2021(02)
■癒しのムービーショー
++++
「うわっ。暗いねー。どうしたの?」
「あれっ、ミドリ先輩。もうそんな時間ですか?」
「もうすぐ1時だねー」
「じゃあ、そろそろ片付けないと」
サークル室に入ると、部屋が真っ暗。壁にはゆらゆらと泳ぐ魚の映像が映し出されている。何かなと思えば机の上には小型のプロジェクターがあって、1年生たちがそれを見ていたみたいだ。サークル室の壁は白くて平らだから、壁に映像を映しやすいんだね。って言うかこんな暗幕なんてあったっけ。
「これって誰が用意したの?」
「プロジェクターは伊織ので、映像は千颯ですね」
「へー。こんな小さなプロジェクターがあるんだねー」
「スピーカーはUHBCのがあるので、プロジェクターがあればこれくらいの上映は出来るかなと」
「サークルが始まる前にちょっと見ようかって言って見てたんです」
「この魚の映像、綺麗だねー、ひらひら~って」
「これはうちで飼ってる魚なんです」
「えっ、飼ってるの!?」
「部屋を薄暗くして、こうやって眺めると癒されるんですよ」
「それはわかるなー」
魚の尾が光を受けてきらきら~っと光りながらゆらめいている。この映像にはただただ癒されるし、もうちょっと眺めていたいような気がする。でも、映像上映仕様になっているこの部屋は原状回復をした方がいいかな。暗幕だけ片付けてもらって、俺は千颯のスマホで映像鑑賞の続きをする。
でも、まだ残暑もかなり厳しいのに、冷房もないこの部屋でよくみんなやってたなあと思う。扇風機はあるけど、室温自体は暑いもんね。でも、手軽に集まって好きなことをするには丁度いい場所と言えば場所なのかもしれない。あと、この魚の泳ぐ映像は何となく涼しさを感じるね。
「千颯は観賞用の魚を飼ってるんだねー」
「そうですね。家にはいろんな種類の魚がいて、みんなにイメージが付きやすいのでは、金魚とか」
「俺、金魚はお祭りですくったのを飼ってたくらいだよ」
「大体の人がそうだと思いますよ。それか学校でちょっと飼ったとか」
「他のみんなも映像を持ち寄ってたの?」
「そうです。俺は工業地帯の映像ですね。夜の工業地帯って綺麗ですよね」
「あー、わかる~! 俺も好きだよー! わかちゃんは話が分かるなー! 七海は?」
「僕はダムの観光放水の映像ですね」
「いいねー! 最高だよね! オリちゃんはどんなのを持って来たの?」
「私は各地の伝統建築の映像です」
「えっ!? オリちゃん建築に興味あるの!?」
「さすがにミドリ先輩ほど詳しくはないですけど、少し好きという程度で」
「いやいやいや、それでも何か嬉しいなー。って言うかみんなセンス良過ぎだよ! そんな鑑賞会を開いてるんだったら俺も混ぜて欲しかったなー。って言うか俺も全部見たいよみんなの映像」
みんなの映像選択センスが良過ぎてふあ~ってなってるよね! って言うかみんなそれぞれそんな趣味があったんだって新たな発見がある。千颯は魚、わかちゃんは工業地帯、七海はダム。そしてオリちゃんは建築。俺もサークルに毎回来てるワケじゃないし、1年生の子たちとそこまで深い話をしたこともなかったからなあ。
七海とわかちゃんが暗幕を片付けていくと、部屋がぱあっと明るくなって目がチカチカする。魚の映像は綺麗だけど、これは暗いところで見たいかな。その方が魚の色彩がしっかりと見られそうだし。映像で見るのも綺麗だけど、実際に水槽で泳いでるのを見るのもいいんだろうなあ。
「ミドリ先輩、今日はどんなことをやるんですか?」
「今日は定例会からのお知らせと、夏合宿に向けた確認っていう話だよ」
「そう言えば、定例会の先輩は向舞祭に出てたんですね」
俺も向舞祭に出てたけど、サテライトステージでMCの人の手伝いをしてたんだよね。すっごく緊張した~! その辺の報告が入るのかな。それから、アオの方から対策委員の連絡が入るんじゃないかなと思う。持ち物の確認だとか、各班がどんな感じで練習や打ち合わせをしてるのかっていう話をするのかな。
「おはようございます」
「あっ、アオおはよー」
「何、そのプロジェクター」
「オリちゃんの私物だって。1年生の子たちが好きな映像の鑑賞会をやってたみたくって」
「へえ。映画とか?」
「これ、千颯の飼ってる魚の映像だって」
「へえ。綺麗だね」
「アオがこんな感じで誰かに何か、自分の好きな物の映像を見せるとしたら、何を選ぶ?」
「……私の場合は、シムシティのプレイ動画とかになると思う」
「ブレないねー」
違う趣味の人にこれがいいんですよってプレゼンすることってなかなか難しいんだけど、千颯の映像を見ている分には本当にただの魚の映像なんだよね。もしかしたら、一生懸命プレゼンをするというよりは、ただ映像を流して眺めるっていうゆったりとした時間の方を大事にしてるのかも。いいね。癒しの時間。
「おーい、やるよー」
「お菓子もあるから食べながらやろー」
「はーい」
end.
++++
星大の1年生たちにも何かしら人格を持たせたいと思った結果の上映会でした。千颯は4班関係で少し喋ってるけど他の子たちもね
わかちゃんはこれからカノンとジャガイモの件であれこれ連絡を取り合ったりもするのかしら。キャラ立ちはよ
シムシティのプレイ動画になると思う、とブレない蒼希はさすが。そうそう、蒼希は慧梨夏にシムシティを教えられてドハマりして今の学部に入ってるからね
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「うわっ。暗いねー。どうしたの?」
「あれっ、ミドリ先輩。もうそんな時間ですか?」
「もうすぐ1時だねー」
「じゃあ、そろそろ片付けないと」
サークル室に入ると、部屋が真っ暗。壁にはゆらゆらと泳ぐ魚の映像が映し出されている。何かなと思えば机の上には小型のプロジェクターがあって、1年生たちがそれを見ていたみたいだ。サークル室の壁は白くて平らだから、壁に映像を映しやすいんだね。って言うかこんな暗幕なんてあったっけ。
「これって誰が用意したの?」
「プロジェクターは伊織ので、映像は千颯ですね」
「へー。こんな小さなプロジェクターがあるんだねー」
「スピーカーはUHBCのがあるので、プロジェクターがあればこれくらいの上映は出来るかなと」
「サークルが始まる前にちょっと見ようかって言って見てたんです」
「この魚の映像、綺麗だねー、ひらひら~って」
「これはうちで飼ってる魚なんです」
「えっ、飼ってるの!?」
「部屋を薄暗くして、こうやって眺めると癒されるんですよ」
「それはわかるなー」
魚の尾が光を受けてきらきら~っと光りながらゆらめいている。この映像にはただただ癒されるし、もうちょっと眺めていたいような気がする。でも、映像上映仕様になっているこの部屋は原状回復をした方がいいかな。暗幕だけ片付けてもらって、俺は千颯のスマホで映像鑑賞の続きをする。
でも、まだ残暑もかなり厳しいのに、冷房もないこの部屋でよくみんなやってたなあと思う。扇風機はあるけど、室温自体は暑いもんね。でも、手軽に集まって好きなことをするには丁度いい場所と言えば場所なのかもしれない。あと、この魚の泳ぐ映像は何となく涼しさを感じるね。
「千颯は観賞用の魚を飼ってるんだねー」
「そうですね。家にはいろんな種類の魚がいて、みんなにイメージが付きやすいのでは、金魚とか」
「俺、金魚はお祭りですくったのを飼ってたくらいだよ」
「大体の人がそうだと思いますよ。それか学校でちょっと飼ったとか」
「他のみんなも映像を持ち寄ってたの?」
「そうです。俺は工業地帯の映像ですね。夜の工業地帯って綺麗ですよね」
「あー、わかる~! 俺も好きだよー! わかちゃんは話が分かるなー! 七海は?」
「僕はダムの観光放水の映像ですね」
「いいねー! 最高だよね! オリちゃんはどんなのを持って来たの?」
「私は各地の伝統建築の映像です」
「えっ!? オリちゃん建築に興味あるの!?」
「さすがにミドリ先輩ほど詳しくはないですけど、少し好きという程度で」
「いやいやいや、それでも何か嬉しいなー。って言うかみんなセンス良過ぎだよ! そんな鑑賞会を開いてるんだったら俺も混ぜて欲しかったなー。って言うか俺も全部見たいよみんなの映像」
みんなの映像選択センスが良過ぎてふあ~ってなってるよね! って言うかみんなそれぞれそんな趣味があったんだって新たな発見がある。千颯は魚、わかちゃんは工業地帯、七海はダム。そしてオリちゃんは建築。俺もサークルに毎回来てるワケじゃないし、1年生の子たちとそこまで深い話をしたこともなかったからなあ。
七海とわかちゃんが暗幕を片付けていくと、部屋がぱあっと明るくなって目がチカチカする。魚の映像は綺麗だけど、これは暗いところで見たいかな。その方が魚の色彩がしっかりと見られそうだし。映像で見るのも綺麗だけど、実際に水槽で泳いでるのを見るのもいいんだろうなあ。
「ミドリ先輩、今日はどんなことをやるんですか?」
「今日は定例会からのお知らせと、夏合宿に向けた確認っていう話だよ」
「そう言えば、定例会の先輩は向舞祭に出てたんですね」
俺も向舞祭に出てたけど、サテライトステージでMCの人の手伝いをしてたんだよね。すっごく緊張した~! その辺の報告が入るのかな。それから、アオの方から対策委員の連絡が入るんじゃないかなと思う。持ち物の確認だとか、各班がどんな感じで練習や打ち合わせをしてるのかっていう話をするのかな。
「おはようございます」
「あっ、アオおはよー」
「何、そのプロジェクター」
「オリちゃんの私物だって。1年生の子たちが好きな映像の鑑賞会をやってたみたくって」
「へえ。映画とか?」
「これ、千颯の飼ってる魚の映像だって」
「へえ。綺麗だね」
「アオがこんな感じで誰かに何か、自分の好きな物の映像を見せるとしたら、何を選ぶ?」
「……私の場合は、シムシティのプレイ動画とかになると思う」
「ブレないねー」
違う趣味の人にこれがいいんですよってプレゼンすることってなかなか難しいんだけど、千颯の映像を見ている分には本当にただの魚の映像なんだよね。もしかしたら、一生懸命プレゼンをするというよりは、ただ映像を流して眺めるっていうゆったりとした時間の方を大事にしてるのかも。いいね。癒しの時間。
「おーい、やるよー」
「お菓子もあるから食べながらやろー」
「はーい」
end.
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星大の1年生たちにも何かしら人格を持たせたいと思った結果の上映会でした。千颯は4班関係で少し喋ってるけど他の子たちもね
わかちゃんはこれからカノンとジャガイモの件であれこれ連絡を取り合ったりもするのかしら。キャラ立ちはよ
シムシティのプレイ動画になると思う、とブレない蒼希はさすが。そうそう、蒼希は慧梨夏にシムシティを教えられてドハマりして今の学部に入ってるからね
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