2021(02)
■ケーキ入刀サプライズ
++++
「玲那、折り入って相談があるんだけど」
「改まって、どうした?」
「くるみの誕生日、9月とは聞いてたけど9月何日かを聞いてなくて。ほら、俺の誕生日に3人連名でお祝いをもらったから。俺も祝おうと思うんだけど、どうしたものかなあと思って」
「ああ、それね。だったら私も一緒にやらせてよ」
7月7日、俺の誕生日には、サキ、すがやん、くるみの3人が連名で俺に誕生日プレゼントとしてとてもセンスのいい読書グッズをくれた。その時にみんなの誕生月を聞いてくるみは9月生まれだと知ってはいたものの、詳しい日付までは聞いていなかったのでもう過ぎてたらどうしようと密かに怯えているんだ。
玲那によれば、くるみの誕生日は9月の26日だということで、秋学期の始まった頃だ。いや、カレンダーを見たら日曜日になってるな。まずは日曜日だからこそ出来るお祝いで考えるか、月曜日に昨日はおめでとうとお祝い出来る形で考えるか。そのどちらにするかで規模とかも変わってきそうだ。
「でもまあ、くるみと言えばお菓子とかスイーツ、みたいな感じにはなってくるな」
「お菓子をあげれば間違いはないけど、くるみレベルになるとそこらのお菓子は食べ尽くしてる可能性もあるからね」
「ブログを見ててもこう、スイーツ批評じゃないけど、きっちり分析もしてるから生半可なことは出来ないなとは思う」
「まあ、あの子は友達からもらえる物に関してはそういうの抜きで喜んでくれそうだけどね」
「一応、断面の方から攻めるというのも手かと」
「なるほどね。コンビニスイーツ以外の物も割ってもらおうか」
くるみは趣味でお菓子の断面動画を撮影しているので、せっかくならぶった切り甲斐のあるお菓子をあげようという方向性で行くことに決まった。最近では瓶のような容器に入った断面観賞用スイーツなんかもあるそうだけど、くるみ本人に断面を開いてもらう体験をプレゼントしたいという意見で一致した。
「陸さん、断面で攻めるスイーツを検索してみました」
「ありがとうございます」
「まあ、有名どころはこんな感じかな。あと、先手打たせてもらうけどピアノ羊羹の話はまた今度にしてね、今はくるみの誕生日の話だから」
「わかりました」
玲那が調べてくれたページを見ていると、確かにこれは楽しいなと思う。切る度に柄の変わる羊羹は最早芸術だし、何層にも重ねたオペラケーキは普通に美味しそうだ。ピアノの鍵盤を模した羊羹については釘を刺されてしまったけど、これは個人的に取り寄せて彩人と食べようと思う。
「有名どころとなるとくるみももちろん情報は押さえてるだろうけど、それを自分で買うかどうかっていうところが賭けだな」
「そうだね。あと、ケーキで言えば冷凍でお取り寄せが出来るホールケーキがあって。それも断面がなかなかに攻めてる」
「うわ、何だこれ。七色だ。海外のケーキって感じがするけど」
「一応国内製造だし着色料も天然の物だから安心してもらって。外観は本当に真っ白でシンプルなケーキなんだけど、割ると虹色になってるっていう、サプライズ的な?」
「こういうのもあるんだな。作るの大変そう」
「ただこれ、大きさが4人から6人分って書いててさ」
「6人分なら俺たち6人で分ければちょうどじゃないか」
「みんなも巻き込んでいくスタイル?」
「値段的にもくるみ以外の5人で割るのにちょうどいいし」
「まあね。言ったからには残りメンバーの説得や調整は陸さんにお願いします」
「わかりました」
簡単にまとめた計画では、26日の日曜日にみんなで遊ぶことにして豊葦近郊のどこか適当な場所(持ち込み可のカラオケ店なんかが無難だろうか)に集まる。そこで俺が予め取り寄せて家で解凍しておいたケーキにくるみが入刀、「断面すごーい!」的な感じで喜んで貰えたらいいなあ、みたいな感じだ。
この七色バースデーケーキは製造量に限りがあるようなのでこの場で注文を確定。みんなで祝う計画が失敗したとしても俺と玲那からということでくるみに割ってもらうことには変わりない。サークルでのキャラ的に、俺と玲那がみんなで遊ぼうと誘うことは不自然じゃないかと不安ではあるけど。何とかなるだろう。
「このミルクレープも断面がすごいな」
「いつ聞いたんだったかな、すがやんが確かミルクレープが好きだって言ってたんだよね」
「へえ、でもミルクレープは紅茶との相性いいと思うし、わかる気がする」
「確か、ミルクレープの層には地層と一緒でロマンがあるとか何とか」
「そっちか。そういやウチの同期って甘いのとかケーキ嫌いな奴っていなかったよな」
「いなかったと思うよ」
「じゃあよかった。シノが満足できる量じゃないとは思うけど、今回はくるみの回だからそれでよし。えっと、それから何を準備しなきゃいけないかな」
何とかそれらしくなり始めたくるみの誕生日計画だ。注文も済ませたし、後はみんなの予定を取らなきゃいけないのか。誕生日は月末だけど、バイトとかがあるかもしれないし早いうちに言っておくに限る。無事に成功しますように。えっと、それでくるみの次は誰だっけ。玲那が11月末で、いや、その前に7日のシノだ。サキは2月で、すがやんが5月だから、次はシノか。
「よし、あとは無事に当日が来るのを待つのみ。ついでにピアノ羊羹も注文しよう」
「そっちも抜かりないんですね陸さん」
end.
++++
実はこの話を書くまでくるちゃんの誕生日をちゃんと決めてなかったのですが、下旬の26日に決定。占いサイトとか見まくった。
この時点では確かにササレナがみんなに向けて遊ぼうとお誘いするというのが結び付かないかもしれない。クールな2人という体だからね
改めてみんなの生まれ月を並べてみると、ホントに些細な差ではあるけどすがやんが一番っていうのに得も言われぬ何かがある
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「玲那、折り入って相談があるんだけど」
「改まって、どうした?」
「くるみの誕生日、9月とは聞いてたけど9月何日かを聞いてなくて。ほら、俺の誕生日に3人連名でお祝いをもらったから。俺も祝おうと思うんだけど、どうしたものかなあと思って」
「ああ、それね。だったら私も一緒にやらせてよ」
7月7日、俺の誕生日には、サキ、すがやん、くるみの3人が連名で俺に誕生日プレゼントとしてとてもセンスのいい読書グッズをくれた。その時にみんなの誕生月を聞いてくるみは9月生まれだと知ってはいたものの、詳しい日付までは聞いていなかったのでもう過ぎてたらどうしようと密かに怯えているんだ。
玲那によれば、くるみの誕生日は9月の26日だということで、秋学期の始まった頃だ。いや、カレンダーを見たら日曜日になってるな。まずは日曜日だからこそ出来るお祝いで考えるか、月曜日に昨日はおめでとうとお祝い出来る形で考えるか。そのどちらにするかで規模とかも変わってきそうだ。
「でもまあ、くるみと言えばお菓子とかスイーツ、みたいな感じにはなってくるな」
「お菓子をあげれば間違いはないけど、くるみレベルになるとそこらのお菓子は食べ尽くしてる可能性もあるからね」
「ブログを見ててもこう、スイーツ批評じゃないけど、きっちり分析もしてるから生半可なことは出来ないなとは思う」
「まあ、あの子は友達からもらえる物に関してはそういうの抜きで喜んでくれそうだけどね」
「一応、断面の方から攻めるというのも手かと」
「なるほどね。コンビニスイーツ以外の物も割ってもらおうか」
くるみは趣味でお菓子の断面動画を撮影しているので、せっかくならぶった切り甲斐のあるお菓子をあげようという方向性で行くことに決まった。最近では瓶のような容器に入った断面観賞用スイーツなんかもあるそうだけど、くるみ本人に断面を開いてもらう体験をプレゼントしたいという意見で一致した。
「陸さん、断面で攻めるスイーツを検索してみました」
「ありがとうございます」
「まあ、有名どころはこんな感じかな。あと、先手打たせてもらうけどピアノ羊羹の話はまた今度にしてね、今はくるみの誕生日の話だから」
「わかりました」
玲那が調べてくれたページを見ていると、確かにこれは楽しいなと思う。切る度に柄の変わる羊羹は最早芸術だし、何層にも重ねたオペラケーキは普通に美味しそうだ。ピアノの鍵盤を模した羊羹については釘を刺されてしまったけど、これは個人的に取り寄せて彩人と食べようと思う。
「有名どころとなるとくるみももちろん情報は押さえてるだろうけど、それを自分で買うかどうかっていうところが賭けだな」
「そうだね。あと、ケーキで言えば冷凍でお取り寄せが出来るホールケーキがあって。それも断面がなかなかに攻めてる」
「うわ、何だこれ。七色だ。海外のケーキって感じがするけど」
「一応国内製造だし着色料も天然の物だから安心してもらって。外観は本当に真っ白でシンプルなケーキなんだけど、割ると虹色になってるっていう、サプライズ的な?」
「こういうのもあるんだな。作るの大変そう」
「ただこれ、大きさが4人から6人分って書いててさ」
「6人分なら俺たち6人で分ければちょうどじゃないか」
「みんなも巻き込んでいくスタイル?」
「値段的にもくるみ以外の5人で割るのにちょうどいいし」
「まあね。言ったからには残りメンバーの説得や調整は陸さんにお願いします」
「わかりました」
簡単にまとめた計画では、26日の日曜日にみんなで遊ぶことにして豊葦近郊のどこか適当な場所(持ち込み可のカラオケ店なんかが無難だろうか)に集まる。そこで俺が予め取り寄せて家で解凍しておいたケーキにくるみが入刀、「断面すごーい!」的な感じで喜んで貰えたらいいなあ、みたいな感じだ。
この七色バースデーケーキは製造量に限りがあるようなのでこの場で注文を確定。みんなで祝う計画が失敗したとしても俺と玲那からということでくるみに割ってもらうことには変わりない。サークルでのキャラ的に、俺と玲那がみんなで遊ぼうと誘うことは不自然じゃないかと不安ではあるけど。何とかなるだろう。
「このミルクレープも断面がすごいな」
「いつ聞いたんだったかな、すがやんが確かミルクレープが好きだって言ってたんだよね」
「へえ、でもミルクレープは紅茶との相性いいと思うし、わかる気がする」
「確か、ミルクレープの層には地層と一緒でロマンがあるとか何とか」
「そっちか。そういやウチの同期って甘いのとかケーキ嫌いな奴っていなかったよな」
「いなかったと思うよ」
「じゃあよかった。シノが満足できる量じゃないとは思うけど、今回はくるみの回だからそれでよし。えっと、それから何を準備しなきゃいけないかな」
何とかそれらしくなり始めたくるみの誕生日計画だ。注文も済ませたし、後はみんなの予定を取らなきゃいけないのか。誕生日は月末だけど、バイトとかがあるかもしれないし早いうちに言っておくに限る。無事に成功しますように。えっと、それでくるみの次は誰だっけ。玲那が11月末で、いや、その前に7日のシノだ。サキは2月で、すがやんが5月だから、次はシノか。
「よし、あとは無事に当日が来るのを待つのみ。ついでにピアノ羊羹も注文しよう」
「そっちも抜かりないんですね陸さん」
end.
++++
実はこの話を書くまでくるちゃんの誕生日をちゃんと決めてなかったのですが、下旬の26日に決定。占いサイトとか見まくった。
この時点では確かにササレナがみんなに向けて遊ぼうとお誘いするというのが結び付かないかもしれない。クールな2人という体だからね
改めてみんなの生まれ月を並べてみると、ホントに些細な差ではあるけどすがやんが一番っていうのに得も言われぬ何かがある
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