2021(02)
■ふわっとしっかりカツサンド
＋＋＋＋
「よっこいしょ！ はー、重たいなー」
「ごめんねミドリ、毎回うちまで持って来てもらって」
「ううん、これも事務所の環境整備の一環だからね」
例によって情報センターの事務所がジャガイモで押し潰されている。俺と林原さんの人脈も使いつつ、何とか少しずつケース単位で捌いてるんだけど、なかなか上手くはいかないね。何だか少しずつ規模が大きくなってるような気もするし。もちろん、ジャガイモの出所は元を辿れば春山さんなんだけど。
俺の人脈で一番ジャガイモに需要があるのはタカティだ。需要があると言うか、消費能力が高いと言うのが正しいかもしれない。緑ヶ丘の皆さんでパーティーをやれば、ジャガイモ１ケースくらいはあっという間に無くなっちゃうから凄いんだ。人数も多いし、一人当たりの胃袋の力がすごいんだ。主に果林先輩の。
「２ケースも引き取ってもらって本当にありがたいよ」
「１ケースは当面の食料だし、もう１ケースはみんなでわーっと飲みながら食べちゃおうと思って」
「それが出来るのが強いよねえ緑ヶ丘は」
「伊東先輩がそろそろ宅飲み料理をやりたいって言ってたからさ。せっかくだしうちを開放してやりましょうかって話になってたんだよね」
去年の秋に緑ヶ丘さんにジャガイモを分けた時に食べさせてもらったんだけど、カズ先輩の料理が本当に美味しかったんだよね。こんなの絶対思いつかないやっていうメニューだったり、俺の技量じゃ絶対作れないよってメニューだったり、とにかくジャガイモでこんなの出来ちゃうの!? って驚いた記憶がある。
「でも、いつも大変だね。それだけのジャガイモが押し寄せて来るって」
「今は夏だからまだマシなんだけどね。でもタカティ、１人で１ケースって、食べれる？」
「保存さえちゃんとしとけばしばらく大丈夫じゃないかなあ。それにうちにはエイジもよく来るし。実質２人で食べるから」
「そっか、エージがいるのか。でも、本当にタカティのおかげだよ。まあ、まだ事務所にはいっぱいあるんだけどね……」
「夏合宿関係の子に配ったら？」
「あー、そうだね。俺が車で配り歩くような感じ？」
「うん。１人暮らしの子には当面の食料だし、普通に実家暮らしの子でもこのジャガイモだったら歓迎されないかなあ。１ケースくらいなら」
「ちょっと、みんなに当たってみようかな」
夏合宿の班と言えば。タカティにはもう２ケース引き取ってもらったから、あとはオリちゃんに当麻、ササと彩人か。彩人が１人暮らしだって言ってたっけ。他の子は実家暮らしのはずだけど、タカティの言うように１ケースくらいだったら一般家庭にも歓迎されると思いたい！ ジャガイモの質はいいんです！
「ところでミドリ、ペア打ち合わせとかはやってる？」
「そうだね。こないだ１回やったよ」
「どんな感じ？」
「特段変わったことは無かったかなあ。あ、でも今回の番組ってタカティのスタイルをベースにするってことになってるじゃない」
「そうだね」
「だからどう構成を寄せてこうかな～って考えてたんだけど、案外そういうのは当麻の方が得意だったみたい」
「ああ、そうなんだ。じゃあ良かった」
「ほら、青敬さんはあんまりラジオやらないから、基本の構成っていうのが固まってないのが逆に良かったっぽくてさ」
「ああ、なるほどね。確かに先入観がない方がやりやすいかも」
タカティが班長の３班では、せっかくタカティがいるんだしタカティがよくやる基本の構成を崩した形の番組をやりたいねっていうことを提案させてもらった。俺の中では、去年の夏合宿で見たあの番組が物凄く印象に残ってたんだよね。なっち先輩がいて、果林先輩がいてって。凄かったなーって。
去年の番組に関してはユキちゃんからも話を聞いて、家でいろいろ考えてたんだよね。ああいう番組をやりたいって言ったものの、自分じゃ何も思いつかないし。ユキちゃんも実際りっちゃん先輩が全部まるっと面倒を見てくれてたって言ってたし。果たして自分に１年生の子をリードできるのかって。
「何か、当麻が俺のキャラとかを見て、こういう雰囲気でやって行きましょうかーって言って来るんだよ。教えることなくない!? って圧倒されちゃったよ」
「いやいや、そこは一応２年生なんだし頑張ってよ。でも、当麻は頑張ってるみたいで良かったよ。今度話を聞いてみようかな」
「うんうん、そうしてあげてー。オリちゃんはどう？」
「オリはねえ、何だろ、ふわっとしてるんだけど飲み込みは早いし、まあなるようにはなるんじゃないかな。時間帯で言うなら案外朝８時くらいかも」
「時間帯？」
「声とか、雰囲気でさ」
「あ～、なるほどね」
「アナウンサーさんの雰囲気で言えば、オリがトップで行くのがいいのかもね。ミドリとササはどうしようかなあ」
「タカティにトップで行ってもらえれば、あとの２組の番組をフォローじゃないけど、しっかり付いててくれるって安心感があるね」
「ああ、そう言われれば確かにそうだね。それじゃあ俺とオリがトップで。ミドリ～……もどっちかと言えばふわっと系だからなあ。星大のふわっと系を続けてしっかりとササで落とすか、ふわっとしっかりふわっとでカツサンド系を目指すか」
「カツサンド？」
「……ああ、ごめん、特に意味はないんだ」
番組のことを考え始めると、タカティって本当に顔が変わるよなあって思う。性格ならタカティもふわっと系だと思うんだけど、番組のことを考えてる時はすっごくしっかりしてるし。それこそアオとかエージとも肩が並んじゃうもんね。
「そうだ、髭にでも行く？ カツサンドもあるし、俺かき氷食べたいな。ジャガイモ引き取ってもらったし奢るよ」
「え、それはさすがに悪いよ。俺も食料を貰ってるんだし」
「でもカツサンド食べたくない？」
「それは食べたい」
「じゃあ行こうよ」
end.
＋＋＋＋
タカミドとジャガイモ。いつものヤツ。ただここは夏合宿の同班２年生なので班の運営についての話も少し。
情報センターにジャガイモが投棄された件に関しては昨年度はやってたっけ？ 青山さんとの繋がりがどうしたこうしたみたいな話。やってたっけ？
ミドリがみんなの家にジャガイモを配り歩いてるだけの話とかも見てみたい。ササがジャガイモのケースを目の当たりにしてどーすんだこれって呆然とするところが見たい
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「よっこいしょ！ はー、重たいなー」
「ごめんねミドリ、毎回うちまで持って来てもらって」
「ううん、これも事務所の環境整備の一環だからね」
例によって情報センターの事務所がジャガイモで押し潰されている。俺と林原さんの人脈も使いつつ、何とか少しずつケース単位で捌いてるんだけど、なかなか上手くはいかないね。何だか少しずつ規模が大きくなってるような気もするし。もちろん、ジャガイモの出所は元を辿れば春山さんなんだけど。
俺の人脈で一番ジャガイモに需要があるのはタカティだ。需要があると言うか、消費能力が高いと言うのが正しいかもしれない。緑ヶ丘の皆さんでパーティーをやれば、ジャガイモ１ケースくらいはあっという間に無くなっちゃうから凄いんだ。人数も多いし、一人当たりの胃袋の力がすごいんだ。主に果林先輩の。
「２ケースも引き取ってもらって本当にありがたいよ」
「１ケースは当面の食料だし、もう１ケースはみんなでわーっと飲みながら食べちゃおうと思って」
「それが出来るのが強いよねえ緑ヶ丘は」
「伊東先輩がそろそろ宅飲み料理をやりたいって言ってたからさ。せっかくだしうちを開放してやりましょうかって話になってたんだよね」
去年の秋に緑ヶ丘さんにジャガイモを分けた時に食べさせてもらったんだけど、カズ先輩の料理が本当に美味しかったんだよね。こんなの絶対思いつかないやっていうメニューだったり、俺の技量じゃ絶対作れないよってメニューだったり、とにかくジャガイモでこんなの出来ちゃうの!? って驚いた記憶がある。
「でも、いつも大変だね。それだけのジャガイモが押し寄せて来るって」
「今は夏だからまだマシなんだけどね。でもタカティ、１人で１ケースって、食べれる？」
「保存さえちゃんとしとけばしばらく大丈夫じゃないかなあ。それにうちにはエイジもよく来るし。実質２人で食べるから」
「そっか、エージがいるのか。でも、本当にタカティのおかげだよ。まあ、まだ事務所にはいっぱいあるんだけどね……」
「夏合宿関係の子に配ったら？」
「あー、そうだね。俺が車で配り歩くような感じ？」
「うん。１人暮らしの子には当面の食料だし、普通に実家暮らしの子でもこのジャガイモだったら歓迎されないかなあ。１ケースくらいなら」
「ちょっと、みんなに当たってみようかな」
夏合宿の班と言えば。タカティにはもう２ケース引き取ってもらったから、あとはオリちゃんに当麻、ササと彩人か。彩人が１人暮らしだって言ってたっけ。他の子は実家暮らしのはずだけど、タカティの言うように１ケースくらいだったら一般家庭にも歓迎されると思いたい！ ジャガイモの質はいいんです！
「ところでミドリ、ペア打ち合わせとかはやってる？」
「そうだね。こないだ１回やったよ」
「どんな感じ？」
「特段変わったことは無かったかなあ。あ、でも今回の番組ってタカティのスタイルをベースにするってことになってるじゃない」
「そうだね」
「だからどう構成を寄せてこうかな～って考えてたんだけど、案外そういうのは当麻の方が得意だったみたい」
「ああ、そうなんだ。じゃあ良かった」
「ほら、青敬さんはあんまりラジオやらないから、基本の構成っていうのが固まってないのが逆に良かったっぽくてさ」
「ああ、なるほどね。確かに先入観がない方がやりやすいかも」
タカティが班長の３班では、せっかくタカティがいるんだしタカティがよくやる基本の構成を崩した形の番組をやりたいねっていうことを提案させてもらった。俺の中では、去年の夏合宿で見たあの番組が物凄く印象に残ってたんだよね。なっち先輩がいて、果林先輩がいてって。凄かったなーって。
去年の番組に関してはユキちゃんからも話を聞いて、家でいろいろ考えてたんだよね。ああいう番組をやりたいって言ったものの、自分じゃ何も思いつかないし。ユキちゃんも実際りっちゃん先輩が全部まるっと面倒を見てくれてたって言ってたし。果たして自分に１年生の子をリードできるのかって。
「何か、当麻が俺のキャラとかを見て、こういう雰囲気でやって行きましょうかーって言って来るんだよ。教えることなくない!? って圧倒されちゃったよ」
「いやいや、そこは一応２年生なんだし頑張ってよ。でも、当麻は頑張ってるみたいで良かったよ。今度話を聞いてみようかな」
「うんうん、そうしてあげてー。オリちゃんはどう？」
「オリはねえ、何だろ、ふわっとしてるんだけど飲み込みは早いし、まあなるようにはなるんじゃないかな。時間帯で言うなら案外朝８時くらいかも」
「時間帯？」
「声とか、雰囲気でさ」
「あ～、なるほどね」
「アナウンサーさんの雰囲気で言えば、オリがトップで行くのがいいのかもね。ミドリとササはどうしようかなあ」
「タカティにトップで行ってもらえれば、あとの２組の番組をフォローじゃないけど、しっかり付いててくれるって安心感があるね」
「ああ、そう言われれば確かにそうだね。それじゃあ俺とオリがトップで。ミドリ～……もどっちかと言えばふわっと系だからなあ。星大のふわっと系を続けてしっかりとササで落とすか、ふわっとしっかりふわっとでカツサンド系を目指すか」
「カツサンド？」
「……ああ、ごめん、特に意味はないんだ」
番組のことを考え始めると、タカティって本当に顔が変わるよなあって思う。性格ならタカティもふわっと系だと思うんだけど、番組のことを考えてる時はすっごくしっかりしてるし。それこそアオとかエージとも肩が並んじゃうもんね。
「そうだ、髭にでも行く？ カツサンドもあるし、俺かき氷食べたいな。ジャガイモ引き取ってもらったし奢るよ」
「え、それはさすがに悪いよ。俺も食料を貰ってるんだし」
「でもカツサンド食べたくない？」
「それは食べたい」
「じゃあ行こうよ」
end.
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タカミドとジャガイモ。いつものヤツ。ただここは夏合宿の同班２年生なので班の運営についての話も少し。
情報センターにジャガイモが投棄された件に関しては昨年度はやってたっけ？ 青山さんとの繋がりがどうしたこうしたみたいな話。やってたっけ？
ミドリがみんなの家にジャガイモを配り歩いてるだけの話とかも見てみたい。ササがジャガイモのケースを目の当たりにしてどーすんだこれって呆然とするところが見たい
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