2021(02)
■思い出探しの旅へ
++++
「菜月ー! 久し振りー! はいこれアタシたちからのお土産! 今回は敢えて向島以外の物を選んだから!」
「と言うか、すごい量だな。うちはこれから豊葦に帰るんだぞ」
「あ。すっかり忘れてた!」
「まあ、とりあえず家に置きに行って、芽依ちゃんに託すことにしよう。郵送する方に詰めてもらおう」
温泉サークル第2回旅行の最終日。緑風出身のなっちと合流して、地元の人だからこそ知っているいい場所に案内してもらおうという計画。あと、スーパーの場所をナビしてもらって買い物をするのが今日の……今回の旅行の最大の目的。それから、なっちは豊葦に戻るそうなので、じゃあ一緒に帰ろうかって。
行きで買い込んだなっちへのお土産はひとまず実家へと置きに戻ることに。なっちの実家は物凄く大きな家だ。それにビックリした俺とヒビキだけど、なっちにそのことを伝えると緑風基準では中くらいの家だと言うのだから、大きい家だとどんな大豪邸なのって。
「スーパーとかは最後でいいか」
「そうだね」
「昨日と一昨日はどこを回ってたんだ?」
「1日目は観光と言うより温泉メインで、2日目はぶどう園と、なっちが教えてくれた卵屋さんに行って来たよ」
「あそこの店、どうだった? 実は行ったことなくて。こないだのバレンタインに塩見さんに送り付けたのはまた違う店のヤツだからさ」
「あ、そうなんだ。でもソフトクリームとか美味しかったよねヒビキ」
「ホント美味しかった! って言うか菜月、バレンタインやるタイプだったの!?」
「うちを何だと思ってるんだ。まあ、基本的にはやらないけど、大石のバイト先の社員さんが卵が主食の人で、オムライスとかごちそうになったりしたから「緑風にもこんな店があります!」っていう宣伝と布教も兼ねたお返し的な?」
「あ、卵が主食って、大石クンがお土産送りまくってる人?」
「そうだね」
「そう、菜月聞いて!」
1日目と2日目にあったことをヒビキがなっちに話してるんだけど、ちょっと話が大きくなってる気がするような。まあいいか、楽しそうにしてるし。例の泥パックの話だとか、俺が実費で追加したカニの話とか。宿のことだけでも結構盛り上がるよね。
ちなみに、今回の旅行では地方配送の出来るお土産は積極的に送って行くスタイルを取っている。送り先は自分の家と塩見さんの家。配るのは兄さんと朝霞とあずさくらいかな。あと会社用のバラまき用と。塩見さんには行くところ行くところで送り状を書いてるような気がするなあ。
「馬刺しかー、こんな近くに売ってるんだな」
「なっちって馬刺し好きなの?」
「好きだぞ。圭斗とか先輩たちと店で飲むときなんかは、焼酎と一緒に食べたりするし」
「向島の先輩たちのいる飲み会とか怖そうだなー……」
「えー、麻里さんとか話楽しいじゃん。化粧品とかスキンケアにすっごい詳しくていつも勉強させてもらってたしー」
「そうか、ヒビキともなると麻里さんと共通の話題もあるのか」
「って言うか圭斗元気?」
「最近は会ってないけど、昨日誕生日おめでとうってメールしたらありがとうって返って来たし、生きてはいる。帰って来るならいつものをよろしくとか注文付けてきやがって。領収証は松岡様で切ってやる」
「いつもの?」
「緑風の酒類だな」
「ああ。でも、俺も兄さんに買ってこうかな。あと朝霞にも少しだけ」
「って言うか菜月って誕生日やるタイプなんだ」
「なっちって結構誕生日にはマメな方じゃない? 去年俺も祝ってもらったし」
「あれは何と言うか、不可抗力みたいな物じゃないか」
「ああ……それこそみちゃこさんと向島の先輩たちからの流れだよね」
結局どこに行こうかーという話に戻ると、帰りと買い物のこともあるからこの近くの方がいいよなあとなっちが考えてくれている。俺も、昔の記憶と、ここに来た目的を思い出して。
「大石クン、お母さんが毎年来てたっていう公園に行ってみたら?」
「この辺で毎年来る人がいるような公園って言ったら、あそこだな。行くんならこのまま真っ直ぐで」
「……いいの?」
「お母さんが使ってたっぽいお醤油だっけ? を探しに来てるんだから、そういう思い出探しの旅でいいんじゃない?」
「今も一応花は植えられてるし、地上絵はちゃんと見えるぞ。チューリップが見たければ一応近くにあるし」
「そしたら、公園に行きます! なっち、ナビおねがーい」
「そのまま真っ直ぐ道なりに。あっでも駐車場に行かなきゃだから、えーと。あっ、帰りに道の駅にも寄ってくれるか?」
「いいけど、お土産?」
「ご当地レトルトカレーを買って帰ろうかと。圭斗とカレー大会を開く流れになってて」
「いいね、そういうちょっと変わったお土産。俺も見ていこうかな」
庭先のチューリップだとか、おひたしに使ってたのかなっていう醤油だとか。記憶だとか、そこにあるものが点になって結び付いて来て、よく思い出していたこと以外の記憶が引っ張られてきて。
「でも、毎年夫婦で旅行してたって、大石クンのお父さんとお母さんてすっごい仲良かったんだね」
「そうだね。仲がすごく良くて、いつもにこにこしてたなー」
「そういう話を聞くとアタシも玉の輿ばっかじゃなくて愛を信じてみたくもなるんだけどね。みんながみんなそう上手くは行かないのよ」
「玉の輿と愛を両立出来たらいいんだけどね」
「それ! でもファンタジーだよそんなの! ねえ菜月!」
「えっ、うちに振るのか!?」
end.
++++
ナビ役の菜月さんが合流したけど、やってることは車内でのお喋りなのでスーパー以外でのお買物編などはまた別の年に。
みんなが恐れるお麻里様だけど、ヒビキは楽しくお喋りできる話題もあったのね。でもお化粧の話とかしてそうよね。
ヒビキは玉の輿に乗るのが目標だけど、愛に対する憧れもそれなりにはある。どっちもあるのが一番だ!
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「菜月ー! 久し振りー! はいこれアタシたちからのお土産! 今回は敢えて向島以外の物を選んだから!」
「と言うか、すごい量だな。うちはこれから豊葦に帰るんだぞ」
「あ。すっかり忘れてた!」
「まあ、とりあえず家に置きに行って、芽依ちゃんに託すことにしよう。郵送する方に詰めてもらおう」
温泉サークル第2回旅行の最終日。緑風出身のなっちと合流して、地元の人だからこそ知っているいい場所に案内してもらおうという計画。あと、スーパーの場所をナビしてもらって買い物をするのが今日の……今回の旅行の最大の目的。それから、なっちは豊葦に戻るそうなので、じゃあ一緒に帰ろうかって。
行きで買い込んだなっちへのお土産はひとまず実家へと置きに戻ることに。なっちの実家は物凄く大きな家だ。それにビックリした俺とヒビキだけど、なっちにそのことを伝えると緑風基準では中くらいの家だと言うのだから、大きい家だとどんな大豪邸なのって。
「スーパーとかは最後でいいか」
「そうだね」
「昨日と一昨日はどこを回ってたんだ?」
「1日目は観光と言うより温泉メインで、2日目はぶどう園と、なっちが教えてくれた卵屋さんに行って来たよ」
「あそこの店、どうだった? 実は行ったことなくて。こないだのバレンタインに塩見さんに送り付けたのはまた違う店のヤツだからさ」
「あ、そうなんだ。でもソフトクリームとか美味しかったよねヒビキ」
「ホント美味しかった! って言うか菜月、バレンタインやるタイプだったの!?」
「うちを何だと思ってるんだ。まあ、基本的にはやらないけど、大石のバイト先の社員さんが卵が主食の人で、オムライスとかごちそうになったりしたから「緑風にもこんな店があります!」っていう宣伝と布教も兼ねたお返し的な?」
「あ、卵が主食って、大石クンがお土産送りまくってる人?」
「そうだね」
「そう、菜月聞いて!」
1日目と2日目にあったことをヒビキがなっちに話してるんだけど、ちょっと話が大きくなってる気がするような。まあいいか、楽しそうにしてるし。例の泥パックの話だとか、俺が実費で追加したカニの話とか。宿のことだけでも結構盛り上がるよね。
ちなみに、今回の旅行では地方配送の出来るお土産は積極的に送って行くスタイルを取っている。送り先は自分の家と塩見さんの家。配るのは兄さんと朝霞とあずさくらいかな。あと会社用のバラまき用と。塩見さんには行くところ行くところで送り状を書いてるような気がするなあ。
「馬刺しかー、こんな近くに売ってるんだな」
「なっちって馬刺し好きなの?」
「好きだぞ。圭斗とか先輩たちと店で飲むときなんかは、焼酎と一緒に食べたりするし」
「向島の先輩たちのいる飲み会とか怖そうだなー……」
「えー、麻里さんとか話楽しいじゃん。化粧品とかスキンケアにすっごい詳しくていつも勉強させてもらってたしー」
「そうか、ヒビキともなると麻里さんと共通の話題もあるのか」
「って言うか圭斗元気?」
「最近は会ってないけど、昨日誕生日おめでとうってメールしたらありがとうって返って来たし、生きてはいる。帰って来るならいつものをよろしくとか注文付けてきやがって。領収証は松岡様で切ってやる」
「いつもの?」
「緑風の酒類だな」
「ああ。でも、俺も兄さんに買ってこうかな。あと朝霞にも少しだけ」
「って言うか菜月って誕生日やるタイプなんだ」
「なっちって結構誕生日にはマメな方じゃない? 去年俺も祝ってもらったし」
「あれは何と言うか、不可抗力みたいな物じゃないか」
「ああ……それこそみちゃこさんと向島の先輩たちからの流れだよね」
結局どこに行こうかーという話に戻ると、帰りと買い物のこともあるからこの近くの方がいいよなあとなっちが考えてくれている。俺も、昔の記憶と、ここに来た目的を思い出して。
「大石クン、お母さんが毎年来てたっていう公園に行ってみたら?」
「この辺で毎年来る人がいるような公園って言ったら、あそこだな。行くんならこのまま真っ直ぐで」
「……いいの?」
「お母さんが使ってたっぽいお醤油だっけ? を探しに来てるんだから、そういう思い出探しの旅でいいんじゃない?」
「今も一応花は植えられてるし、地上絵はちゃんと見えるぞ。チューリップが見たければ一応近くにあるし」
「そしたら、公園に行きます! なっち、ナビおねがーい」
「そのまま真っ直ぐ道なりに。あっでも駐車場に行かなきゃだから、えーと。あっ、帰りに道の駅にも寄ってくれるか?」
「いいけど、お土産?」
「ご当地レトルトカレーを買って帰ろうかと。圭斗とカレー大会を開く流れになってて」
「いいね、そういうちょっと変わったお土産。俺も見ていこうかな」
庭先のチューリップだとか、おひたしに使ってたのかなっていう醤油だとか。記憶だとか、そこにあるものが点になって結び付いて来て、よく思い出していたこと以外の記憶が引っ張られてきて。
「でも、毎年夫婦で旅行してたって、大石クンのお父さんとお母さんてすっごい仲良かったんだね」
「そうだね。仲がすごく良くて、いつもにこにこしてたなー」
「そういう話を聞くとアタシも玉の輿ばっかじゃなくて愛を信じてみたくもなるんだけどね。みんながみんなそう上手くは行かないのよ」
「玉の輿と愛を両立出来たらいいんだけどね」
「それ! でもファンタジーだよそんなの! ねえ菜月!」
「えっ、うちに振るのか!?」
end.
++++
ナビ役の菜月さんが合流したけど、やってることは車内でのお喋りなのでスーパー以外でのお買物編などはまた別の年に。
みんなが恐れるお麻里様だけど、ヒビキは楽しくお喋りできる話題もあったのね。でもお化粧の話とかしてそうよね。
ヒビキは玉の輿に乗るのが目標だけど、愛に対する憧れもそれなりにはある。どっちもあるのが一番だ!
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