2021(02)
■急がば回って駆け足だ!
++++
奈々先輩とマリン先輩が向舞祭のことで忙しくてしばらく班の打ち合わせが出来ないってなったときに、じゃあ1年生4人でやろうって話になった。あたしとちとせちゃんと、千颯と北星の4人で集まって、先輩たちと合流した時にビックリしてもらおうねってことで今日は練習。
そうしてやって来ました緑ヶ丘大学。ラジオのことだったらくるちゃんにリードして貰った方がいいよねってことでわざわざ遠い豊葦までみんな来てくれるんだけど、正直ちょっとプレッシャーだよね。でもそう言ってもらえてるうちが華だし、期待を裏切らないように頑張らなきゃ!
「は~、ついた~」
「サークル棟まではもうちょっと歩くけど、今なら購買とかコンビニもあるから欲しい物を買って行ってもいいと思うよ。あたし飲み物欲しいからどこかには寄らせてね」
「俺も~、コーヒーが欲しいかも~」
「でも、こうして見ると緑ヶ丘大学ってやっぱりひとつの町みたいだな」
「うん。広いし、いろんなお店があるし。えっ、銀行のATMまであるの!?」
「郵便局もあるよー。でね、あっちがスポーツ用品店。こっちの並びは全部学食で、お店がいろいろあるのかな? 全部は入ったことがないんだけどー。ジムとかプールとか、ヨガスタジオとかもあるんだって!」
緑ヶ丘大学は山を切り開いた郊外型のおーっきな土地にどどんと構えられた大学で、いろんな施設があるけど実際はあんまり使ったことがないんだよね。あたしはコンビニが大好きだからそこでほとんど完結しちゃうし。
「暑いから建物の中通ってショートカットしよう」
「そこまで暑いかな。星港の街なかよりは、風もあって涼しい気がするけど」
「わかる。星港市内より自然がいっぱいで開放感があるって言うか」
「え~。俺は暑いよ~。ちょっとでも涼しい方がいいな~」
「北星はあたしたちより太陽に近いもんね」
「でも、小さい子の方が地面からの輻射熱を受けやすくて熱中症にはなりやすいって言うよね」
「あーっ! 千颯があたしとちとせちゃんを小さいって言ってる!」
「言ってないよ! 子供の話!」
男の子が大きいんだよね、うちの班って。北星はさっき自販機の前通った時におんなじくらいだったし、千颯もササと同じくらいじゃないかなあ。あたしとちとせちゃんは平均よりも小さいから、男の子たちと話す時は本当に見上げなきゃいけないんだよね。
そんな話をしながら、ショートカットコースのセンタービルに入っていく。ここを抜けるとサークル棟への近道になるんだよっていう話はサークルに入ったばっかりの頃に先輩から教えてもらった。雨の日とか、カフェテリアでソフトクリームを買った時とかにはよく使う道。
「ね~、くるちゃ~ん」
「どうしたの北星」
「ごめ~ん、トイレ行きたいかも~」
「トイレだったら、そこの透明なラジオブースがあるでしょ? その裏にあるよ」
「あ、俺も行っておこうかな」
「そう聞いたらあたしも済ませときたいかも」
「じゃああたしも!」
みんなで一斉にトイレに行くと、ちとせちゃんがすごーいと声を上げている。緑ヶ丘大学のトイレがキレイすぎるって。確かにセンタービルの中央に位置するここは百貨店のすっごいトイレみたいなんだけど、実は他のトイレは割と普通なんだよね。
「パウダールームもすごーい」
「ここは休み時間になるとメイク直しの人がすっごいいっぱいになるよ」
「そうだろうねー」
「ちとせちゃん大丈夫? 男の子たち待たせちゃってるかな」
「そうだねー。出ようかー」
トイレから出ると、ガラス張りのラジオブースに北星が貼り付いてた。その横で千颯がわたわたしてるし、あたしとちとせちゃんはビックリしちゃったよね。何してんのって。それっくらいべったりなの。
「えっと、北星?」
「すごいよね~。このラジオブース~?」
「うん。社会学部のゼミがやってるラジオブースだよ。お昼休みに、この上のスピーカーからこの一帯と、外にも別のスピーカーで番組を流してるんだよ」
「へ~。機材とか~、どんな感じなんだろ~」
「あー、えーっと、あたしは学部が違うから中のことはよくわかんないけど、とにかくすっごいらしいよ。ここのゼミの先生が新しい物好きで、新しい機材をどんどん買っちゃうんだって。それで使わなくなった機材とかをMBCCにお下がりで流してくれるとかで」
「あ~、それでか~」
「何が?」
「あのね~、ウチで使ってるラジオの機材~、春にハマさんていう3年生の先輩が~、緑ヶ丘の人から一式全部譲ってもらったんだって~。ウチのがお下がりってことは~、ここの機材はも~っと凄いんだろうな~。触ってみたいな~」
あたしもブースのガラスに近寄って中の様子を見てみる。ミキサーの周りにはMBCCよりも多くの機材がセットされていて、あれは何に使うのかなあとかすっごく気になっちゃう。ヘッドホンもふかふかしてるし、マイクの脇にはなんかレバーがある。えー、今まであんまり気にしたことなかったけど、気になってきた~!
「いっけない。今のあたしたちは、夏合宿の練習! 行こう!」
「え~」
「急がば回れだったねくるちゃん」
「ホントに。あっ、近道こっちねー」
「はーい」
「緑ヶ丘で使ってる機材も気になる~」
「あっ、それは今から触れるよ」
「やった~。楽しみ~」
end.
++++
サークル室での件がやりたかったのに、そこに行くまでに終わる。ナノスパあるある。
夏合宿4班の2年生が2人とも定例会なので、向舞祭が終わるまでは本当に忙しいんだろうなあと思う。でも1年生が仲良くてよかった。
緑ヶ丘大学はいっそ街っぽい要塞みたいになってほしい。年度が進むにつれきっと施設がグレードアップするんだろうなあ
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奈々先輩とマリン先輩が向舞祭のことで忙しくてしばらく班の打ち合わせが出来ないってなったときに、じゃあ1年生4人でやろうって話になった。あたしとちとせちゃんと、千颯と北星の4人で集まって、先輩たちと合流した時にビックリしてもらおうねってことで今日は練習。
そうしてやって来ました緑ヶ丘大学。ラジオのことだったらくるちゃんにリードして貰った方がいいよねってことでわざわざ遠い豊葦までみんな来てくれるんだけど、正直ちょっとプレッシャーだよね。でもそう言ってもらえてるうちが華だし、期待を裏切らないように頑張らなきゃ!
「は~、ついた~」
「サークル棟まではもうちょっと歩くけど、今なら購買とかコンビニもあるから欲しい物を買って行ってもいいと思うよ。あたし飲み物欲しいからどこかには寄らせてね」
「俺も~、コーヒーが欲しいかも~」
「でも、こうして見ると緑ヶ丘大学ってやっぱりひとつの町みたいだな」
「うん。広いし、いろんなお店があるし。えっ、銀行のATMまであるの!?」
「郵便局もあるよー。でね、あっちがスポーツ用品店。こっちの並びは全部学食で、お店がいろいろあるのかな? 全部は入ったことがないんだけどー。ジムとかプールとか、ヨガスタジオとかもあるんだって!」
緑ヶ丘大学は山を切り開いた郊外型のおーっきな土地にどどんと構えられた大学で、いろんな施設があるけど実際はあんまり使ったことがないんだよね。あたしはコンビニが大好きだからそこでほとんど完結しちゃうし。
「暑いから建物の中通ってショートカットしよう」
「そこまで暑いかな。星港の街なかよりは、風もあって涼しい気がするけど」
「わかる。星港市内より自然がいっぱいで開放感があるって言うか」
「え~。俺は暑いよ~。ちょっとでも涼しい方がいいな~」
「北星はあたしたちより太陽に近いもんね」
「でも、小さい子の方が地面からの輻射熱を受けやすくて熱中症にはなりやすいって言うよね」
「あーっ! 千颯があたしとちとせちゃんを小さいって言ってる!」
「言ってないよ! 子供の話!」
男の子が大きいんだよね、うちの班って。北星はさっき自販機の前通った時におんなじくらいだったし、千颯もササと同じくらいじゃないかなあ。あたしとちとせちゃんは平均よりも小さいから、男の子たちと話す時は本当に見上げなきゃいけないんだよね。
そんな話をしながら、ショートカットコースのセンタービルに入っていく。ここを抜けるとサークル棟への近道になるんだよっていう話はサークルに入ったばっかりの頃に先輩から教えてもらった。雨の日とか、カフェテリアでソフトクリームを買った時とかにはよく使う道。
「ね~、くるちゃ~ん」
「どうしたの北星」
「ごめ~ん、トイレ行きたいかも~」
「トイレだったら、そこの透明なラジオブースがあるでしょ? その裏にあるよ」
「あ、俺も行っておこうかな」
「そう聞いたらあたしも済ませときたいかも」
「じゃああたしも!」
みんなで一斉にトイレに行くと、ちとせちゃんがすごーいと声を上げている。緑ヶ丘大学のトイレがキレイすぎるって。確かにセンタービルの中央に位置するここは百貨店のすっごいトイレみたいなんだけど、実は他のトイレは割と普通なんだよね。
「パウダールームもすごーい」
「ここは休み時間になるとメイク直しの人がすっごいいっぱいになるよ」
「そうだろうねー」
「ちとせちゃん大丈夫? 男の子たち待たせちゃってるかな」
「そうだねー。出ようかー」
トイレから出ると、ガラス張りのラジオブースに北星が貼り付いてた。その横で千颯がわたわたしてるし、あたしとちとせちゃんはビックリしちゃったよね。何してんのって。それっくらいべったりなの。
「えっと、北星?」
「すごいよね~。このラジオブース~?」
「うん。社会学部のゼミがやってるラジオブースだよ。お昼休みに、この上のスピーカーからこの一帯と、外にも別のスピーカーで番組を流してるんだよ」
「へ~。機材とか~、どんな感じなんだろ~」
「あー、えーっと、あたしは学部が違うから中のことはよくわかんないけど、とにかくすっごいらしいよ。ここのゼミの先生が新しい物好きで、新しい機材をどんどん買っちゃうんだって。それで使わなくなった機材とかをMBCCにお下がりで流してくれるとかで」
「あ~、それでか~」
「何が?」
「あのね~、ウチで使ってるラジオの機材~、春にハマさんていう3年生の先輩が~、緑ヶ丘の人から一式全部譲ってもらったんだって~。ウチのがお下がりってことは~、ここの機材はも~っと凄いんだろうな~。触ってみたいな~」
あたしもブースのガラスに近寄って中の様子を見てみる。ミキサーの周りにはMBCCよりも多くの機材がセットされていて、あれは何に使うのかなあとかすっごく気になっちゃう。ヘッドホンもふかふかしてるし、マイクの脇にはなんかレバーがある。えー、今まであんまり気にしたことなかったけど、気になってきた~!
「いっけない。今のあたしたちは、夏合宿の練習! 行こう!」
「え~」
「急がば回れだったねくるちゃん」
「ホントに。あっ、近道こっちねー」
「はーい」
「緑ヶ丘で使ってる機材も気になる~」
「あっ、それは今から触れるよ」
「やった~。楽しみ~」
end.
++++
サークル室での件がやりたかったのに、そこに行くまでに終わる。ナノスパあるある。
夏合宿4班の2年生が2人とも定例会なので、向舞祭が終わるまでは本当に忙しいんだろうなあと思う。でも1年生が仲良くてよかった。
緑ヶ丘大学はいっそ街っぽい要塞みたいになってほしい。年度が進むにつれきっと施設がグレードアップするんだろうなあ
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