2021(02)

■Types of Anger

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「はぁ~っ……」
「奈々、お疲れスね」
「りっちゃんせんぱ~い、お疲れもお疲れっす~」

 こないだ、おハナからの呼び出しで、萌香の言動に対する苦情込みの近況報告会なんかをやってたよね。おハナからの苦情は、萌香が班の打ち合わせをすっぽかしたり、ペアでの打ち合わせもやる気がないような感じだからどうにかしろ、というようなこと。
 ウチのサークルも元々掛け持ちだし、あっちのサークルの方とかを優先してるような子で~というようなことは一応言っておいた。だけど、インターフェイスの活動になると、さすがにMMPの中だけでやってるときと同じというワケにはいかないよねって。

「かくしかかくうまな事情なんですよ」
「あー……まあ、遅かれ早かれ浮上してたであろう問題ではありヤすね」
「おハナには本性バレしたんで何も隠さなくなったみたいなんですけど、インターフェイスでイケメンに出会えるって聞いたのに班にイケメンがいなくてモチベーションが完全になくなったそうですね」
「イケメンねえ。一応身内にもいるにはいヤすけど」
「野坂先輩も一瞬いいなって思ったそうなんですけど、イケメンについて熱弁してるのを見てドン引きしたらしいです。あとオタクなのもマイナスポイントだったとか」
「今時少しマンガやアニメを見てるくらいなら一般的な範疇スけど。ああそうだ奈々、野坂で思い出しヤした」
「はい?」
「ちッと、こないだからこーたとは話してたンすけどね? 野坂の前で萌香の話題は極力出さないようにしてもらえると助かりヤす」
「え、あ、はい。必要最低限に留めればいいんですね、了解っす。でもどうしたんですか? りっちゃん先輩がわざわざそんな風に言うとか、実質サークル公式の通達じゃないすか」

 りっちゃん先輩とこーた先輩が密かに話してたっていうだけでものすご~く重大な話感があるよね。で、それが野坂先輩の前で萌香の話題は極力出さないようにっていう話。萌香はサークルに顔を出さない事も多いから、要はいないものとして扱えっていうような話だよね?

「ヤ、萌香の態度については奈々の報告を聞く前からわかっちゃァいたンすケドね? 一応頭数には違いないのでこちらとしても利用するだけしてやろうっつー考えなワケすわ」
「まあ、掛け持ちとは言え一応MMPの人数にはカウント出来ますもんね」
「野坂は1年生が元々いたバドサーにゼミの先輩がいるらしくて、事情通なンすわね? で、向こうで萌香が言ってるらしいコトも耳に入ってるンすわ」
「向こうで何を言ってるんですかね?」
「まァ、ハナに言ってるよりもさらにド直球なコトだろーなとは。で、それを聞いた野坂がブチ切れてるっつーワケすわ」
「野坂先輩がピリピリしてるなーってのは何となく思ってましたけど、そういうことだったんですね」
「アイツの場合、わーわー声に出して騒いでる間はそこまで問題じゃないンす。言葉じゃなくて顔に出始めると、あっ、ガチなんだなッつーか」

 うちとかおハナみたく、わーわー騒いで怒るタイプの人もいれば、それを内に溜めて溜めて沸々と怒りの感情を煮え滾らせて、本当に臨界が来たらドカンと大爆発させるってタイプの人もいるんだよね。野坂先輩なんかは絶対後者のタイプで。4年生の先輩を含めても、MMPで一番怒らせちゃダメなのが多分野坂先輩なんだよね。
 わーわー騒いで怒るタイプの人は、騒ぐことで怒ってますよってわかってもらえるし話も聞いてもらえるけど、黙っちゃうタイプの人は本当にわかんないし。で、知らない内に見限られてたりするのが怖い。この件に関しては何を言っても無駄なんだなって自己完結して、無かった物として扱われるのが。

「自分やこーたもそれはそういう物として諦めるよう野坂をなんとな~く宥めヤすし、アイツが呑み込むまでの間はサークルの環境のためにも奈々にも協力を願いヤす」
「うっすうっす」
「まァ、アレなんすわ。アイツは対策委員の前議長じャないスか」
「そうですね」
「対策委員の苦労なんかは嫌になるほど知ってヤすから、自分の思い通りに行かないからって不貞腐れた態度でいるヤツが許せないンだと思いヤすよ」
「そうですよねえ。対策委員的には、こう、班の中で問題を起こすようなことはないに越したことはないなあと思いますし、現にみんなに迷惑がかかっちゃってるので、何とかしないといけないなあとも思うんですけどねー」

 班長のゲンゴローの言うことは全然聞かないし、ペアのおハナとも番組の話が全然出来そうにないって話だし。同じ班の子がムカつくとかそんなようなことになっちゃってるみたいだからなー。うちらの学年は割とみんな仲が良いから気付かなかったけど、共演NGみたいなことになることもあるんだったなーって。

「一旦野坂が闇堕ちすると自分らじャ正直どーしよーもないンでね。だからサークルの環境を守るためには違う話で気を逸らせてやるくらいしかないンすよ」
「って言うか野坂先輩の闇堕ちってめちゃくちゃヤバいっすよね。単純に怖いっす。浄化ポイントはないんすかね?」
「頼るアテはないこたないンすけどね。結局のところ、どーにかするのは自分スからね」
「あ~ッ! でもうちもどーしよーって感じっすッ! 忙しくって忙しくってわーって感じっすよッ! 向舞祭の話も始まってきましたしッ!」
「あー、定例会兼務スからこの時期の忙しさは尋常でないでしょーね。ま、死なない程度に頑張ってくーださい」
「うっすうっす」


end.


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りっちゃんもサークル運営の中でいろいろ考えることがある様子。でも問題解決は基本的に本人に頼むスタンス。
闇堕ちノサカを浄化できるのは4年生、と言うか菜月さんだということもりっちゃんはわかっていますが、わざわざ自分が頼むことでもないなーというヤツ。
奈々は定例会兼務なのでもしかしなくてもめちゃくちゃ忙しいのね。自分のことで手一杯になるんじゃないかな。

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