2021(02)
■羽の授け方
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「よーし、それじゃあ行こうかー」
「お願いしまーす!」
今日はヒビキと結成した温泉サークルの第2回旅行。今回の行き先は緑風エリア。向島エリアからは車で3時間ちょっとかな。前回が山羽だったから、少し足を伸ばしたっていう感じ。2泊3日の日程で、温泉と周辺の観光に行こうかって話になってる。
行き先を緑風に決めた最大の目的は、緑風ご当地の醤油を買うこと。夏のバーベキューの時になっちがこういうのがあるよって言ってたのを朝霞とアニに送ったそうなんだ。それを使った料理をあずさがうちに持って来てくれたんだけど、その中にあったほうれん草のおひたしを食べたときに、これだと思って。
「今日って、緑風のどの辺の宿なの?」
「光星市っていって、緑風エリアの西部に位置する町だね。海か山かで言えば山の方になるのかな。宿は川のすぐ側にあって、自然豊かそうな場所かな。写真で見た感じではそんな感じ」
「へー、山の方なんだ。あれっ、でも今度は海の幸食べるって言ってたよね」
「食事のページを見てたらお刺身の盛り合わせとかもあったよ」
「あー、いいねお刺身」
「ああ、それでさヒビキ」
「なに?」
「勝手に決めちゃったんだけど、ヒビキって全身の泥パックとかって興味ある? 温泉成分を含んだ温かい泥を全身にパックするんだって」
宿のホームページを見てたら、これはヒビキは好きそうだなーと思ったよね。せっかく温泉に行くならやっぱりお肌がつるつるになる効能があったらいいなって話はよくしてたし。湯治って言うのかな、温泉地での療養。それも泥パックなら期間がすっごく短くても効果が出るとか何とか。
「何かね、女の人に人気みたかったし完全予約制だから予約するときに入れといてみたんだけど。ごめんね、予約する前に聞けば良かったんだけど」
「むしろ興味しかないよね! えっ、どんな効果があるとかわかる?」
「冷え性の改善とか、代謝が高まることで便秘が良くなったり美肌効果があるのかな。エステと組み合わせればさらにすごいらしいけど」
「うそー! 予約してくれてありがとう! 絶対やりたい!」
「でも、それなりにお金かかるよ」
「宿のホームページに書いてるんだよね? えーっと、45分で8000円。やるでしょ! お金ならあります!」
「さすがだね」
「普段から貯めてるからね。それで、いざと言う時にどーんと使うのが粋じゃない? 今がその時! えー、この泥パック、国内でも有数なんだってー! 楽しみー!」
結果として喜んでもらえてよかったけど、次からはちゃんと予約する前に相談しなきゃね。ヒビキはホームページで食事を確認しながら、こんなに豪華で800キロカロリーくらいに調節してるって凄くない!? なんて驚いている。俺も、カニを食べるのが今から楽しみなんだよね。
「そう言えば、どうしてここの宿にしたの?」
「2日目にアヤネの家のぶどう園に行くって言ってたでしょ? そこからも近いし、なっちの家からも近いっていうのがあるね」
「あっそうなんだ。じゃあいい立地なんだ」
「そうだね」
「せっかくだし菜月に何かお土産でも買ってく?」
「ああ、そしたらどこか寄る? 今ならまだ高速乗ってないし間に合うけど」
「途中のサービスエリアとかでちょっと変わったの買ってかない? 向島のお土産だったら菜月も帰省のときとかに見てるっしょ」
「そうだね。そしたらどこのサービスエリアが大きそうか見てもらえるかな」
「オッケー」
ヒビキがどこのサービスエリアが良さそうか調べてくれている間に、俺は途中で何回くらい休憩するのがいいのかなあと考える。高速バスだったら途中の休憩は1回らしいけど、普通に車だし、のんびりとした旅行だから2、3回はふらっと休憩を入れてもいいのかなとは。俺もお腹空いちゃうしね。
休憩&買い物ポイントが決まって、あとは高速に乗るだけ。ETCカードも一応持ってるんだけど、ほとんどこの時しか使わないよね。高速道路自体が非日常への入り口って感じがしてちょっとワクワクするもん。俺はドライバーだから落ち着いてなきゃいけないとは思ってるんだけどね。
「そう言えば大石クンて夏休みとかいつもすっごいバイトしてるってイメージだけど、今はバイト入ってないの?」
「所長がせっかく学生生活最後の夏休みなのにバイトばっかりしてないで友達と遊んだりして来いって言ってシフト入れてもらえなかったんだよ。今持ってる有給も春までに使い切らなきゃいけないし」
「へー、そうなんだ」
「高校卒業するちょっと前にバイトを始めたから、今月また有給が10日増えたんだよね。今使ってるのはこれまでに溜めてたの10日分のうち2つだから、あと18日分? どこで使うかっていうのが結構難しくて。一応今の繁忙期が過ぎてからの方がいいかなとは思うんだけど」
「忙しい時期がわかってるなら使いやすくない? アタシバイトで有給もらえるって知らなかったけど、あるんならもらっとけばよかったー」
「ヒビキって大きなラジオ局でバイトしてたよね? 大手だし、多分聞けば貰えたんじゃないかなと思うよ」
「あー、損したー! やっぱお金のことはちゃんと調べとかなきゃね!」
「本当に。生きる上でお金は大事だからね。しっかりしないと」
ベクトルは少し違うかもだけど、お金はないよりある方がいいっていう考えが一致してるから、稼ぎ方とか税金の制度とかの話が盛り上がっちゃうよね。うーん。やっぱりヒビキはただの玉の輿に乗るより自分で稼いだ方が断然いいような気がするよね。
「俺はねえ、今回はカニを食べるのを楽しみにしてるんだよね。2人で1杯じゃ足りないもん。追加でお金を払ってちゃんと食べたいよね」
「その意気だよ。貯める時に貯めて、使う時にパーッと使う! 高くても、払った分だけの価値があれば大勝利なんだから!」
end.
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ちーちゃんとヒビキの第2回温泉旅行の往路編。ちーちゃんとETCはイメージにないけど今の車だしまあ付いてるでしょう
旧定例会の人たちって普段は貯めてるけど自分の趣味にはめちゃくちゃ使う人ばっかりだね。いち氏も圭斗さんもPさんもそうだ。いやPさんは貯めてねえわ
ちーちゃんが美容系も良さそうだなって思うのはもしかしなくても日頃からベティさんの姿を見てるからなんだろうなあ
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「よーし、それじゃあ行こうかー」
「お願いしまーす!」
今日はヒビキと結成した温泉サークルの第2回旅行。今回の行き先は緑風エリア。向島エリアからは車で3時間ちょっとかな。前回が山羽だったから、少し足を伸ばしたっていう感じ。2泊3日の日程で、温泉と周辺の観光に行こうかって話になってる。
行き先を緑風に決めた最大の目的は、緑風ご当地の醤油を買うこと。夏のバーベキューの時になっちがこういうのがあるよって言ってたのを朝霞とアニに送ったそうなんだ。それを使った料理をあずさがうちに持って来てくれたんだけど、その中にあったほうれん草のおひたしを食べたときに、これだと思って。
「今日って、緑風のどの辺の宿なの?」
「光星市っていって、緑風エリアの西部に位置する町だね。海か山かで言えば山の方になるのかな。宿は川のすぐ側にあって、自然豊かそうな場所かな。写真で見た感じではそんな感じ」
「へー、山の方なんだ。あれっ、でも今度は海の幸食べるって言ってたよね」
「食事のページを見てたらお刺身の盛り合わせとかもあったよ」
「あー、いいねお刺身」
「ああ、それでさヒビキ」
「なに?」
「勝手に決めちゃったんだけど、ヒビキって全身の泥パックとかって興味ある? 温泉成分を含んだ温かい泥を全身にパックするんだって」
宿のホームページを見てたら、これはヒビキは好きそうだなーと思ったよね。せっかく温泉に行くならやっぱりお肌がつるつるになる効能があったらいいなって話はよくしてたし。湯治って言うのかな、温泉地での療養。それも泥パックなら期間がすっごく短くても効果が出るとか何とか。
「何かね、女の人に人気みたかったし完全予約制だから予約するときに入れといてみたんだけど。ごめんね、予約する前に聞けば良かったんだけど」
「むしろ興味しかないよね! えっ、どんな効果があるとかわかる?」
「冷え性の改善とか、代謝が高まることで便秘が良くなったり美肌効果があるのかな。エステと組み合わせればさらにすごいらしいけど」
「うそー! 予約してくれてありがとう! 絶対やりたい!」
「でも、それなりにお金かかるよ」
「宿のホームページに書いてるんだよね? えーっと、45分で8000円。やるでしょ! お金ならあります!」
「さすがだね」
「普段から貯めてるからね。それで、いざと言う時にどーんと使うのが粋じゃない? 今がその時! えー、この泥パック、国内でも有数なんだってー! 楽しみー!」
結果として喜んでもらえてよかったけど、次からはちゃんと予約する前に相談しなきゃね。ヒビキはホームページで食事を確認しながら、こんなに豪華で800キロカロリーくらいに調節してるって凄くない!? なんて驚いている。俺も、カニを食べるのが今から楽しみなんだよね。
「そう言えば、どうしてここの宿にしたの?」
「2日目にアヤネの家のぶどう園に行くって言ってたでしょ? そこからも近いし、なっちの家からも近いっていうのがあるね」
「あっそうなんだ。じゃあいい立地なんだ」
「そうだね」
「せっかくだし菜月に何かお土産でも買ってく?」
「ああ、そしたらどこか寄る? 今ならまだ高速乗ってないし間に合うけど」
「途中のサービスエリアとかでちょっと変わったの買ってかない? 向島のお土産だったら菜月も帰省のときとかに見てるっしょ」
「そうだね。そしたらどこのサービスエリアが大きそうか見てもらえるかな」
「オッケー」
ヒビキがどこのサービスエリアが良さそうか調べてくれている間に、俺は途中で何回くらい休憩するのがいいのかなあと考える。高速バスだったら途中の休憩は1回らしいけど、普通に車だし、のんびりとした旅行だから2、3回はふらっと休憩を入れてもいいのかなとは。俺もお腹空いちゃうしね。
休憩&買い物ポイントが決まって、あとは高速に乗るだけ。ETCカードも一応持ってるんだけど、ほとんどこの時しか使わないよね。高速道路自体が非日常への入り口って感じがしてちょっとワクワクするもん。俺はドライバーだから落ち着いてなきゃいけないとは思ってるんだけどね。
「そう言えば大石クンて夏休みとかいつもすっごいバイトしてるってイメージだけど、今はバイト入ってないの?」
「所長がせっかく学生生活最後の夏休みなのにバイトばっかりしてないで友達と遊んだりして来いって言ってシフト入れてもらえなかったんだよ。今持ってる有給も春までに使い切らなきゃいけないし」
「へー、そうなんだ」
「高校卒業するちょっと前にバイトを始めたから、今月また有給が10日増えたんだよね。今使ってるのはこれまでに溜めてたの10日分のうち2つだから、あと18日分? どこで使うかっていうのが結構難しくて。一応今の繁忙期が過ぎてからの方がいいかなとは思うんだけど」
「忙しい時期がわかってるなら使いやすくない? アタシバイトで有給もらえるって知らなかったけど、あるんならもらっとけばよかったー」
「ヒビキって大きなラジオ局でバイトしてたよね? 大手だし、多分聞けば貰えたんじゃないかなと思うよ」
「あー、損したー! やっぱお金のことはちゃんと調べとかなきゃね!」
「本当に。生きる上でお金は大事だからね。しっかりしないと」
ベクトルは少し違うかもだけど、お金はないよりある方がいいっていう考えが一致してるから、稼ぎ方とか税金の制度とかの話が盛り上がっちゃうよね。うーん。やっぱりヒビキはただの玉の輿に乗るより自分で稼いだ方が断然いいような気がするよね。
「俺はねえ、今回はカニを食べるのを楽しみにしてるんだよね。2人で1杯じゃ足りないもん。追加でお金を払ってちゃんと食べたいよね」
「その意気だよ。貯める時に貯めて、使う時にパーッと使う! 高くても、払った分だけの価値があれば大勝利なんだから!」
end.
++++
ちーちゃんとヒビキの第2回温泉旅行の往路編。ちーちゃんとETCはイメージにないけど今の車だしまあ付いてるでしょう
旧定例会の人たちって普段は貯めてるけど自分の趣味にはめちゃくちゃ使う人ばっかりだね。いち氏も圭斗さんもPさんもそうだ。いやPさんは貯めてねえわ
ちーちゃんが美容系も良さそうだなって思うのはもしかしなくても日頃からベティさんの姿を見てるからなんだろうなあ
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