2021(02)
■激安キャッチ＆リリース
＋＋＋＋
大変だー、助けてーと大石から連絡が入った。何事かと思えば、普段着ているプール用水着以外の水着を探してタンスをひっくり返していたら、元あったように戻せなくなってしまったそうだ。そのくらいのことで人を呼ぶなと思ったけど、大石は収集癖があって、家にも物が結構ごちゃっと溢れていたなという記憶がある。
「あっ朝霞、ありがとねー。こんなこと朝霞にしか頼めなくてさ」
「しかしまあとんでもない部屋だな。いや、俺は部屋の汚さに関しては人のことを言えないんだけど。あ、そうだ！ 俺は片付けが苦手なんだよ！」
「それは知ってるけど、朝霞は洋服関係得意でしょ」
「ああ。それは得意分野だ」
「だからちょっと見てもらおうと思ってさ」
大石の部屋は、ひっくり返して空になったタンスと、床一面に広げられた大量のスウェットでとんでもないことになっていた。これは一度分類分けをした方がいいかもしれない。何をどう集めて片付けるかという計画を立てるところから始めるべきか？ と言うか、ちゃんと見ないと何とも言えないけど、パッと見た感じではどれも同じスウェットだ。
「つーかお前これ、適当にひっくり返しただろ。畳み直さなきゃいけねーじゃねーか」
「水着を探すのを最優先にしてたらこうなっちゃってさー」
「で、これがグレーのスウェットで、こっちがグレーのスウェットで、これがグレーのスウェットか」
「違うよ。これが春秋用のグレーのスウェットで、これが夏用のグレーのスウェットで、これが冬用のグレーのスウェットだよ」
「どう違うんだ？」
「ロゴの色が微妙に違うでしょ」
「確かに。刺繍糸の色が違うな。あと、冬用の方は裏起毛になってるのか」
「そうだね」
「でも、夏用のスウェット？」
「速乾性が高いんだよ」
「へー、そんなのがあるんだな。じゃなくて、とりあえず、色じゃなくて季節で分けろ。スウェットはスウェットでもお前なりに季節の違いがあるんだろ」
「着てるヤツはこの先も着るんだけど、ファミリーセールで買ったまま着てないのもたくさんあるんだよね」
そう言って大石はファミリーセールの黒い袋を出して来る。それもひとつひとつがこんもりと膨れ上がっていて、その中には何がどれだけ入っているのかと恐ろしく感じる。コイツはファミリーセールで年に何回かの買い物だととにかくポイポイと物を袋の中に入れていくんだ。それが、手も付けられずこの中に眠っているのか。
「――ってそのままひっくり返すな！」
「あ、ごめん」
「ったく～……畳み直さなきゃいけなくなるだろ！ あーもうぐちゃぐちゃじゃないか」
「朝霞ってマメだよね」
「お前がいい加減なんだ。でも、普段も洗濯物は畳んでるんだろ」
「畳んでるね。でも、今はどうせ片付けるからいいかなと思って」
「とりあえず、買ったまま眠ってたヤツも片っ端から分類分けするぞ」
ひっくり返した袋からは、さらにいろんなスウェットやらカバンやら、靴やらが出て来た。出所がファミリーセールだから、当然のようにブランド物のオンパレード。大石のことだから物凄く安く買ってるんだろうけど、値札を見てみるととんでもない値段の服とかが当たり前のように眠ってやがったんだなと。
「なあ大石、お前って１着の服を長く丁寧に着てるタイプだろ」
「どちらかと言えばそうかも」
「だからさ、安いしいつか着るかもーとか、仕事着にいいかもーとかって買っても、今着てるのがまだ着れるからなーってタグを切らない奴だと思うんだよな」
「あー……そう言われるとそういうタイプだね」
「だからさ、ストックのスウェットは季節ごとにこれっていう１着に絞って、後は売っちまってもいいんじゃねーか？ タンスに空きがないと次の出会いにも支障が出るし」
「うーん、そうだねー。何だかんだ１年以上袋から出してないのとかもあるし、そういうのは売ってもいいのかもしれないね」
これは元値12000円が1500円(社割で1200円)になってたから飛び付いたけど今後着るかなあ、などと、要る物と要らない物を仕分けする作業に入った。俺はタンスに残すスウェットを畳み直して片付ける仕事を。３段を春秋と夏、それから冬に分けて片付ける。
要る物の山に対して要らないかなーの山がどれだけ積もっているんだと。買ったまま眠っててタグすら切ってないから、野暮だけど吊り札の値札のところを見るよな。うん、元値は余裕で10万オーバー。で、ファミリーセール価格＋社割で１万５千円ほどか。改めて見るとすげーな。
「こんなモンかなあ」
「うーわっ、すげー山」
「会場に行くとつい買っちゃうんだよねー」
「まあ、わからないでもないけど」
俺もあの空気に飲まれていろいろ買い込んだことはあるから大石の行動にも一定の理解は示すんだけど。俺も帰ったら自分のタンスを見直すか。
「それじゃあ、その気になってる間にこれを売りに行こうかー」
「そうだな。フリマアプリに出すのもめんどくさいし、リサイクルショップに持ち込んだ方が楽だろうな。タグが付いてるのはそのままにしといた方が高値で売れるけど、ファミリーセール用の値札だけは取っとこう」
「そうだねー」
「ちなみに、次のファミリーセールはいつなんだ」
「明日行こうと思ってたよ」
「くれぐれも、調子に乗って買い過ぎるなよ。片付けた意味が無くなっちまうからな」
「頑張るよ」
end.
＋＋＋＋
片付けは苦手な朝霞Ｐですが、洋服関係は得意なのでこの作業は得意の方に入るのかしら？ ちーちゃんのタンスのお片付けです。
ちーちゃんが適当にタンスや袋をひっくり返すのに怒りながら服を畳み直すのはさすがＡ型の兄貴。そしてマイペースなＢ型の弟ちーちゃん。
ここでいろいろ余裕を作ったことで温泉旅行の資金にもなったし、良かったんじゃないかな。買い物の仕方は難しい。
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大変だー、助けてーと大石から連絡が入った。何事かと思えば、普段着ているプール用水着以外の水着を探してタンスをひっくり返していたら、元あったように戻せなくなってしまったそうだ。そのくらいのことで人を呼ぶなと思ったけど、大石は収集癖があって、家にも物が結構ごちゃっと溢れていたなという記憶がある。
「あっ朝霞、ありがとねー。こんなこと朝霞にしか頼めなくてさ」
「しかしまあとんでもない部屋だな。いや、俺は部屋の汚さに関しては人のことを言えないんだけど。あ、そうだ！ 俺は片付けが苦手なんだよ！」
「それは知ってるけど、朝霞は洋服関係得意でしょ」
「ああ。それは得意分野だ」
「だからちょっと見てもらおうと思ってさ」
大石の部屋は、ひっくり返して空になったタンスと、床一面に広げられた大量のスウェットでとんでもないことになっていた。これは一度分類分けをした方がいいかもしれない。何をどう集めて片付けるかという計画を立てるところから始めるべきか？ と言うか、ちゃんと見ないと何とも言えないけど、パッと見た感じではどれも同じスウェットだ。
「つーかお前これ、適当にひっくり返しただろ。畳み直さなきゃいけねーじゃねーか」
「水着を探すのを最優先にしてたらこうなっちゃってさー」
「で、これがグレーのスウェットで、こっちがグレーのスウェットで、これがグレーのスウェットか」
「違うよ。これが春秋用のグレーのスウェットで、これが夏用のグレーのスウェットで、これが冬用のグレーのスウェットだよ」
「どう違うんだ？」
「ロゴの色が微妙に違うでしょ」
「確かに。刺繍糸の色が違うな。あと、冬用の方は裏起毛になってるのか」
「そうだね」
「でも、夏用のスウェット？」
「速乾性が高いんだよ」
「へー、そんなのがあるんだな。じゃなくて、とりあえず、色じゃなくて季節で分けろ。スウェットはスウェットでもお前なりに季節の違いがあるんだろ」
「着てるヤツはこの先も着るんだけど、ファミリーセールで買ったまま着てないのもたくさんあるんだよね」
そう言って大石はファミリーセールの黒い袋を出して来る。それもひとつひとつがこんもりと膨れ上がっていて、その中には何がどれだけ入っているのかと恐ろしく感じる。コイツはファミリーセールで年に何回かの買い物だととにかくポイポイと物を袋の中に入れていくんだ。それが、手も付けられずこの中に眠っているのか。
「――ってそのままひっくり返すな！」
「あ、ごめん」
「ったく～……畳み直さなきゃいけなくなるだろ！ あーもうぐちゃぐちゃじゃないか」
「朝霞ってマメだよね」
「お前がいい加減なんだ。でも、普段も洗濯物は畳んでるんだろ」
「畳んでるね。でも、今はどうせ片付けるからいいかなと思って」
「とりあえず、買ったまま眠ってたヤツも片っ端から分類分けするぞ」
ひっくり返した袋からは、さらにいろんなスウェットやらカバンやら、靴やらが出て来た。出所がファミリーセールだから、当然のようにブランド物のオンパレード。大石のことだから物凄く安く買ってるんだろうけど、値札を見てみるととんでもない値段の服とかが当たり前のように眠ってやがったんだなと。
「なあ大石、お前って１着の服を長く丁寧に着てるタイプだろ」
「どちらかと言えばそうかも」
「だからさ、安いしいつか着るかもーとか、仕事着にいいかもーとかって買っても、今着てるのがまだ着れるからなーってタグを切らない奴だと思うんだよな」
「あー……そう言われるとそういうタイプだね」
「だからさ、ストックのスウェットは季節ごとにこれっていう１着に絞って、後は売っちまってもいいんじゃねーか？ タンスに空きがないと次の出会いにも支障が出るし」
「うーん、そうだねー。何だかんだ１年以上袋から出してないのとかもあるし、そういうのは売ってもいいのかもしれないね」
これは元値12000円が1500円(社割で1200円)になってたから飛び付いたけど今後着るかなあ、などと、要る物と要らない物を仕分けする作業に入った。俺はタンスに残すスウェットを畳み直して片付ける仕事を。３段を春秋と夏、それから冬に分けて片付ける。
要る物の山に対して要らないかなーの山がどれだけ積もっているんだと。買ったまま眠っててタグすら切ってないから、野暮だけど吊り札の値札のところを見るよな。うん、元値は余裕で10万オーバー。で、ファミリーセール価格＋社割で１万５千円ほどか。改めて見るとすげーな。
「こんなモンかなあ」
「うーわっ、すげー山」
「会場に行くとつい買っちゃうんだよねー」
「まあ、わからないでもないけど」
俺もあの空気に飲まれていろいろ買い込んだことはあるから大石の行動にも一定の理解は示すんだけど。俺も帰ったら自分のタンスを見直すか。
「それじゃあ、その気になってる間にこれを売りに行こうかー」
「そうだな。フリマアプリに出すのもめんどくさいし、リサイクルショップに持ち込んだ方が楽だろうな。タグが付いてるのはそのままにしといた方が高値で売れるけど、ファミリーセール用の値札だけは取っとこう」
「そうだねー」
「ちなみに、次のファミリーセールはいつなんだ」
「明日行こうと思ってたよ」
「くれぐれも、調子に乗って買い過ぎるなよ。片付けた意味が無くなっちまうからな」
「頑張るよ」
end.
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片付けは苦手な朝霞Ｐですが、洋服関係は得意なのでこの作業は得意の方に入るのかしら？ ちーちゃんのタンスのお片付けです。
ちーちゃんが適当にタンスや袋をひっくり返すのに怒りながら服を畳み直すのはさすがＡ型の兄貴。そしてマイペースなＢ型の弟ちーちゃん。
ここでいろいろ余裕を作ったことで温泉旅行の資金にもなったし、良かったんじゃないかな。買い物の仕方は難しい。
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