2021(02)
■若者の挑戦
++++
「おはよーさーんっす」
「よう奏多。おはようさん」
「真希ちゃん実家に帰ってたんじゃないんすか?」
「行ったり来たりだよ。所詮山羽だからね」
夏休み中にもたまにサークルはやることになっている。たまにだからとりあえず顔を出しては見たけど、下宿生はさすがに実家に帰ってる人の方が多いっぽいんだよな。真希ちゃんはこっちにいたけど行ったり来たりだからたまたまタイミングが合ったって感じかな。前原さんは実家にいるっぽい。ちくしょー、今日は何するかなー。
「奏多、ところで希のことは聞いたかい?」
「そっすね。こないだLINEあったっす。ラジオの方に専念することにしたそうっすね。そこまで面白かったんならよかったんじゃないすか?」
「そうだといいねえ」
「そんで今度飯でも食いながら話そうぜっつって誘われてるんすよね」
「うんうん。それはよかった。アタシからもよろしく言っといてくれよ」
「了解っす」
真希ちゃんはかっすーからラジオの方に専念しますっつー話を直接聞いていたとかで、今度俺と飯に行くっていう話にも良かったねえと、敢えて言うなら姐御と言うよりオカンのような感じで見守っているようだ。サークル内でもご意見番的ポジションではあるから、適任っちゃ適任よな。
コートではみんな思い思いにラリーをやったり遊んだりしている。俺はと言えば、前原さんもいないしかっすーもいねーからどーしたもんかなと思って真希ちゃんと近況報告をしてるっていう感じ。別に誰とでもそれなりに話は出来るけど、前原さんとかっすーが固定メンバーって感じだったから、こーゆー時の立ち回りがな。
「奏多、混合ダブルスでもやるかい」
「ダブルスっすか?」
「もちろんそこまでギチギチのルールにはしないけど、かと言ってゆるゆるでもない。ちょっとしたレクリエーションさ。適度に体動かさないと鈍るだろ。もちろんそれなりの相手を用意するさ。遙香! 佑人!」
そう言って真希ちゃんはその辺で遊んでいた2人の先輩を呼び付けた。麻生さんっていう2年生の女子と、北島さんっていう3年生の男子だ。いることは知ってるけどあんまり話したことはない。強さを見て真希ちゃんが呼んでくれた相手だとは思うから、それなりの腕前なんだろうけど。
「遙香、アンタ奏多と組みな。アタシ佑人と組むから。そしたら軽く慣らしてくかー」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
……真希ちゃんの「軽く慣らしてく」を信用してはいけなかった。結果から言うと、俺は真希ちゃんに打ち込まれてボコボコにされた。ゲームの結果自体はギリギリ勝ったけど、俺個人がギッタンギッタンのボッコボコにされた。麻生さんと北島さんもフツーに強かったし、また今度相手をお願いしたいな。出来ればシングルスで。
「はー……疲れた…!」
「アンタのゲーム運びが完全に対マエトモになってたからね。ここらで一回リセットしとかなきゃいけないだろ」
「やー、完全にそうっすね」
「マエトモはプレースタイルとしてはバランス型で、戦術が得意なんだよな。相手がどう来るか何手先も読んでんだね。アタシなんかは身体能力、主にパワーで押し切るオフェンスタイプ。佑人は反射神経がよくてとにかく拾いまくるディフェンス型」
「確かに佑人さんにはどんな弾も拾われてキツかったすね」
「で、遙香はシングルスってよりはダブルスタイプなんだよな。前衛の役割をちゃんとわかってっから、後衛に集中出来ただろ?」
「あー、そう言われりゃそうすね」
「アンタはシングルスでも十分強いけど、ダブルスの後衛なんかがすっごい向いてると思うんだよな。背も高くて決め球の精度も高い。それに、物事を捉える視野もある。だから、見てみたかったんだよ」
「そうすか。でも、やってみると楽しかったっす」
「そうかい。それならいいんだよ。マエトモとの勝負の合間でいいし、またやろうぜ」
「もちろん」
今回のレクリエーションで得るものもあった。前原さんに勝つための道筋だ。どちらかと言えば俺もオフェンス型のプレースタイルをしている。つーか、前原さんの決定的な弱点を知ってんのにどうしてそこを突かなかったっつー話で。ディフェンスを磨いて、あの人のショットを拾って拾って食らいついて、バテさせりゃいいんだ。
「佑人さん、ちょっとディフェンス教えてもらっていーすか」
「え。俺が松居君に教えれることなんかあるかな。でもまあ、やってみようか。前原さんに勝つんだよね」
「あと半年で勝たなきゃ悔いしか残らないんで」
「それじゃ、休憩したらシングルスで手合わせしてもらっていいかな」
「臨むところっす」
「奏多、やることは見つかったかい?」
「そーすね。前原さんを倒すっつーのは大前提として、そのためには俺も進化しねーと。前原さん風に言えば、俺はまだまだ“若者”なんで」
「その意気だよ」
「多分リアルな年齢通りの学年だったらこうはならなかったっすね。夢と希望に溢れた1年の挑戦。いいじゃないすか」
「え、松居君て18歳とか19歳じゃなかったんだ」
「今年21すよ。歳は大体の3年とタメっす。長期入院で高校で1年ダブって、一浪したんで2年のラグがあるんすよ」
「えー! そうなんだ! えっ、入院って病気?」
「ケガっすね」
「それで動きをここまで戻してるってすごいなあ。リハビリとかしんどかったでしょ」
end.
++++
バドサーの方で萌香が悪目立ちし始めた件をやりたかったんだけど、健全な話になったので所詮ナノスパはこんなモンである。
麻生さんと佑人くんは現状モブだけど、そのうちあのモブの子出してこようって感じで肉付けされるに30ペソ。
真希姐さんは話を聞くことも出来るけど、やっぱり実際にこうして叩き直すことで励ますタイプだし、野菜嫌いには美味しく調理した野菜を食べさせるよ
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「おはよーさーんっす」
「よう奏多。おはようさん」
「真希ちゃん実家に帰ってたんじゃないんすか?」
「行ったり来たりだよ。所詮山羽だからね」
夏休み中にもたまにサークルはやることになっている。たまにだからとりあえず顔を出しては見たけど、下宿生はさすがに実家に帰ってる人の方が多いっぽいんだよな。真希ちゃんはこっちにいたけど行ったり来たりだからたまたまタイミングが合ったって感じかな。前原さんは実家にいるっぽい。ちくしょー、今日は何するかなー。
「奏多、ところで希のことは聞いたかい?」
「そっすね。こないだLINEあったっす。ラジオの方に専念することにしたそうっすね。そこまで面白かったんならよかったんじゃないすか?」
「そうだといいねえ」
「そんで今度飯でも食いながら話そうぜっつって誘われてるんすよね」
「うんうん。それはよかった。アタシからもよろしく言っといてくれよ」
「了解っす」
真希ちゃんはかっすーからラジオの方に専念しますっつー話を直接聞いていたとかで、今度俺と飯に行くっていう話にも良かったねえと、敢えて言うなら姐御と言うよりオカンのような感じで見守っているようだ。サークル内でもご意見番的ポジションではあるから、適任っちゃ適任よな。
コートではみんな思い思いにラリーをやったり遊んだりしている。俺はと言えば、前原さんもいないしかっすーもいねーからどーしたもんかなと思って真希ちゃんと近況報告をしてるっていう感じ。別に誰とでもそれなりに話は出来るけど、前原さんとかっすーが固定メンバーって感じだったから、こーゆー時の立ち回りがな。
「奏多、混合ダブルスでもやるかい」
「ダブルスっすか?」
「もちろんそこまでギチギチのルールにはしないけど、かと言ってゆるゆるでもない。ちょっとしたレクリエーションさ。適度に体動かさないと鈍るだろ。もちろんそれなりの相手を用意するさ。遙香! 佑人!」
そう言って真希ちゃんはその辺で遊んでいた2人の先輩を呼び付けた。麻生さんっていう2年生の女子と、北島さんっていう3年生の男子だ。いることは知ってるけどあんまり話したことはない。強さを見て真希ちゃんが呼んでくれた相手だとは思うから、それなりの腕前なんだろうけど。
「遙香、アンタ奏多と組みな。アタシ佑人と組むから。そしたら軽く慣らしてくかー」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
……真希ちゃんの「軽く慣らしてく」を信用してはいけなかった。結果から言うと、俺は真希ちゃんに打ち込まれてボコボコにされた。ゲームの結果自体はギリギリ勝ったけど、俺個人がギッタンギッタンのボッコボコにされた。麻生さんと北島さんもフツーに強かったし、また今度相手をお願いしたいな。出来ればシングルスで。
「はー……疲れた…!」
「アンタのゲーム運びが完全に対マエトモになってたからね。ここらで一回リセットしとかなきゃいけないだろ」
「やー、完全にそうっすね」
「マエトモはプレースタイルとしてはバランス型で、戦術が得意なんだよな。相手がどう来るか何手先も読んでんだね。アタシなんかは身体能力、主にパワーで押し切るオフェンスタイプ。佑人は反射神経がよくてとにかく拾いまくるディフェンス型」
「確かに佑人さんにはどんな弾も拾われてキツかったすね」
「で、遙香はシングルスってよりはダブルスタイプなんだよな。前衛の役割をちゃんとわかってっから、後衛に集中出来ただろ?」
「あー、そう言われりゃそうすね」
「アンタはシングルスでも十分強いけど、ダブルスの後衛なんかがすっごい向いてると思うんだよな。背も高くて決め球の精度も高い。それに、物事を捉える視野もある。だから、見てみたかったんだよ」
「そうすか。でも、やってみると楽しかったっす」
「そうかい。それならいいんだよ。マエトモとの勝負の合間でいいし、またやろうぜ」
「もちろん」
今回のレクリエーションで得るものもあった。前原さんに勝つための道筋だ。どちらかと言えば俺もオフェンス型のプレースタイルをしている。つーか、前原さんの決定的な弱点を知ってんのにどうしてそこを突かなかったっつー話で。ディフェンスを磨いて、あの人のショットを拾って拾って食らいついて、バテさせりゃいいんだ。
「佑人さん、ちょっとディフェンス教えてもらっていーすか」
「え。俺が松居君に教えれることなんかあるかな。でもまあ、やってみようか。前原さんに勝つんだよね」
「あと半年で勝たなきゃ悔いしか残らないんで」
「それじゃ、休憩したらシングルスで手合わせしてもらっていいかな」
「臨むところっす」
「奏多、やることは見つかったかい?」
「そーすね。前原さんを倒すっつーのは大前提として、そのためには俺も進化しねーと。前原さん風に言えば、俺はまだまだ“若者”なんで」
「その意気だよ」
「多分リアルな年齢通りの学年だったらこうはならなかったっすね。夢と希望に溢れた1年の挑戦。いいじゃないすか」
「え、松居君て18歳とか19歳じゃなかったんだ」
「今年21すよ。歳は大体の3年とタメっす。長期入院で高校で1年ダブって、一浪したんで2年のラグがあるんすよ」
「えー! そうなんだ! えっ、入院って病気?」
「ケガっすね」
「それで動きをここまで戻してるってすごいなあ。リハビリとかしんどかったでしょ」
end.
++++
バドサーの方で萌香が悪目立ちし始めた件をやりたかったんだけど、健全な話になったので所詮ナノスパはこんなモンである。
麻生さんと佑人くんは現状モブだけど、そのうちあのモブの子出してこようって感じで肉付けされるに30ペソ。
真希姐さんは話を聞くことも出来るけど、やっぱり実際にこうして叩き直すことで励ますタイプだし、野菜嫌いには美味しく調理した野菜を食べさせるよ
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