2021(02)
■明日に繋げる学問
++++
いよいよ初めてのテストが来週に迫っている。成績はテストが何パーセントとか出席が何パーセントとか、そんなようなことがシラバスに書いてあった。だけど、実際授業でレポートの題はこれですとか、テストってシラバスに書いてましたけどやっぱりレポートにしますとか聞くと、大学っぽさを感じる。
文学部では1年生の間は学部固有科目よりは一般教養の方が多いっぽい。サークルで話を聞いてても、ササとシノ、それからくるみが俺と同じ傾向にあるらしいから、文系がそんな感じなんだろうな。逆に、理系のサキとレナは学部固有科目でギチギチになってて一般教養の方が少ないらしい。
「ういーす、てっちゃん紫乃ちゃんお疲れーす」
「むぎぽんお疲れー」
「お疲れさまー」
第1食堂の2階、大きな木製のテーブルに陣取って、これから集まるであろうみんなを待つ。今やって来たのはむぎぽんこと社会学部の下梨麦 君。彼は民俗学研究会に属してるんだけど、例によって俺がサークル巡りをしてるときに出会ってそのまま友達になったって感じ。ローカル食とかアクティビティが好きな子なんだよね。
で、むぎぽんと合流前に一緒にいたのが言語表現学科の宮前紫乃さん。彼女はバスケをやってる子なんだけど、知り合ったのは学科じゃなくて学部固有の方の授業でだったかな。近くに座ってる人とグループを作って発表してーって感じのヤツで。それから顔を見れば挨拶をするくらいの間柄にはなっていた。
「なーんかさ、来年から入るゼミ? の話がすげー長くてさー。文学部ってその辺どう?」
「ああ、俺らは明日とかじゃなかったかな」
「うん。明日の5限の時間帯」
「じゃやっぱそんな感じか」
「むぎぽん社会学部っしょ? 俺のサークルの友達が佐藤ゼミに入りたいんだって言ってるわ」
「あー、あのラジオのゼミねー? 確かにあそこは面白そうだなって感はあるけど、毎年倍率がクソたけーんだって」
「あ、やっぱ人気なんだ。ササとシノ、大丈夫かな」
緑ヶ丘大学では2年春または2年秋、それか3年生からゼミという物に所属して専門的な勉強をどんどん進めていくことになる。文学部では2年春からゼミに入ることになるそうで、説明会が明日開かれるらしい。今日説明会があったのが同じく2年春からゼミに入ることになる社会学部。
「あれっ。おーい、のどがみー」
「おー、てっぺーちゃん」
「時間あるならちょっと座ってかない? 社会学部ってゼミの話だったんしょ?」
「あー、じゃあお邪魔するわー。これって何の集い?」
「特に共通点もない集まりだね」
「強いて言うならてっちゃんの友達の会」
「あー、出た出た人たらしが」
「えっと、俺と宮前さんが文学部で、むぎぽんが社会学部で。で、のどがみも社会学部のはず」
「下梨麦でーす」
「村上和 」
「つかてっちゃん、村上クンとはどういう間柄?」
「例によってサークル巡り中に出会った系の友達。のどがみは鉄研で、むぎぽんは民俗学研究会で」
ちょっとでも興味がありそうな部活やサークルには軽い気持ちで見学に行ってたんだよな。で、入らなかった団体でもそこで出会った人には顔を合わせる度に挨拶してたから、気付いたら知ってる人がめちゃくちゃ増えてたって感じで。自然科学研究会の亮真にしてもそうだし、まだ他にもいろいろいる。
「民俗学研究会だったら、ゼミも羽椛ゼミとか?」
「あ~、あの先生も一応民俗学の先生ではあるんだけど、俺さ、呪いとかそーゆーのはちょっとNGなんだわ。他校からわざわざ授業を受けに来る人もいるほど人気の先生らしいんだけど」
「え、社学って呪いの授業とかあんの?」
「何か、生活の中の呪いに特化した先生なんだよ。ほら、昔の人って生贄とかさ、呪術とか儀式とか、そーゆーので雨乞いをしたりウンタラカンタラ的な?」
「えー、すげー面白そう!」
「げっ、てっちゃんそーゆーの好きなの?」
「興味はある。呪いと言うより昔の人の生活に。でも、確かに人を選びそうなテーマではあるよなー。のどがみはどっか気になるゼミとかあった?」
「絶対ここっていうのは無かったから、これから考えようかなと」
「てっぺーちゃんは文学部のゼミで目星とかもう付けてんの?」
「俺はやっぱ発掘調査をやってる二宮ゼミ一択だな!」
俺なら発掘調査だし、ササとシノはラジオ、くるみは商品開発っていう、それぞれこれというやりたいことが決まっていて、そのゼミに向かって行くような感じになるんだろう。だけど、むぎぽんみたく微妙なアンマッチだとか、のどがみみたくまだよくわかんないって人も当然いて。その中でどんな学問と出会って行くかってのも楽しみだよなあ。
「宮前さんは気になるゼミとかある?」
「私は、書き言葉について研究してるゼミとか、広告・メディア論のゼミとかかな。将来はアナウンサーになりたいし、言葉にはそれなりに興味があるから」
「へー、アナウンサーって、テレビとかで原稿を読むアナウンサー?」
「そうだよ。出来ればキー局、最低でも地方局で。だからアナウンス学校かタレント事務所に入りたいんだよね」
「すげー、ガチだ」
「でもだよ紫乃ちゃん、キー局のアナウンサーっつったら、ミスコンで勝つのが必須みたいなトコあるじゃん?」
「うん、だからね、あるなら出るよ」
宮前さんは将来のことを考えて、どこで何をするのかっていう計画をちゃんと立ててんだな。俺は一応学芸員の資格を取れるような履修にはしてるけど、将来って聞かれたら、どうだろう?
end.
++++
すがやんの友達の会。GREENsの紫乃ちゃんも将来に向けたちょっとした野望なんかもありありで。あと実は密かにすがやんの友達でした。
この感じだと、来年とかそれ以上のMBCCでは、来た子にぽんぽんぽーんとDJネームを付けるのがすがやんの仕事になりそうな雰囲気。
つか久々に呪いの民俗学って聞いたわ。確かに他校の人がわざわざ授業を受けに来るくらいその界隈では有名な先生ではあるんだけどな
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いよいよ初めてのテストが来週に迫っている。成績はテストが何パーセントとか出席が何パーセントとか、そんなようなことがシラバスに書いてあった。だけど、実際授業でレポートの題はこれですとか、テストってシラバスに書いてましたけどやっぱりレポートにしますとか聞くと、大学っぽさを感じる。
文学部では1年生の間は学部固有科目よりは一般教養の方が多いっぽい。サークルで話を聞いてても、ササとシノ、それからくるみが俺と同じ傾向にあるらしいから、文系がそんな感じなんだろうな。逆に、理系のサキとレナは学部固有科目でギチギチになってて一般教養の方が少ないらしい。
「ういーす、てっちゃん紫乃ちゃんお疲れーす」
「むぎぽんお疲れー」
「お疲れさまー」
第1食堂の2階、大きな木製のテーブルに陣取って、これから集まるであろうみんなを待つ。今やって来たのはむぎぽんこと社会学部の
で、むぎぽんと合流前に一緒にいたのが言語表現学科の宮前紫乃さん。彼女はバスケをやってる子なんだけど、知り合ったのは学科じゃなくて学部固有の方の授業でだったかな。近くに座ってる人とグループを作って発表してーって感じのヤツで。それから顔を見れば挨拶をするくらいの間柄にはなっていた。
「なーんかさ、来年から入るゼミ? の話がすげー長くてさー。文学部ってその辺どう?」
「ああ、俺らは明日とかじゃなかったかな」
「うん。明日の5限の時間帯」
「じゃやっぱそんな感じか」
「むぎぽん社会学部っしょ? 俺のサークルの友達が佐藤ゼミに入りたいんだって言ってるわ」
「あー、あのラジオのゼミねー? 確かにあそこは面白そうだなって感はあるけど、毎年倍率がクソたけーんだって」
「あ、やっぱ人気なんだ。ササとシノ、大丈夫かな」
緑ヶ丘大学では2年春または2年秋、それか3年生からゼミという物に所属して専門的な勉強をどんどん進めていくことになる。文学部では2年春からゼミに入ることになるそうで、説明会が明日開かれるらしい。今日説明会があったのが同じく2年春からゼミに入ることになる社会学部。
「あれっ。おーい、のどがみー」
「おー、てっぺーちゃん」
「時間あるならちょっと座ってかない? 社会学部ってゼミの話だったんしょ?」
「あー、じゃあお邪魔するわー。これって何の集い?」
「特に共通点もない集まりだね」
「強いて言うならてっちゃんの友達の会」
「あー、出た出た人たらしが」
「えっと、俺と宮前さんが文学部で、むぎぽんが社会学部で。で、のどがみも社会学部のはず」
「下梨麦でーす」
「村上
「つかてっちゃん、村上クンとはどういう間柄?」
「例によってサークル巡り中に出会った系の友達。のどがみは鉄研で、むぎぽんは民俗学研究会で」
ちょっとでも興味がありそうな部活やサークルには軽い気持ちで見学に行ってたんだよな。で、入らなかった団体でもそこで出会った人には顔を合わせる度に挨拶してたから、気付いたら知ってる人がめちゃくちゃ増えてたって感じで。自然科学研究会の亮真にしてもそうだし、まだ他にもいろいろいる。
「民俗学研究会だったら、ゼミも羽椛ゼミとか?」
「あ~、あの先生も一応民俗学の先生ではあるんだけど、俺さ、呪いとかそーゆーのはちょっとNGなんだわ。他校からわざわざ授業を受けに来る人もいるほど人気の先生らしいんだけど」
「え、社学って呪いの授業とかあんの?」
「何か、生活の中の呪いに特化した先生なんだよ。ほら、昔の人って生贄とかさ、呪術とか儀式とか、そーゆーので雨乞いをしたりウンタラカンタラ的な?」
「えー、すげー面白そう!」
「げっ、てっちゃんそーゆーの好きなの?」
「興味はある。呪いと言うより昔の人の生活に。でも、確かに人を選びそうなテーマではあるよなー。のどがみはどっか気になるゼミとかあった?」
「絶対ここっていうのは無かったから、これから考えようかなと」
「てっぺーちゃんは文学部のゼミで目星とかもう付けてんの?」
「俺はやっぱ発掘調査をやってる二宮ゼミ一択だな!」
俺なら発掘調査だし、ササとシノはラジオ、くるみは商品開発っていう、それぞれこれというやりたいことが決まっていて、そのゼミに向かって行くような感じになるんだろう。だけど、むぎぽんみたく微妙なアンマッチだとか、のどがみみたくまだよくわかんないって人も当然いて。その中でどんな学問と出会って行くかってのも楽しみだよなあ。
「宮前さんは気になるゼミとかある?」
「私は、書き言葉について研究してるゼミとか、広告・メディア論のゼミとかかな。将来はアナウンサーになりたいし、言葉にはそれなりに興味があるから」
「へー、アナウンサーって、テレビとかで原稿を読むアナウンサー?」
「そうだよ。出来ればキー局、最低でも地方局で。だからアナウンス学校かタレント事務所に入りたいんだよね」
「すげー、ガチだ」
「でもだよ紫乃ちゃん、キー局のアナウンサーっつったら、ミスコンで勝つのが必須みたいなトコあるじゃん?」
「うん、だからね、あるなら出るよ」
宮前さんは将来のことを考えて、どこで何をするのかっていう計画をちゃんと立ててんだな。俺は一応学芸員の資格を取れるような履修にはしてるけど、将来って聞かれたら、どうだろう?
end.
++++
すがやんの友達の会。GREENsの紫乃ちゃんも将来に向けたちょっとした野望なんかもありありで。あと実は密かにすがやんの友達でした。
この感じだと、来年とかそれ以上のMBCCでは、来た子にぽんぽんぽーんとDJネームを付けるのがすがやんの仕事になりそうな雰囲気。
つか久々に呪いの民俗学って聞いたわ。確かに他校の人がわざわざ授業を受けに来るくらいその界隈では有名な先生ではあるんだけどな
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