2021(02)
■リズムを整える
++++
「……アオちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」
「私のことはご心配なく。生活リズムが少し乱れただけなので」
「いや、でも本当に具合悪そうだよ。アオって夜更かしとかダメなタイプだっけ?」
今日は夏合宿の講師をお願いした水沢さんも交えて対策委員の会議なんだけど、議長のアオがちょっと調子が悪そうだ。本人はそこまで大ごとではないのでご心配なくと言うんだけど、アオだけに心配になるところはちょっとある。みんな会議どころじゃなくてアオの心配をしてるもんね。
アオと言えば、日常のルーティンがきっかりかっちり決まっているという印象がある。何時何分に起床、それから朝食を何分で食べて、それから身支度をした頃には何時何分。みたいな感じでタイムテーブルが1分単位で事細かに決まっているとか。スマホでもきっちり日々のスケジュールを管理しているんだって。
そんな風にきっかり生活をしているから、それが乱れるとイライラしたりもするらしい。予定がたくさん詰まりに詰まって睡眠時間に影響が出てしまうと体調にも影響が出るということらしいんだ。高崎先輩が1回オールをすると1週間引き摺ると言っていたけど、そんなようなことなのかなあ。
「あの、一応帰省から戻ったのでお土産なんですけど、アオ、具合よくなったら食べてね」
「ありがとう。タカティも大変だったはずなのになんかゴメン」
「ううん。俺は自分も家も大丈夫だったから全然」
対策委員の会議の日程を少し遅らせてもらったのは、盆からの大雨で俺が星港になかなか戻って来れなかったからだ。アオには結構なムチャを言ってスケジュールを調整してもらったので、調子が悪いのもそれが響いてるんじゃないのかなって気が少し。みんな俺のことも心配してくれてるけど、俺のことは本当に。
「みっともない話なんですけど、お盆の間はずっとバイトに入ってたんです。それでバタバタしてて」
「バイトか。アオのバイトって確かカメラ屋だっけか?」
「そう。七五三の写真を撮るお客さんが多くてずーっと撮ってて。私は子供NGってことになってるんですけど、それこそ帰省とか遊びとかでスタッフが全然いなくて私まで駆り出されてバタバタしてて」
「それはお疲れさま。普段やらない仕事をしたら疲れるもんねえ。それがお盆の間ずっとなら今ここでそれが出ても仕方ないよ」
「本当に申し訳ないです。でも、会議はちゃんとやりますので」
「俺的にはアオちゃんの人間味のある話を聞けただけで今日はもう満足まであるね」
「えっ!? いやいや、合宿の会議はしますよ!」
「だ~いじょうぶだって、その辺はご安心下さい」
水沢さんと話していると、普段は喜怒哀楽のわかりにくいアオの表情が本人比でコロコロと変わって、今はちょっと焦ってるのかなとか、そういうのがわかって確かにちょっと面白いんだよね。ある意味で、水沢さんは完璧に決まりきったアオのペースを乱す天敵とも言えるのかもしれない。
各班の近況報告や番組の進捗を報告していく中で、こういうことも合宿でやったらどうかなと言った案が出たりもする。水沢さんともその話を詰めて行く中で、ちゃんと進んでるなっていう感じが手に取るようにわかるので、会議もちゃんとしますと言うだけはあるなあと。具合が悪くても最低限はまとめ上げる辺り、議長の手腕はさすがだ。
「そう言えばさ、今年はアレやんないの?」
「アレとは」
「みんな大好きミキサーテスト」
「あー……タカティ、どうする?」
「あれもエンタメ要素はあるし、やったらやったじゃない?」
「やるんなら、合宿までもう日がないからテストを作ってもらえるように依頼しないといけないし。今年の4年生にお願いするような感じなら、順当に行けばカズ先輩にお願いすることにはなると思うけど」
「伊東先輩に頼むんなら俺からお願いしようか?」
「そうだね。それじゃあタカティにお願いしようか」
「ミキサーテストの話聞いてると、サドニナはアナでよかったーってホントに思う!」
「それだべ」
「……あ、あの、エージさん……ミキサーテストって……」
「そっか、わかばは知らないっていう。夏合宿でミキサーがどんだけミキサーのことをわかってっかみたいなペーパーテストをやってるらしいべ」
「普通にやってればまず罰ゲームを受けることはないから安心して大丈夫だよ」
「ひいっ…! 罰ゲーム…!?」
とりあえず、テスト作成依頼はこの会議が終わってから……と思ったんだけど、お願いするならなる早の方がいいので今すぐメールを送ってくださいとアオに言われたので俺はこの仕事をすることに。他にやることはーとアオがスマホに作ったリストを見ながら喋ってるのがね。具合が悪くても仕事はちゃんとやってしまうんだ、と少し引きもする。
「……と、今日決まったことと、合宿までにやることはこのような感じです」
「はーい」
「アオちゃん、よくやるねえ。去年の議長はここまでやってなかったのに」
「やることを予め打ち出して、それをいつどのようにやるかを決めておかないと気持ち悪いんです。あと、私と野坂先輩では議長としてのスタイルやスタンスも違いますので」
「ん、そうだねえ。それは失礼しました」
「アオ、仕事してくれるのはありがたいけど体調をどうにかした方がいいべ。委員長に仕事割り振ってもいいんだっていう」
「大丈夫。ありがとうエージ。私は仕事をしてるくらいの方が身体も精神もリズムが整うから。お盆の間は、子供に苦戦させられただけで」
「そう言えばアオちゃん子供NGって、子供が苦手なの?」
「確かに少し苦手ではあるんですけど、子供が私にNGを出すんです。どれだけあやしても笑わせるどころか泣かれるので」
「ああー……」
end.
++++
鋼の議長・蒼希がちょっとバタバタしてて体調を崩したらしいお話。がっちり決まった生活をしてると、タイムテーブルが乱れただけでイライラしそう。
ダイさんは大人の余裕なのか向島のノリなのか、蒼希が多少どうこうしたというくらいでは動じないし、ダイさんのペースも乱れない。
昨年度はこれくらいの時期に機材チェックなんかももうやってたし、多分ここから対策委員の活動ペースがぐいぐい上がって来るんだろうね
.
++++
「……アオちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」
「私のことはご心配なく。生活リズムが少し乱れただけなので」
「いや、でも本当に具合悪そうだよ。アオって夜更かしとかダメなタイプだっけ?」
今日は夏合宿の講師をお願いした水沢さんも交えて対策委員の会議なんだけど、議長のアオがちょっと調子が悪そうだ。本人はそこまで大ごとではないのでご心配なくと言うんだけど、アオだけに心配になるところはちょっとある。みんな会議どころじゃなくてアオの心配をしてるもんね。
アオと言えば、日常のルーティンがきっかりかっちり決まっているという印象がある。何時何分に起床、それから朝食を何分で食べて、それから身支度をした頃には何時何分。みたいな感じでタイムテーブルが1分単位で事細かに決まっているとか。スマホでもきっちり日々のスケジュールを管理しているんだって。
そんな風にきっかり生活をしているから、それが乱れるとイライラしたりもするらしい。予定がたくさん詰まりに詰まって睡眠時間に影響が出てしまうと体調にも影響が出るということらしいんだ。高崎先輩が1回オールをすると1週間引き摺ると言っていたけど、そんなようなことなのかなあ。
「あの、一応帰省から戻ったのでお土産なんですけど、アオ、具合よくなったら食べてね」
「ありがとう。タカティも大変だったはずなのになんかゴメン」
「ううん。俺は自分も家も大丈夫だったから全然」
対策委員の会議の日程を少し遅らせてもらったのは、盆からの大雨で俺が星港になかなか戻って来れなかったからだ。アオには結構なムチャを言ってスケジュールを調整してもらったので、調子が悪いのもそれが響いてるんじゃないのかなって気が少し。みんな俺のことも心配してくれてるけど、俺のことは本当に。
「みっともない話なんですけど、お盆の間はずっとバイトに入ってたんです。それでバタバタしてて」
「バイトか。アオのバイトって確かカメラ屋だっけか?」
「そう。七五三の写真を撮るお客さんが多くてずーっと撮ってて。私は子供NGってことになってるんですけど、それこそ帰省とか遊びとかでスタッフが全然いなくて私まで駆り出されてバタバタしてて」
「それはお疲れさま。普段やらない仕事をしたら疲れるもんねえ。それがお盆の間ずっとなら今ここでそれが出ても仕方ないよ」
「本当に申し訳ないです。でも、会議はちゃんとやりますので」
「俺的にはアオちゃんの人間味のある話を聞けただけで今日はもう満足まであるね」
「えっ!? いやいや、合宿の会議はしますよ!」
「だ~いじょうぶだって、その辺はご安心下さい」
水沢さんと話していると、普段は喜怒哀楽のわかりにくいアオの表情が本人比でコロコロと変わって、今はちょっと焦ってるのかなとか、そういうのがわかって確かにちょっと面白いんだよね。ある意味で、水沢さんは完璧に決まりきったアオのペースを乱す天敵とも言えるのかもしれない。
各班の近況報告や番組の進捗を報告していく中で、こういうことも合宿でやったらどうかなと言った案が出たりもする。水沢さんともその話を詰めて行く中で、ちゃんと進んでるなっていう感じが手に取るようにわかるので、会議もちゃんとしますと言うだけはあるなあと。具合が悪くても最低限はまとめ上げる辺り、議長の手腕はさすがだ。
「そう言えばさ、今年はアレやんないの?」
「アレとは」
「みんな大好きミキサーテスト」
「あー……タカティ、どうする?」
「あれもエンタメ要素はあるし、やったらやったじゃない?」
「やるんなら、合宿までもう日がないからテストを作ってもらえるように依頼しないといけないし。今年の4年生にお願いするような感じなら、順当に行けばカズ先輩にお願いすることにはなると思うけど」
「伊東先輩に頼むんなら俺からお願いしようか?」
「そうだね。それじゃあタカティにお願いしようか」
「ミキサーテストの話聞いてると、サドニナはアナでよかったーってホントに思う!」
「それだべ」
「……あ、あの、エージさん……ミキサーテストって……」
「そっか、わかばは知らないっていう。夏合宿でミキサーがどんだけミキサーのことをわかってっかみたいなペーパーテストをやってるらしいべ」
「普通にやってればまず罰ゲームを受けることはないから安心して大丈夫だよ」
「ひいっ…! 罰ゲーム…!?」
とりあえず、テスト作成依頼はこの会議が終わってから……と思ったんだけど、お願いするならなる早の方がいいので今すぐメールを送ってくださいとアオに言われたので俺はこの仕事をすることに。他にやることはーとアオがスマホに作ったリストを見ながら喋ってるのがね。具合が悪くても仕事はちゃんとやってしまうんだ、と少し引きもする。
「……と、今日決まったことと、合宿までにやることはこのような感じです」
「はーい」
「アオちゃん、よくやるねえ。去年の議長はここまでやってなかったのに」
「やることを予め打ち出して、それをいつどのようにやるかを決めておかないと気持ち悪いんです。あと、私と野坂先輩では議長としてのスタイルやスタンスも違いますので」
「ん、そうだねえ。それは失礼しました」
「アオ、仕事してくれるのはありがたいけど体調をどうにかした方がいいべ。委員長に仕事割り振ってもいいんだっていう」
「大丈夫。ありがとうエージ。私は仕事をしてるくらいの方が身体も精神もリズムが整うから。お盆の間は、子供に苦戦させられただけで」
「そう言えばアオちゃん子供NGって、子供が苦手なの?」
「確かに少し苦手ではあるんですけど、子供が私にNGを出すんです。どれだけあやしても笑わせるどころか泣かれるので」
「ああー……」
end.
++++
鋼の議長・蒼希がちょっとバタバタしてて体調を崩したらしいお話。がっちり決まった生活をしてると、タイムテーブルが乱れただけでイライラしそう。
ダイさんは大人の余裕なのか向島のノリなのか、蒼希が多少どうこうしたというくらいでは動じないし、ダイさんのペースも乱れない。
昨年度はこれくらいの時期に機材チェックなんかももうやってたし、多分ここから対策委員の活動ペースがぐいぐい上がって来るんだろうね
.