2021(02)
■そこに辿り着く前の
++++
「うわー、しばらく入ってない間に大変なことになっちゃったなー。ごめんね鳥居さん、もっとスムーズに始められればよかったんだけど」
「いえ。しかし、この状態では何も始められませんから、今日はとりあえず片付けになるのでしょうか」
「そうだねえ」
「しかしまあひっでえなあ。使ったんなら片付けろよなー」
「ホントに。その程度のことも出来ない連中が部室を私物化すんなっての」
大学祭で展示するプラネタリウムの動作確認をするということで、磐田先輩から招集がかかりました。天文部では例年大学祭でプラネタリウムの展示と模擬店を出すそうなのですが、プラネタリウムの展示に参加するのは部の人数に対して1割いるかいないかで、残り9割の人は模擬店を担当するか、大学祭自体にさほど興味がないとのこと。
プラネタリウムの展示を担当するのはこの装置の開発にも携わった磐田先輩と、観測会の際には毎度自前の望遠鏡を担いでやって来る設楽先輩。そして、同じ女性ということでとても良くしてくれている矢作先輩。このお三方が4年生で、他には今日は欠席ですが3年生の田原先輩というムードメーカーのような方がいます。
「ええと……何をどうすれば部室がこれだけ酷いことになるのでしょうか」
「大方パーティーか何かやってたんだろうけど」
「そう言えば、誰かがたこ焼きパーティーをやるって言ってたような気はする」
「それだ」
「まあ、大学祭の準備が始まったらこういうことも増えて来るし、少し注意したくらいで聞く人たちならそもそもこうはならないから。そもそも、部長がああだし。せめて私たちの使う物が壊れたりしないように守っておこう」
「だな。旭、ゴミ袋ちょーだい」
「はい」
「サンキュー。とりあえず俺は要らんもんを片っ端からやってくし、まもちゃんは鳥居ちゃんとプラネの装置穿り返しといてよ。せっかく来てもらったのに片付けだけじゃ申し訳ない」
「そうだね。鳥居ちゃん、いわっちの助手お願い」
「わかりました」
天文部の部会は一般の教室で行われるので部室に出入りする機会は実はそんなにありません。観測会の際に必要な道具を取りに行ったり片付けたりする程度でしょうか。先輩たちが少し目を離した隙に、部屋がとんでもない惨状になってしまったようです。足の踏み場もなく、床にはゴミやお酒を飲んだ後の缶や瓶が転がっています。
「去年作ったプラネタリウムはねえ、結構大きな装置だから1人じゃなかなか大変なんだよねえ」
「人並みの力はありますのでどうぞ使ってください!」
「あはは、ありがとー。えーっと、こっちの方に片付けたと思うんだけどなー」
そう言って磐田先輩が部屋の隅の方に足を伸ばした時、何かを踏んでしまったのでしょう。先輩はバランスを崩して転んでしまいました。こういうのが危ないんですよね。一応望遠鏡や、その他の機材などもある部屋なので。磐田先輩が踏んでしまったと思われる空き瓶は、すかさず設楽先輩が回収してくれました。
「まもちゃん大丈夫か」
「俺は大丈夫。うわー、でもスマホがバッキバキだあ」
「ああ、ケツポケットに入れてたから」
「いわっちの重みで完全に逝ったね」
「あ、一応生きてる。スワイプもタップも出来るみたい」
「まもちゃん、それ今のうちにデータバックアップ取って引き継ぎ準備するモンはした方がいいと思うぜー」
「はい。私は部屋の片付けも出来ますし、スマホが生きている間に必要な作業をしてしまった方がいいと思います」
「そう? じゃあごめんねー。お言葉に甘えてー」
「そしたら、たらい回しになってゴメンけど、鳥居ちゃんは、今これ俺が集めた空き容器なんだけど、適当に集めただけだから分別とかしてないんだよ。外の水場で洗ったら、その脇にコンテナがあるからそこに分別して処理してもらっていい?」
「わかりました」
通路の突き当たりには、水場へと繋がる出入り口がありました。そこから外に出て、この容器を洗います。いつから放置されていたのかわからないような物も多く、底に残った液が変な色になってこびりついてしまっています。まだこの施設内に処理用のコンテナがあったから良かったものの。なかったらどうなっていたことやら。
「戻りました」
「鳥居ちゃんありがとー」
「床が見えるようになったような気がします」
「私はこのカーペットとかも洗いたいよ。何してっかわかったモンじゃないし。この部室にある備品とか正直観測会で使いたくないんだわ」
「まあなあ。実際俺らは私物持ち込み組だけど、これからの子たちの事を考えるとなあ」
少し目を離しただけで荒れ果ててしまう部室ですし、望遠鏡やプラネタリウムの装置などは他の物の下に埋もれているような状態です。先輩たちがこの部屋の備品を使いたくないという気持ちも少しわかってしまうのです。誰が、どんな扱い方をしているかわかりませんから。
「ですが、この望遠鏡たちがずっとこうなのも可哀想なので、メンテナンスをしてあげたいという気はします」
「わかった。そしたら粗方掃除が終わったら、部室の望遠鏡のメンテでもすっかあ。まもちゃんスマホ買い替えに行って来ていいよ。こっちは俺と旭でやっとくし」
「プラネに関してはまたスケジュール調整してもらって。せっかくだし、渓も参加出来る日がいいね」
「それじゃあ、スマホが無事に引き継ぎ出来たらまた連絡するねー」
「あの、すみません。私の思い付きみたいな発言で」
「いいのいいの。誰かがやっとかないと、次使う時に大変だからね」
「そうそう。みんながみんな自前の道具持ってるとは限らないしね」
end.
++++
きな臭いと言われる天文部の、天文ガチ勢の皆さんです。バンデン以外は現状モブだけど、そのうちどこかで設定が生えて来るでしょう
スマホの買い替えなどでバンデンに連絡が付かなくなると困りそうな人には何人か心当たりが。怒られそうだけど強く生きてバンデン
一応春風が天文部に入った目的がバンデンの作ったプラネタリウムを見ることで、大学祭でアナウンスをすることにはなったんだね。その後はどうなるかな
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「うわー、しばらく入ってない間に大変なことになっちゃったなー。ごめんね鳥居さん、もっとスムーズに始められればよかったんだけど」
「いえ。しかし、この状態では何も始められませんから、今日はとりあえず片付けになるのでしょうか」
「そうだねえ」
「しかしまあひっでえなあ。使ったんなら片付けろよなー」
「ホントに。その程度のことも出来ない連中が部室を私物化すんなっての」
大学祭で展示するプラネタリウムの動作確認をするということで、磐田先輩から招集がかかりました。天文部では例年大学祭でプラネタリウムの展示と模擬店を出すそうなのですが、プラネタリウムの展示に参加するのは部の人数に対して1割いるかいないかで、残り9割の人は模擬店を担当するか、大学祭自体にさほど興味がないとのこと。
プラネタリウムの展示を担当するのはこの装置の開発にも携わった磐田先輩と、観測会の際には毎度自前の望遠鏡を担いでやって来る設楽先輩。そして、同じ女性ということでとても良くしてくれている矢作先輩。このお三方が4年生で、他には今日は欠席ですが3年生の田原先輩というムードメーカーのような方がいます。
「ええと……何をどうすれば部室がこれだけ酷いことになるのでしょうか」
「大方パーティーか何かやってたんだろうけど」
「そう言えば、誰かがたこ焼きパーティーをやるって言ってたような気はする」
「それだ」
「まあ、大学祭の準備が始まったらこういうことも増えて来るし、少し注意したくらいで聞く人たちならそもそもこうはならないから。そもそも、部長がああだし。せめて私たちの使う物が壊れたりしないように守っておこう」
「だな。旭、ゴミ袋ちょーだい」
「はい」
「サンキュー。とりあえず俺は要らんもんを片っ端からやってくし、まもちゃんは鳥居ちゃんとプラネの装置穿り返しといてよ。せっかく来てもらったのに片付けだけじゃ申し訳ない」
「そうだね。鳥居ちゃん、いわっちの助手お願い」
「わかりました」
天文部の部会は一般の教室で行われるので部室に出入りする機会は実はそんなにありません。観測会の際に必要な道具を取りに行ったり片付けたりする程度でしょうか。先輩たちが少し目を離した隙に、部屋がとんでもない惨状になってしまったようです。足の踏み場もなく、床にはゴミやお酒を飲んだ後の缶や瓶が転がっています。
「去年作ったプラネタリウムはねえ、結構大きな装置だから1人じゃなかなか大変なんだよねえ」
「人並みの力はありますのでどうぞ使ってください!」
「あはは、ありがとー。えーっと、こっちの方に片付けたと思うんだけどなー」
そう言って磐田先輩が部屋の隅の方に足を伸ばした時、何かを踏んでしまったのでしょう。先輩はバランスを崩して転んでしまいました。こういうのが危ないんですよね。一応望遠鏡や、その他の機材などもある部屋なので。磐田先輩が踏んでしまったと思われる空き瓶は、すかさず設楽先輩が回収してくれました。
「まもちゃん大丈夫か」
「俺は大丈夫。うわー、でもスマホがバッキバキだあ」
「ああ、ケツポケットに入れてたから」
「いわっちの重みで完全に逝ったね」
「あ、一応生きてる。スワイプもタップも出来るみたい」
「まもちゃん、それ今のうちにデータバックアップ取って引き継ぎ準備するモンはした方がいいと思うぜー」
「はい。私は部屋の片付けも出来ますし、スマホが生きている間に必要な作業をしてしまった方がいいと思います」
「そう? じゃあごめんねー。お言葉に甘えてー」
「そしたら、たらい回しになってゴメンけど、鳥居ちゃんは、今これ俺が集めた空き容器なんだけど、適当に集めただけだから分別とかしてないんだよ。外の水場で洗ったら、その脇にコンテナがあるからそこに分別して処理してもらっていい?」
「わかりました」
通路の突き当たりには、水場へと繋がる出入り口がありました。そこから外に出て、この容器を洗います。いつから放置されていたのかわからないような物も多く、底に残った液が変な色になってこびりついてしまっています。まだこの施設内に処理用のコンテナがあったから良かったものの。なかったらどうなっていたことやら。
「戻りました」
「鳥居ちゃんありがとー」
「床が見えるようになったような気がします」
「私はこのカーペットとかも洗いたいよ。何してっかわかったモンじゃないし。この部室にある備品とか正直観測会で使いたくないんだわ」
「まあなあ。実際俺らは私物持ち込み組だけど、これからの子たちの事を考えるとなあ」
少し目を離しただけで荒れ果ててしまう部室ですし、望遠鏡やプラネタリウムの装置などは他の物の下に埋もれているような状態です。先輩たちがこの部屋の備品を使いたくないという気持ちも少しわかってしまうのです。誰が、どんな扱い方をしているかわかりませんから。
「ですが、この望遠鏡たちがずっとこうなのも可哀想なので、メンテナンスをしてあげたいという気はします」
「わかった。そしたら粗方掃除が終わったら、部室の望遠鏡のメンテでもすっかあ。まもちゃんスマホ買い替えに行って来ていいよ。こっちは俺と旭でやっとくし」
「プラネに関してはまたスケジュール調整してもらって。せっかくだし、渓も参加出来る日がいいね」
「それじゃあ、スマホが無事に引き継ぎ出来たらまた連絡するねー」
「あの、すみません。私の思い付きみたいな発言で」
「いいのいいの。誰かがやっとかないと、次使う時に大変だからね」
「そうそう。みんながみんな自前の道具持ってるとは限らないしね」
end.
++++
きな臭いと言われる天文部の、天文ガチ勢の皆さんです。バンデン以外は現状モブだけど、そのうちどこかで設定が生えて来るでしょう
スマホの買い替えなどでバンデンに連絡が付かなくなると困りそうな人には何人か心当たりが。怒られそうだけど強く生きてバンデン
一応春風が天文部に入った目的がバンデンの作ったプラネタリウムを見ることで、大学祭でアナウンスをすることにはなったんだね。その後はどうなるかな
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