2021(02)
■ビジュアルとブランド
++++
「源さんホント突然すいません。無理言って戸田班の機材貸してもらっちゃって」
「ううん。部の機材って借りるための手続き面倒だもんね。深青ってアナさんだっけ。機材の接続とかは」
「あ、接続は出来ますよ。バンドでやってるんで」
「ああ、そうなんだ。そっか、小林班だもんねえ。パート関係なく機材には強いよねー」
インターフェイス夏合宿に星ヶ丘大学から参加する子とは、対策委員として連絡することもあるから個人的に連絡先を交換していた。みちると同じ班になった小林班の五百崎深青くんも、この合宿をきっかけに話す機会が出来た子だ。
深青はヴィジュアル系バンドでよく見るようなメイクやファッションをしていて、実際にそういうタイプのバンドをやっているベーシストなんだそうだ。で、そのベース経験を生かして小林班でもベースを弾いているみたいだ。
夏合宿まで地味に日が迫っているということで、深青が個人的に練習をしたいと申し出て来たんだ。それはとてもいいことだし、部の機材を借りるのが面倒なら俺も一緒に戸田班の機材で練習すればいいかなーって思って現在に至っている。
「まあ、そーゆーことだから深青をよろしく」
「オナシャス!」
「いえいえ、こちらこそ。小林先輩もわざわざ見に来てもらって」
「俺は会議のついでだから。ああ、わかってっと思うけど、それは一式戸田班の自前だし、何かあっても俺は責任持てないとだけ」
「わかってます」
小林先輩はシゲトラ先輩の後を引き継いで、放送部の機材を管理する役職に就いている。放送部の幹部と呼ばれる人たちは、主にプロデューサーかアナウンサーで固められている印象だから、機材管理の仕事をする人がこの部のミキサーの中で一番信頼されている人という風に解釈出来るかな。
「ああ、つかゲンゴロー。深青がこのナリでインターフェイス? で引かれてるとかそういう話はない?」
「今のところは全然ですね。合宿ではどうかわかりませんけど。別に、悪目立ちするファッションでもないですし、いいんじゃないですかね。言動はむしろいい子ですし」
「ああそう。それならいーんだよ」
「コバさん、俺そんなに問題起こしそうっすか?」
「問題どうこうじゃねーんだよ。まあ、一応な。V系メイクとかって、好き嫌いが分かれるだろ」
「え~。あっ、ちなみに源さんはどう思います?」
「似合ってるし、とってもいいと思うよ」
「ですよね~!」
まあ、俺は如何せんコスプレの趣味があるからヴィジュアル系メイクくらいでは引きませんよね。何なら深青はメイクも上手だし髪やファッションもバッチリ決まってるし、カッコいいし可愛いしで100点満点だなって思うんだよね。
「深青って確かみちると一緒の班だっけ。アオが班長で」
「そーっすね。みちるの話は彩人からも聞いてるんで。つかあの班やたら女子ばっかじゃないすか! 源さん、何を見て俺をあの班に入れたんすか?」
「班編成には大人の事情がいろいろあるんだよ」
「そーだぞ深青。いろいろあるんだぞ」
「いや、つかコバさんがインターフェイスの何を知ってるんすか」
「何も知らない!」
「ドヤ感半端ね~…!」
「ここまで清々しいと気持ちいいですよ」
「ちなみに深青とペアを組むのってどういう子?」
「班長のアオさんすね、星大の。日常のルーティンがガチガチに決まってて、キューシートもすっごい細かく書いてるんすよ」
「対策委員の議長で、性格は真面目過ぎるくらい真面目ですね。悪乗りも大好きですけど。ミキサーとしては、初心者講習会で講師をして下さった向島の野坂先輩っていう人がいるんですけど、その人の影響を強く受けていて――」
「向島の野坂君!? って、あの野坂君!? マサフミ!?」
「あ、えっと、そうです。小林先輩、野坂先輩と知り合いなんですか?」
アオの話をしていたはずが、野坂先輩という単語を出した瞬間の小林先輩の食い付きっぷりが尋常じゃない。これには深青もかなり驚いているみたいだ。
「フツーに友達なんだって。向島の神崎耕太って知ってる? ちょっと丸くて、オタクで、面白い奴なんだけど」
「はい。こーた先輩には良くしてもらってます」
「あのこーたと俺が高校の吹部の同期なんだよな。で、1コ上の泰稚さんが部長で」
「へー、菅野先輩も同じ高校だったんですね」
「そうなんだよ。で、こーたの繋がりで野坂君と知り合って、友達になってさ。彼、イケメンだし性格も男前だし頭もいいしスポーツも出来て、真の完璧超人だろ? そっかー、初心者講習会? とやらで講師をやるレベルでラジオも出来る人なんだなー、いやーさすが野坂君だわ」
「……源さん、これ、コバさんどーしたんすか?」
「俺にはちょっとわかんないね」
彼女はその完璧超人の野坂先輩の影響を色濃く受けたミキシングをしますとアオのことをざっくりと説明すると、小林先輩も「それなら安心だな!」と納得するんだから野坂先輩のブランド力の強さがすンごい。俺たちの代って誰かがそんな風に言われるようになるかなあ?
「ああ、そうだ源さん」
「はいはい」
「合宿の番組で、結構激しめの曲を使う予定なんですけど、大丈夫っすかね?」
「アオがいいって言うならオッケーじゃない?」
「むしろアオさんの選曲もなかなかセンス良かったっす。BGMもいい感じのインストロックで」
「あ、そうなんだ。ならいいんじゃないかな。班の中で調和がとれるってことなら」
「よーし、練習すっぞ! 源さん、付き合ってもらっていいすか?」
「もちろん」
「しゃーない。俺も少し見てってやるかな」
「え。コバさんが何で」
「お前がちゃんとやんねーと、相方のミキサーの子を育てた野坂君の名前に傷が付くだろ」
「ええー……」
end.
++++
多分フェーズ2になってから初めてのコバヤスじゃないかな。相変わらずノサカ強火勢である。呼称はみんなの前だから野坂君なのかな?
と言うか蒼希はノサカの影響こそ受けてるけど別にノサカに育てられたワケではない。蒼希を育てたのはイシカー兄さんだよ!
話の上ではあんまりやってないけど、神崎とゲンゴローはオタクの同士として現場で顔を合わせたときにはアニメの話とかもしてるんだ
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「源さんホント突然すいません。無理言って戸田班の機材貸してもらっちゃって」
「ううん。部の機材って借りるための手続き面倒だもんね。深青ってアナさんだっけ。機材の接続とかは」
「あ、接続は出来ますよ。バンドでやってるんで」
「ああ、そうなんだ。そっか、小林班だもんねえ。パート関係なく機材には強いよねー」
インターフェイス夏合宿に星ヶ丘大学から参加する子とは、対策委員として連絡することもあるから個人的に連絡先を交換していた。みちると同じ班になった小林班の五百崎深青くんも、この合宿をきっかけに話す機会が出来た子だ。
深青はヴィジュアル系バンドでよく見るようなメイクやファッションをしていて、実際にそういうタイプのバンドをやっているベーシストなんだそうだ。で、そのベース経験を生かして小林班でもベースを弾いているみたいだ。
夏合宿まで地味に日が迫っているということで、深青が個人的に練習をしたいと申し出て来たんだ。それはとてもいいことだし、部の機材を借りるのが面倒なら俺も一緒に戸田班の機材で練習すればいいかなーって思って現在に至っている。
「まあ、そーゆーことだから深青をよろしく」
「オナシャス!」
「いえいえ、こちらこそ。小林先輩もわざわざ見に来てもらって」
「俺は会議のついでだから。ああ、わかってっと思うけど、それは一式戸田班の自前だし、何かあっても俺は責任持てないとだけ」
「わかってます」
小林先輩はシゲトラ先輩の後を引き継いで、放送部の機材を管理する役職に就いている。放送部の幹部と呼ばれる人たちは、主にプロデューサーかアナウンサーで固められている印象だから、機材管理の仕事をする人がこの部のミキサーの中で一番信頼されている人という風に解釈出来るかな。
「ああ、つかゲンゴロー。深青がこのナリでインターフェイス? で引かれてるとかそういう話はない?」
「今のところは全然ですね。合宿ではどうかわかりませんけど。別に、悪目立ちするファッションでもないですし、いいんじゃないですかね。言動はむしろいい子ですし」
「ああそう。それならいーんだよ」
「コバさん、俺そんなに問題起こしそうっすか?」
「問題どうこうじゃねーんだよ。まあ、一応な。V系メイクとかって、好き嫌いが分かれるだろ」
「え~。あっ、ちなみに源さんはどう思います?」
「似合ってるし、とってもいいと思うよ」
「ですよね~!」
まあ、俺は如何せんコスプレの趣味があるからヴィジュアル系メイクくらいでは引きませんよね。何なら深青はメイクも上手だし髪やファッションもバッチリ決まってるし、カッコいいし可愛いしで100点満点だなって思うんだよね。
「深青って確かみちると一緒の班だっけ。アオが班長で」
「そーっすね。みちるの話は彩人からも聞いてるんで。つかあの班やたら女子ばっかじゃないすか! 源さん、何を見て俺をあの班に入れたんすか?」
「班編成には大人の事情がいろいろあるんだよ」
「そーだぞ深青。いろいろあるんだぞ」
「いや、つかコバさんがインターフェイスの何を知ってるんすか」
「何も知らない!」
「ドヤ感半端ね~…!」
「ここまで清々しいと気持ちいいですよ」
「ちなみに深青とペアを組むのってどういう子?」
「班長のアオさんすね、星大の。日常のルーティンがガチガチに決まってて、キューシートもすっごい細かく書いてるんすよ」
「対策委員の議長で、性格は真面目過ぎるくらい真面目ですね。悪乗りも大好きですけど。ミキサーとしては、初心者講習会で講師をして下さった向島の野坂先輩っていう人がいるんですけど、その人の影響を強く受けていて――」
「向島の野坂君!? って、あの野坂君!? マサフミ!?」
「あ、えっと、そうです。小林先輩、野坂先輩と知り合いなんですか?」
アオの話をしていたはずが、野坂先輩という単語を出した瞬間の小林先輩の食い付きっぷりが尋常じゃない。これには深青もかなり驚いているみたいだ。
「フツーに友達なんだって。向島の神崎耕太って知ってる? ちょっと丸くて、オタクで、面白い奴なんだけど」
「はい。こーた先輩には良くしてもらってます」
「あのこーたと俺が高校の吹部の同期なんだよな。で、1コ上の泰稚さんが部長で」
「へー、菅野先輩も同じ高校だったんですね」
「そうなんだよ。で、こーたの繋がりで野坂君と知り合って、友達になってさ。彼、イケメンだし性格も男前だし頭もいいしスポーツも出来て、真の完璧超人だろ? そっかー、初心者講習会? とやらで講師をやるレベルでラジオも出来る人なんだなー、いやーさすが野坂君だわ」
「……源さん、これ、コバさんどーしたんすか?」
「俺にはちょっとわかんないね」
彼女はその完璧超人の野坂先輩の影響を色濃く受けたミキシングをしますとアオのことをざっくりと説明すると、小林先輩も「それなら安心だな!」と納得するんだから野坂先輩のブランド力の強さがすンごい。俺たちの代って誰かがそんな風に言われるようになるかなあ?
「ああ、そうだ源さん」
「はいはい」
「合宿の番組で、結構激しめの曲を使う予定なんですけど、大丈夫っすかね?」
「アオがいいって言うならオッケーじゃない?」
「むしろアオさんの選曲もなかなかセンス良かったっす。BGMもいい感じのインストロックで」
「あ、そうなんだ。ならいいんじゃないかな。班の中で調和がとれるってことなら」
「よーし、練習すっぞ! 源さん、付き合ってもらっていいすか?」
「もちろん」
「しゃーない。俺も少し見てってやるかな」
「え。コバさんが何で」
「お前がちゃんとやんねーと、相方のミキサーの子を育てた野坂君の名前に傷が付くだろ」
「ええー……」
end.
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多分フェーズ2になってから初めてのコバヤスじゃないかな。相変わらずノサカ強火勢である。呼称はみんなの前だから野坂君なのかな?
と言うか蒼希はノサカの影響こそ受けてるけど別にノサカに育てられたワケではない。蒼希を育てたのはイシカー兄さんだよ!
話の上ではあんまりやってないけど、神崎とゲンゴローはオタクの同士として現場で顔を合わせたときにはアニメの話とかもしてるんだ
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