輩そう言わずにっす」
「ゆーてボクアナウンサーやし機材のコトってノータッチやんね。こっちに来る必要なかったやん絶対」
「確かに、ヒロは機材関係の時は大した戦力にならないんだから、向こうに残して来て30Pと学食の往復をしてもらうべきだったとは今更ながらに思う」
「戦力にならんって何やのノサカのクセに」
「お前が機材搬入搬出の作業をまともにやってるのを未だかつて見たことがないからな。対策委員の時だってお前より果林やつばめの方が圧倒的仕事量だったじゃないか」
「つばちゃんと比べるんはイジメやん」
「ヒロ先輩って対策委員でも自由だったんすね……」
「ノサカかていっつも会議に遅刻して来とったやん。しやからボクら一括りにされてこれやから向島はーって言われとったんやん」
これ以上対策委員の話を掘り返すと都合が悪いので、この話題は強制的に閉めることに。遅刻のことを言われるとそれこそ「これだから向島は」に着地してしまうのであった。実際俺の遅刻癖とヒロの自由さのおかげで当時の対策委員内での向島の肩身の狭さみたいな物が確定してしまった感はある。
「対策委員って実際どんなことしてるんすか?」
「そうだな……初心者講習会とか夏合宿の企画運営が主かな。夏合宿みたいな行事の時は班をまとめたり、講師の方と打ち合わせをしたり」
「そうなんすねー。対策委員になるのって、各大学のしっかりした人たちなんすか?」
「ヒロが対策委員だったんだぞ!? 何故そう思うのか。意味がわからない」
「何やの」
「あ、あー……まあ、言及は避けますけど、納得しました。いや、俺の班の班長が結構自由なタイプの人で、班を実際まとめてたのは副班長だったので」
「カノンの班の班長と副班長って誰だったんだ?」
「班長が青女のサドニナさんで、副班長が青敬のあやめさんっすね」
「サドニナならしゃーない」
「ホンマに。サドニナは多分ボクより班長っぽくないんちゃうん」
「お前より班長らしくない奴がいてたまるか」
今年の対策委員は特に議長がアオで委員長がエージとかいう2年生屈指のしっかりした連中だったから、その中でのサドニナの自由極まりなさは、まあ……うん、俺らの時のヒロのポジションなんだろうなあとは。働くときは働くけど、それが気紛れでたまにだから何とも言い難い。
「カノンはこの感じだと来期は奈々方式で対策委員と定例会の兼務になるだろうし、これだから向島はと言われないように頑張ってくれ」
「俺がインターフェイスに出ていくからには、さすが向島だって言われるように頑張るっす!」
「カノンよくそんな元気やね」
「このオープンキャンパスでもワンチャン狙って行きますよ! 今日の番組でMMPに人を呼ぶんす!」
end.
++++
向島のオープンキャンパスの、会場に向かうまでのお話。世間話をしているだけのヤツ。ノサヒロがやいやいやってるだけ。
対策委員での働きぶりに関しては言ってはいけない。ヒロは知らんけどノサカに関してはたまにちゃんと働いてたし……
サドニナは間違いなく去年の対策委員でいうところのヒロの枠なんだよなあ。来年度以降、サドニナ班のことも詰めて行きたい。あやめ戦記になりそう。
.
++++
世間では3連休、この土曜日に向島大学ではオープンキャンパスが行われる。まあ、所詮は小さな公立大学なので、オープンキャンパスの規模もそこまでではないのだ。オープンキャンパスでは体験講義やゼミの研究内容の展示があったし、部活によっては活動の様子を見せてたりするようだ。
放送サークルMMPも非公式ではあるものの、学食の一角を借りての公開生放送ということを毎年やらせてもらっている。今年はアナウンサーの人数的にどうなるかと冷や冷やしたものの、ヒロとカノンの2人がそれぞれ1時間の番組をやることになり、どうにか回すことが出来ているという状況だ。
学食での公開生放送をやるに当たって必要なのが、機材だ。昼放送は事務所の機材にポータブルプレイヤーを接続してやっているのだけど、さすがに生放送となるとそれでは対応できない。徒歩20分の距離にあるサークル室から機材一式を運搬してからブース設営をやるという、これが何気に重労働なのだ。
「皆さん、トランクと後部座席で全て載るとは思いますが、助手席は空けておいてくださいね」
「ボク乗せてくれるん? この距離歩くんだるいわ。どーせ下りるんに何で上らなアカンかったの」
「何を言っているんです。乗せるのはヒロさんではなく土田さんですよ」
「何でりっちゃんばっかり! 贔屓やー」
「自分は先に行ってタケテンへの挨拶やら何やらをするンすよ。ヤ、そースか。ヒロが挨拶やら諸々の手続きを代わってくれるンすか! いやァーどーもどーも」
「挨拶はもっとやーやわ。りっちゃん乗ってってえーよ」
「どーもス。そーゆーコトなンで野坂、徒歩組は任せヤした」
「機材運搬でハブられる機材管理担当であった」
サークル室から下ろしてきた機材をこーたの車に詰め込み、先行して学食の店長に挨拶をするという律を乗せて車は走り去っていった。確かに徒歩20分の道のりを歩くのは面倒極まりないのだけども、先行隊には先行隊なりの苦労はあるはずだ。と言うか、このメンツだと徒歩組の統率を取るのは俺か。まあ俺だな。
車は学食から徒歩2分くらいのところにある30分駐車場(通称30P)に止めて、そこから機材を運搬するらしい。だけど、徒歩でサークル室から下って来る俺たちが20分ほどかかる計算なので、学食までの運搬はほぼほぼ律とこーたの2人でやらなければならないのだ。
機材の接続自体はヒロ以外の全員が出来るというのが何気にMMPの強いところだなと思う。いや、単純に2年生以上の8割がミキサーだというだけの事だ。だけどカノンがアナとミキの二刀流ということでやっているのは来年度以降のことを考えたときにはデカイ。今回の接続もぜひやらせようという話でまとまっている。
「さて、俺たちも行くか」
「そうっすね!」
「あー、ホンマ何で上らなアカンかったのー」
「ヒロ先輩そう言わずにっす」
「ゆーてボクアナウンサーやし機材のコトってノータッチやんね。こっちに来る必要なかったやん絶対」
「確かに、ヒロは機材関係の時は大した戦力にならないんだから、向こうに残して来て30Pと学食の往復をしてもらうべきだったとは今更ながらに思う」
「戦力にならんって何やのノサカのクセに」
「お前が機材搬入搬出の作業をまともにやってるのを未だかつて見たことがないからな。対策委員の時だってお前より果林やつばめの方が圧倒的仕事量だったじゃないか」
「つばちゃんと比べるんはイジメやん」
「ヒロ先輩って対策委員でも自由だったんすね……」
「ノサカかていっつも会議に遅刻して来とったやん。しやからボクら一括りにされてこれやから向島はーって言われとったんやん」
これ以上対策委員の話を掘り返すと都合が悪いので、この話題は強制的に閉めることに。遅刻のことを言われるとそれこそ「これだから向島は」に着地してしまうのであった。実際俺の遅刻癖とヒロの自由さのおかげで当時の対策委員内での向島の肩身の狭さみたいな物が確定してしまった感はある。
「対策委員って実際どんなことしてるんすか?」
「そうだな……初心者講習会とか夏合宿の企画運営が主かな。夏合宿みたいな行事の時は班をまとめたり、講師の方と打ち合わせをしたり」
「そうなんすねー。対策委員になるのって、各大学のしっかりした人たちなんすか?」
「ヒロが対策委員だったんだぞ!? 何故そう思うのか。意味がわからない」
「何やの」
「あ、あー……まあ、言及は避けますけど、納得しました。いや、俺の班の班長が結構自由なタイプの人で、班を実際まとめてたのは副班長だったので」
「カノンの班の班長と副班長って誰だったんだ?」
「班長が青女のサドニナさんで、副班長が青敬のあやめさんっすね」
「サドニナならしゃーない」
「ホンマに。サドニナは多分ボクより班長っぽくないんちゃうん」
「お前より班長らしくない奴がいてたまるか」
今年の対策委員は特に議長がアオで委員長がエージとかいう2年生屈指のしっかりした連中だったから、その中でのサドニナの自由極まりなさは、まあ……うん、俺らの時のヒロのポジションなんだろうなあとは。働くときは働くけど、それが気紛れでたまにだから何とも言い難い。
「カノンはこの感じだと来期は奈々方式で対策委員と定例会の兼務になるだろうし、これだから向島はと言われないように頑張ってくれ」
「俺がインターフェイスに出ていくからには、さすが向島だって言われるように頑張るっす!」
「カノンよくそんな元気やね」
「このオープンキャンパスでもワンチャン狙って行きますよ! 今日の番組でMMPに人を呼ぶんす!」
end.
++++
向島のオープンキャンパスの、会場に向かうまでのお話。世間話をしているだけのヤツ。ノサヒロがやいやいやってるだけ。
対策委員での働きぶりに関しては言ってはいけない。ヒロは知らんけどノサカに関してはたまにちゃんと働いてたし……
サドニナは間違いなく去年の対策委員でいうところのヒロの枠なんだよなあ。来年度以降、サドニナ班のことも詰めて行きたい。あやめ戦記になりそう。
.