2021(02)
■留学通知は突然に
++++
「おはようございまーす」
「あっ、すがやん。わざわざありがとね」
「いえ、履修登録で大学に来てるならこの方が話しやすいっすもんね」
緑ヶ丘大学の秋学期は20日の月曜日から。その前のこの時期に履修登録期間があって、それは一応家からでも出来るんだけど、話すこともあるのですがやんには大学まで来てもらってた。話すことというのは秋学期からの昼放送について。わざわざ履修登録期間の最終日を指定していたのにも理由がある。
MBCCでは通年の活動としてやっている第1学食での昼放送。秋学期になるとそこに1年生も加わって、3学年が揃い踏みとなる。例年インターフェイス夏合宿のモニター会の様子なんかも見ながらどの子を昼放送に選抜するかっていうのを先輩たちは見ていたらしい。だからアタシとLも合宿は見に行ってたんだけどね。
何が問題だったかって言うと、今年の1年生は総じてレベルが高かったこと。毎年1人か2人は落ちる子が出て来るんだけど、今年は6人全員がちゃんと活動もしてるし、技術面でも上達してるしで、椅子取りゲームは大混戦。1年生がいいから2、3年生を落とそうで解決する問題でもなく。
履修の都合で組み合わせが出来る出来ないっていうのもあるからみんなにはこの期間に登録した履修を送ってもらって、それをアタシとLでああでもないこうでもないって言いながら組み合わせてて。で、やっぱりかこの方針で行くのかーって感じで達した結論を伝えるためにすがやんを呼び出してたというワケ。
「単刀直入に言うと、秋学期からの話になるかな」
「秋学期」
「昼放送の話ね。今履修期間で、みんなにそれを送ってもらってたっしょ? それを見ながらアタシとLでペアを組んでたの」
「今期は特に難しかったんだけど。で、すがやんを呼んだのは、ちょっと特別な事情があって」
「今年の1年生はみんな本当にいいから、全員に昼放送をやってもらう前提でアタシとLは組んでたんだけどね。どうしても人数問題が出て来るワケ」
「あー……もしかして、俺、落ちました?」
「うーん、単純に落ちたってワケじゃなくて、いろんな要素を見た結果、すがやんにしか出来ない仕事だなって思いましたよねー」
「この秋学期、すがやんには向島大学にお邪魔して、あっちで昼放送をやってもらえないかと思ってる」
「向島でっすか!?」
それこそ夏合宿の後にアタシらと野坂の間で少し話してたんだけど、人が多い少ないの悩みもあるし、同じ豊葦市内で同じラジオメインで活動をしているなら、こういう形での交流をするのもいいんじゃないかって。初心者講習会前には野坂自身、こっちでいろいろ見てたからっていうのもあったみたい。
「え、つかそんなのアリなんすか」
「ウチは人が多くてみんなに番組をやってもらえないし、向島は人が少なくて枠が埋められないしミキサーが余って来る。双方の利害が一致したんだよな。ウチと向島は同じラジオメイン校としてこれまでインターフェイスの最前線でやって来てるけど、大学としてのカラーだとか、番組のスタイルは全然違うんだ」
「そういや、夏合宿でもカノンは確かに自由と言うか、変わった感じではありました」
「初心者講習会の前には野坂がこっちに来てたっしょ?」
「そうですね」
「あの逆パターンになるのかな。すがやんに向こうの様子を見て、体験して、学んだことをこっちで教えてもらいたいと思う。それが上手く行けば多分2校のレベルの底上げにも繋がって来るだろうから」
突然こんなことを言われて、うーんうーんとすがやんが考え込んでしまうのはよく分かる。何ならただの落選宣告よりも衝撃的だもんね。向島に行って向こうで番組をやって来いって、字面だけ見たらムチャクチャだもん。
「よその大学にお邪魔するワケだから、技術だけじゃなくてコミュニケーション能力も必要じゃんな。柔軟性や協調性、そういった物を総合して見た結果、向島に出せるのはすがやんだと」
「ホントに、単純にウチであぶれたから外に出そうっていうんじゃないってことは強く言っておくからね。……って言うか、向島は本当にキャラが強烈だから。ササとレナだとあれにドン引きする可能性もあったと言うか」
「あー……まあ、そういうことなら。向島に行ってみます」
「ありがとう。そしたら向こうのトップにもそのように伝えておくね。くれぐれも変なことはしないように言っとくし」
「や、大丈夫っすよ。お気遣いなく」
「そう?」
「向こうの人がどんだけキャラが強烈なのかってのにも興味がありますし。それに、カノンもいるんでやりやすいと思います」
「それならよかった」
いい返事をしてくれて本当にすがやんには感謝しかないし、今後あるかどうかわからない留学体験だから、いろいろ見て来てほしいと思う。それを今後のMBCCに還元してもらって、みんなで切磋琢磨して行ってもらいたい。
「えっと、向こうでの昼放送ってことは、昼の時間にあっちに行くみたいなことっすか?」
「ううん、向こうの昼放送は収録形式だから、事前に録った物を昼に流すって形式だね」
「へー、そこからしてもうやり方が違うんすねー。ちょっと、俄然楽しみになってきたっす」
「詳しいことはこれから詰めるし、決まったらまたお知らせします」
end.
++++
すがやんの留学ってどんな感じで伝えられてたんだろうかって思ったんですね。去年は確かナレベだったんで
すがやんの留学計画のこともあって果林とLはリアルタイムくらいでペアを組むのに忙しくしてたと思うし、半ばやけくそだったと思う
そこからちゃんと向島の人の番組まで聞いて予習していくんだから「緑ヶ丘は真面目だ!」って言われるんやろなあ
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「おはようございまーす」
「あっ、すがやん。わざわざありがとね」
「いえ、履修登録で大学に来てるならこの方が話しやすいっすもんね」
緑ヶ丘大学の秋学期は20日の月曜日から。その前のこの時期に履修登録期間があって、それは一応家からでも出来るんだけど、話すこともあるのですがやんには大学まで来てもらってた。話すことというのは秋学期からの昼放送について。わざわざ履修登録期間の最終日を指定していたのにも理由がある。
MBCCでは通年の活動としてやっている第1学食での昼放送。秋学期になるとそこに1年生も加わって、3学年が揃い踏みとなる。例年インターフェイス夏合宿のモニター会の様子なんかも見ながらどの子を昼放送に選抜するかっていうのを先輩たちは見ていたらしい。だからアタシとLも合宿は見に行ってたんだけどね。
何が問題だったかって言うと、今年の1年生は総じてレベルが高かったこと。毎年1人か2人は落ちる子が出て来るんだけど、今年は6人全員がちゃんと活動もしてるし、技術面でも上達してるしで、椅子取りゲームは大混戦。1年生がいいから2、3年生を落とそうで解決する問題でもなく。
履修の都合で組み合わせが出来る出来ないっていうのもあるからみんなにはこの期間に登録した履修を送ってもらって、それをアタシとLでああでもないこうでもないって言いながら組み合わせてて。で、やっぱりかこの方針で行くのかーって感じで達した結論を伝えるためにすがやんを呼び出してたというワケ。
「単刀直入に言うと、秋学期からの話になるかな」
「秋学期」
「昼放送の話ね。今履修期間で、みんなにそれを送ってもらってたっしょ? それを見ながらアタシとLでペアを組んでたの」
「今期は特に難しかったんだけど。で、すがやんを呼んだのは、ちょっと特別な事情があって」
「今年の1年生はみんな本当にいいから、全員に昼放送をやってもらう前提でアタシとLは組んでたんだけどね。どうしても人数問題が出て来るワケ」
「あー……もしかして、俺、落ちました?」
「うーん、単純に落ちたってワケじゃなくて、いろんな要素を見た結果、すがやんにしか出来ない仕事だなって思いましたよねー」
「この秋学期、すがやんには向島大学にお邪魔して、あっちで昼放送をやってもらえないかと思ってる」
「向島でっすか!?」
それこそ夏合宿の後にアタシらと野坂の間で少し話してたんだけど、人が多い少ないの悩みもあるし、同じ豊葦市内で同じラジオメインで活動をしているなら、こういう形での交流をするのもいいんじゃないかって。初心者講習会前には野坂自身、こっちでいろいろ見てたからっていうのもあったみたい。
「え、つかそんなのアリなんすか」
「ウチは人が多くてみんなに番組をやってもらえないし、向島は人が少なくて枠が埋められないしミキサーが余って来る。双方の利害が一致したんだよな。ウチと向島は同じラジオメイン校としてこれまでインターフェイスの最前線でやって来てるけど、大学としてのカラーだとか、番組のスタイルは全然違うんだ」
「そういや、夏合宿でもカノンは確かに自由と言うか、変わった感じではありました」
「初心者講習会の前には野坂がこっちに来てたっしょ?」
「そうですね」
「あの逆パターンになるのかな。すがやんに向こうの様子を見て、体験して、学んだことをこっちで教えてもらいたいと思う。それが上手く行けば多分2校のレベルの底上げにも繋がって来るだろうから」
突然こんなことを言われて、うーんうーんとすがやんが考え込んでしまうのはよく分かる。何ならただの落選宣告よりも衝撃的だもんね。向島に行って向こうで番組をやって来いって、字面だけ見たらムチャクチャだもん。
「よその大学にお邪魔するワケだから、技術だけじゃなくてコミュニケーション能力も必要じゃんな。柔軟性や協調性、そういった物を総合して見た結果、向島に出せるのはすがやんだと」
「ホントに、単純にウチであぶれたから外に出そうっていうんじゃないってことは強く言っておくからね。……って言うか、向島は本当にキャラが強烈だから。ササとレナだとあれにドン引きする可能性もあったと言うか」
「あー……まあ、そういうことなら。向島に行ってみます」
「ありがとう。そしたら向こうのトップにもそのように伝えておくね。くれぐれも変なことはしないように言っとくし」
「や、大丈夫っすよ。お気遣いなく」
「そう?」
「向こうの人がどんだけキャラが強烈なのかってのにも興味がありますし。それに、カノンもいるんでやりやすいと思います」
「それならよかった」
いい返事をしてくれて本当にすがやんには感謝しかないし、今後あるかどうかわからない留学体験だから、いろいろ見て来てほしいと思う。それを今後のMBCCに還元してもらって、みんなで切磋琢磨して行ってもらいたい。
「えっと、向こうでの昼放送ってことは、昼の時間にあっちに行くみたいなことっすか?」
「ううん、向こうの昼放送は収録形式だから、事前に録った物を昼に流すって形式だね」
「へー、そこからしてもうやり方が違うんすねー。ちょっと、俄然楽しみになってきたっす」
「詳しいことはこれから詰めるし、決まったらまたお知らせします」
end.
++++
すがやんの留学ってどんな感じで伝えられてたんだろうかって思ったんですね。去年は確かナレベだったんで
すがやんの留学計画のこともあって果林とLはリアルタイムくらいでペアを組むのに忙しくしてたと思うし、半ばやけくそだったと思う
そこからちゃんと向島の人の番組まで聞いて予習していくんだから「緑ヶ丘は真面目だ!」って言われるんやろなあ
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