2021(02)
■実質的陸の孤島にて
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「定例会です。今日は向舞祭についての話を中心に進めて行きます」
向舞祭というのは、向島エリア全域で行われるヨサコイ系の祭りだ。メイン会場は花栄の路上で、ステージもその近くにドドンと建てるんだけど、その他にも星港市内なら丸の池公園や、星港市以外の町にもサテライト会場を作って予選だとか何とかって感じで開催される。2日間だったか3日間だったか。
インターフェイスは、スポンサーの都合上運営スタッフとして毎年駆り出されることになっている。俺たちが会議をしているビルに入っているフィネスタという企業が結構デカめのスポンサー企業なんだ。今は昔ほどガツガツ絡んでるワケじゃないけど、間借りしてるし、後々のことを考えて今は言うことを聞いている。
「今いる定例会の皆さんには、向舞祭のスタッフとして参加してもらうよう協力をお願いします」
「この季節がやってきたんだね」
「え、向舞祭って確かお盆にやるんじゃなかったでしたっけ!」
「そうだな」
「えー!? そしたらハナ実家に帰れないじゃないですかー!」
「申し訳ないけど、そういうことになる」
「えー! しょぼんなんですけどー!」
「あっ、そしたら俺も帰れないのか」
「そう言えば、あやめも下宿してたよね?」
「私は全然日帰り出来る距離だから別に」
「ハナとミドリには申し訳ないけど、向舞祭が終わるまでは打ち合わせや練習も入って来るし、実家に帰るヒマはないと思って欲しい」
向舞祭は盆も盆にやるから、スタッフとして働くことになる俺たちは盆の帰省が出来ないということだ。俺は3年だし今年は夏合宿に出ないから向舞祭の後で帰ればいいだけのことだけど、合宿に出る2年生は向舞祭明けから合宿の打ち合わせも入って来るだろうし、本当に帰る暇がないだろうなあとは。
俺も去年は圭斗先輩からそういう風に圧を掛けられたなあとは思い出す。俺も山羽から出て来てるけど、実は豊葦からなら帰ろうと思えば全然すぐにでも帰れる距離感ではあるんだよな。山羽は横に長いエリアだし、俺は西部の出だから。緑風だとか、長篠とはやっぱり距離感がちょっと違うと言うか。
「それで、向舞祭でやることなんだけど、ミキサーは主にPAさんの助手。それから、アナウンサーはMCさんの横でアシスタントとして壇上に立つのかな? 去年アナウンサーの仕事してたのみんな先輩だし、正直ちょっとあやふやではあるんだけど」
「MCってプロの人なんですかー?」
「そうだな。テレビ局とかイベントで司会の仕事してる人とか。一般公募もしてたみたいだけど、俺らが付くのは基本プロの人になるらしい」
「うちのミーちゃんも向舞祭MCのお仕事やってるんで、もし現場で会った人はよろしくお願いしますッ!」
「そっか、水鈴さんがいるんだ」
「そうそう。去年は朝霞先輩がミーちゃんのアシスタントやってたのかな? でも誰がどこのアシスタントをやるとかって直前にならないとわかんないらしいよッ!」
「へー、こわー」
「今奈々が言ってくれたけど、誰がどこの現場に派遣されるかは直前に決まるらしいです。でも、どこの現場でも対応出来るよう打ち合わせやら練習やらをするらしいんで、極力この練習にも参加してください」
この練習が何気にしんどいんだよな。向舞祭は真夏の屋外でやるイベントだから、練習とかも同じ環境でやることが多いんだ。何せ星港はメチャクチャ暑い。まだテントの下にいれるミキサーはマシなんだろうけど。カズ先輩によれば、圭斗先輩がガチで死んでたらしいから。
「この向舞祭期間中の活動については、短期アルバイト扱いになります。時給930円です」
「時給が出るんだね」
「出ないとやってられないよ、しょぼーん」
「これも先人のおかげだな。今年の俺らが頑張れば、来年この仕事をやってくれと言われた時にも時給の話を振ってもらえると思うんで。ちなみに時給は去年と比較して30円上がってるんで」
これも圭斗先輩だからお上に直接当たるぞってやれたんだろうなとは。「このクソ暑い中やりがいだけで働けるか、金寄こせやボケ(意訳)」という学生の訴えを、社会人の人にも納得してもらえるように伝えて、実際に金の絡むことを交渉するってのはなかなか出来ることじゃない。
「向舞祭についてはまあ大体そんな感じです。スタッフ契約の紙を配るんで、名前とハンコをして次回持ってきてください」
「はーい」
「他に、各大学の活動報告なり、対策委員からの報告はありますか」
「あっ、そしたら対策委員の報告をいいですかッ!? 対策委員はですね、夏合宿に向けて日々打ち合わせなどをやってますッ! それでですね、今年の講師も去年と同じくウチのOBのダイさんにお願いすることになりましたッ!」
「お、いいな」
「明日対策委員の有志でダイさんと初回打ち合わせをやりますッ!」
「対策委員の方も順調に進んでるという解釈でいいのかな?」
「まあ、それなりにはやってるって解釈でお願いしますッ! 今回のところは以上っす、うっすうっす」
定例会も対策委員も、それぞれの夏に向けて動き始めている。とは言えバタバタ走り回るのは8月末まで。そこまで駆け抜けてようやくゆっくりとした夏休みが始まるんだ。さーて、どうなるかな。……今年は酷暑じゃないといいけど、ムリかな~…?
end.
++++
定例会のいつものヤツ。書いた後に去年の話を読み返したら間違い探しレベルだったんで間違い探しをしてください。
奈々が定例会と対策委員を兼任しているので、どっちも会議の結果をほぼリアルタイムに共有できるのが現代の強み。
そう言えば、諏訪姉妹って姉妹で帰省のタイミングが違ったりするのかしら。その辺のこともちょっと考えてみたい。
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「定例会です。今日は向舞祭についての話を中心に進めて行きます」
向舞祭というのは、向島エリア全域で行われるヨサコイ系の祭りだ。メイン会場は花栄の路上で、ステージもその近くにドドンと建てるんだけど、その他にも星港市内なら丸の池公園や、星港市以外の町にもサテライト会場を作って予選だとか何とかって感じで開催される。2日間だったか3日間だったか。
インターフェイスは、スポンサーの都合上運営スタッフとして毎年駆り出されることになっている。俺たちが会議をしているビルに入っているフィネスタという企業が結構デカめのスポンサー企業なんだ。今は昔ほどガツガツ絡んでるワケじゃないけど、間借りしてるし、後々のことを考えて今は言うことを聞いている。
「今いる定例会の皆さんには、向舞祭のスタッフとして参加してもらうよう協力をお願いします」
「この季節がやってきたんだね」
「え、向舞祭って確かお盆にやるんじゃなかったでしたっけ!」
「そうだな」
「えー!? そしたらハナ実家に帰れないじゃないですかー!」
「申し訳ないけど、そういうことになる」
「えー! しょぼんなんですけどー!」
「あっ、そしたら俺も帰れないのか」
「そう言えば、あやめも下宿してたよね?」
「私は全然日帰り出来る距離だから別に」
「ハナとミドリには申し訳ないけど、向舞祭が終わるまでは打ち合わせや練習も入って来るし、実家に帰るヒマはないと思って欲しい」
向舞祭は盆も盆にやるから、スタッフとして働くことになる俺たちは盆の帰省が出来ないということだ。俺は3年だし今年は夏合宿に出ないから向舞祭の後で帰ればいいだけのことだけど、合宿に出る2年生は向舞祭明けから合宿の打ち合わせも入って来るだろうし、本当に帰る暇がないだろうなあとは。
俺も去年は圭斗先輩からそういう風に圧を掛けられたなあとは思い出す。俺も山羽から出て来てるけど、実は豊葦からなら帰ろうと思えば全然すぐにでも帰れる距離感ではあるんだよな。山羽は横に長いエリアだし、俺は西部の出だから。緑風だとか、長篠とはやっぱり距離感がちょっと違うと言うか。
「それで、向舞祭でやることなんだけど、ミキサーは主にPAさんの助手。それから、アナウンサーはMCさんの横でアシスタントとして壇上に立つのかな? 去年アナウンサーの仕事してたのみんな先輩だし、正直ちょっとあやふやではあるんだけど」
「MCってプロの人なんですかー?」
「そうだな。テレビ局とかイベントで司会の仕事してる人とか。一般公募もしてたみたいだけど、俺らが付くのは基本プロの人になるらしい」
「うちのミーちゃんも向舞祭MCのお仕事やってるんで、もし現場で会った人はよろしくお願いしますッ!」
「そっか、水鈴さんがいるんだ」
「そうそう。去年は朝霞先輩がミーちゃんのアシスタントやってたのかな? でも誰がどこのアシスタントをやるとかって直前にならないとわかんないらしいよッ!」
「へー、こわー」
「今奈々が言ってくれたけど、誰がどこの現場に派遣されるかは直前に決まるらしいです。でも、どこの現場でも対応出来るよう打ち合わせやら練習やらをするらしいんで、極力この練習にも参加してください」
この練習が何気にしんどいんだよな。向舞祭は真夏の屋外でやるイベントだから、練習とかも同じ環境でやることが多いんだ。何せ星港はメチャクチャ暑い。まだテントの下にいれるミキサーはマシなんだろうけど。カズ先輩によれば、圭斗先輩がガチで死んでたらしいから。
「この向舞祭期間中の活動については、短期アルバイト扱いになります。時給930円です」
「時給が出るんだね」
「出ないとやってられないよ、しょぼーん」
「これも先人のおかげだな。今年の俺らが頑張れば、来年この仕事をやってくれと言われた時にも時給の話を振ってもらえると思うんで。ちなみに時給は去年と比較して30円上がってるんで」
これも圭斗先輩だからお上に直接当たるぞってやれたんだろうなとは。「このクソ暑い中やりがいだけで働けるか、金寄こせやボケ(意訳)」という学生の訴えを、社会人の人にも納得してもらえるように伝えて、実際に金の絡むことを交渉するってのはなかなか出来ることじゃない。
「向舞祭についてはまあ大体そんな感じです。スタッフ契約の紙を配るんで、名前とハンコをして次回持ってきてください」
「はーい」
「他に、各大学の活動報告なり、対策委員からの報告はありますか」
「あっ、そしたら対策委員の報告をいいですかッ!? 対策委員はですね、夏合宿に向けて日々打ち合わせなどをやってますッ! それでですね、今年の講師も去年と同じくウチのOBのダイさんにお願いすることになりましたッ!」
「お、いいな」
「明日対策委員の有志でダイさんと初回打ち合わせをやりますッ!」
「対策委員の方も順調に進んでるという解釈でいいのかな?」
「まあ、それなりにはやってるって解釈でお願いしますッ! 今回のところは以上っす、うっすうっす」
定例会も対策委員も、それぞれの夏に向けて動き始めている。とは言えバタバタ走り回るのは8月末まで。そこまで駆け抜けてようやくゆっくりとした夏休みが始まるんだ。さーて、どうなるかな。……今年は酷暑じゃないといいけど、ムリかな~…?
end.
++++
定例会のいつものヤツ。書いた後に去年の話を読み返したら間違い探しレベルだったんで間違い探しをしてください。
奈々が定例会と対策委員を兼任しているので、どっちも会議の結果をほぼリアルタイムに共有できるのが現代の強み。
そう言えば、諏訪姉妹って姉妹で帰省のタイミングが違ったりするのかしら。その辺のこともちょっと考えてみたい。
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