2021(02)
■年に一度の巡る星
++++
「おはようございまーす。あ、ササいた。よかったー」
「おはようすがやん。えっと、何かあった?」
「これこれ。はいどうぞ」
そう言ってすがやんは俺に綺麗に包装された小包を手渡してくれる。見るからに贈り物の類だ。実は、日付的にはそういう物をもらうのにも心当たりはある。何を隠そう今日は俺の誕生日。だけど、すがやんからというのが謎だ。
「えっと、これは?」
「ササ、今日誕生日なんだってなー」
「すがやんには言ってなかったと思うけど、誰から聞いた?」
「サキが、書記ノートに書いてたって」
「ああ、なるほど」
MBCCに見学に来たときに名前や学部学科だけじゃなくて、出身地や誕生日みたいなことも聞かれてたんだよな、確か。で、記録を取ってあったそのページを、議事録を読み返すのが趣味のようになっているサキが目にしていて、内容を覚えていたそうなんだ。
そろそろ俺が誕生日であるという話をすがやん、サキ、くるみの3人の間でしていたそうなんだ。そしたらくるみがお祝いしたいねーと言ってくれて、あれよあれよとプレゼントをしようという方向で話がまとまった。すがやんは買い出し班だったらしい。
「これは俺とサキと、くるみの3人からです」
「ありがとうございます。開けていい?」
「どうぞ。外してないといいんだけど」
封を開けると、中から出てきたのはレザー風の栞と、外れにくい作りのブックマークだ。ダーツの先をモチーフにしてあるようで、色もシックでなかなかオシャレだ。
「え、すごい。これは嬉しいです。ありがとうございます」
「いえいえ。おめでとうございます」
「いやはや」
「どうもどうも」
俺とすがやんがどう話を終わらせるべきかわからずぺこぺこお辞儀し合っていると、サキと玲那がやってきた。
「おはよう。2人とも挙動不審だよ」
「サキもありがとう。今し方すがやんから3人名義のプレゼントをいただきました」
「ああ、そうだったの。改めまして誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
「陸、よかったね。みんなから祝ってもらって」
「本当に。感謝しかない」
「でも、サキもすがやんも、そういうことを企画してるなら私も混ぜてくれればよかったのに」
「ごめんごめん。レナはデートとかで個別にやるかなーと思って」
「うん。その場にいなかった人を含めるっていう発想にならなくて」
私事の余談にはなるんだけど、2週間前に玲那と付き合い始めることになった。玲那から告白されて、俺も気になってたしオッケーの返事をして。俺たちの関係のことはサークルにはオープンにしているけど、気遣いなんかは不要ですよとはお願いしてある。
「陸、どんなのもらったの? 見せてもらっていい?」
「どうぞ」
「へえ、読書グッズか。いいね。オシャレだし、長く使えそう」
「俺も気になる。見せて」
「サキは知ってたんじゃないの?」
「俺とくるみは何がいいかなって話をしただけで、現物を買いに行ったのはすがやんだから。見るのは初めてなんだ」
俺の趣味が読書であるということをみんな知ってくれていて、それにちなんだ物をこうして選んで手渡してくれるということの得も言われぬ幸福感だ。自分のことを考えてくれている時間が嬉しいとはこのことなんだなあと実感をする。
「おざーす!」
「おっはよーございまーす! みんな何してるのー?」
そうこう話してるうちに、シノとくるみもやって来て6人集合だ。とりあえず、くるみにもしっかりとお礼を言っておかないといけない。
「くるみもありがとう。3人名義のプレゼント、ありがたく受け取りました」
「あっ、そうだ! ササ誕生日おめでとー! すがやん、どんなの買ってきたの?」
「今はサキが持ってるよ」
「なかなかセンスのいい栞とブックマークだね」
「お~、すごーい! シンプルで、大人っぽくて、ササにピッタリだね! すがやんナイス!」
「――ってちょっと待て! ササ、お前今日誕生日だったんか!?」
「そうだよ」
「はー!? 俺は相棒の誕生日も知らなかったってのかー!」
俺はシノの誕生日も覚えてるけど、別に誕生日なんて無頓着な人は本当に気にしない物だと思う。玲那のそれは彼女だし普通に知ってるけど、正直すがくるサキの誕生日は知らないんだ(今日のお返しをしたいのでちゃんと調べるけど)。
3人の輪からも弾かれ、俺の誕生日を今の今まで知らなかったという事実に「何だよー」とか「言っといてくれよー」とシノはやや強めに縋りついてくる。そして、何で俺を混ぜてくれないんだーとシノは3人にも喚き散らしている。
「つかお前らは何でササの誕生日を知ってんだよ」
「俺は知らなかったけど、サキが書記ノートとか見て知ってたんだよ」
「サークル見学の日に聞いてたし。シノは11月7日でしょ」
「サキすげー! その1回しか言ってねーはずなのに! や、でもササの誕生日はもう完璧だぜ! 7月7日! ゾロ目で覚えやすい! おーい、次は誰だ! 誰が何月だ!」
「あたし9月ー。シノ、大学夏休みだけど祝ってくれるの?」
「私は11月」
「俺は2月」
「くるみが9、レナが11、サキが2! すがやんは?」
「5月」
「過ぎてんのかい!」
この話を聞いてこっそり各人の誕生日を覚えようとしていた俺も、心の中でシノと同じツッコミを入れる。過ぎてたのか。でも、4月5月生まれくらいの宿命かもな。仲良くなった頃には誕生日過ぎてるヤツ。
「あー、でも今年は出遅れたな」
「来年の今頃はシノは一人暮らししてるだろうし、俺の誕生会とか開いてくれるんだろ?」
「おうよ、任せとけよ!」
「いや、おめでとうって言ってくれればそれだけでいいよ」
end.
++++
ササ誕のあれやこれや。すがくるサキはそういうことやりそうだなーとちょっと思った。多分すがやん昨日顔合わせ前に買い物してる
この光景を見た先輩たちは、1年生6人は仲がいいなあって感心してる。みんなわちゃわちゃするのが少ない先輩たち。
でも今後はササにどちゃくそ忙しいイメージがついてなかなか遊びにも誘われないしでしょんぼりすることになるんだぜ
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「おはようございまーす。あ、ササいた。よかったー」
「おはようすがやん。えっと、何かあった?」
「これこれ。はいどうぞ」
そう言ってすがやんは俺に綺麗に包装された小包を手渡してくれる。見るからに贈り物の類だ。実は、日付的にはそういう物をもらうのにも心当たりはある。何を隠そう今日は俺の誕生日。だけど、すがやんからというのが謎だ。
「えっと、これは?」
「ササ、今日誕生日なんだってなー」
「すがやんには言ってなかったと思うけど、誰から聞いた?」
「サキが、書記ノートに書いてたって」
「ああ、なるほど」
MBCCに見学に来たときに名前や学部学科だけじゃなくて、出身地や誕生日みたいなことも聞かれてたんだよな、確か。で、記録を取ってあったそのページを、議事録を読み返すのが趣味のようになっているサキが目にしていて、内容を覚えていたそうなんだ。
そろそろ俺が誕生日であるという話をすがやん、サキ、くるみの3人の間でしていたそうなんだ。そしたらくるみがお祝いしたいねーと言ってくれて、あれよあれよとプレゼントをしようという方向で話がまとまった。すがやんは買い出し班だったらしい。
「これは俺とサキと、くるみの3人からです」
「ありがとうございます。開けていい?」
「どうぞ。外してないといいんだけど」
封を開けると、中から出てきたのはレザー風の栞と、外れにくい作りのブックマークだ。ダーツの先をモチーフにしてあるようで、色もシックでなかなかオシャレだ。
「え、すごい。これは嬉しいです。ありがとうございます」
「いえいえ。おめでとうございます」
「いやはや」
「どうもどうも」
俺とすがやんがどう話を終わらせるべきかわからずぺこぺこお辞儀し合っていると、サキと玲那がやってきた。
「おはよう。2人とも挙動不審だよ」
「サキもありがとう。今し方すがやんから3人名義のプレゼントをいただきました」
「ああ、そうだったの。改めまして誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
「陸、よかったね。みんなから祝ってもらって」
「本当に。感謝しかない」
「でも、サキもすがやんも、そういうことを企画してるなら私も混ぜてくれればよかったのに」
「ごめんごめん。レナはデートとかで個別にやるかなーと思って」
「うん。その場にいなかった人を含めるっていう発想にならなくて」
私事の余談にはなるんだけど、2週間前に玲那と付き合い始めることになった。玲那から告白されて、俺も気になってたしオッケーの返事をして。俺たちの関係のことはサークルにはオープンにしているけど、気遣いなんかは不要ですよとはお願いしてある。
「陸、どんなのもらったの? 見せてもらっていい?」
「どうぞ」
「へえ、読書グッズか。いいね。オシャレだし、長く使えそう」
「俺も気になる。見せて」
「サキは知ってたんじゃないの?」
「俺とくるみは何がいいかなって話をしただけで、現物を買いに行ったのはすがやんだから。見るのは初めてなんだ」
俺の趣味が読書であるということをみんな知ってくれていて、それにちなんだ物をこうして選んで手渡してくれるということの得も言われぬ幸福感だ。自分のことを考えてくれている時間が嬉しいとはこのことなんだなあと実感をする。
「おざーす!」
「おっはよーございまーす! みんな何してるのー?」
そうこう話してるうちに、シノとくるみもやって来て6人集合だ。とりあえず、くるみにもしっかりとお礼を言っておかないといけない。
「くるみもありがとう。3人名義のプレゼント、ありがたく受け取りました」
「あっ、そうだ! ササ誕生日おめでとー! すがやん、どんなの買ってきたの?」
「今はサキが持ってるよ」
「なかなかセンスのいい栞とブックマークだね」
「お~、すごーい! シンプルで、大人っぽくて、ササにピッタリだね! すがやんナイス!」
「――ってちょっと待て! ササ、お前今日誕生日だったんか!?」
「そうだよ」
「はー!? 俺は相棒の誕生日も知らなかったってのかー!」
俺はシノの誕生日も覚えてるけど、別に誕生日なんて無頓着な人は本当に気にしない物だと思う。玲那のそれは彼女だし普通に知ってるけど、正直すがくるサキの誕生日は知らないんだ(今日のお返しをしたいのでちゃんと調べるけど)。
3人の輪からも弾かれ、俺の誕生日を今の今まで知らなかったという事実に「何だよー」とか「言っといてくれよー」とシノはやや強めに縋りついてくる。そして、何で俺を混ぜてくれないんだーとシノは3人にも喚き散らしている。
「つかお前らは何でササの誕生日を知ってんだよ」
「俺は知らなかったけど、サキが書記ノートとか見て知ってたんだよ」
「サークル見学の日に聞いてたし。シノは11月7日でしょ」
「サキすげー! その1回しか言ってねーはずなのに! や、でもササの誕生日はもう完璧だぜ! 7月7日! ゾロ目で覚えやすい! おーい、次は誰だ! 誰が何月だ!」
「あたし9月ー。シノ、大学夏休みだけど祝ってくれるの?」
「私は11月」
「俺は2月」
「くるみが9、レナが11、サキが2! すがやんは?」
「5月」
「過ぎてんのかい!」
この話を聞いてこっそり各人の誕生日を覚えようとしていた俺も、心の中でシノと同じツッコミを入れる。過ぎてたのか。でも、4月5月生まれくらいの宿命かもな。仲良くなった頃には誕生日過ぎてるヤツ。
「あー、でも今年は出遅れたな」
「来年の今頃はシノは一人暮らししてるだろうし、俺の誕生会とか開いてくれるんだろ?」
「おうよ、任せとけよ!」
「いや、おめでとうって言ってくれればそれだけでいいよ」
end.
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ササ誕のあれやこれや。すがくるサキはそういうことやりそうだなーとちょっと思った。多分すがやん昨日顔合わせ前に買い物してる
この光景を見た先輩たちは、1年生6人は仲がいいなあって感心してる。みんなわちゃわちゃするのが少ない先輩たち。
でも今後はササにどちゃくそ忙しいイメージがついてなかなか遊びにも誘われないしでしょんぼりすることになるんだぜ
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