2021(02)

■先輩に話してごらん

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「みんなー、遊びに来たよー」
「ヒビキ先輩紗希先輩、お疲れさまです!」
「アタシちょっと前に山羽の温泉行って来たし、お土産あるからみんな食べてー」
「ありがとうございまーす」

 ヒビキ先輩と紗希先輩が4月振りにサークルに顔を出してくれて、みんな歓迎ムード。ヒビキ先輩からのお土産のお菓子をみんなで分けて、近況報告が始まる。そんなことをしつつも啓子の目がヒビキ先輩の手元に向けて光っている。お菓子を食べたゴミをすぐ捨ててもらうよう見張る光景も懐かしい。

「1年生は結局4人になったのかな?」
「そうですね。あっそうだ見てください紗希先輩、これ、植物園ステージで1年生の子たちに沙都子が作ってくれたエプロンの写真なんですけど」
「わあ、綺麗な刺繍。さすがさとちゃん。それぞれ違う花だったんだね」
「衣装はさとちゃんが安定だったとして、ステージ自体はどうだったの?」
「ユキちゃんの本で、ミキサーもなっちゃんをメインにいい感じに回りました」
「そっか、今年はユキちゃんが本を書く感じかー」
「なっちゃんもよく頑張ったね」
「直先輩がいてくれたので……」

 なっちゃんがとてもよく頑張っていましたと先輩たちに報告をして、その成長をみんなで一緒に喜ぶ。ユキちゃんも台本を書くのを頑張りましたという報告には、ヒビキ先輩は物凄く感心した様子。みんなで2つずつ分けて余ったお菓子を「頑張ったで賞ね」とユキちゃんとなっちゃんに再分配してくれた。

「そう言えば、そろそろ夏合宿の季節だけど、みんなどんな感じ?」
「はいはーい! アタシはなつみ先輩と一緒の班なんですー!」
「ああ本当。でも、ABCのミキサーが2人同じ班なんだね」
「あの……その……いろいろ、事情があって……」
「なっちゃんの班はですねー、各大学のうるさい子をみんなまとめてエージに面倒見てもらおうって感じなんですよー」
「サドニナ先輩うるさいって何ですかー!」
「えー、だって実際まつりうるさいじゃん!」
「サドニナ先輩だってうるさいじゃないですかぁ!」
「まつりに1票」
「2票」

 サドニナとまつりのどちらがうるさい論争は啓子とユキちゃんの投票でキレイにおしまい。でも、なっちゃんとまつりは野球に関わる趣味が共通していて仲がいいし、なっちゃんにとっては他の3人よりは多少うる……元気でも操縦が利くのかもしれない。発言のしやすさと言うか。

「ABC同士と言えば、あたしもみわと同じ班なんですよねー」
「ああ、そうなんだ。今年は結構重なるんだね」
「班の他の子たちがみんなクールと言うかしっかりしてると言うか。あたしでふわふわ系扱いされる世界観なんで、みわが本当に心配で」
「ユキちゃんもABCじゃちゃんとしっかり者なのに、ふわふわ系になっちゃうんだね」
「あとはちとせちゃんとエマか。2人はどんな感じ?」
「あたしは、班の顔合わせに行って来たところです」
「そっかー。上手くやれそう?」
「班の皆さんがとても優しいですし、とっても雰囲気がいいなって思います。緑ヶ丘のくるちゃんが元気で明るくって、いいなって」
「へえ、良さそうな班でよかったね。夏合宿の班割りで今後のインターフェイスの歩き方が決まると言っても過言じゃないからね。エマはどんな?」
「わたくしは……そうですわね。一言ではとても表せないのですけど、わたくしとはそりが合わなさそうな方がいらして」

 エマの顔合わせの話は初めて聞くんだけど、それを掘り下げていくとなかなか手強そうな子が出て来たなあと、3年生以上は苦笑するしかない。エマが合わないだろうなと感じたその子は、ハナちゃんとペアを組むことになったそうだけど、よろしくという挨拶にも「どーも」と不貞腐れたような態度で応えるだけだったそうだ。
 ハナちゃんに対してだけじゃなくて、終始やる気のなさそうな感じだったし、班長のゲンゴローが何を聞いても芳しい返事はなかったそうだ。エマはそれを「はっきりしていらっしゃる方で」と言っているけど絶対褒め言葉じゃないんだろうなあとはその表情から察することが出来る。

「一言で言えばさすが向島としか言いようがないわ」
「向島さんは基本いい子たちだし実力もあるけど、たまに地雷も湧くから」
「ちょっと紗希! ホントのコトだけどはっきり言い過ぎ!」
「え、えっと、エマはどんなペアになったのかな?」
「わたくしは緑ヶ丘大学のサキという方とペアになりましたの」
「えっと、その、サキ? とは上手くやれそう? どの子かな」
「佐崎さまと仰るのですけれど、利発でいらして、謙虚ですわね。ラジオのことも教えてくださるとのことで、同じ1年生ながらすっかり頼り切っておりますわ」
「上手くやれそうならよかった。緑ヶ丘の子ならラジオのことについても心配なさそうだし」
「先日、打ち合わせの名目でお会いして、ハンバーガーをいただきましたの。買い方や、食事の後の片付け方などを教えていただきましたわ」

 ラジオのこと以外にもエマには学びが多いみたいだ。班での活動はなかなか大変そうだけど、ペアでの活動は楽しそうで何より。他の子たちも今のところは上手くやれてるみたいだし。夏合宿と聞くとボクたちはミラのことを思い出してしまうから、今年の1年生となっちゃんには楽しい合宿になって欲しいなと本当に思う。

「あれっ、エマってハンバーガーまだだったっけ!?」
「ええ。皆さまといただいたのはパンケーキと、フルーツサンドと、オムライスと……」
「そしたら今度みんなで牛丼か回転寿司行こう! ね! ちとせもみわも来るでしょ!?」
「回転寿司いいね」
「いいねー。行こう行こう」


end.


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ヒビキと紗希ちゃんが遊びにきたことの意味は多分あんまりなくて、単純に青女と言えば的な、久々に4年生も的な。
くるちゃんがちとせにきゃっきゃしてる様子がたまに話の上でも見れるけど、その逆の、ちとせがくるちゃんのことを話してるのも見たかった
まつりはABCでは結構レアなそこそこがっつりとした体育会系。食べる量も青女内では多い方。ご飯ももりもり食べるよ!

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