2021(02)
■小枠の宇宙
++++
「わ~、おっきなパフェだね~。くるちゃん、これ、1人で食べるの~?」
「これっくらいならペロッと食べちゃうよ!」
星港市科学博物館の近くにあるカフェで、この週末限定で出されてるのが宇宙パフェ。9月12日が宇宙の日で、それにちなんだメニューなんだって! あたしはこのパフェのためにここに来ていて、それに付き合ってくれている北星は、科学館のプラネタリウムの映像を見たかったんだって。
お昼の回のプラネタリウムがすごい映像技術の回で、あたしはすごいなー、きれいだなーって感じで技術のことはさっぱりわかんなかったんだけど、北星にはいろいろ学ぶところがあったみたい。映像を見終わってからの北星はとってもイキイキしてて、本当に凄かったんだなって。
「パフェって~、こうやって器に入ってる形がいいって人もいるのかな~」
「そうだね! まず見た目にかわいいもん! あたしはね~、この透明な器に積み重なってる層がたまんないよね! パフェはね~、あたしが切る前から断面バッチリ決まってるでしょ? これがね~、いいんですよ~」
「確かに~、ぐるっと回してみても~、ぜ~んぶおんなじだね~」
「記念撮影しよっと」
「これはいつもの断面撮影じゃないの?」
「これは記念だね。入ったカフェとかそこで頼んだ物の記録もしてるんだけどね。それはスイーツブログとは別のメモにしてるだけ」
宇宙パフェをぐるっと撮影して、冷たいうちにいただきます。北星はそんなあたしの様子……と言うか撮影の仕方なんかを眺めてる。前にあたしが北星にスマホでの撮影の仕方を教えて欲しいってお願いをしたんだよね。北星は映像のことを勉強はしてるけど、スマホでの撮影は専門じゃないよって言ってて。
だけど北星は真面目で優しいんだよね。専門じゃないスマホでの撮影に関することもしっかり研究して、あたしのやってることがどうすればもっと良くなるかっていうのをアドバイスしてくれるんだ。気付いたらあたしもちょっとずつ撮影や編集が上手になってきてると思うんだけど、どうかな?
「ん!」
「おいし~?」
「北星! 見て!」
「なになに~?」
「これ、食べてくと中は器の外から見たのとまた違うよ!」
「ホントだ~。これ、何の味するの~?」
「んーっとねえ……あっ、ラズベリーかな? 外側の紫色のが、ブルーベリーかな。うん、ベリーだね」
「そう言えば~、宇宙の香りってラズベリーっぽいって言ってたもんね~」
「えっウソ。どこで?」
「さっきのプラネタリウムで、アナウンスのお姉さんが言ってたよ~」
「全然聞いてなかった…! 星空きれーってばっかり思ってたよ」
色が紫色で宇宙っぽさを表現してるのかなって思ったけど、中がラズベリーなのはそういうことだったんだ。ちゃんとメモしとかなきゃね。こうして見ると、中にもブルーベリーやラズベリーの粒が浮いていて、これが星の表現なのかなあって。この器の中にどう宇宙を表現するか。奥が深い。
「今のプラネタリウムみたいに、映像を見たときにどう受け取ってもらうかっていうのが結構難しくてさ」
「そうなの?」
「自分が仕事として請け負ってる作品は、相手の注文通りに作ればいいんだよ。だけど、夏の間に作ってたミュージックビデオだったり、くるちゃんがやってるような動画は自分発信でどう見てもらうかっていうのがね。くるちゃんは撮るときにどう考えてる?」
「あたしは自分のこだわりだけを詰めてるよ。あたし自身がその断面に納得してないとダメって感じで」
「今日のプラネタリウムにしてもそうなんだけど、ああいう自然の風景みたいなものは、やっぱり実際にその場所で自分の目で見たときの衝撃が一番なんだよね。五感をフルで使って感じられるから」
「星だったら、外で夜に見るのがいいみたいなこと?」
「そうだね。でも、映像には映像の良さももちろんあって。くるちゃんが、話を聞くのも忘れるくらいにそれに没頭してたっていうので、思ったんだよ。そういう、初手での衝撃? 圧巻とか、息を呑むようなって言うのかな。自分発の映像では、そういうのを大事にしたいなって」
何かしら心に残る映像を作りたいよね、と北星は真剣な顔をして言う。北星的には、実際に題材にする物のことを知っていないと画面の奥にある良さを表現しきれないんだって。だから学校の課題とかでもただ映像の技術だけじゃなくて下調べとかもしたいって。
あたしの断面動画を手伝ってくれてるっていうのもそういうところから来てるんだろうね。1分もないような動画の中に、どれだけのこだわりと、「うわぁ~」っていう感動を詰められるか。それが本当に難しいもんね。
「でもさあ、映像で感動してもらえれば嬉しいけど、観光とか、体験を伴うテーマの場合、映像で満足っていうのもまた違うんだよね」
「わかる! あたしの映像なんかは飯テロだからね! 夕方とか夜に見ちゃったら今から間食するのは罪深い~でも食べたい! 食べた! みたいなそういうところを共有したい!」
「くるちゃんって、晩ご飯の後にもああいうのを食べるの?」
「全然食べる。撮影に使ったお菓子は最後まで美味しくいただかなきゃ」
「すごいね~。普段から鍛えてるから、胃袋が強いんだね~」
「えっ、鍛えてるつもりはないけど」
「俺は~、ケーキなら2つ3つくらいが限界だもん。ブラックコーヒーも一緒じゃないと厳しいし~。くるちゃんと友達ならもうちょっと甘いの食べれた方がいいよね~」
「全然今のままで大丈夫だよ! なんならそれが普通だから!」
end.
++++
宇宙の日関連イベントのくるちゃんと北星。去年の話では科学館でササレナともばったり遭遇してましたね
宇宙の香りはラズベリー。ウン年前の情報センターで春山さんが怪しいことをやっていた記憶。久々に違う箱でやってみる。
何だかんだケーキなら2つ3つはイケる北星。普通に食べる量も多いのかしら。どうだろう。スピードは早くなさそうだけどね。
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「わ~、おっきなパフェだね~。くるちゃん、これ、1人で食べるの~?」
「これっくらいならペロッと食べちゃうよ!」
星港市科学博物館の近くにあるカフェで、この週末限定で出されてるのが宇宙パフェ。9月12日が宇宙の日で、それにちなんだメニューなんだって! あたしはこのパフェのためにここに来ていて、それに付き合ってくれている北星は、科学館のプラネタリウムの映像を見たかったんだって。
お昼の回のプラネタリウムがすごい映像技術の回で、あたしはすごいなー、きれいだなーって感じで技術のことはさっぱりわかんなかったんだけど、北星にはいろいろ学ぶところがあったみたい。映像を見終わってからの北星はとってもイキイキしてて、本当に凄かったんだなって。
「パフェって~、こうやって器に入ってる形がいいって人もいるのかな~」
「そうだね! まず見た目にかわいいもん! あたしはね~、この透明な器に積み重なってる層がたまんないよね! パフェはね~、あたしが切る前から断面バッチリ決まってるでしょ? これがね~、いいんですよ~」
「確かに~、ぐるっと回してみても~、ぜ~んぶおんなじだね~」
「記念撮影しよっと」
「これはいつもの断面撮影じゃないの?」
「これは記念だね。入ったカフェとかそこで頼んだ物の記録もしてるんだけどね。それはスイーツブログとは別のメモにしてるだけ」
宇宙パフェをぐるっと撮影して、冷たいうちにいただきます。北星はそんなあたしの様子……と言うか撮影の仕方なんかを眺めてる。前にあたしが北星にスマホでの撮影の仕方を教えて欲しいってお願いをしたんだよね。北星は映像のことを勉強はしてるけど、スマホでの撮影は専門じゃないよって言ってて。
だけど北星は真面目で優しいんだよね。専門じゃないスマホでの撮影に関することもしっかり研究して、あたしのやってることがどうすればもっと良くなるかっていうのをアドバイスしてくれるんだ。気付いたらあたしもちょっとずつ撮影や編集が上手になってきてると思うんだけど、どうかな?
「ん!」
「おいし~?」
「北星! 見て!」
「なになに~?」
「これ、食べてくと中は器の外から見たのとまた違うよ!」
「ホントだ~。これ、何の味するの~?」
「んーっとねえ……あっ、ラズベリーかな? 外側の紫色のが、ブルーベリーかな。うん、ベリーだね」
「そう言えば~、宇宙の香りってラズベリーっぽいって言ってたもんね~」
「えっウソ。どこで?」
「さっきのプラネタリウムで、アナウンスのお姉さんが言ってたよ~」
「全然聞いてなかった…! 星空きれーってばっかり思ってたよ」
色が紫色で宇宙っぽさを表現してるのかなって思ったけど、中がラズベリーなのはそういうことだったんだ。ちゃんとメモしとかなきゃね。こうして見ると、中にもブルーベリーやラズベリーの粒が浮いていて、これが星の表現なのかなあって。この器の中にどう宇宙を表現するか。奥が深い。
「今のプラネタリウムみたいに、映像を見たときにどう受け取ってもらうかっていうのが結構難しくてさ」
「そうなの?」
「自分が仕事として請け負ってる作品は、相手の注文通りに作ればいいんだよ。だけど、夏の間に作ってたミュージックビデオだったり、くるちゃんがやってるような動画は自分発信でどう見てもらうかっていうのがね。くるちゃんは撮るときにどう考えてる?」
「あたしは自分のこだわりだけを詰めてるよ。あたし自身がその断面に納得してないとダメって感じで」
「今日のプラネタリウムにしてもそうなんだけど、ああいう自然の風景みたいなものは、やっぱり実際にその場所で自分の目で見たときの衝撃が一番なんだよね。五感をフルで使って感じられるから」
「星だったら、外で夜に見るのがいいみたいなこと?」
「そうだね。でも、映像には映像の良さももちろんあって。くるちゃんが、話を聞くのも忘れるくらいにそれに没頭してたっていうので、思ったんだよ。そういう、初手での衝撃? 圧巻とか、息を呑むようなって言うのかな。自分発の映像では、そういうのを大事にしたいなって」
何かしら心に残る映像を作りたいよね、と北星は真剣な顔をして言う。北星的には、実際に題材にする物のことを知っていないと画面の奥にある良さを表現しきれないんだって。だから学校の課題とかでもただ映像の技術だけじゃなくて下調べとかもしたいって。
あたしの断面動画を手伝ってくれてるっていうのもそういうところから来てるんだろうね。1分もないような動画の中に、どれだけのこだわりと、「うわぁ~」っていう感動を詰められるか。それが本当に難しいもんね。
「でもさあ、映像で感動してもらえれば嬉しいけど、観光とか、体験を伴うテーマの場合、映像で満足っていうのもまた違うんだよね」
「わかる! あたしの映像なんかは飯テロだからね! 夕方とか夜に見ちゃったら今から間食するのは罪深い~でも食べたい! 食べた! みたいなそういうところを共有したい!」
「くるちゃんって、晩ご飯の後にもああいうのを食べるの?」
「全然食べる。撮影に使ったお菓子は最後まで美味しくいただかなきゃ」
「すごいね~。普段から鍛えてるから、胃袋が強いんだね~」
「えっ、鍛えてるつもりはないけど」
「俺は~、ケーキなら2つ3つくらいが限界だもん。ブラックコーヒーも一緒じゃないと厳しいし~。くるちゃんと友達ならもうちょっと甘いの食べれた方がいいよね~」
「全然今のままで大丈夫だよ! なんならそれが普通だから!」
end.
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宇宙の日関連イベントのくるちゃんと北星。去年の話では科学館でササレナともばったり遭遇してましたね
宇宙の香りはラズベリー。ウン年前の情報センターで春山さんが怪しいことをやっていた記憶。久々に違う箱でやってみる。
何だかんだケーキなら2つ3つはイケる北星。普通に食べる量も多いのかしら。どうだろう。スピードは早くなさそうだけどね。
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