2021(02)
■two views birthday
++++
「もーすぐりっちゃんの誕生日やね」
「どうしたんですヒロさん唐突に」
「思い出しただけやよ」
「贈り物の類は前後半年受け付てヤすよ」
テスト期間の合間に、MMPの3年4人が集まってただ昼飯を食うというだけの集まりだ。3年にもなると文系のこーたと律は履修コマがいい具合に減っていて、テスト期間に大学に出て来る日も少ないし、大学に留まっている時間も短い。これだけのために来るのかというレベルで。
一方、理系の俺とヒロはまだもう少し履修コマがいっぱいという状況だ。ただ、俺はこのテストの結果如何で秋学期には余裕が出来て来る頃合いだ。まあ、普通にやれば秋には午後からの日や全休の日を作れるだろう。ヒロはこれまでのツケが回って来ているので、秋学期もいっぱいいっぱいなことだろう。ざまあみろ。
さて、唐突にヒロが切り出した律の誕生日の話だ。律は8月8日生まれということで、確かにもうすぐではあるんだけども、MMPというサークルと誕生日という単語はあまりいい風に結び付くイメージがない。緑ヶ丘では飲みの口実になったりするそうだけど、ウチじゃそんなこともないし。
「贈り物ねえ。それじゃあ、俺がいつかもらったあの包みをそのまま律に横流ししてやろう」
「財布の人からのヤツは結構スわ」
「そう言えば、土田さんは某財布の人から贈り物やサプライズなど、受けましたっけ」
「や、自分は受けてないスね。如何せんこーゆー時期スすし、サークル自体やってないのがデカいすわ」
「やってなくても襲撃されるパターンもあるんだよなあ……」
「野坂はご愁傷さまシた」
「そー言えばボクも何もされとらんわ、ラッキー」
「去年ですと、ヒロさんの誕生日の頃は初心者講習会後の長期欠席の時期と重なっていましたもんねえ」
MMPと誕生日で最初に思い浮かぶのは、俺たちが財布の人と呼ぶ三井先輩だ。何がどう財布なのかはお察し願いたい。三井先輩は人の誕生日を調べてサプライズでプレゼントを寄こして来たり、イベントのようなことを起こして楽しもうとする人だ。それでみんなが楽しいのなら文句はないんだ。
三井先輩のサプライズ云々は、人の誕生日を口実に悪ふざけをしたいという思いや狙いが透けているどころかそれが前面に出ているんだ。祝われる対象も含めてみんなが楽しいのであれば悪ふざけとしては成功なのだ。だけど、基本楽しいのは三井先輩だけで、祝われる対象は迷惑するという構図が出来上がっている。
「こーたって何もらってたっけ」
「私は激辛まんじゅうを食べさせられたりしましたね」
「ああ、あったなそんなことも。それでブチ切れて三井先輩を土下座させてたな」
「あれは傷害ですよ。暴行です。それに比べて菜月先輩の作って下さった巨大どら焼きのま~あ美味しかったこと」
「そー言えばボクの誕生日にも菜月先輩チーズケーキ焼いてくれたわ。思い出したらまた食べたくなったわー」
「自分の去年の誕生日にも、菜月先輩は自前のCDを大量に貸してくれたンすよね。しかもケースごとスよ」
「ナ、ナンダッテー!? 菜月先輩がケースごとCDを外に出しただなんて…!」
「あ。野坂にャ言わないつもりだッたの忘れてた」
「俺にバレたら何か都合の悪いことでもあるのか。返答次第では」
「お前は4年生、もとい菜月先輩と圭斗先輩が絡むと最上級にめんどくさいからスよ」
「自覚はある!」
連中の話を聞いていると、三井先輩がめんどくせーっていう事案の裏で、菜月先輩が各々の希望や嗜好を突いた祝い方をしているのだなということが発覚していくのだ。と言うか律に対してCDをケースごと貸したというのが衝撃過ぎて。俺もケースごとCDを借りたことなんてそうそうないのに!
「野坂さんは菜月先輩から今年のお誕生日を祝われました?」
「ああ。それはもう盛大に」
「どんな祝われ方だったンすか」
「ちょうどその頃圭斗先輩と緑風旅行に行ってたから、店飲みで乾杯をだな」
「やァー、最高じゃないスか。しかも圭斗先輩までいるッてーのが野坂的には加点ポイントスね」
「生涯忘れられない二十歳の誕生日だぞ」
「あー、そーいや春のサークルで緑風のお土産配っとったねノサカ」
あの春のことは俺の生涯の春として大切に大切にとっておきたい思い出だ。でも、そろそろ思い出だけじゃ腹が膨れなくなってきてんだよなあ…! ああ、先輩方にお会いしたい!
「てか今菜月先輩て何しとんの? 圭斗先輩はこないだパソコン室で会ったけど」
「4年生スし就活じゃないスか? 確かUターン組スし、地元との行き来っショ」
「いえいえ、菜月先輩はまだ地味に単位を残していますので、テスト期間にはこちらにいると思いますよ」
「知ってヤすかこーた、実は菜月先輩より三井先輩の方が単位的にはヤバいらしースよ」
「そうでしょう、あの人は何気に何だかんだ理由を付けて大学にいないことの方が多いじゃないですか」
「それでこないだノートとプリント集られヤしたわ」
「で、どうしたんです」
「自分は菜月先輩ほど上手く財布を叩く才能がないンであんま毟り取れなかったンすけど、しゃーなしでプリントを貸しヤしたよ」
「あまりということは、少しは毟り取ったんですよね? 何を毟ったんです?」
「T-FRONTの中のショップに売ってるコーヒー豆スわ」
「十分毟っているではありませんか」
「ボクも好きな物奢られたい! ノサカ奢って! あとプリントちょーだい! 課題もあるから手伝って!」
「お前は俺に奢らなきゃいけない立場なんだよなあ」
end.
++++
たまにやりたいMMP男子4人がただただぎゃあぎゃあわちゃわちゃしてるだけのお話。今回のトークテーマは誕生日。
三井サンがいろいろ暴れ回っている裏で、菜月さんがみんなを祝ってる話もちょこちょこやっていたんですねフェーズ1で。それのダイジェストです。
社学組が学部の先輩の事情もちょこちょこ知っているみたいですね。主に単位取得状況ですが。三井サン星ヶ丘でムービースターやったりしてたしいないことも多かったね。
.
++++
「もーすぐりっちゃんの誕生日やね」
「どうしたんですヒロさん唐突に」
「思い出しただけやよ」
「贈り物の類は前後半年受け付てヤすよ」
テスト期間の合間に、MMPの3年4人が集まってただ昼飯を食うというだけの集まりだ。3年にもなると文系のこーたと律は履修コマがいい具合に減っていて、テスト期間に大学に出て来る日も少ないし、大学に留まっている時間も短い。これだけのために来るのかというレベルで。
一方、理系の俺とヒロはまだもう少し履修コマがいっぱいという状況だ。ただ、俺はこのテストの結果如何で秋学期には余裕が出来て来る頃合いだ。まあ、普通にやれば秋には午後からの日や全休の日を作れるだろう。ヒロはこれまでのツケが回って来ているので、秋学期もいっぱいいっぱいなことだろう。ざまあみろ。
さて、唐突にヒロが切り出した律の誕生日の話だ。律は8月8日生まれということで、確かにもうすぐではあるんだけども、MMPというサークルと誕生日という単語はあまりいい風に結び付くイメージがない。緑ヶ丘では飲みの口実になったりするそうだけど、ウチじゃそんなこともないし。
「贈り物ねえ。それじゃあ、俺がいつかもらったあの包みをそのまま律に横流ししてやろう」
「財布の人からのヤツは結構スわ」
「そう言えば、土田さんは某財布の人から贈り物やサプライズなど、受けましたっけ」
「や、自分は受けてないスね。如何せんこーゆー時期スすし、サークル自体やってないのがデカいすわ」
「やってなくても襲撃されるパターンもあるんだよなあ……」
「野坂はご愁傷さまシた」
「そー言えばボクも何もされとらんわ、ラッキー」
「去年ですと、ヒロさんの誕生日の頃は初心者講習会後の長期欠席の時期と重なっていましたもんねえ」
MMPと誕生日で最初に思い浮かぶのは、俺たちが財布の人と呼ぶ三井先輩だ。何がどう財布なのかはお察し願いたい。三井先輩は人の誕生日を調べてサプライズでプレゼントを寄こして来たり、イベントのようなことを起こして楽しもうとする人だ。それでみんなが楽しいのなら文句はないんだ。
三井先輩のサプライズ云々は、人の誕生日を口実に悪ふざけをしたいという思いや狙いが透けているどころかそれが前面に出ているんだ。祝われる対象も含めてみんなが楽しいのであれば悪ふざけとしては成功なのだ。だけど、基本楽しいのは三井先輩だけで、祝われる対象は迷惑するという構図が出来上がっている。
「こーたって何もらってたっけ」
「私は激辛まんじゅうを食べさせられたりしましたね」
「ああ、あったなそんなことも。それでブチ切れて三井先輩を土下座させてたな」
「あれは傷害ですよ。暴行です。それに比べて菜月先輩の作って下さった巨大どら焼きのま~あ美味しかったこと」
「そー言えばボクの誕生日にも菜月先輩チーズケーキ焼いてくれたわ。思い出したらまた食べたくなったわー」
「自分の去年の誕生日にも、菜月先輩は自前のCDを大量に貸してくれたンすよね。しかもケースごとスよ」
「ナ、ナンダッテー!? 菜月先輩がケースごとCDを外に出しただなんて…!」
「あ。野坂にャ言わないつもりだッたの忘れてた」
「俺にバレたら何か都合の悪いことでもあるのか。返答次第では」
「お前は4年生、もとい菜月先輩と圭斗先輩が絡むと最上級にめんどくさいからスよ」
「自覚はある!」
連中の話を聞いていると、三井先輩がめんどくせーっていう事案の裏で、菜月先輩が各々の希望や嗜好を突いた祝い方をしているのだなということが発覚していくのだ。と言うか律に対してCDをケースごと貸したというのが衝撃過ぎて。俺もケースごとCDを借りたことなんてそうそうないのに!
「野坂さんは菜月先輩から今年のお誕生日を祝われました?」
「ああ。それはもう盛大に」
「どんな祝われ方だったンすか」
「ちょうどその頃圭斗先輩と緑風旅行に行ってたから、店飲みで乾杯をだな」
「やァー、最高じゃないスか。しかも圭斗先輩までいるッてーのが野坂的には加点ポイントスね」
「生涯忘れられない二十歳の誕生日だぞ」
「あー、そーいや春のサークルで緑風のお土産配っとったねノサカ」
あの春のことは俺の生涯の春として大切に大切にとっておきたい思い出だ。でも、そろそろ思い出だけじゃ腹が膨れなくなってきてんだよなあ…! ああ、先輩方にお会いしたい!
「てか今菜月先輩て何しとんの? 圭斗先輩はこないだパソコン室で会ったけど」
「4年生スし就活じゃないスか? 確かUターン組スし、地元との行き来っショ」
「いえいえ、菜月先輩はまだ地味に単位を残していますので、テスト期間にはこちらにいると思いますよ」
「知ってヤすかこーた、実は菜月先輩より三井先輩の方が単位的にはヤバいらしースよ」
「そうでしょう、あの人は何気に何だかんだ理由を付けて大学にいないことの方が多いじゃないですか」
「それでこないだノートとプリント集られヤしたわ」
「で、どうしたんです」
「自分は菜月先輩ほど上手く財布を叩く才能がないンであんま毟り取れなかったンすけど、しゃーなしでプリントを貸しヤしたよ」
「あまりということは、少しは毟り取ったんですよね? 何を毟ったんです?」
「T-FRONTの中のショップに売ってるコーヒー豆スわ」
「十分毟っているではありませんか」
「ボクも好きな物奢られたい! ノサカ奢って! あとプリントちょーだい! 課題もあるから手伝って!」
「お前は俺に奢らなきゃいけない立場なんだよなあ」
end.
++++
たまにやりたいMMP男子4人がただただぎゃあぎゃあわちゃわちゃしてるだけのお話。今回のトークテーマは誕生日。
三井サンがいろいろ暴れ回っている裏で、菜月さんがみんなを祝ってる話もちょこちょこやっていたんですねフェーズ1で。それのダイジェストです。
社学組が学部の先輩の事情もちょこちょこ知っているみたいですね。主に単位取得状況ですが。三井サン星ヶ丘でムービースターやったりしてたしいないことも多かったね。
.