2021(02)
■精鋭たちの反省会
公式学年+1年
++++
「サ~サ~」
「シノ。もう身体はいいのか」
「おうよ、おかげさまで。いやー、テストに間に合って良かったぜー! 病気とかでテスト受けられなかったら追試だろ? 手続きがめんどくせーのなんのって」
「まあ、出て来れたならよかったけど。病み上がりなんだからあんまムチャするなよ」
「わーってるって! 今週は一応バイト入ってないし」
季節外れのインフルエンザからシノが復帰してきた。シノがインフルエンザだとわかってからの日数を指折り数えてみたら、大学に出て来るには少し早いような気がしないでもないけど。本人は一応マスクをして、周りへの配慮はしているようだ。この季節にマスクだなんて異質すぎるし、中はきっと蒸れに蒸れているだろう。
テスト期間の学内は人でごった返すし、スタジオで昼食をとりながら3限のテストに向けた復習をすることになった。正直俺も人混みはそこまで好きじゃないからスタジオでご飯にするくらいの方が気が楽だ。でも、スタジオにも同じことを考えてるような人がまあまあいるかな? まあ、行くだけ行ってみることにして。
「かーっ、涼し~! やっぱスタジオは涼しいな!」
「やっぱり何人かいるみたいだな」
「あっ智也! アンタよくのこのこ出て来れたよね!」
「あ~、あ、やー……スイマセンっしたぁ!」
さっそくまいみぃに怒られシノはたじたじになっている。まあ、まいみぃが怒るのはわかるよなあ。こないだの連休にあったオープンキャンパスでやる予定の番組にシノが穴を開けてしまって、その対処をどうすると奔走していたのはまいみぃだ。怒られて当然だし、誠実なフォローもしなければならないだろう。
「あれ、2年生もいる」
「考えることは一緒じゃん?」
高木先輩と鵠沼先輩もスタジオで食事をするつもりみたいだ。シノが誠実にフォローしなければならないのは、班員だけじゃない。シノが張り切って書いた構成がMBCCのミキサーでもそうそうやらないぞっていう激しい波。シノの穴を埋めてくれたのは他でもない高木先輩だ。それを初見で捌くことの出来る唯一の人でもある。
「高木先輩鵠沼先輩お疲れさまです」
「おはようササ」
「高木さんおはまいみぃでーす。ちょっと見てくださいよ! 智也のヤツが出てきましたよ! どーしてやります? 煮ますか? 焼きますか?」
「いでででで! ちょっ、首!」
「文字通りに首根っこ捕まれてんじゃんな」
「まいみぃの気持ちはわからないでもないですね。シノを処すかどうかは高木先輩に委ねられるっていう感じですかね」
シノの処遇に関しては俺はどうしようもないので、とりあえずご飯を食べてしまうことに。相変わらずまいみぃに首根っこを掴まれているシノは、高木先輩に対する気まずさなのか、気負っているのか完全に小さくなってしまっている。
「来須さん、とりあえず1回放してあげて」
「いーんです?」
「ずっとそうしてると来須さんも疲れるでしょ」
「じゃ、アタシはご飯食べまーす。智也はまだ反省だかんね!」
「さて、と。シノ、もう出て来て大丈夫なの?」
「一応大丈夫にはなりました」
「そう。それならいいけど」
「初日が終わった後で、班の番組を代わってもらったってササから聞きました。ありがとうございました」
「まあ、得てしてMBCCのミキサーは番組での働きを期待されがちだから、リスク分散じゃないけど、そういう所は見落としがちになるよね」
「そーっすね」
俺の班は「佐々木君だけじゃなくてみんなで頑張ろう」という方向性で協力していたし、全員がトークを考えて、全員が機材の練習もしていた。だけどシノの班はシノがミキサー、まいみぃともう1人の子がトーク、羽場君はディレクターの仕事という風に完全分業でやっていた。それはそれで間違ってないけど、誰かが欠けると一気に傾いてしまう。
「まあ、インフルになっちゃったのは仕方ないとして、それは生活習慣にも見直すところがあるんだろうし。俺がシノにどうこう言えるのは、あのキューシートに対してだから」
「あの番組、どうっしたか?」
「一見派手なようで、同じパターンで崩した15分を3回繰り返してるだけだったよね。荒い波の割に実際は結構単調だったと言うか。ゼミのラジオ番組を初めてやる子に対する配慮とするなら基本の構成を崩すのはやりすぎだし、ぶっ飛んだ構成でやりたいって決めた上でああしたとするなら、まだまだ甘いと思うよ」
「くあーっ……マジすか、甘いっすか」
「うん、甘いね。実際15分を越えたくらいから手が慣れちゃったもんね」
それは高木先輩だからでは、と思うには思うけど、逆に言えば高木先輩だからこそわかるシノの構成の甘さというのもあったんだろう。基本中の基本を敢えて崩した構成を得意とする人だけに。俺もキューシートを見たはずなんだけど、難しい構成だなと思っただけで同じことを繰り返してるだけだとは全然わからなかったもんな。
「ちょっと、精進するっす」
「そうだね。と言うか、ああいうのはMBCCの方の番組とか、インターフェイスの方でもやって欲しいよね」
「はーい、頑張ります」
「シノ、3限もテストでしょ? ご飯食べたら?」
「そーするっす」
「智也、許されたと思ってんでしょ。まだまだお詫び行脚は終わんないからね! アタシ以外の班員にも詫びなよちゃんと」
「ああ、そうだ。シノ、対策委員の方でも穴を開けたでしょ。くるみにもちゃんとフォローしときなね」
end.
++++
在りし日のいち氏ばりの厳しい機材部長となったTKGパイセンである。生活習慣は人のことを言えないので番組構成のことだけチクリ。
ぷんすこしているまいみぃだけど、当日はまいみぃがバタバタ走り回ってフォローしていたのでみんな気持ちはまあわかってる。
テスト期間なので鵠さんはテイクアウト丼を売るのに忙しいようです。でも売り切れるのも早いので割とすぐ自分もランチに行けるのです。
.
公式学年+1年
++++
「サ~サ~」
「シノ。もう身体はいいのか」
「おうよ、おかげさまで。いやー、テストに間に合って良かったぜー! 病気とかでテスト受けられなかったら追試だろ? 手続きがめんどくせーのなんのって」
「まあ、出て来れたならよかったけど。病み上がりなんだからあんまムチャするなよ」
「わーってるって! 今週は一応バイト入ってないし」
季節外れのインフルエンザからシノが復帰してきた。シノがインフルエンザだとわかってからの日数を指折り数えてみたら、大学に出て来るには少し早いような気がしないでもないけど。本人は一応マスクをして、周りへの配慮はしているようだ。この季節にマスクだなんて異質すぎるし、中はきっと蒸れに蒸れているだろう。
テスト期間の学内は人でごった返すし、スタジオで昼食をとりながら3限のテストに向けた復習をすることになった。正直俺も人混みはそこまで好きじゃないからスタジオでご飯にするくらいの方が気が楽だ。でも、スタジオにも同じことを考えてるような人がまあまあいるかな? まあ、行くだけ行ってみることにして。
「かーっ、涼し~! やっぱスタジオは涼しいな!」
「やっぱり何人かいるみたいだな」
「あっ智也! アンタよくのこのこ出て来れたよね!」
「あ~、あ、やー……スイマセンっしたぁ!」
さっそくまいみぃに怒られシノはたじたじになっている。まあ、まいみぃが怒るのはわかるよなあ。こないだの連休にあったオープンキャンパスでやる予定の番組にシノが穴を開けてしまって、その対処をどうすると奔走していたのはまいみぃだ。怒られて当然だし、誠実なフォローもしなければならないだろう。
「あれ、2年生もいる」
「考えることは一緒じゃん?」
高木先輩と鵠沼先輩もスタジオで食事をするつもりみたいだ。シノが誠実にフォローしなければならないのは、班員だけじゃない。シノが張り切って書いた構成がMBCCのミキサーでもそうそうやらないぞっていう激しい波。シノの穴を埋めてくれたのは他でもない高木先輩だ。それを初見で捌くことの出来る唯一の人でもある。
「高木先輩鵠沼先輩お疲れさまです」
「おはようササ」
「高木さんおはまいみぃでーす。ちょっと見てくださいよ! 智也のヤツが出てきましたよ! どーしてやります? 煮ますか? 焼きますか?」
「いでででで! ちょっ、首!」
「文字通りに首根っこ捕まれてんじゃんな」
「まいみぃの気持ちはわからないでもないですね。シノを処すかどうかは高木先輩に委ねられるっていう感じですかね」
シノの処遇に関しては俺はどうしようもないので、とりあえずご飯を食べてしまうことに。相変わらずまいみぃに首根っこを掴まれているシノは、高木先輩に対する気まずさなのか、気負っているのか完全に小さくなってしまっている。
「来須さん、とりあえず1回放してあげて」
「いーんです?」
「ずっとそうしてると来須さんも疲れるでしょ」
「じゃ、アタシはご飯食べまーす。智也はまだ反省だかんね!」
「さて、と。シノ、もう出て来て大丈夫なの?」
「一応大丈夫にはなりました」
「そう。それならいいけど」
「初日が終わった後で、班の番組を代わってもらったってササから聞きました。ありがとうございました」
「まあ、得てしてMBCCのミキサーは番組での働きを期待されがちだから、リスク分散じゃないけど、そういう所は見落としがちになるよね」
「そーっすね」
俺の班は「佐々木君だけじゃなくてみんなで頑張ろう」という方向性で協力していたし、全員がトークを考えて、全員が機材の練習もしていた。だけどシノの班はシノがミキサー、まいみぃともう1人の子がトーク、羽場君はディレクターの仕事という風に完全分業でやっていた。それはそれで間違ってないけど、誰かが欠けると一気に傾いてしまう。
「まあ、インフルになっちゃったのは仕方ないとして、それは生活習慣にも見直すところがあるんだろうし。俺がシノにどうこう言えるのは、あのキューシートに対してだから」
「あの番組、どうっしたか?」
「一見派手なようで、同じパターンで崩した15分を3回繰り返してるだけだったよね。荒い波の割に実際は結構単調だったと言うか。ゼミのラジオ番組を初めてやる子に対する配慮とするなら基本の構成を崩すのはやりすぎだし、ぶっ飛んだ構成でやりたいって決めた上でああしたとするなら、まだまだ甘いと思うよ」
「くあーっ……マジすか、甘いっすか」
「うん、甘いね。実際15分を越えたくらいから手が慣れちゃったもんね」
それは高木先輩だからでは、と思うには思うけど、逆に言えば高木先輩だからこそわかるシノの構成の甘さというのもあったんだろう。基本中の基本を敢えて崩した構成を得意とする人だけに。俺もキューシートを見たはずなんだけど、難しい構成だなと思っただけで同じことを繰り返してるだけだとは全然わからなかったもんな。
「ちょっと、精進するっす」
「そうだね。と言うか、ああいうのはMBCCの方の番組とか、インターフェイスの方でもやって欲しいよね」
「はーい、頑張ります」
「シノ、3限もテストでしょ? ご飯食べたら?」
「そーするっす」
「智也、許されたと思ってんでしょ。まだまだお詫び行脚は終わんないからね! アタシ以外の班員にも詫びなよちゃんと」
「ああ、そうだ。シノ、対策委員の方でも穴を開けたでしょ。くるみにもちゃんとフォローしときなね」
end.
++++
在りし日のいち氏ばりの厳しい機材部長となったTKGパイセンである。生活習慣は人のことを言えないので番組構成のことだけチクリ。
ぷんすこしているまいみぃだけど、当日はまいみぃがバタバタ走り回ってフォローしていたのでみんな気持ちはまあわかってる。
テスト期間なので鵠さんはテイクアウト丼を売るのに忙しいようです。でも売り切れるのも早いので割とすぐ自分もランチに行けるのです。
.